1級建築施工管理技士の求人・転職|経審5点と6点で見る企業の本音

  • 1級を取ったけど、実際いくら上がるものなんだろう
  • 「1級は引く手あまた」と言われても、正直そんな実感がない
  • そもそも、なぜ会社はここまで1級持ちを欲しがるんだ?
  • 求人票の「1級必須」と「1級歓迎」って、何が違うの?
  • 資格者証と講習って、結局のところ要るの?要らないの?
  • 40代でも動けるのか、それとももう遅いのか知りたい

上記の様な悩みを解決します。

1級建築施工管理技士の求人が途切れないのは、景気や人手不足という気分の話ではなく、建設業法と経営事項審査の条文でそう決まっているからです。元請が下請に出す金額が一定を超えれば監理技術者を置かなければならず、その監理技術者の要件に1級施工管理技士が名指しで入っている。会社があなたを手放したがらない理由も、他社が欲しがる理由も、ほぼここに集約されます。ところが調べてみると年収の数字ばかりが並んでいて、その数字がどの調査から来たものなのかも、資格者証と講習の有無で会社が受け取る点数が変わることも書かれていないんですよね。今回は監理技術者の配置ルール・専任が必要になる金額・求人統計の読み方といった基本を押さえた上で、転職サービス側の紹介ページではまず触れられない「経営事項審査では1級技術者が5点、監理技術者資格者証と講習まで揃えて6点」という会社側の損得勘定まで、施工管理の目線で整理しました。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、いま動くべきか決めかねている方にも判断しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

1級建築施工管理技士が求められるのは、建設業法が技術者の配置を義務づけているから

結論から書きます。1級建築施工管理技士に求人が付くのは、建設業法が置くべき技術者を条文で決めているからです。元請の特定建設業者は、下請契約の請負代金の額が政令で定める金額以上になる場合、その現場に監理技術者を置かなければなりません(建設業法 第26条第2項・e-Gov法令検索)。その技術者要件は「●一級国家資格者」として「・1級施工管理技士」「・1級建築士」「・技術士」が挙げられています(国土交通省「技術者制度の概要(参考資料1)」令和5年12月22日 p.6)。会社が一定規模の元請工事を取りに行く限り、この要件を満たす人を現場に置かなければ配置義務を満たせない、というのが求人の出どころです。

土台にあるのは、もっと手前の義務です。建設業法 第26条第1項(e-Gov法令検索)は、建設業者が請け負った建設工事を施工するときは、その工事現場における施工の技術上の管理をつかさどる者として主任技術者を置かなければならないと定めています。建設業者が請け負った建設工事は現場ごとに主任技術者が要り、下請への発注額が大きい元請工事ではそれが監理技術者に切り替わる。1級が効いてくるのは、この上の段です。

見落とされやすいのが、現場ではなく事務所側の需要です。同じ国土交通省「技術者制度の概要(参考資料1)」令和5年12月22日 p.6 には、営業所専任技術者の要件について、特定建設業では「監理技術者の要件と同等」、一般建設業では「主任技術者の要件と同等」と整理されています。1級を持つ人は、現場に置く駒としても、あるいは営業所に置いて許可を維持する駒としても数えられます。ただし営業所の専任技術者は同じ p.7 の定義でいう専任なので、現場と営業所を同時に埋められるという意味ではありません。

企業側が1級技術者を求める理由は、次のように条文で説明がつきます。

  • 主任技術者は、請け負った建設工事を施工するときに工事現場へ置く(建設業法 第26条第1項)
  • 監理技術者は、元請の特定建設業者が下請契約の請負代金の総額が政令で定める金額以上になる場合に置く(建設業法 第26条第2項)
  • 監理技術者の技術者要件には、一級国家資格者として1級施工管理技士が挙げられている(国土交通省「技術者制度の概要(参考資料1)」令和5年12月22日 p.6)
  • 特定建設業の営業所に置く専任技術者の要件は、監理技術者の要件と同等とされている(同 p.6)

「引く手あまたと言われても実感がない」という感覚は、僕はごく自然なものだと思っています。社内では1級は配置のための当たり前の条件であって、褒められる理由にはなりにくい。価値が見えるのは、その人が抜けたときと、外から採ろうとしたときだけです。

許可制度そのものの全体像は、こちらで整理しています。

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まだ受検の段階にいる方は、条件の側から確認しておくと動きやすくなります。

