- 住宅性能表示制度って、結局なにを表示する制度?
- 10分野って何と何?等級はどこまで上げられるの?
- 必須項目と選択項目の線引きが分からない
- 設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書、何が違う?
- 費用はいくら?10〜20万円って本当?
- 取って何が得なの?義務じゃないんでしょ?
- 長期優良住宅との違いは?中古住宅でも評価できるの?
- 省エネ義務化で意味がなくなったんじゃないの?
上記の様な悩みを解決します。
住宅性能表示制度は、住宅の性能を等級という共通のモノサシで表示するための制度です。ただ、ネットの解説は「10分野を第三者が評価します」「メリットは金利優遇と地震保険割引です」というところで話が終わりがちです。実務で必ず聞かれる「どの分野が等級いくつまで上げられるのか」「必須はどれか」「設計と建設で何が変わるのか」が抜けたままになります。
さらに2025年4月から省エネ基準の適合が義務化され、2025年12月には一次エネルギー消費量等級に上位等級が追加されました。制度の中身が動いているのに、更新の追いついていない解説が多いのも実情です。今回は制度の骨格から10分野の等級上限、必須項目の改正経緯、費用の実額の組み立て、そして長期優良住宅・既存住宅との関係まで、申請実務の順序で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
住宅性能表示制度とは?
住宅性能表示制度とは、結論「住宅の性能を国が定めた共通の基準で等級や数値に置き換え、第三者機関が評価して書面で表示する任意の制度」のことです。
根拠法は住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法/平成11年法律第81号)で、法は平成12年4月1日に施行され、制度としては同年10月に本格運用が始まりました。評価の物差しになるのが日本住宅性能表示基準(平成13年国土交通省告示第1346号)と、その判定方法を定めた評価方法基準(同告示第1347号)です。この2本の告示があるおかげで、どの評価機関に出しても同じ等級になるという仕組みが成り立っています。
住宅性能表示制度は品確法の柱のうちの1本で、法全体としては次の3つがセットになっています。
- 新築住宅の基本構造部分について、瑕疵担保責任を10年間義務づける
- 住宅性能表示制度によって、性能を共通の基準で表示できるようにする
- 指定住宅紛争処理機関を整備し、トラブルを裁判以外で処理できるようにする
3つ目が制度のうまみに直結します。後述しますが、建設住宅性能評価書を持っていると、この紛争処理機関を1件1万円で使えるようになります。「性能を表示する制度」という顔をしていますが、実質的には紛争予防と紛争処理の制度でもある、というのが僕の理解です。
もうひとつ押さえておきたいのが品確法第6条です。住宅性能評価書またはその写しを請負契約書や売買契約書に添付するなどすると、そこに記載された性能が契約内容とみなされます。つまり「断熱等性能等級5です」と表示した以上、それは契約上の約束になります。逆に、請負契約書または売買契約書において反対の意思を表示しているときは除かれる、という逃げ道も条文に書かれています。ここは施主に説明するとかなり刺さるポイントなのに、解説記事ではほぼ触れられていません。
制度の利用は義務ではありません。建築確認とは別建ての任意手続きで、申請するのは建築主です。ただ、後述のとおり省エネ基準適合義務化との接点があるので、「任意だから関係ない」と切り捨てると損をする場面が出てきます。
住宅性能表示制度の10分野と等級
住宅性能表示制度は、結論「新築は10分野で構成され、そのなかに等級で表示される項目と数値で表示される項目が混在する」形になっています。「等級はどこまで上げられるの?」という疑問への答えは分野ごとにバラバラで、ここを一覧にしている記事がほとんど見当たりません。
| 分野 | 主な性能表示事項と等級の上限 |
