- 防塵マスクって結局どれを買えばいいの?
- DS2とかRL2とか、あの記号の意味が毎回分からなくなる
- 使い捨てと取替え式、現場でどっちを配ればいい?
- 石綿とか溶接のときだけ特別なの?
- フィットテストって全部の現場でやらないといけない?
- ろ過材っていつ交換させるのが正解?
- 元請として何を用意して何を記録すればいいの?
上記の様な悩みを解決します。
防塵マスクは、DS2・RL2といった記号や1〜3級の区分が分かりにくく、毎回「この作業ならどれを配ればいいのか」で止まってしまう分野です。しかも令和5年5月25日の通達(基発0525第3号)で選び方の基準が更新され、古い情報が今も残っています。今回は12区分の読み方から、使い捨てと取替え式の使い分け、ろ過材の交換、元請として残す記録までを整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
防塵マスクとは?
防塵マスクとは、結論「空気中の粉じんをろ過材で取り除いて吸い込む、ろ過式の呼吸用保護具」のことです。
法令上の表記は「防じんマスク」で、労働安全衛生法第42条に基づく「防じんマスクの規格」(昭和63年労働省告示第19号)に構造や性能が定められています。現場で「防塵マスク」と書かれることも多いですが、指しているものは同じです。安全書類や施工計画書に書くときは、法令に合わせて「防じんマスク」の表記にしておくと後で指摘を受けにくくなります。
似た見た目のものとの違いをはっきりさせておきます。ホームセンターで売っている不織布マスクやサージカルマスクは、この規格の対象ではありません。防じんマスクは国の型式検定に合格したものだけが譲渡・使用できる仕組みになっていて、そこが決定的に違います。見た目がカップ型で似ていても、検定を通っていないものは法令が求める呼吸用保護具になりません。
防毒マスクとの違いも押さえておきたいところです。防じんマスクが取れるのは粉じんやミストといった粒子で、有害なガスや蒸気は取れません。溶剤の臭いがする改修現場で防じんマスクを配っても、有機溶剤には無効です。ガスや蒸気があるなら防毒マスクや送気マスクに切り替える判断が必要になります。
着用が義務か任意かという疑問については、法令で指定された作業では義務、という答えになります。次のような規定があり、対象作業では「有効な性能を有するもの」を労働者に使用させなければなりません。
- 粉じん障害防止規則第27条:ずい道内などの作業で呼吸用保護具の使用が義務づけられています
- 石綿障害予防規則第14条:石綿等を取り扱う作業について、使う呼吸用保護具の種類まで定められています
- 特定化学物質障害予防規則第38条の21・第43条:金属アーク溶接等作業などが対象になります
- 鉛則第58条/電離則第38条/安衛則第592条の5:鉛業務、放射性物質がこぼれたとき等による汚染のおそれがある区域内の作業や緊急作業、廃棄物の焼却施設に係る作業でダイオキシン類の粉じんばく露のおそれがある作業が対象です
逆に、防じんマスクを使ってはいけない場所もあります。ここは事故に直結するので必ず押さえてください。酸素濃度18%未満、またはそのおそれのある場所では、ろ過式は使用できません。空気中の酸素をろ過して増やすことはできないためです。有害物質の濃度が不明な場所も同じで、ろ過式は選べません。酸欠のおそれがある場所では、指定防護係数1000以上の全面形面体を有する給気式呼吸用保護具(空気呼吸器やエアラインマスク等)を選びます。有毒ガスがある場所なら防毒マスク等に切り替えます。
酸素欠乏の危険がある作業の全体像はこちらが詳しいです。

僕の感覚だと、防じんマスクで一番危ないのは「マスクを着けているから安心」という思い込みです。ろ過式は空気中の酸素を作れないし、ガスも取れません。ピット内や地下タンク、長期間閉じていた地下室のように濃度が読めない場所もあります。マスクの区分を悩む前に「ろ過式で入っていい場所なのか」を先に判断する順番が正解です。
防塵マスクの規格と12の区分
防じんマスクの区分は、告示第19号で全部で12種類に整理されています。取替え式がRS1・RS2・RS3・RL1・RL2・RL3の6区分、使い捨て式がDS1・DS2・DS3・DL1・DL2・DL3の6区分です。
記号は3つの情報を並べただけなので、分解すると一気に読めるようになります。