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監理技術者を置く金額の線は、令和7年2月1日に動いた

前の章で「政令で定める金額」と書いた部分に、具体的な数字を入れていきます。建設業法施行令 第2条(e-Gov法令検索)は「法第三条第一項第二号の政令で定める金額は、五千万円とする。ただし、同項の許可を受けようとする建設業が建築工事業である場合においては、八千万円とする。」と定めています。建築工事業では、元請として下請に出す金額の合計が8,000万円以上になるときに監理技術者を置く、という線引きです。

もう一段きつい要件が専任です。建設業法 第26条第3項(e-Gov法令検索)は、公共性のある施設や多数の者が利用する施設に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、置くべき主任技術者または監理技術者は工事現場ごとに専任の者でなければならないと定めています。その金額は建設業法施行令 第27条第1項(e-Gov法令検索)で「工事一件の請負代金の額が四千五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、九千万円)以上のもの」とされています。ここでいう専任は、国土交通省「技術者制度の概要(参考資料1)」令和5年12月22日 p.7 で「他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していること」と説明されています。

この金額が動いたのが令和7年2月1日です。国土交通省の報道発表「建設業の各種金額要件や技術検定の受検手数料を見直します」は、同日施行の見直し内容として次の3つを示しています。

項目 改正前 改正後
下請代金下限 4,500万円(7,000万円) 5,000万円(8,000万円)
監理技術者配置 4,000万円(8,000万円) 4,500万円(9,000万円)
施工体制台帳作成 4,500万円(7,000万円) 5,000万円(8,000万円)

※国土交通省 報道発表「建設業の各種金額要件や技術検定の受検手数料を見直します」(令和7年2月1日施行)。括弧内の条件語は行ごとに違い、「下請代金下限」は建設業法施行令 第2条の建築工事業の場合、「監理技術者配置」は同 第27条第1項の建築一式工事の場合の金額です(「施工体制台帳作成」の行の条件語は今回確認していません)。なお表の「監理技術者配置」の行が指しているのは専任で配置する場合の要件であって、監理技術者を置くかどうかの線(同 第2条の5,000万円・建築工事業は8,000万円)とは別の金額なので、混ぜないでください。

改正後の数字が、そのまま建設業法施行令 第2条の5,000万円(建築工事業は8,000万円)と、建設業法施行令 第27条第1項の4,500万円(建築一式工事は9,000万円)に対応しています。逆に言えば、監理技術者の下請代金を4,500万円、建築工事業を7,000万円と書いている解説記事は、令和7年2月1日より前の状態で止まっています。

現行ルールの全体像は、国土交通省「参考資料集 令和8年4月3日」p.93 にも整理されています。同ページは監理技術者と主任技術者を「元請工事における下請合計金額 5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)」と「左記以外」で区分し、資格要件として「1級技術検定合格者、国家資格者(一級建築士等)、実務経験者(指定建設業は除く)」を挙げています。効いてくるのが末尾の但し書きです。建設業法施行令 第5条の2(e-Gov法令検索)が定める指定建設業には建築工事業が含まれるため、この2つを重ねて読むと、建築の元請工事で監理技術者を務めるには実務経験の積み上げだけでは足りない、という読み方になります。

「1級必須」と「1級歓迎」の違いですが、求人票の書き方は各社の裁量で、公表資料にその2つを定義したものはありません。言葉づかいから会社の本音を読み取ろうとするより、次の3点を見た方が確かだと僕は思います。

  • その会社が特定建設業の許可を持っているか(下請に一定額以上を出す元請ができるかどうかが変わる)
  • 公共性のある施設や多数の者が利用する施設に関する重要な建設工事(建設業法 第26条第3項)に当たる工事で、かつ1件の請負代金が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上のものを扱っているか。金額だけでは決まらない
  • 元請として下請に出す合計が、5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上になる案件があるか

特定建設業の許可と5,000万円のルールについては、次の記事で線引きを追えます。

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会社があなたを欲しがる理由は、経営事項審査の点数で説明がつく

「1級持ちは評価される」という言い方は感覚的ですが、経営事項審査には、技術職員を資格区分ごとの点数として数える仕組みがあります。建設業法施行規則 第21条の3(e-Gov法令検索)は経営事項審査の総合評定値を「P=0.25X1+0.15X2+0.2Y+0.25Z+0.15W」と定め、このうちZを「経営規模等評価の結果に係る数値のうち、技術職員数及び元請完成工事高に係るもの」としています。技術職員の数が、総合評定値を構成する5項目のうちの1つに直結しているということです。