|---|---|
| 1 構造の安定に関すること | 耐震等級(倒壊等防止)最大3/耐震等級(損傷防止)最大3/耐風等級 最大2/耐積雪等級 最大2/免震建築物か否か/地盤又は杭の許容支持力等・基礎の構造方法(数値) |
| 2 火災時の安全に関すること | 感知警報装置設置等級 最大4/耐火等級(界壁及び界床)最大4/耐火等級(延焼のおそれのある部分の開口部)最大3/同(開口部以外)最大4/避難安全対策・脱出対策(表示) |
| 3 劣化の軽減に関すること | 劣化対策等級 最大3 |
| 4 維持管理・更新への配慮に関すること | 維持管理対策等級(専用配管)最大3/同(共用配管)最大3/更新対策(共用排水管)最大3/更新対策(住戸専用部=躯体天井高等の数値) |
| 5 温熱環境・エネルギー消費量に関すること | 断熱等性能等級 最大7/一次エネルギー消費量等級 最大8 |
| 6 空気環境に関すること | ホルムアルデヒド対策 最大3/換気対策(表示)/室内空気中の化学物質の濃度等(実測値) |
| 7 光・視環境に関すること | 単純開口率・方位別開口比(%表示。等級なし) |
| 8 音環境に関すること | 重量床衝撃音対策 最大5/軽量床衝撃音対策 最大5/透過損失等級(界壁)最大4/同(外壁開口部)最大3 |
| 9 高齢者等への配慮に関すること | 高齢者等配慮対策等級(専用部分)最大5/同(共用部分)最大5 |
| 10 防犯に関すること | 開口部の侵入防止対策(表示。等級なし) |
耐震等級だけが最大3で有名ですが、耐風等級と耐積雪等級は等級2が上限、高齢者等への配慮は等級5まであります。断熱等性能等級は7、一次エネルギー消費量等級は8まで。等級の最大値が分野ごとに違うので、「等級3が最高」という思い込みで話をすると噛み合いません。
等級の読み方で誤解しやすい3点
- 一次エネルギー消費量等級には等級2と3が存在しない。区分は1・4・5・6・7・8で、番号が飛んでいる
- 免震建築物と確認された場合、耐震等級(倒壊等防止・損傷防止)の等級評価は行わない
- 室内空気中の化学物質の濃度は実測なので、設計段階の評価では表示できない
一次エネルギー消費量等級の番号が飛んでいるのは、断熱等性能等級と番号を揃えるために後から等級を差し込んできた経緯によるものです。表を作るときに「等級2・3が空欄」になって不安になりますが、そもそも存在しません。
耐震等級と断熱等性能等級の中身は、それぞれこちらで掘り下げています。


断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級の区分
この2つは2022年以降に大きく増えたので、旧い記事だと上限が違っています。現在の区分は次の通りです。
| 等級 | 断熱等性能等級 | 一次エネルギー消費量等級(BEI) |
|---|---|---|
| 8 | ― | 0.65以下(再エネを除く) |
| 7 | より著しい削減(8地域を除く) | 0.70以下(再エネを除く) |
| 6 | 著しい削減 | 0.80以下(再エネを除く。誘導基準=ZEH水準相当) |
| 5 | より大きな削減(誘導基準=ZEH水準相当) | 0.90以下(再エネを含む) |
| 4 | 大きな削減(省エネ基準相当) | 1.00以下(省エネ基準相当。再エネを含む) |
| 3以下 | 一定程度の削減/小さな削減/その他 | 等級1(その他)のみ |
断熱等性能等級は等級5が2022年4月、等級6と7が同年10月に追加されました(追加時点では等級6・7は戸建住宅が対象)。一次エネルギー消費量等級の等級7と8は、令和7年9月1日公布・同年12月1日施行で新設された最も新しい区分です。ここまで反映している解説記事は、今のところほぼ見つかりません。
なお住宅性能評価・表示協会の公開データを見ると、この等級6の取得はかなり進んでいます。建設住宅性能評価書を取得した一戸建てのうち等級6の割合は、令和5年度で約86%(令和4年度は約49%)です。母数は評価書を取得した住宅なので新築戸建て全体の比率ではありませんが、ZEH水準がもう珍しくないという傾向は読み取れます。