- 1文字目のRは取替え式(Replaceable)、Dは使い捨て式(Disposable)を表します
- 2文字目のSは、試験粒子が塩化ナトリウム、つまり固体粒子で試験されたことを表します
- 2文字目のLは、試験粒子がフタル酸ジオクチル、つまり液体粒子で試験されたことを表します
- 末尾の数字は等級で、1級・2級・3級の順に粒子捕集効率が高くなります
Lタイプは液体粒子で試験されているので、切削油やオイルミストが出る作業を想定した区分だと理解しておくと選定を間違えにくくなります。DS2とDL2の違いも、まさにここです。捕集効率の等級は同じ2級でも、試験に使われた粒子が固体か液体かが違います。
粒子捕集効率は等級で決まる
粒子捕集効率は告示第19号の第六条で定められていて、1級が80.0%以上、2級が95.0%以上、3級が99.9%以上です。この数字はS・L・R・Dのどの組み合わせでも共通で、等級だけで決まります。試験粒子の条件も決まっていて、塩化ナトリウムは粒径分布の中央値が0.06〜0.1μm、フタル酸ジオクチルは0.15〜0.25μmです。
「2級で足りるのか3級か」で迷うときは、この80.0%・95.0%・99.9%という3段階が判断材料になります。ただし後述するとおり、法令や通達で「2級以上」と要求される作業があるので、そちらが優先されます。
等級を上げると息が苦しくなる
見落とされがちですが、規格では吸気抵抗の上限も等級ごとに決められています。等級が上がるほど上限の数字も大きくなり、それはつまり呼吸が重くなる方向に許容されているという意味です。
| 種類 | 区分 | 吸気抵抗の上限 | 排気弁のないもの |
|---|---|---|---|
| 取替え式(吸気補助具なし) | RS1/RL1 | 70Pa | — |
| 取替え式(吸気補助具なし) | RS2/RL2 | 80Pa | — |
| 取替え式(吸気補助具なし) | RS3/RL3 | 160Pa | — |
| 使い捨て式 | DS1/DL1 | 60Pa | 45Pa |
| 使い捨て式 | DS2/DL2 | 70Pa | 50Pa |
| 使い捨て式 | DS3/DL3 | 150Pa | 100Pa |
RS2の80Paに対してRS3は160Paで、上限が倍になります。使い捨て式でもDS2の70PaからDS3の150Paへ跳ねます。必要以上に高い等級を配ると、職人が「息ができない」と言って外す方向に働くわけで、これは気合いの問題ではなく規格上の構造です。ちなみに二酸化炭素濃度上昇値を1.0%以下にする条件も規格にあります。
N95表記だけでは法令上の要求を満たさない
N95の方が性能がいいのではないか、という疑問はよく出ます。結論としては、性能の水準として近いものはありますが、法令上の要求を満たしたことにはなりません。
N95はアメリカのNIOSHの規格で、日本の法令が求めているのは国家検定に合格した防じんマスクです。捕集効率の水準としては、N95はDS2やDL2の95.0%と近い位置にあります。ただ「N95相当」と書いてあるだけの製品を現場に配ると、粉じん則や特化則が求める呼吸用保護具を使わせたことにならない可能性が出てきます。買うときは日本の区分表記が入っているかを先に見るのが安全です。
正直なところ、この誤解は感染症対策でN95という言葉が一般化してから増えたと感じます。医療の文脈で有名になった規格なので、性能が高いイメージが先に立ちます。ただ施工管理が見るべきは「DS2以上か」「型式検定に合格しているか」という日本の枠組みの方です。
使い捨て式と取替え式の違い
使い捨て式と取替え式の一番大きな違いは、ろ過材を交換できるかどうかと、上げられる防護性能の上限です。
| 比較項目 | 使い捨て式 | 取替え式 |
|---|---|---|
| 区分の記号 | DS1〜DS3/DL1〜DL3 | RS1〜RS3/RL1〜RL3 |
| ろ過材 | 面体と一体で交換できない | ろ過材だけを取り替えられる |
| 種類の区分 | 使い捨て式防じんマスク | 隔離式・直結式、さらに吸気補助具付きとそれ以外 |
| 面体の形 | 半面形が中心 | 全面形と半面形がある |
| 指定防護係数の上限 | 10 | 全面形面体で50 |
| 使用限度時間の表示 | 義務あり | なし |
| 添付書類の漏れ率・ぬれ抵抗値 | 記載あり | 記載なし |