Zの重みも公表されています。国土交通省「参考資料集 令和8年4月3日」p.121 は、Zを「技術力」として「①技術職員数(許可業種別)②元請完成工事高(許可業種別)」の2つで構成し、ウェイトを0.25、最高点を2,441点、最低点を456点としています。

そのZのうち技術職員数(Z1)は、職員1人ずつに資格区分ごとの点数を付けて数えます。国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」p.1は、区分と点数を次のように示しています。

点数 区分
6点 1級監理受講者(技術者を対象とする国家資格の1級又は技術士法に基づく資格を有し、かつ監理技術者資格者証の交付を受けている者)
5点 1級技術者
4点 監理技術者補佐
3点 基幹技能者等
2点 2級技術者
1点 その他技術者

※国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」p.1

4点の監理技術者補佐は、後から加わった区分です。国土交通省 関東地方整備局「技術職員数(Z1)に係る改正(監理技術者補佐)について」は「監理技術者補佐について、令和3年4月1日より経営事項審査においても加点対象となりました。(有資格区分コード:005、点数:4点として評価)」と説明しています。

そして、この表を見るときに絶対に外せない条件が1つあります。国土交通省 中部地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求の手引き」p.15 は「現行の1級技術者が監理技術者資格者証を保有しており、監理技術者講習修了証を保有している場合に6点の評価となります。なお、現行の2級技術者及びその他の技術者が監理技術者講習修了証を保有していても1点の加点評価にはなりません。」としています。つまり、講習を受ければ誰でも点数が上がるわけではなく、1級を持っている人が資格者証と講習まで揃えたときにだけ、5点の区分ではなく6点の区分として数えられます。2級技術者やその他技術者が同じ講習を受けても、この加点評価の対象にはなりません。

この構造から、会社側の見え方を読み取れることが3つあります。

  • 1級技術者は5点の区分、資格者証と講習まで揃った1級監理受講者は6点の区分として数えられる(国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」p.1/国土交通省 中部地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求の手引き」p.15)
  • 講習は誰が受けても点数になるわけではなく、1級を持っている人が受けたときにだけ区分が変わる(国土交通省 中部地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求の手引き」p.15)
  • 技術職員数を含むZのウェイトは0.25で、最高点2,441点・最低点456点の幅がある(国土交通省「参考資料集 令和8年4月3日」p.121)

注意しておきたいのは、この点数が給与にいくら反映されるかを示した公表資料を、今回の調べた範囲では確認できなかったということです。資格手当の相場を示す一次情報も見つかりませんでした。ですから「6点だから月いくら上乗せされるはず」という話にはできません。それでも、資格区分ごとに点数が定められているという仕組みそのものは、待遇の話をするときに感覚論より扱いやすい材料になると考えています。

経営事項審査そのものの評点項目や申請の流れは、こちらにまとめています。

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受かっただけでは足りない場面がある(資格者証と講習)

前の章の6点の条件にも出てきた資格者証と講習は、経審だけの話ではありません。現場に選任されるための条件でもあります。建設業法 第26条第5項(e-Gov法令検索)は、専任の者でなければならない監理技術者について、監理技術者資格者証の交付を受けている者で、かつ国土交通大臣の登録を受けた講習を受講したもののうちから選任しなければならない、と定めています。検定に合格しただけでは、専任が必要な現場の監理技術者としては選任できない、ということです。

現場での扱いも条文にあります。建設業法 第26条第6項(e-Gov法令検索)は、選任された監理技術者は発注者から請求があったときは監理技術者資格者証を提示しなければならないと定めています。提示を求められる場面が制度として想定されているので、請求されたときにすぐ提示できる状態で持っておく必要があります。

期限は2種類あり、混同しやすいところです。まず資格者証について、建設業法 第27条の18第4項(e-Gov法令検索)は「資格者証の有効期間は、五年とする。」と定めています。もう1つが講習側で、建設業法施行規則 第17条の21(e-Gov法令検索・見出し「講習の受講」)は、選任されている監理技術者は当該選任の期間中のいずれの日においても、登録を受けた講習を受講した日の属する年の翌年から起算して5年を経過しない者でなければならない、としています。2つの5年は別々に走っていて、講習の方には「選任されている期間中のどの日を切り取っても」という条件が付きます。

