- 遮音性能ってどう評価するの?
- D値・L値・TLDの違いが分からない
- 空気音と固体音って何が違う?
- 等級ってどう読めばいい?
- カタログ値と実測値はどれくらい違う?
- 現場で確認するポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
「遮音性能」は集合住宅・オフィス・ホテル・スタジオなどで必須の性能で、設計図書や設備リストに「D-50」「TLD-45」「LH-50/LL-45」のように書かれています。施工管理として最低限の指標の意味を押さえておかないと、現場での施工確認や施主クレーム対応で困る場面も。本記事では D値・L値・TLD の意味から現場の確認ポイントまでまとめておきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
遮音性能とは?
遮音性能とは、結論「音を遮る能力を周波数別に評価した数値」のことです。
「隣の部屋から音がどれくらい聞こえるか」を客観的な数字で表現するもので、評価対象によって D値・L値・TLD・TLR など複数の指標があります。
遮音性能の特徴
- 音は空気を伝わる「空気音」と、構造体を伝わる「固体音」の2系統
- 部位(壁・床・サッシ・ドア)ごとに別の指標を使う
- 評価方法は「実験室値」と「現場値(実測値)」がある
- 数値が大きいほど遮音性が高い(一部例外:床衝撃音の L 値は逆)
- 設計値と実測値はしばしば乖離する
音響に関する全体的な話はこちらでも整理しています。
遮音性能の代表的な指標
実務でよく登場する記号を一通り整理しておきます。
D値(室間音圧レベル差)
部屋と部屋の間の遮音性能を評価する指標。室間音圧レベル差の周波数特性を JIS規格(A1417)の基準曲線で評価したもの。
D値の特徴
- 単位は dB(デシベル)
- 数値が大きいほど遮音性が高い
- D-50:500Hz で 50 dB 遮音できる、というイメージ
- 集合住宅の戸境壁は D-50〜D-55 が標準
- ホテル客室間は D-55〜D-60 が高級レベル
「隣の部屋の話し声が聞こえるか」レベルで言えば、D-40 で大声がぎりぎり、D-50 で普通の会話が聞こえなくなる、D-55 でテレビ音もほぼ気にならない、という感覚値。
L値(床衝撃音レベル)
床から下の階に伝わる衝撃音を評価する指標。唯一「数値が小さいほど遮音性が高い」指標なので注意。
L値の特徴
- 単位は dB
- 数値が小さいほど遮音性が高い(D値とは逆)
- LH-50(重量床衝撃音):子どもが飛び跳ねる音
- LL-45(軽量床衝撃音):椅子を引く音、スプーンを落とす音
- 集合住宅の床は LH-50/LL-45 が標準
- 高級マンションでは LH-45/LL-40 を狙う
LH(重量)と LL(軽量)の2系統がある理由は「音源の性質が違う」から。子どもが飛び跳ねる音(重量)と、椅子を引く音(軽量)では伝わり方が異なるため、それぞれ別の指標で評価します。
TLD(透過損失)
部位そのものの遮音性能を実験室で測定した値。壁体・サッシ・ドアといった単一部材の性能評価に使います。
TLDの特徴
- 単位は dB
- 数値が大きいほど遮音性が高い
- メーカーカタログで「TLD-45」のように記載
- 実験室での理想的な条件下の値
- 現場の D値より一般的に 3〜10 dB 高く出る
カタログ TLD-45 の壁を組んでも、現場の実測 D値は 35〜42 程度になることが多い、というのが実務での経験則。これは後述の廻り込み音が原因。
Dr値・Lr値
JIS A1417 改正後の評価で、周波数別の補正方法を改めた指標として Dr値(空気音用)や Lr値(床衝撃音用)が使われることがあります。基本的には D 値・L 値とほぼ同じ概念で、評価曲線がやや厳しくなった、という違い。
空気音と固体音の違い
遮音性能を理解する上で最重要の分類が、音の伝わり方による2分類。
空気音