告示第19号では、取替え式は隔離式と直結式に分かれ、さらに吸気補助具付きとそれ以外に分かれます。面体の形は、顔面全体を覆う全面形と、鼻及び口辺のみを覆う半面形の2つです。
構造の要件も種類ごとに違います。取替え式には、ろ過材・吸気弁・排気弁・しめひもが容易に取り替えられること、着用者自身が随時容易に密着性を検査できることが求められています。使い捨て式には、使用限度時間中に型くずれしないこと、漏れ率とぬれ抵抗値が著しく大きくないことが求められています。
国家検定合格品はここを見れば分かる
型式検定に合格した防じんマスクには、型式検定合格標章が付いています。これが付いていないものは、そもそも譲渡・使用できません。吸気補助具付き防じんマスクの場合は、標章に「補」の記載が入ります。
注意したいのは、標章が2箇所に付いている場合です。この場合は型式検定合格番号が同一の組合せで使って初めて有効になります。面体はA社、ろ過材はB社の安いもの、という組み合わせをすると、検定に合格した状態で使っていることにならないわけです。現場で余ったフィルターを別メーカーの面体に流用しないよう、資材の管理段階で分けておくのが無難です。
表示が義務づけられている項目も決まっています(告示第19号 第七条)。
- 製造者名:どこが作ったものかが分かります
- 製造年月:長期在庫品を配っていないかの判断材料になります
- 型式の名称:型式検定合格標章と突き合わせるときに使います
- 使用限度時間:使い捨て式にだけ表示されます
さらに、譲渡・貸与のときに添付される印刷物にも記載項目が決まっています。使用の範囲、使用上の注意事項、吸気抵抗上昇値、騒音の程度(吸気補助具付きのみ)が入ります。加えて、漏れ率とぬれ抵抗値(いずれも使い捨て式のみ)、密着性を容易に検査する方法も記載されます。この紙は捨てられがちですが、後述するろ過材の交換時期を設定するときの根拠になるので、現場事務所で1部保管しておくと後が楽です。
作業強度が高いならPAPRや送気マスクも検討する
通達では、作業強度が高い場合について、吸気抵抗や排気抵抗の問題がない電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)や送気マスクの使用を検討することが求められています。はつりや解体のように体力を使う作業で、なおかつ高い等級が必要な場面では、防じんマスクの等級を上げるより先にこちらを検討する筋道があるということです。
作業強度が高い代表格であるはつりの進め方はこちらが参考になります。

現場目線で言えば、使い捨てと取替え式の選択は「1日で捨てる前提の作業か」「同じ作業員が数週間続けて入る作業か」で切るのが実務的です。短期の立入りや来客・監督員用なら、使い捨て式をまとめて置いておく方が管理が軽くなります。内装解体のように同じ職人が連日入る作業なら、取替え式にしてろ過材を回す方が性能も費用も落ち着きます。
作業別の防塵マスクの選び方
作業別の選び方は、令和5年5月25日の通達(基発0525第3号)で考え方が整理されました。順番としては、作業環境中の濃度を測り、要求防護係数を計算し、それを上回る指定防護係数を持つ呼吸用保護具を選ぶ、という流れです。
要求防護係数は「作業環境中の有害物質の濃度 ÷ 目標とする濃度」で求めます。この数字を上回る指定防護係数のものを選べば、性能面では条件を満たしたことになります。ここで大事なのは、多くの記事が今も引用している平成17年2月7日の通達(基発第0207006号)はこの通達で廃止されているという点です。検索して出てきた解説が古い通達ベースだと、選び方の枠組み自体が違ってきます。
指定防護係数の一覧
指定防護係数は通達の別表1で決まっています。防じんマスクに関係する部分を抜き出します。
| 種類 | 面体の形 | ろ過材の区分 | 指定防護係数 |
|---|---|---|---|
| 取替え式 | 全面形面体 | RS3/RL3 | 50 |
| 取替え式 | 全面形面体 | RS2/RL2 | 14 |
| 取替え式 | 全面形面体 | RS1/RL1 | 4 |
| 取替え式 | 半面形面体 | RS3/RL3 | 10 |
| 取替え式 | 半面形面体 | RS2/RL2 | 10 |
| 取替え式 | 半面形面体 | RS1/RL1 | 4 |
| 使い捨て式 | — | DS3/DL3 | 10 |
| 使い捨て式 | — | DS2/DL2 | 10 |