ここまでを段階で並べると、こうなります。

  • 1級技術検定に合格する(監理技術者の技術者要件のうち、一級国家資格者に該当する。国土交通省「技術者制度の概要(参考資料1)」令和5年12月22日 p.6)
  • 監理技術者資格者証の交付を受ける(有効期間は5年・建設業法 第27条の18第4項)
  • 国土交通大臣の登録を受けた講習を受講する(建設業法 第26条第5項)
  • ここまで揃って、専任が必要な現場の監理技術者として選任でき、経営事項審査でも6点の区分になる(国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」p.1/国土交通省 中部地方整備局「経営規模等評価申請・総合評定値請求の手引き」p.15)

受講料や実施機関、申請の手順は今回の一次情報の確認範囲外なので、この記事では触れません。ただ、転職の場面で自分の状態を説明するときは「1級を持っている」で止めず、資格者証と講習がどこまで揃っているかまで言えた方が、相手の判断は早いはずです。会社が確認したいのは、合格の事実ではなく、明日その現場に選任できるかどうかだからです。

求人票の数字を、公的統計と突き合わせて読む

年収の話に入る前に、断っておくことがあります。厚生労働省の賃金の統計に「建築施工管理技術者」という職種名はありません。近い区分は「建築技術者」ですが、これは建築施工管理に限定された区分ではありません。以下の数字は、建築施工管理という職種そのものの数字ではない、という前提で読んでください。

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表の「建築技術者」(男女計・企業規模計10人以上)は、次のとおりです。

項目
年齢 43.6歳
勤続年数 12.9年
所定内実労働時間数 163時間
超過実労働時間数 17時間
きまって支給する現金給与額 434.7千円
所定内給与額 387.1千円
年間賞与その他特別給与額 1,200.0千円
労働者数 412,760人

※厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表(産業計・企業規模計10人以上)。同表の男は年齢44.6歳・きまって支給する現金給与額450.7千円・所定内給与額401.4千円・年間賞与その他特別給与額1,256.2千円、女は年齢37.2歳・きまって支給する現金給与額331.8千円・所定内給与額295.0千円・年間賞与その他特別給与額838.8千円。

ここで大事なのは、この表に「平均年収」という項目が無いことです。載っているのは月々のきまって支給する現金給与額と所定内給与額、そして年間賞与その他特別給与額であって、それを足したり掛けたりして年収にする作業を調査の側はやっていません。解説記事でよく見る「平均年収◯◯万円」は、誰かが何らかの前提で換算した数字であって、統計にそう書いてあるわけではない、ということです。この記事では換算しません。超過実労働時間数が17時間と別項目で示されている点も、額面を比べるときには効いてきます。

この統計に載っている求人と求職の比なら、職業分類の一次データで確認できます。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)」参考統計表 p.7 によると、全国計・常用(パート含む)の令和8年5月は、「建築・土木・測量技術者」が新規求人18,064・有効求人58,234に対して新規求職2,402・有効求職12,016で、新規求人倍率7.52倍・有効求人倍率4.85倍。同じ月の職業計は新規1.77倍・有効0.99倍です。倍率は求人数を求職者数で割った値なので、求人が多いのか求職者が少ないのかは倍率だけでは分かれません。数字はいずれもこの統計が対象としている求人・求職に限ったもので、世の中の求人全部を数えたものではありません。同資料 p.9 の全国計・常用(除パート)では、「建築・土木・測量技術者」が新規9.39倍・有効6.05倍、職業計が新規1.95倍・有効1.11倍となっています。なお同資料 p.7・p.9 には「(注)上記の数値は、平成21年12月改定の「日本標準職業分類」に基づく区分である。」と記載があり、この区分も建築施工管理だけを取り出したものではありません。

数字の読み方として、押さえておきたいのは次の点です。

  • 「建築技術者」も「建築・土木・測量技術者」も、建築施工管理に限定された区分ではない
  • 賃金は月額と年間賞与が別々に公表されており、年収という項目は存在しない
  • 求人倍率は常用(パート含む)と常用(除パート)で系列が分かれ、除パートの方が高く出ている
  • 令和8年5月の職業計は有効求人倍率0.99倍(含パート)・1.11倍(除パート)で、技術者区分はその数倍の水準にある

つまり求人票の年収レンジは、統計上の相場ではなく、その会社がその求人に付けた募集条件です。統計が教えてくれるのは「この統計に載っている範囲では、求人と求職の比が職業計より高い」という環境の話までで、あなたの適正額を決めてくれるものではありません。この2つを分けて読めれば、レンジの上限だけを見て一喜一憂することは減るはずです。