住宅性能表示制度の必須項目は4分野10項目
住宅性能表示制度を使うときに全分野を評価する必要はありません。結論「必須は4分野10項目で、残りは選択」です。「必須と選択の線引きが分からない」という迷いは、改正の経緯を知ると一気に整理できます。
必須になっているのは次の項目です。
- 構造の安定:耐震等級(倒壊等防止)/免震建築物か否か/地盤又は杭の許容支持力等/基礎の構造方法及び形式等
- 劣化の軽減:劣化対策等級
- 維持管理・更新への配慮:維持管理対策等級(専用配管)/同(共用配管)/更新対策(共用排水管)
- 温熱環境・エネルギー消費量:断熱等性能等級/一次エネルギー消費量等級
共用配管と共用排水管の2項目は共同住宅等が対象なので、一戸建てなら実質8項目です。
必須項目は2段階で絞られてきた
ここが知られていない部分です。必須の範囲は制度の途中で2回動いています。
| 時期 | 必須の範囲 |
|---|---|
| 平成12年〜平成27年3月 | 9分野27項目が必須。ほぼ全分野を評価する重い制度だった |
| 平成27年4月 | 4分野9項目に大幅縮小。利用のハードルを下げる方向へ |
| 令和4年10月1日 | 4分野10項目。断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級が「いずれか一方」から両方必須に変更 |
令和4年の改正が実務上は効いています。それまでは断熱等性能等級だけ、あるいは一次エネルギー消費量等級だけで済んだのですが、今は両方を評価しなければなりません。設備の一次エネルギー計算が必ずついてくるので、申請図書の準備も変わりました。ここが古い記事のまま「いずれか一方」と説明されているケースがまだ残っています。
2025年4月の省エネ基準適合義務化との関係
もうひとつ、制度の意味づけを変えたのが省エネ基準適合義務化です。建築物省エネ法の改正により、令和7年4月1日以降に着工する新築・増改築の住宅と非住宅は、原則すべて省エネ基準への適合が義務になりました。省エネ基準適合は建築基準関係規定なので、適合が確認できないと確認済証が交付されず着工できません。
これが住宅性能表示制度に与えた影響は2つあります。
ひとつは訴求価値の話で、断熱等性能等級4と一次エネルギー消費量等級4は義務化された最低ラインになったので、「等級4が取れます」は差別化になりません。等級5以上でないと性能表示としての意味が薄い、という構造に変わりました。
もうひとつは手続きの話で、こちらは実利です。省エネ基準に適合する住宅と同等以上の性能を有する旨の設計住宅性能評価書の交付を受けた住宅の新築は、省エネ適合性判定(適判)が不要になります。建築物省エネ法施行規則第2条第1項第2号の規定で、長期優良住宅の認定や長期使用構造等の確認でも同様の扱いです。さらに、適判と住宅性能評価を同じ機関に申請すると手続きが合理化されます。
現場目線で言えば、ここが一番の穴場です。「性能表示は任意だからコスト増」と考えている工務店は多いのですが、どうせ適判が必要な物件なら、設計住宅性能評価に振り替えることで手続きが1本にまとまります。制度改正の全体像はこちらで整理しています。

設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の違い
評価書は2種類あります。結論「設計は図面審査だけ、建設は現場検査つき。紛争処理が使えるのは建設だけ」です。
| 項目 | 設計住宅性能評価書 | 建設住宅性能評価書 |
|---|---|---|
| 評価の対象 | 設計図書(図面審査) | 施工段階と完成段階の現場検査 |
| 現場検査 | なし | 3階建て以下は原則4回。4階建て以上は階数に応じて増え、5回以上になる |
| 交付のタイミング | 設計図書の審査完了後 | 完成検査後(引渡しの前後) |
