- ハツリって結局どういう作業なの?
- 漢字でどう書くの(斫り)?解体とは違う?
- 種類はどれくらいあって、何が違う?
- どんなときに必要になるの?
- 手作業?重機も使う?道具は何?
- なんでハツリは「良くない」って言われるの?
- 構造体をハツって、鉄筋やかぶりは大丈夫?
- ハツリを減らすにはどうすればいい?
上記の様な悩みを解決します。
ハツリは現場でよく耳にする作業ですが、施工管理の立場で見ると「やり方」だけでなく「なぜできれば避けたいのか」「どうすれば発生を減らせるか」まで理解しておくべき作業です。特に構造体に手を入れるハツリは、鉄筋やかぶりを傷めると建物の強度・耐久性に関わります。今回は定義・種類・必要なタイミング・方法といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「ハツリが良くない理由」「ハツリを減らす段取り」「構造に関わるハツリの判断」まで、よくある質問も交えて網羅的に整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ハツリとは?
ハツリとは、結論「コンクリートや舗装を削ったり、壊したり、穴を開けたりして加工する作業の総称」のことです。
漢字では「斫り」と書きます。建物全体を取り壊す解体とは違い、特定の箇所だけをピンポイントで加工するのがハツリです。対象は一戸建て・マンション・ビル・道路など、コンクリートで造られたものすべてに及びます。
解体との違いを整理すると、解体は建物や構造物をまとめて壊す大規模作業、ハツリは部分的にコンクリートを削る・壊す・整える小規模作業、という関係です。重機で一気に壊す解体に対し、ハツリは手作業中心で、細かい調整や仕上げまで含む点が特徴です。
僕の整理では、ハツリは「壊す作業」というより「コンクリートを部分的に加工する作業」と捉えると、後で出てくる仕上げハツリや調整ハツリまで違和感なく入ってきます。壊すだけでなく、整える・合わせるための作業でもある、という幅広さがハツリの実態です。
コア抜きとの違い
ハツリと混同されやすいのがコア抜きです。コア抜きは、コアドリル(円筒状の刃)でコンクリートに丸い穴をきれいに開ける作業で、配管・スリーブの貫通などに使います。打撃で砕くハツリに対し、コア抜きは回転切削で「狙った径の穴を低騒音で開ける」のが特徴です。どちらも打設後のコンクリートに手を入れる点は同じですが、開口が円形で寸法精度が要るならコア抜き、不定形に削る・壊すならハツリ、という使い分けになります。いずれの場合も、鉄筋を切らないよう位置を確認してから施工するのが大原則です。
ハツリの種類
ハツリは作業の目的によって、大きく3種類に分けられます。それぞれ使う道具も作業の性格も違います。
- はつりこわし工事:コンクリート部分を破砕して壊す工事。主に解体作業の中で行い、重機を使うことも多い
- コンクリートはつり工事:窓枠の設置などのために、コンクリートを削って位置やすき間を調整する工事
- はつり仕上げ工事:コンクリート表面を工具で加工し、模様や質感を出す仕上げの工事。熟練を要する
はつりこわしは「壊す」、コンクリートはつりは「調整する」、はつり仕上げは「仕上げる」、と目的で覚えると区別しやすいです。同じ「ハツリ」でも、解体現場で構造体を砕く作業と、内装の仕上げで表面を整える作業では、まったく性格が異なります。はつり仕上げは見栄えを左右する繊細な作業のため、熟練した作業者が手作業で行うのが一般的です。
個人的には、施工管理として現場でやり取りするハツリの多くは、こわしと調整の中間、つまり「干渉する部分や不要な部分を削る作業」だと感じます。次の章で見る通り、これが「良くない理由」の話にもつながってきます。
ハツリが必要なタイミング
ハツリが必要になる場面は、実は「望んで行うもの」と「やむを得ず行うもの」に分かれます。結論、施工管理として遭遇するハツリの多くは後者です。
主なケースを挙げます。
- 舗装道路の補修:ひび割れた部分のアスファルト・コンクリートを剥がす
- 仕上げ作業:表面を整える、模様を出すなどの仕上げハツリ
- はみ出し・不要部分の除去:型枠からはみ出たコンクリートを削る
- 干渉部分の除去:後から通す配管・配線・スリーブと干渉するコンクリートを削る
- 開口・貫通の追加:打設後に必要になった配管ルートや開口を開ける
- 補修のための下地処理:ジャンカや劣化部を健全な部分まではつり取る
このうち、施工管理が頭を抱えやすいのが「干渉部分の除去」と「開口の追加」です。たとえばスリーブ(配管を通すための筒)を打設前に入れ忘れた、設備のルートが躯体とぶつかった、といった場合に、固まったコンクリートをハツって対応することになります。
つまりハツリは、本来は打設前に処理しておくべきものが処理できていなかったときの”リカバリ”として発生するケースが多い。ここが、次に説明する「良くない理由」の核心です。ジャンカなどの不具合をはつり取って補修する場合もあります。