| 使い捨て式 | — | DS1/DL1 | 4 |
| 参考:防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具(P-PAPR) | 面体形・全面形・S級 | PS3/PL3 | 1,000 |
等級を上げても防護係数が上がらない組み合わせがある
この表で一番読み取ってほしいのは、半面形と使い捨て式では3級にしても指定防護係数が10で止まるという点です。RS2/RL2が10、RS3/RL3も10で並びます。使い捨て式もDS2/DL2が10、DS3/DL3も10です。
つまり、半面形や使い捨て式のまま等級だけ上げても、通達の枠組みでは防護係数が伸びません。効率の数字は95.0%から99.9%に上がるのに、選定の指標としては同じ扱いになります。数字を上げたいなら、等級ではなく面体の形やPAPRの方に手を付ける必要があります。全面形面体のRS3/RL3なら50、P-PAPRのPS3/PL3なら1,000です。等級を上げれば吸気抵抗の上限も上がるので、「3級を配って安全にした」つもりが呼吸を苦しくしただけ、という結果になりかねません。
オイルミストが混じる作業はLタイプを選ぶ
切削油やオイルミストが出る作業では、Lタイプ(RL3・RL2・RL1・DL3・DL2・DL1)を選びます。ここでDS2やRS2を配るのは選定ミスです。Sタイプは固体粒子で試験された区分なので、液体粒子が想定に入っていません。
粉じんの有害性が高い場合や、高濃度のばく露のおそれがある場合は、できるだけ粒子捕集効率が高いものを選ぶことも通達で示されています。要求防護係数の計算結果ぎりぎりを狙うより、余裕を持たせる方向で選ぶのが基本の考え方です。
溶接ヒュームは要求防護係数に関係なく2級以上
溶接だけ扱いが別になる理由は、通達で下限が直接示されているからです。根拠になるのは鉛則第58条、特化則第38条の21・第43条、粉じん則第27条です。金属のヒューム(溶接ヒュームを含む)を発散する場所の作業では、算出された要求防護係数の値にかかわらず区分の下限が決まります。ろ過材の種類をRS2・RL2・DS2・DL2以上とすることが通達で示されています。管理濃度が0.1mg/m3以下の物質の粉じんも同じ扱いです。
計算した結果が小さくても1級では足りない、というのがポイントです。溶接を含む工事の作業手順書には、区分を「DS2以上」と書き切ってしまう方が現場は迷いません。
アーク溶接の資格と作業の位置づけはこちらで整理しています。

石綿は作業ごとに種類が指定されている
石綿は「うちはいつもDS2」で通す話ではありません。石綿障害予防規則第14条で、作業ごとに使う呼吸用保護具の種類が決まっています。
負圧隔離養生や隔離養生の内部で石綿等の除去等を行う作業では、防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具(P-PAPR)が指定されています。石綿含有成形板等や石綿含有仕上塗材の除去等を行う作業場で、除去以外の作業を行う場合は取替え式防じんマスク、といった形で作業の種類ごとに紐付いています。内装改修は石綿含有建材に当たる可能性が高い分野なので、事前調査の結果と規則の対応表を突き合わせてから配るものを決める順番になります。
石綿の全体像はこちらが詳しいです。

ずい道等の坑内作業とP-PAPRの注意点
粉じん則第27条では、ずい道等の坑内作業のうち呼吸用保護具の使用が義務づけられている作業があります。ここで気をつけたいのが、雷管取扱作業を含む坑内でのP-PAPRの扱いです。漏電等による爆発の危険があるため、面体形のP-PAPRは作業開始前に安全な場所で電池を取り外してから使う扱いになっています。電動だから高性能、で持ち込むと別のリスクを持ち込むことになります。
防護性能以外に見るところ
通達では、防護性能だけでなく着用者側の条件も見るよう求められています。
- 着用者・作業内容・作業強度・環境を踏まえて選ぶこと
- 呼吸用保護具の着用による心肺機能への影響について産業医等に確認すること
- 閉所恐怖症や、面体との接触による皮膚炎などの可能性についても産業医等に確認すること
- 目の保護が必要な場合は、全面形面体またはルーズフィット形が望ましいこと