| 申請の順序 | 先に取得する | 設計評価書の交付後、工事着手に先立って申請 |
| 化学物質濃度の実測 | 評価できない | 評価できる |
| 紛争処理機関の利用 | 不可 | 可 |
| 省エネ適判の省略 | 可 | ― |
現場検査の回数が階数で増えるという点は、ほとんどの解説記事が「原則4回」で止めています。ただ実際の回数と時期は評価機関の検査要領で決まるので、中高層の共同住宅では機関ごとに差が出ます。検査回数はそのまま費用に跳ね返るので、建設評価の見積を読むときは検査回数がいくつで計算されているかを確認しておくといいです。
建設住宅性能評価書にしかできないこと
- 指定住宅紛争処理機関への申請。全国の単位弁護士会が窓口で、手数料は1件1万円
- 紛争の対象が評価書の内容に限られず、請負契約・売買契約に関する当事者間の紛争全般に及ぶ
- 室内空気中の化学物質(ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン)の実測値の表示
- 地震保険の耐震等級割引の証明資料として、実際に施工された性能で使える
紛争処理の手数料1万円は、制度のなかで一番コストパフォーマンスが高い部分だと思っています。訴訟になれば弁護士費用だけで桁が変わりますし、対象が契約全般に及ぶので「性能とは無関係な工期の争い」でも使えます。設計評価だけで止めると、この一番おいしいところが手に入りません。
ちなみに、評価書を紛失した場合は住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住まいるダイヤルで「評価住宅の該当性確認サービス」を無料で受けられます。評価書そのものの再発行ではありませんが、該当性を確認した書面が出るので、中古売買のときに助かります。
住宅性能表示制度の費用
費用は、結論「一戸建てで設計と建設を両方取ると17万〜23万円あたりが実勢」です。「10〜20万円」と丸めている記事が多いのですが、実際の料金表は面積と選択項目数で段が変わる構造になっています。
ある登録住宅性能評価機関の料金表(令和8年4月1日以降・税込)を例に取ると、次のような組み立てです。
| 区分 | 料金 |
|---|---|
| 設計評価・一戸建て 延床200㎡以下 | 66,000円 + 選択項目数×1,100円 |
| 設計評価・一戸建て 延床200㎡超 | 82,500円 + 選択項目数×1,100円 |
| 建設評価・一戸建て 延床200㎡以内 | 101,750円 + 選択項目数×1,100円 |
| 建設評価・一戸建て 延床200㎡超 | 124,850円 + 選択項目数×1,100円 |
| 設計評価・共同住宅 | 住棟基本料 +(戸当たり基本料+選択料金×項目数)×住戸数 |
| 建設評価・共同住宅 | 検査回数×検査単価 + 住戸数×戸当たり単価 |
料金は評価機関ごとに独自に設定されているので、機関を変えると金額が変わります。そのうえで、金額が動く要因はだいたい次の4つです。
- 延床面積の段(200㎡が境目になっている料金表が多い)
- 選択項目をいくつ付けるか(1項目あたりの加算単価が乗る)
- 設計評価を受けた機関と建設評価を受ける機関が違うか(別機関だと建設評価料金が1.5倍になる例がある)
- 省エネの計算方法(標準計算か、仕様基準等の簡易な方法か)
4つ目は見落としがちです。仕様基準等で通せる物件なら、設計評価の基本料が下がる料金体系になっている機関もあります。逆に、選択項目を欲張って10項目付けると加算だけで1万円を超えます。
なお建設評価の料金には、指定住宅紛争処理機関への負担金が含まれているのが一般的です。設計評価だけだと安く見えますが、紛争処理が使えないという差はここに現れています。長期使用構造等の確認を併願する場合の加算や、評価書の再交付手数料も料金表に載っているので、申請前に一度通して読んでおくのがおすすめです。
住宅性能表示制度のメリットとデメリット
メリットは、結論「地震保険・住宅ローン・紛争処理・省エネ適判の4つが制度として裏づけられている」点です。「取って何が得なの?」という問いには、感覚論ではなく制度名と数字で答えられます。