空気を媒体にして伝わる音。話し声・テレビ・楽器音などが該当。
空気音の特徴
- 壁体・サッシで遮断する
- 質量則に従う(重い壁ほど遮音性が高い)
- D値・TLD で評価
- コンセントボックス・換気口など穴があると一気に下がる
固体音
構造体(コンクリート・木材・鉄骨)を伝わる音。床衝撃音・配管音・機械振動が該当。
固体音の特徴
- 床・梁・配管経路で伝わる
- 質量則ではなく振動絶縁の発想で対策
- L値・振動加速度レベルで評価
- 壁を厚くしても改善しないケースが多い
- 防振ゴム・浮き床・遮音マットで対策
「音漏れ対策で壁を厚くしたのに改善しない」場合の多くが、空気音と固体音の取り違え。原因が固体音なら、いくら壁を補強しても音は止まりません。
防振ゴム・ばね定数の話はこちらでも。
部位別の遮音指標
実務で使う部位別の遮音指標を整理しておきます。
壁の遮音性能
戸境壁・間仕切り壁では D値・TLD が使われます。
| 等級 | 性能 | イメージ |
|---|---|---|
| D-30 | 普通の住宅間仕切り | 隣の話し声が普通に聞こえる |
| D-40 | 標準的な集合住宅戸境壁 | 大声は聞こえる |
| D-50 | 一般的な分譲マンション戸境壁 | 普通の会話は聞こえない |
| D-55 | 高品質マンション・ホテル | テレビ音も気にならない |
| D-60 | スタジオ・防音室 | ほぼ完全遮音 |
集合住宅の戸境壁で D-50 が標準で、それ以下だと施主クレームが出やすいレベル。
床の遮音性能
集合住宅の上下階遮音は LH(重量)と LL(軽量)の2系統で評価します。
| 等級 | 重量音 LH | 軽量音 LL |
|---|---|---|
| 1級 | LH-45 | LL-40 |
| 2級 | LH-50 | LL-45 |
| 3級 | LH-55 | LL-50 |
数値が小さい方が高性能なのに注意。日本住宅性能表示制度の重量床衝撃音遮断等級では、等級 4 が最高レベルです。
サッシ・建具の遮音性能
サッシ・ドアには T値(JIS等級)が使われます。
| サッシ等級 | 遮音性能(500Hz の TLD) |
|---|---|
| T-1 | 25 dB |
| T-2 | 30 dB |
| T-3 | 35 dB |
| T-4 | 40 dB |
T-3 以上は防音サッシ扱い。線路沿い・幹線道路沿いの住宅では T-3〜T-4 が選定されます。
サッシの種類はこちらでも。

住宅性能表示制度の遮音等級
設計図書で「遮音等級」と書かれている場合、住宅性能表示制度の等級を指していることが多い。
重量床衝撃音遮断等級
| 等級 | LH 性能 | 想定される実建物 |
|---|---|---|
| 等級1 | 規制なし | 戸建住宅レベル |
| 等級2 | LH-65 | 一般的な木造アパート |
| 等級3 | LH-60 | 標準的な集合住宅 |
| 等級4 | LH-55 | 中級分譲マンション |
| 等級5 | LH-50 | 上級分譲マンション |
軽量床衝撃音遮断等級
| 等級 | LL 性能 |
|---|---|
| 等級2 | LL-55 |
| 等級3 | LL-50 |
| 等級4 | LL-45 |
| 等級5 | LL-40 |
設計図書に「遮音等級 5」と書かれていた場合、LH-50/LL-40 を担保する仕様(厚みのあるスラブ+遮音マット+二重床など)が要求されている、と読みます。
現場での確認方法と注意点
施工管理として遮音性能を担保するため、現場で意識すべきポイントです。
コンセント・スイッチボックスの背中合わせ禁止
集合住宅の戸境壁で、両側からコンセントを背中合わせに付けると、ボックス位置で壁体が薄くなり遮音性能が一気に下がる現象が起きます。
コンセント計画の鉄則
- 戸境壁の両面コンセントは500mm以上ずらす
- 同じ位置にスイッチ・コンセントを背中合わせで付けない
- やむを得ない場合は遮音ボックス(鉛入りボックス等)を使う