実務だと、この「産業医等に確認」の部分が抜けやすいところです。ただ、高齢の職人が全面形を着けて長時間はつりに入る、というような場面では実際に体調の問題が出ます。人を選ばず一律に高性能を配る運用は、性能面では正しくても運用面で破綻しやすいと感じます。
正しい着け方とフィットテスト
着け方については、通達がはっきりNGと書いている使い方が3つあります。まずここを潰すのが早いです。
- 面体と顔の間にタオル等を挟んで使用すること
- 着用者のひげ・もみあげ・前髪等が面体の接顔部と顔面の間に入り込む、排気弁の作動を妨害する等の状態で使用すること
- ヘルメットの上からしめひもを使用すること
ひげを剃らない職人に「規則だから」と言っても動かないことは多いです。接顔部に毛が入り込むと隙間から粉じんが漏れ込むので、マスクの等級を上げても意味がなくなります。ここは性能の話として説明した方が伝わりやすいです。どうしても剃れない場合は、顔との密着を要求しないルーズフィット形やPAPRに変える方が現実的な落とし所になります。
ヘルメットの上からしめひもをかけるのも通達がNGとしている使い方です。しめひもは耳にかけず、後頭部で固定します。ヘルメットの上から回すと締まりが不均一になり、密着が確保できません。
フィットテストは1年以内ごとに1回
フィットテストが全現場で必要かというと、義務として明記されているのは限られた範囲です。金属アーク溶接等作業を行う作業場所、および第三管理区分場所では、1年以内ごとに1回、定期に実施しなければなりません。
それ以外の事業場でも、リスクアセスメントに基づくリスク低減措置として呼吸用保護具を使わせる場合は、1年以内ごとに1回行うことになります。つまり「溶接と第三管理区分だけやればいい」ではなく、リスクアセスメントの結果として保護具に頼っている作業があるなら対象に入ってきます。
やり方としては、面体と顔面の密着の程度を示す係数であるフィットファクタを求め、要求フィットファクタを上回っていることを確認します。要求フィットファクタは別表4で決まっていて、全面形面体は500、半面形面体は100です。全面形の500は定量的フィットテストでしか確認できません。半面形の100は定性的でも定量的でも構わず、定性的フィットテストに合格した場合はフィットファクタ100以上とみなされます。顔との密着を要求しないルーズフィット形は対象外です。
定期のほかに、面体を有する呼吸用保護具を選ぶときや、手術で皮膚にくぼみができたなど顔の変形があったときにも実施することが望ましいとされています。不合格になった場合は、同じ型式で寸法の違う面体、別の型式の面体、ルーズフィット形を検討します。同じマスクで何度もやり直す検査ではなく、その人に合う面体を探すための検査だと考えると位置づけがはっきりします。
フィットテストとシールチェックは別物
混同されやすいので分けて整理します。シールチェックは、取扱説明書に従って着けるたびに行う密着確認です。陰圧法はフィットチェッカー等で吸気口をふさぎ、ゆっくり息を吸って面体が顔面に吸いつくのを確認します。陽圧法は排気口をふさいで息を吐き、面体が膨張するのを確認します。
一方のフィットテストは「その人の顔にその面体が合っているか」を評価して、使う面体を選ぶための検査です。頻度も目的も違います。毎朝のKY・TBMで確認するのはシールチェックの方で、年1回の記録に残すのがフィットテストの方、という整理で覚えておくと混ざりません。
朝礼・KY活動の進め方はこちらが参考になります。

夏場に着けたがらない問題は等級から見直す
夏に外されるという相談は多いですが、精神論で押すより先に配っているものを見直した方が早いです。規格の項で見た吸気抵抗の表のとおり、等級を上げると上限も上がります。RS2の80PaからRS3の160Paへ、DS2の70PaからDS3の150Paへ、上限が倍前後になります。必要以上に高い等級を配れば、呼吸が苦しくなって外される確率が上がるという構造です。
しかも、半面形や使い捨て式では等級を上げても指定防護係数は10で変わりません。息苦しさだけが増えて防護の指標は変わらない、という損な選び方になっている現場は珍しくないと思います。作業強度が高い場合はPAPRや送気マスクを検討するのが通達の考え方なので、暑さで外されるくらいなら電動側に振る判断はありです。熱中症対策とセットで考える話です。
熱中症対策の全体像はこちらで整理しています。