| メリット | 制度的な裏づけ |
|---|---|
| 地震保険料の割引 | 耐震等級3で50%、等級2で30%、等級1で10%。免震建築物割引は50%。いずれか1つの適用 |
| 住宅ローンの金利優遇 | フラット35Sの金利Aプランは断熱等級5以上かつ一次エネ等級6以上、耐震等級3、免震建築物、高齢者等配慮対策等級4以上などのいずれか。金利Bプランは耐震等級2以上、断熱等級5以上、劣化対策等級3かつ維持管理対策等級2以上などのいずれか |
| 紛争処理の低コスト化 | 建設住宅性能評価書があれば指定住宅紛争処理機関へ1件1万円で申請可 |
| 省エネ適判の省略 | 設計住宅性能評価書の交付を受けた住宅の新築は適判が不要(建築物省エネ法施行規則第2条第1項第2号) |
| 性能が契約内容になる | 評価書を契約書に添付等すると記載性能が契約内容とみなされる(品確法第6条) |
| 売却時の説明材料 | 全国共通の等級なので、第三者に性能を数字で伝えられる |
地震保険の割引率は、耐震リフォームの世界でも見落とされている論点です。等級3で保険料が半額になるのは、契約が続く限り効き続ける効果なので、初期費用の20万円と比べて評価すべき数字です。
デメリットと注意点
- 設計と建設で17万〜23万円程度の費用と、審査・検査に伴う工程上の余裕が必要になる
- 等級を上げるための仕様変更で建築コストそのものが上がる(構造材の増加、窓の仕様変更など)
- 分野間で相反が起きる。開口部を大きくすると耐震等級や断熱等性能等級が下がりやすい
- 任意制度なので、取得しなくても建てられる。等級が低いまま表示すると逆に印象が悪くなる場合がある
3つ目の相反は設計段階で必ずぶつかります。南面を大きく開けたい要望と耐震等級3が同時に成立しないケースは珍しくありません。個人的には、施主が最初に等級を決めてから間取りに入る進め方の方が、後戻りが少なくて済むと感じます。逆に間取りを固めてから等級を狙うと、耐力壁の追加で開口が潰れて揉めます。


長期優良住宅・既存住宅の性能表示との関係
住宅性能表示制度と混同されやすいのが長期優良住宅です。結論「性能表示は等級を可視化する制度、長期優良住宅は一定水準以上であることを認定する制度」で、性格がまったく違います。
| 観点 | 住宅性能表示制度 | 長期優良住宅認定制度 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 品確法 | 長期優良住宅の普及の促進に関する法律 |
| 性格 | 性能の表示・評価。等級の高低は申請者が選べる | 基準を満たすかどうかの認定。合否型 |
| 窓口 | 登録住宅性能評価機関 | 所管行政庁(着工前に申請) |
| 主な基準 | 10分野の等級を任意に選択 | 耐震性(等級3/等級2/等級1かつ安全限界時の層間変形が一定以下/免震建築物のいずれか)、劣化対策等級3、維持管理対策等級3、断熱等級5かつ一次エネ等級6など |
| 認定にしかない要件 | ― | 可変性、共用部分のバリアフリー、居住環境、住戸面積、維持保全計画(30年以上・10年以内ごとの点検)、災害配慮 |
| 表示にしかない分野 | 火災時の安全、空気環境、光・視環境、音環境、防犯、既存住宅の現況検査 | ― |
| 主な実利 | 地震保険割引、紛争処理、省エネ適判の省略、契約内容化 | 税制優遇、住宅ローン控除の借入限度額上乗せ、フラット35S、補助金 |
長期優良住宅の認定基準は住宅性能表示制度の等級を土台にしているので、等級の考え方は共通です。ただし耐震性の要件は等級だけで決まらず、耐震等級1でも安全限界時の層間変形を一定以下に抑える方法などが認められています。違いは「維持保全計画を出すかどうか」と「窓口が所管行政庁か評価機関か」に集約されます。税制優遇を狙うなら長期優良住宅、紛争処理と性能の見える化を狙うなら性能表示、という使い分けになります。