- 配管貫通部もできるだけ千鳥配置にする
電気施工管理として配線計画を作る時、戸境壁ではコンセント位置の千鳥配置を必ずチェック。これだけで竣工後の遮音クレームが減ります。
アウトレットボックスの話はこちらでも。

配管・ダクトの貫通部処理
配管・ダクト・電線管が壁を貫通する箇所は、音が通り抜ける弱点になります。
貫通部の遮音処理
- 貫通部の隙間をロックウール・耐火シーリングで完全に埋める
- 配管自体に遮音シートを巻く
- フレキシブル接続で固体音の伝達を絶縁
- 排水縦管にはサイレントカウル等の遮音材を使う
防火区画貫通処理と兼ねて施工することが多く、施工要領書で材料・施工手順を厳格に管理する必要があります。
防火区画貫通処理の話はこちらでも。

浮き床・二重床の精度
集合住宅で LH 等級を担保するための重要工法が浮き床(フローティングスラブ)や二重床。これは固体音対策の本命。
浮き床施工のチェックポイント
- 防振ゴム・グラスウールで床を構造躯体から絶縁
- 周囲のエッジに縁切り材を入れて壁との接触を防ぐ
- 配管・電線が床下を通る場合、それも構造体に接触させない
- 床仕上げ材の継ぎ目・コーナーも壁と離す
浮き床は「ゴム1枚抜けただけで性能が崩壊する」ほどデリケート。施工写真を要所で撮影し、後から検証できるようにしておくのが定石。
サッシまわりの隙間
防音サッシ(T-3、T-4)を入れても、枠まわりに 1mm の隙間があると性能が一気に下がります。
サッシまわりの遮音施工
- サッシ枠と躯体の間にウレタンフォーム・気密シーリング
- 防水と兼ねて気密処理を確実に
- 額縁の取り合い・建具枠との取り合いも気密処理
- 換気スリットがある場合は、遮音性能との両立を確認
実測値と設計値の乖離
カタログ TLD-45 の壁仕様で D値の実測が 35 dB 程度、というケースは珍しくありません。差が出る理由は主に以下。
実測が下がる理由
- 廻り込み音(戸境壁を介さず、天井裏や床を通る音)
- コンセント・スイッチの背中合わせ
- 配管・電線管貫通部の隙間
- ドア・サッシなど他部位の遮音性能の方が低い
- 構造体(梁・柱)が壁より先に音を通す
「音は一番弱いところを通る」という性質があり、壁だけ強くしても他部位が弱ければ全体性能はそこに引っ張られます。設計時に全部位を均等な性能にするのが鉄則。
引き渡し前の実測
高遮音性能を要求される現場(ホテル・スタジオ・録音室)では、引き渡し前に音響実測を行うことがあります。実測前に施工者として確認すべきポイントを整理しておくと、当日のリカバリーが効きます。
実測項目の例:
- 戸境壁の D値測定
- 床の LH/LL値測定
- 残響時間測定(ホール・スタジオ)
残響時間も含めた音響全体の話はこちらでも。
遮音性能に関する情報まとめ
- 遮音性能とは:音を遮る能力を周波数別に評価した数値。dB(デシベル)単位
- D値:室間の遮音性能。大きいほど高性能。集合住宅戸境壁は D-50 標準
- L値:床衝撃音。小さいほど高性能。LH(重量)と LL(軽量)の2種類
- TLD:部位単独の透過損失(実験室値)。現場 D 値より 3〜10 dB 高い
- 空気音:話し声・テレビ。壁体・サッシで遮断、質量則に従う
- 固体音:床衝撃音・配管音。防振・絶縁で対策
- 住宅性能表示制度:等級5(LH-50/LL-40)が最高
- 現場確認ポイント:コンセント千鳥配置/貫通部処理/浮き床縁切り/サッシ気密
以上が遮音性能に関する情報のまとめです。
「音は一番弱いところを通る」というシンプルな性質を覚えておくと、遮音施工のチェックポイントが自然と分かります。壁を厚くするだけが遮音対策ではなく、コンセント・配管貫通・サッシまわりといった細部の処理まで揃って初めて、設計値の D値・L値が現場で出る、という感覚を持っておきたいですね。
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