僕としては、着け方の指導は「NGな3つを潰す」「シールチェックを毎回やらせる」の2点に絞るのが続くと感じます。細かい理屈を朝礼で並べても定着しないので、タオルを挟むな、ヘルメットの上からしめひもを回すな、接顔部に毛を挟むな、この3つを言い切る方が現場は動きます。
ろ過材の交換時期と保管、施工管理が残す記録
ろ過材の交換は、時間で機械的に切るのではなく、状態と使用限度時間の両方で判断します。交換または廃棄するタイミングは次のとおりです。
- 破損した場合
- 穴が開いた場合
- 著しい変形を生じた場合
- あらかじめ設定した使用限度時間に達した場合
- 使い捨て式で、息苦しさを感じる場合や著しい型くずれを生じた場合(使用限度時間の前でも廃棄する)
使い捨て式の使い回しを何日まで許すかという疑問には、次のように答えられます。表示された使用限度時間に達する前でも、息苦しさや著しい型くずれがあれば廃棄して交換する、です。「1枚を1週間」のような社内ルールを作るなら、製品の使用限度時間を確認した上で、それより短い側で設定する形が安全です。
オイルミストは吸気抵抗が上がらないので気づけない
固体粒子をろ過材が捕まえると吸気抵抗が上がっていくので、息苦しさが交換のサインになります。ところがオイルミストを捕集した場合は、ほとんど吸気抵抗が上がりません。しかもろ過材の種類によっては、多量のオイルミストを捕集すると粒子捕集効率が低下するものがあります。
つまりLタイプを使う作業では、息苦しさを基準にしていると気づかないまま性能が落ちた状態で使い続けることになります。この場合は製造者の情報に基づいて交換時期を設定します。添付されている印刷物や取扱説明書を保管しておく理由がここです。
圧搾空気で吹く・たたく・洗うはやらせない
ろ過材に付着した粉じんを落とすために圧搾空気を吹きかけたり、たたいたりしてはいけません。ろ過材の破損を招くうえ、捕まえた粉じんを再飛散させることになります。現場では「もったいないから」と反射的にやってしまう職人がいるので、支給時に一言添えておくと防げます。
水洗いして再使用できると取扱説明書に書かれている場合でも、そのまま戻すことはできません。再使用の前に、粒子捕集効率と吸気抵抗が規格値を満たしていることを測定装置で確認する必要があります。現場に測定装置は無いので、実務上は「洗って再使用はしない」という運用になります。
石綿を扱ったろ過材は作業場から持ち出せない
砒素やクロム等の有害性が高い粉じんに使ったろ過材は、1回使用するごとに廃棄します。さらに石綿・インジウムを取り扱う作業で使ったろ過材は、そのまま作業場から持ち出すことが禁止されているので、1回使用するごとに廃棄します。
職人が石綿の作業で使ったフィルターを持ち帰る、というのは論外です。持ち出し自体が禁止されているので、隔離区域から出る動線に廃棄容器を置いて、その場で捨てさせる段取りを作業計画に入れておく必要があります。
しめひも・弁の交換と保管方法
ろ過材以外の部品にも交換の基準があります。しめひもは、破損した場合や、弾性が失われて伸縮不良になった場合に交換します。呼吸用インタフェース・吸気弁・排気弁は、破損・亀裂・著しい変形・粘着性が認められた場合に交換します。ゴムが伸びきったマスクを使い続けると、いくら区分が合っていても密着しません。
保管は、点検した後、直射日光の当たらない湿気の少ない清潔な場所に専用の保管場所を設け、管理状況が容易に確認できるように保管します。現場事務所の段ボールに雑に放り込む運用だと、点検済みかどうかも分からなくなるので、専用の棚か箱を1つ決めてしまうのが実務的です。
元請・施工管理は何を指定して何を残すか
ここが一番混乱しやすい部分なので整理します。呼吸用保護具を使わせる義務は、労働安全衛生法令上、労働者を雇用する事業者にあります。下請の作業員に使わせるのは、その下請事業者の義務です。元請が下請の作業員に直接義務を負う構図ではありません。
ただ、それで放っておくと現場では「安いから買ってきた」が通ってしまいます。作業計画や作業手順書のうえで元請として区分を指定し、持ち込まれたものがその区分になっているか、型式検定合格標章があるかを確認する運用にしておく必要があります。区分を指定していない現場で不適合品が出てくるのは、ほぼ必然です。