既存住宅の性能表示は構成が違う
既存住宅も性能表示の対象ですが、新築とは組み立てが変わります。
- 必須は現況検査(部位等・事象別の判定と総合判定)。外壁のひび割れ、床の傾き、漏水のあとなどを目視・計測で確認する
- 選択で特定現況検査(木部の腐朽や蟻害の詳細検査)を追加できる
- 選択で個別性能評価を追加できる。分野は9分野で、新築の音環境がなく、シックハウス対策・換気に石綿の有無が加わる
そして既存住宅にだけ等級0があります。現行の建築基準法の関連規定を満たさない場合、または構造耐力に大きく影響する劣化事象が目視・計測で認められる場合に付く区分です。中古住宅の評価書を見て「等級0って印刷ミスか」と思う人がいますが、正式な区分です。
新築のように全分野をまとめて評価するのではなく、「耐震等級の倒壊等防止だけ」といった項目単位の選択もできます。実務だと、中古住宅の売買で耐震性だけ確認したいというニーズが多いので、この項目単位の運用が使われます。
住宅性能表示制度に関する情報まとめ
- 定義:住宅の性能を国の基準で等級・数値に置き換え、第三者機関が評価して書面で表示する任意の制度
- 根拠:品確法(平成11年法律第81号)。法は平成12年4月施行、制度は同年10月に本格運用。基準は平成13年国交省告示1346号・1347号
- 品確法の3本柱:新築住宅の瑕疵担保責任10年義務化/住宅性能表示制度/指定住宅紛争処理機関
- 品確法第6条:評価書を契約書に添付等すると、記載性能が契約内容とみなされる
- 分野構成:新築は10分野。等級の上限は分野ごとに違う(耐震3、耐風2、耐積雪2、劣化対策3、断熱7、一次エネ8、高齢者等配慮5、床衝撃音5)
- 等級の癖:一次エネルギー消費量等級に等級2・3はない/免震建築物と確認されると耐震等級の評価は行わない/化学物質濃度は建設評価のみ実測
- 断熱等性能等級は等級5が2022年4月、6・7が同年10月に追加。一次エネ等級7・8は令和7年12月1日施行で新設
- 必須は4分野10項目(一戸建ては8項目)。平成27年4月に9分野27項目から4分野9項目へ、令和4年10月1日に断熱と一次エネの両方必須で10項目へ。項目数は共同住宅等を含む数え方
- 省エネ義務化:令和7年4月1日以降着工の新築・増改築は省エネ基準適合が義務。等級4は最低ラインになり、等級5以上でないと差がつかない
- 手続きの実利:設計住宅性能評価書の交付を受けた住宅の新築は省エネ適判が不要。同一機関申請で手続きも合理化
- 評価書の違い:設計は図面審査のみ、建設は現場検査つき(3階建て以下で原則4回、4階建て以上は階数に応じて5回以上)
- 紛争処理は建設住宅性能評価書のみ。指定住宅紛争処理機関へ1件1万円、対象は契約全般の紛争
- 費用:一戸建てで設計+建設が17万〜23万円が実勢。面積の段、選択項目数、機関をまたぐか、省エネの計算方法で動く
- メリットの裏づけ:地震保険は耐震等級3で50%・2で30%・1で10%、免震50%。フラット35Sの技術基準、省エネ適判の省略、契約内容化
- デメリット:費用と工程、等級を上げる仕様変更のコスト、開口部と耐震・断熱の相反、任意制度ゆえの表示リスク
- 長期優良住宅との違い:性能表示は等級の可視化、長期優良は認定。窓口は評価機関と所管行政庁。長期優良には維持保全計画(30年以上・10年以内ごとの点検)が必須で、耐震性は等級以外の選択肢もある
- 既存住宅:現況検査が必須で、特定現況検査と個別性能評価(9分野)は選択。既存住宅にだけ等級0がある
以上が住宅性能表示制度に関する情報のまとめです。
住宅性能表示制度は「等級を表示する制度」として説明されますが、実務での価値は紛争処理の入口と省エネ適判の省略にあります。等級の上限が分野ごとに違うこと、必須が4分野10項目に絞られていること、設計と建設で得られる権利が違うこと。この3つを押さえておけば、施主に「なぜ建設評価まで取るのか」を自分の言葉で説明できるようになります。
住宅性能表示制度に関するよくある質問
Q1:等級はどの分野も3が最高なんですか?