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1人が見られる現場の数が変わった=需要の形も変わる

需要は法律で決まっている、と最初に書きましたが、その専任の原則にはいくつも例外が用意されています。制度の方向としては、国土交通省「参考資料集 令和8年4月3日」p.8 が「第三次・担い手3法(令和6年改正)の全体像」の項目として「●現場技術者の配置合理化」を挙げています。ここでは、そのうち3つを取り上げます。どの例外がこの項目に含まれるかまでは同資料に書かれていないので、改正の内訳としてではなく現行制度の整理として読んでください。

1つめが、現場どうしの兼任です。建設業法 第26条第3項第1号は、イ・ロ・ハの要件を全部満たすことを前提にした例外で、ここで扱うのはそのうちイの金額要件です(ロは工事現場間の移動時間や連絡方法についての国土交通省令の要件、ハは情報通信技術を利用する方法で職務を行うための措置で、いずれも中身はこの記事では扱いません)。その第1号のイを受けて、建設業法施行令 第28条(e-Gov法令検索)は「法第二十六条第三項第一号イの政令で定める金額は、一億円とする。ただし、当該建設工事が建築一式工事である場合においては、二億円とする。」と定めています。置ける現場の数のほうは、建設業法 第26条第4項を受けた建設業法施行令 第30条(見出し「同一の主任技術者又は監理技術者を置くことができる工事現場の数」)が二としています。金額の向きについては、建設業法 第26条第3項第1号イ(e-Gov法令検索)が「当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。」と定めているので、1億円(建築一式工事は2億円)に達しない工事が対象です。

2つめが、営業所と現場のあいだの兼務です。建設業法 第26条の5(e-Gov法令検索)は、一定の要件を満たす場合に、営業所技術者には主任技術者の職務を、特定営業所技術者には主任技術者または監理技術者の職務を兼ねて行わせることができると定めています。営業所技術者と特定営業所技術者で兼ねられる職務の範囲が違うのが条文の書き方です。金額の向きは建設業法 第26条の5第1項第2号(e-Gov法令検索)が「当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。」と定めており、その金額は建設業法施行令 第33条(見出し「法第二十六条の五第一項第二号の金額」)で1億円(建築一式工事は2億円)、現場数は同 第34条(見出し「営業所技術者等が主任技術者又は監理技術者の職務を兼ねることができる工事現場の数」)で1です。金額は1つめと同じ水準で、現場数の上限が違います。

3つめが、補佐する者を置く場合の例外です。建設業法 第26条第3項第2号(e-Gov法令検索)は、工事現場に監理技術者の職務を補佐する者として政令で定める者を専任で置く場合の監理技術者を、専任義務の対象から外しています。その「政令で定める者」を定めているのが建設業法施行令 第29条(見出し「監理技術者の行うべき職務を補佐する者」)です。なお建設業法 第26条第4項は、第3項ただし書について「同項各号の建設工事の工事現場の数が(…)政令で定める数を超えるとき」と書いており、1号と2号のどちらの例外にも工事現場の数の制限(建設業法施行令 第30条=二)が掛かります。経営事項審査の側では「監理技術者補佐」という区分に4点が置かれています(国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」p.1)。

制度の側の整理は次のとおりです。

  • 現場どうしの兼任で政令が定めているのは、1件の請負代金が1億円(建築一式工事は2億円)未満であることと、現場数2までの2つ(建設業法施行令 第28条・第30条)。要件はこれだけではなく、法 第26条第3項第1号のロ・ハも同時に満たす必要がある
  • 営業所技術者等が現場の職務を兼ねる場合も同じで、政令が定めているのは1件の請負代金が1億円(建築一式工事は2億円)未満であることと現場数1(建設業法施行令 第33条・第34条)。法 第26条の5第1項は「次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合」と書いており、要件は4号ある
  • 補佐する者を専任で置く場合、その監理技術者は専任義務の対象から外れる(建設業法 第26条第3項第2号・建設業法施行令 第29条)。この場合も工事現場の数の上限は掛かる(建設業法 第26条第4項・建設業法施行令 第30条=二)
  • 制度の方向としては、第三次・担い手3法(令和6年改正)の全体像に「現場技術者の配置合理化」という項目が挙がっている(国土交通省「参考資料集 令和8年4月3日」p.8)