通達では、保護具着用管理責任者を選任し、次のことをさせることが求められています。呼吸用保護具の選択・使用・保守管理についての指導、着用者への教育・訓練、密着性の確認方法の教育です。あわせて、安衛則第577条の2第11項に基づく有害物質のばく露の状況の記録を把握させることも示されています。それを踏まえた保守管理を行わせる、という並びです。さらに、事前の計画どおりの呼吸用保護具が使われているか、着用方法が適切かを保護具着用管理責任者に確認させることも通達に書かれています。
残す記録としては、作業ごとに指定した区分、フィットテストの実施記録、ばく露の状況の記録が軸になります。KY・TBMで着け方まで確認したことを記録に残しておけば、指導した事実の裏付けにもなります。
個人的には、区分の指定を作業手順書に書き込んでしまうのが一番効くと思っています。「防じんマスク着用」だけでは何が来るか分かりません。「防じんマスク(DL2以上・取替え式半面形)着用」と書いてあれば、持ち込まれたものが違った時点で気づけます。書類を1行変えるだけなので、明日から手を付けられる部分です。
現場でそろえる防じんマスクと交換用ろ過材
必要な区分が決まれば、探すのは「区分表記」と「ろ過材」の2つだけです。
内装解体やはつりで実際に選ばれる中心は、使い捨て式ならDS2/DL2(指定防護係数10)、取替え式半面形ならRS2/RL2(同10)です。通販で探すときは、商品名かスペック欄の区分表記と国家検定合格品の記載を先に確認しておくと、N95表記だけの製品や1級品との取り違えを避けられます。取替え式にした場合は、ろ過材(フィルター)を交換分までまとめて手配しておくと、現場で「交換させたいのに在庫がない」状態を作らずに済みます。
区分が決まっている状態なら、あとは必要数とろ過材の在庫・価格を見比べるだけです。
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| そろえるもの | 楽天市場 | Amazon |
|---|---|---|
| 防じんマスク本体(区分表記で絞る) | 楽天市場で防じんマスクを見る | Amazonで防じんマスクを見る |
| 交換用ろ過材(フィルター) | 楽天市場で交換用ろ過材を見る | Amazonで交換用ろ過材を見る |
防塵マスクに関する情報まとめ
- 定義:空気中の粉じんをろ過材で取り除くろ過式の呼吸用保護具。法令上は「防じんマスク」で、酸素18%未満や濃度不明の場所では使えない
- 規格と12区分:取替え式RS/RL 1〜3級と使い捨て式DS/DL 1〜3級。Rは取替え式、Dは使い捨て式、Sは固体粒子、Lは液体粒子、数字が等級(1級80.0%/2級95.0%/3級99.9%以上)
- 使い捨て式と取替え式:ろ過材を交換できるか、全面形にできるかが分かれ目。国家検定合格品は型式検定合格標章で確認し、標章2箇所なら合格番号が同一の組合せで使う
- 作業別の選び方:令和5年の基発0525第3号で要求防護係数と指定防護係数による選定に整理された。溶接ヒュームは要求防護係数によらず2級以上、石綿は石綿則第14条で作業ごとに種類が指定される
- 着け方とフィットテスト:タオル挟み・接顔部への毛の入り込み・ヘルメットの上からのしめひもはNG。溶接等作業と第三管理区分場所は1年以内ごとに1回、要求フィットファクタは全面形500・半面形100
- ろ過材と記録:破損・穴・変形・使用限度時間で交換。オイルミストは抵抗が上がらないので製造者情報で交換時期を決める。石綿のろ過材は作業場から持ち出し禁止。元請は区分を指定し、保護具着用管理責任者に確認・教育・記録把握をさせる
以上が防塵マスクに関する情報のまとめです。
この記事で一番押さえてほしいのは、等級を上げれば安全になるという発想が指定防護係数の表では成立しないところです。半面形と使い捨て式は2級も3級も10で並ぶ一方、吸気抵抗の上限だけは倍近くに増えます。防護を上げたいなら面体の形かPAPRに手を付ける、これが1本目です。法令が下限を決めている作業(溶接ヒュームの2級以上、石綿の作業別指定)はその指示に従う、これが2本目です。この2本立てで考えると、作業手順書に書く区分を自分の判断で決められるようになります。
次の一歩
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保護具の選定や呼吸用保護具の管理は、施工管理技士の試験でも安全衛生管理の分野として問われる範囲です。完全な独学だと何から手を付けるか分からない、という人には、独学に添削と学習計画を足す形の講座もあります。料金や対応する資格は各公式サイトで確認してください。