違います。等級の上限は分野ごとにバラバラです。耐震等級(倒壊等防止・損傷防止)と劣化対策等級、維持管理対策等級は最大3です。耐風等級と耐積雪等級は最大2、感知警報装置設置等級と耐火等級(界壁及び界床)は最大4、高齢者等配慮対策等級と床衝撃音対策は最大5。そして断熱等性能等級は最大7、一次エネルギー消費量等級は最大8です。「等級3が最高」という前提で話すと、断熱の話で噛み合わなくなります。
Q2:一次エネルギー消費量等級の2と3はどこにいったんですか?
存在しません。一次エネルギー消費量等級の区分は1・4・5・6・7・8で、番号が飛んでいます。断熱等性能等級と番号の水準感を揃えるために後から上位等級を差し込んできた経緯があるためで、表を作るときに空欄になるのが正常です。等級7と8は令和7年9月1日公布・12月1日施行で新設された最も新しい区分なので、古い解説だと「最高は6」と書かれています。
Q3:設計住宅性能評価書だけでも取る意味はありますか?
あります。ひとつは省エネ適合性判定の省略で、設計住宅性能評価書の交付を受けた住宅の新築は適判が不要になります。もうひとつは設計段階で性能を確定できることです。ただし、指定住宅紛争処理機関を1件1万円で使える権利は建設住宅性能評価書がないと得られません。地震保険の割引も、実際に施工された性能で証明したいなら建設評価まで取るのが確実です。予算に余裕があるなら建設評価まで進めるのをおすすめします。
Q4:費用は本当に10〜20万円ですか?
一戸建てで設計と建設を両方取ると、17万〜23万円あたりが実勢です。料金表は面積の段(200㎡が境目になっているものが多い)と選択項目数の加算で組み立てられていて、選択項目を10個付ければ加算だけで1万円を超えます。また設計評価と建設評価を別の機関に出すと、建設評価料金が1.5倍になる料金体系もあります。「10〜20万円」は設計評価だけの感覚に近い数字なので、建設評価まで含めて見積を取るのが確実です。
Q5:省エネ基準が義務化されたので、住宅性能表示制度はもう意味がないですか?
意味の中身が変わりました。断熱等性能等級4と一次エネルギー消費量等級4は義務化された最低ラインになったので、そこを表示しても差別化にはなりません。等級5以上、できれば断熱5かつ一次エネ6のZEH水準以上でないと訴求になりません。一方で手続き面の価値は上がっていて、設計住宅性能評価書の交付を受けた住宅の新築は省エネ適判が不要になります。適判が必要な物件なら、性能表示に振り替えて手続きを1本にまとめる方が合理的なケースもあります。
Q6:長期優良住宅を取れば、住宅性能表示制度は不要ですか?
目的次第です。長期優良住宅は税制優遇と補助金に強く、認定基準として住宅性能表示制度の等級(劣化対策等級3、維持管理対策等級3、断熱等級5かつ一次エネ等級6など)を土台にしています。耐震性は等級3や等級2のほか、等級1でも安全限界時の層間変形を一定以下にする方法などが認められています。
ただ、長期優良住宅の認定だけでは指定住宅紛争処理機関を1件1万円で使える権利は得られません。火災時の安全、空気環境、音環境、防犯といった分野も長期優良住宅の基準に入っていません。紛争処理と、それらの分野の性能表示が必要なら別に取る意味があります。
Q7:中古住宅の評価書に「等級0」と書いてありました。誤植ですか?
誤植ではありません。等級0は既存住宅の性能表示にだけ設定されている正式な区分です。現行の建築基準法の関連規定を満たさない場合、または構造耐力に大きく影響する劣化事象等が目視・計測で認められる場合に付きます。既存住宅の性能表示は現況検査(部位等・事象別の判定と総合判定)が必須で、特定現況検査と個別性能評価は選択です。個別性能評価の分野は9分野で、新築の音環境がなく、シックハウス対策・換気に石綿の有無が加わります。
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