個別の工事が要件を満たすかどうかは、いま見たとおり金額と現場数だけでは決まりません。ここで言いたいのは判定の話ではありません。1人の1級技術者が2現場まで見られる制度があるなら、会社にとっての1人の価値は「1現場ぶん」ではなくなる、という採る側の計算の話です。

なお、ここで扱ったのは技術者の配置に関する条文で、労働時間や賃金を定めたものではありません。残業がどうなるかを説明してくれる条文はここには無い、と切り分けておいてください。「自分が抜けたら現場が回らない」という引け目についても、条文が言えるのは「条件を満たす場合にかぎって、専任の例外が用意されている」ところまでです。

現場代理人の常駐や兼任の扱いは、こちらで整理しています。

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動くかどうかの前に、変えたい軸を1つ決める

ここまで書いてきたのは全部「なぜ評価されるのか」の話で、「どこへ行けばいいか」の答えではありません。配置義務も経審の点数も、あなたを欲しがる会社が一定数ある理由は説明してくれますが、そのうちどれがあなたにとって良い会社かまでは決めてくれません。

1級を取っても「引く手あまた」の実感がないのは、動いていないからではなく、自分が何を変えたいのかがまだ決まっていないからかもしれません。建築・土木・測量技術者の有効求人倍率4.85倍(厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)」参考統計表 p.7・全国計・常用(パート含む)・令和8年5月)はあくまで職業分類全体の話で、あなたが年収を上げたいのか、拘束時間を減らしたいのか、施工管理という職種そのものを変えたいのかまでは教えてくれません。その3つの軸ごとに転職サービスの向き不向きを整理した記事を別に用意しているので、まずは自分がどの軸を動かしたいのかを決めるところから読んでみてください。

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軸の決め方は、次の3つのどれを最優先にするかを1つだけ選ぶ、というやり方が現実的です。

  • 年収を上げたい(そのぶん任される規模や責任が上がる前提で考える)
  • 拘束時間を変えたい(専任が必要な現場に張り付く働き方から離れられるかを見る)
  • 職種そのものを変えたい(施工管理の経験をどこまで持ち出せるかを見る)

年齢で可否を決めつける材料は、公表統計の側にはありません。厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表の「建築技術者」は年齢43.6歳・勤続年数12.9年で、母集団そのものが40代を中心に構成されています。40代で動けるかどうかは、その人の経験と、受け入れ側がどの区分の技術者を必要としているかで決まる話であって、統計から一般化できることではない、というのが僕のスタンスです。

そもそも行き先の選択肢を並べて考えたい場合は、こちらから入ると整理しやすくなります。

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1級建築施工管理技士の求人・転職に関する情報まとめ

  • 求人が途切れない理由:建設業法 第26条第2項の監理技術者の配置義務と、その要件に1級施工管理技士が入っていること
  • 金額の線:監理技術者は下請合計5,000万円(建築工事業8,000万円)、専任は請負代金4,500万円(建築一式9,000万円)。令和7年2月1日に引き上げ済み
  • 会社側の損得:経営事項審査の総合評定値ではZのウェイトが0.25、技術職員数(Z1)で1級技術者は5点の区分
  • 資格者証と講習:専任の監理技術者は資格者証と登録講習の受講者から選任。資格者証の有効期間は5年、講習にも5年の条件があり、揃って6点の区分になる
  • 統計の読み方:賃金構造基本統計調査に「平均年収」という項目は無く、職種名も「建築技術者」。月額と年間賞与が別々に公表されている
  • 求人と求職の比:令和8年5月の建築・土木・測量技術者は有効求人倍率4.85倍(全国計・常用・パート含む)で、職業計0.99倍と差がある。この統計が対象としている求人・求職に限った数字
  • 配置の合理化:現場どうしの兼任は現場数2、営業所技術者等の兼務は現場数1、監理技術者補佐を専任で置けば専任義務の対象外
  • 動く前に決めること:年収か、拘束時間か、職種か。最優先の1つだけを先に選ぶ

以上が1級建築施工管理技士の求人・転職に関する情報のまとめです。

まずやることは、求人を眺めることではなく、自分の状態を条文の言葉で書き出すことだと思います。1級に合格しているのか、資格者証の交付まで受けているのか、講習は何年に受けたのか。この3つが揃っていれば専任の監理技術者として選任でき、経営事項審査でも6点の区分になります。揃っていないなら、転職より先に埋めた方が交渉が楽になる場合もあります。制度が求人を作っている以上、制度の言葉で自分を説明できる人のほうが、話は早く進みます。

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