ハツリの方法と道具
ハツリは基本的に手作業で行います。細かい調整が多く、構造体の近くでは重機で一気に壊せないためです。
使う道具を整理します。
- チゼル・タガネ:刃先を当ててコンクリートを削る基本工具。手作業や電動工具の先端に使う
- 電動ハンマー・コンクリートブレーカー:打撃でコンクリートを砕く電動工具。手持ち式が中心
- フロアスクレーパー:床面の仕上げ材や薄いコンクリートを剥がす工具
- 重機(大型ブレーカー):はつりこわしや厚いコンクリート・転石の撤去で使う
手作業ではチゼルを使い、効率を上げたい場面では電動ハンマーやコンクリートブレーカーを使います。刃先の形状が異なるチゼルやチゼルビット(平・尖り・幅広など)を、削る・割る・はがすといった作業内容で使い分けるのが基本です。厚いコンクリートや大きな塊を撤去するときだけ、重機で塊のまま分離することもあります。
低騒音・低振動の工法もある
打撃ハツリは騒音・振動が大きいため、近隣や在館者への影響が大きい現場では、低騒音・低振動の工法を選ぶことがあります。ワイヤーソー(ダイヤモンドワイヤーで切断する)、静的破砕剤(膨張材を孔に充填し、膨張圧で割る)、ウォータージェット(高圧水でコンクリートをはつる)などです。コストや工期は上がりますが、市街地や稼働中の建物では有効な選択肢になります。
実務だと、構造体や鉄筋の近くを削るときほど、いきなり大きなブレーカーで叩かず、鉄筋やかぶりの位置を意識して小刻みに作業します。道具の選定は「速さ」より「周囲を傷めないこと」を優先する場面が多いです。
ハツリが良くない理由
ここがこの記事で一番伝えたい部分です。結論、ハツリ(特に構造体へのハツリ)は、できれば発生させない方がよい作業です。「良くない理由」を施工管理目線で整理します。
まず一番大きいのが、構造体を傷めるリスクです。柱・梁・床などの構造体をハツると、中の鉄筋やかぶりコンクリートを損傷する恐れがあります。鉄筋を切ったり傷つけたりすれば、その部材の耐力が落ちます。かぶり(鉄筋を覆うコンクリートの厚み)が不足すると、鉄筋が錆びやすくなり耐久性が低下します。つまりハツリは、やり方を誤ると建物の強度・寿命に直結するわけです。かぶりや断面欠損の考え方は下記が参考になります。


次に、手戻りとコストの問題があります。前述の通り、躯体ハツリの多くはスリーブ入れ忘れや取り合いミスのリカバリです。一度固めたコンクリートを壊して直すわけなので、ハツリ自体の手間に加え、ハツった後の断面修復(補修)や、騒音・振動による工程の制約まで含めて、余計な時間とコストがかかります。断面修復では、はつり取った部分の鉄筋の防錆処理をしてから、ポリマーセメントモルタルや無収縮モルタルなどで埋め戻すのが一般的で、これ自体が手間のかかる作業です。
さらに、責任の所在の問題もあります。発生したハツリが誰の手戻りなのか(施工順序のミスか、図面の不整合か、設備との調整漏れか)で、是正の負担先が変わります。後から「言った言わない」にならないよう、ハツリ指示は記録に残すのが基本です。
正直なところ、ハツリは「上手にやる技術」も大事ですが、施工管理としてはそれ以上に「そもそも発生させない段取り」の方が価値が高いと考えています。きれいにハツれることより、ハツリが要らない現場を作れることの方が、評価される実力です。
ハツリを減らす段取り
では、ハツリ(特に躯体ハツリ)を減らすにはどうすればいいか。結論、打設前の取り合い確認と先付け部材の活用に尽きます。
具体的な段取りを挙げます。
- スリーブの先付け:配管が通る位置に、打設前にスリーブを入れておく
- インサート・アンカーの先付け:吊りボルトや支持金物の取り付け位置を打設前に仕込む
- 設備との取り合い確認:電気・空調・配管のルートを、打設前に図面と現場で突き合わせる
- 開口位置の事前確定:必要な開口・貫通を打設前に型枠へ反映する
- 総合図での調整:意匠・構造・設備の図面を重ねて干渉をつぶしておく
要は、固まる前にやっておけばハツリは要らない、という当たり前のことを、打設前にどれだけ詰められるかです。インサートやスリーブを先付けする手順は下記も参考になります。


そして、どうしても構造体をハツる必要が出た場合は、勝手に判断しないことが鉄則です。構造に関わるハツリは、設計監理者や構造設計者の承認を得てから行います。鉄筋を切ってよいか、どこまで削ってよいか、補修方法はどうするかは、現場の独断で決めてよい範囲を超えています。既存建物の改修でコンクリートをはつる場合も同様で、改修工事の考え方は下記が参考になります。

僕の考えでは、ハツリを減らせる施工管理は「打設前の段取り力がある施工管理」とほぼ同義です。ハツリの多い現場は、たいてい打設前の取り合い確認が甘い。逆にここを丁寧にやれば、後工程の手戻りは大きく減らせます。
ハツリの注意点
最後に、実際にハツリを行うときの注意点を整理します。結論、注意点は「騒音・振動」「粉じん・有害物質」「周囲への配慮」の3つです。
最も大きいのが騒音と振動です。ハツリはコンクリートを破砕する作業なので、大きな騒音と振動が出ます。これが近隣トラブルの原因になりやすいため、作業時間に配慮する、防音パネル・防音シートを設ける、低騒音の工法を検討する、といった対策が必要です。ブレーカーなどを用いる作業は、騒音規制法・振動規制法の「特定建設作業」に該当し、作業の届出や時間帯・日数の規制を受ける場合があるので、市街地では事前確認が要ります。
次に粉じんと有害物質です。コンクリートを削ると粉じんが大量に出るため、散水や集じん、作業者の防じんマスク着用が必要になります。さらに古い建物では、はつる箇所にアスベスト(石綿)含有建材が使われている可能性があり、事前調査と適切な処理が法令で義務づけられています。一定規模以上の解体・改修では事前調査結果の報告も必要です。古い吹付け材などをむやみにハツるのは厳禁です。関連する建材の違いはこちらが参考になります。

加えて、近接する設備・配線・防水層を傷めないことも大事です。壁の中の配線や、床下の防水層をハツリで傷つけると、新たな手戻りを生みます。何が埋まっているかを図面で確認し、必要なら鉄筋探査機で位置を確認してから作業に入るのが安全です。
現場目線で言えば、ハツリの注意点は「作業そのもの」より「周囲への影響」に集中しています。騒音・粉じん・埋設物。この3点を事前に押さえておけば、ハツリ作業でのトラブルはかなり防げます。
ハツリに関するよくある質問
最後に、現場や勉強でよく出る疑問をまとめておきます。
ハツリと解体は何が違いますか?
解体は建物や構造物をまとめて壊す大規模作業、ハツリはコンクリートを部分的に削る・壊す・整える小規模作業です。ハツリは手作業中心で、調整や仕上げまで含む点が解体と異なります。
ハツリとコア抜きはどう使い分けますか?
円形で寸法精度の要る貫通孔(配管・スリーブ用など)はコア抜き、不定形に削る・壊す作業はハツリです。コア抜きは回転切削で低騒音、ハツリは打撃が中心という違いもあります。どちらも鉄筋を切らないよう位置確認が前提です。
構造体(柱・梁)をハツっても大丈夫ですか?
現場の独断ではいけません。鉄筋やかぶりを傷めると耐力・耐久性が落ちるため、構造に関わるハツリは設計監理者・構造設計者の承認を得てから行います。どこまで削ってよいか、補修方法も含めて指示を仰ぎます。
ハツリで出た部分はどう補修しますか?
はつり取った範囲の鉄筋を防錆処理し、ポリマーセメントモルタルや無収縮モルタルなどで断面修復するのが一般的です。健全な部分まではつってから埋め戻すことで、補修部の付着と耐久性を確保します。
ハツリの騒音・振動に法的な規制はありますか?
あります。ブレーカー等を用いる作業は騒音規制法・振動規制法の「特定建設作業」に該当することがあり、作業の届出や時間帯・日数の制限を受けます。市街地や住宅地では、着工前に対象作業かどうかを確認しておく必要があります。
ハツリに関する情報まとめ
- ハツリとは:コンクリートや舗装を削る・壊す・加工する作業の総称(漢字は斫り)
- 解体との違い:解体は全体を壊す大規模作業、ハツリは部分加工の小規模作業
- 種類:はつりこわし(壊す)・コンクリートはつり(調整)・はつり仕上げ(仕上げ)
- 必要なケース:舗装補修、仕上げ、はみ出し除去、干渉部分の除去、開口追加、補修下地
- 方法と道具:手作業中心。チゼル・電動ハンマー・ブレーカー、低騒音工法もある
- 良くない理由:構造体の鉄筋・かぶりを傷めるリスク、手戻りコスト、断面修復の手間
- 減らす段取り:スリーブ・インサートの先付け、打設前の取り合い確認、承認を得る
- 注意点:騒音・振動(特定建設作業)、粉じん・アスベスト、近接設備への配慮
以上がハツリに関する情報のまとめです。
ハツリは「きれいにやる技術」と同じくらい、「そもそも減らす段取り」が大事な作業です。特に構造体に関わるハツリは強度・耐久に直結するので、勝手に判断せず承認を得ること、そして打設前の取り合い確認でハツリ自体を減らすことを意識すると、施工管理として一段信頼されます。コンクリート・改修まわりの基礎は下の記事も合わせてどうぞ。





