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定常流とは?意味、非定常流との違い、ベルヌーイ、設備設計など

  • 定常流ってどういう状態の流れ?
  • 非定常流とどう違うの?
  • ベルヌーイの定理って定常流前提なの?
  • 建築の設備設計でどう使われてる?
  • 配管設計で「定常流」を意識する場面は?
  • 実際の現場の流れは定常?非定常?

上記の様な悩みを解決します。

定常流」は流体力学の中で最初に出会う基本概念で、給排水・空調・消火など 建築設備設計の前提条件 になっている重要な考え方です。教科書の式だけ見ると抽象的ですが、配管・ダクト・ポンプの設計はほぼ全てこの定常流仮定の上に成り立っています。今回は建築の技術知識として、定常流を体系的に整理してみます。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

定常流とは?

定常流とは、結論「流れの状態(速度・圧力・密度など)が時間によって変化しない流体の流れ」のことです。

英語では steady flow。直訳すれば「安定した流れ」。流体力学で最初に登場する 理想化された流れの状態 で、給排水・空調・消火配管などの設備設計を成立させる前提条件として使われます。

「時間に依存しない」という意味

状態 内容
定常流 同じ位置で観測すれば、時間が経っても速度・圧力が一定
非定常流 同じ位置でも、時間とともに速度・圧力が変化

→ 「流れている水を蛇口の途中で観測したとき、その点の流速・圧力が変わらない状態」が定常流のイメージ。

注意:「定常流=静止」ではない

定常」というと止まっている印象を受けますが、定常流は 動いている流れ。重要なのは「時間的に変化しない」点であり、流れていることと矛盾しません。

区別 流速 時間変化
静止 v = 0 時間によらず0
定常流 v ≠ 0(流れている) 時間によらず一定
非定常流 v ≠ 0(流れている) 時間とともに変化

定常流の数式的表現

ある位置 r での流速ベクトル v(r, t) について、

∂v/∂t = 0

→ 「時間に対する偏微分がゼロ」が定常流の数学的な定義。場所が変われば流速は違っていてOK(位置による変化はある)が、時間で変化しない、というのがポイント。

配管工事の話はこちらも参考に。

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定常流と非定常流の違い

実務で遭遇するのは大半が「定常流に近い流れ」ですが、非定常流の場面も無視できません。両者の違いを整理しておきます。

①:身近な例での比較

流れの種類 理由
水道蛇口から一定流量で水を出している 定常流 流量が一定、各点の流速が一定
水道蛇口を急に開けた瞬間 非定常流 流量・圧力が変化中
暖房の温水循環(連続運転中) 定常流 ポンプで一定流量
ポンプ起動・停止の瞬間 非定常流 流速・圧力が急変
排水管の一定流量排水 定常流 連続排水中
大流量の瞬間排水(バスタブ排水開始) 非定常流 流量が変化
空調ダクトの送風(VAV非稼働時) 定常流 一定風量
VAV制御で風量変動している場合 非定常流 動的に変化

「ポンプ・ファンなどの加減速」「弁・栓の急開閉」「サージ・水撃」 がある瞬間は非定常流。それ以外の 定常運転中 は定常流として扱うのが基本。

②:設計での扱いの違い

場面 設計の前提
通常運転・容量設計 定常流(連続式・ベルヌーイ式)
起動・停止・水撃の検討 非定常流(過渡応答・ウォーターハンマー解析)
緊急遮断時の挙動 非定常流

配管・ダクトのサイズ計算は定常流前提水撃や緊急時の異常検討は非定常流前提、というのが実務での使い分け。

③:層流・乱流との関係

定常流/非定常流」と「層流/乱流」は別の軸の分類。

分類軸 区分
時間変化 定常流 ⇔ 非定常流
流速分布 層流 ⇔ 乱流
密度変化 非圧縮性 ⇔ 圧縮性

→ 実際の建築設備の水流は 「定常 × 乱流 × 非圧縮性」 が標準。これで連続式・ベルヌーイ式の前提を全て満たします。

定常流とベルヌーイの定理

定常流の理解で最も重要なのが、連続の式とベルヌーイの定理 の前提条件としての位置付け。

①:連続の式

流体の質量保存則を流れに沿って表現した式。

ρ₁A₁v₁ = ρ₂A₂v₂  (任意の2断面で)

非圧縮性なら、

A₁v₁ = A₂v₂  (流量Q = 一定)

→ 配管が細くなれば流速が速くなる、太くなれば遅くなる、という現象を表しています。

前提条件

条件 内容
定常流 必須前提
質量保存 流れの途中で漏れ・出入りがない
非圧縮性(液体) 密度ρ一定

②:ベルヌーイの定理

エネルギー保存則を流体に適用した式。

P + (1/2)ρv² + ρgh = 一定  (流線に沿って)
意味
P 静圧(圧力エネルギー)
(1/2)ρv² 動圧(運動エネルギー)
ρgh 位置エネルギー

→ 流線に沿った各点で 「圧力+運動+位置」のエネルギーの合計が一定 という関係。

前提条件

条件 内容
定常流 必須前提
非粘性流体 摩擦損失なし(実務では摩擦項を補正)
非圧縮性 液体は基本OK
流線に沿った関係 流線を跨ぐ計算は別

③:実務で使うときは「拡張ベルヌーイ式」

理論ベルヌーイ式に 摩擦損失hf局部損失hL を加えた形で実務に使います。

(P₁/ρg) + (v₁²/2g) + h₁ = (P₂/ρg) + (v₂²/2g) + h₂ + hf + hL

→ 給水ポンプ揚程計算・配管圧力損失計算で使う基本式。

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建築設備設計での定常流の使い方

実務で定常流仮定がどう使われるか、設備別に整理します。

①:給水設備

設計項目 定常流前提の使い方
配管径選定 設計流量Qで定常流とし、流速2 m/s以下になるよう管径決定
ポンプ揚程計算 ベルヌーイ式で必要揚程=高低差+摩擦損失+静圧
加圧給水ポンプ容量 定常運転時の最大流量を基準

②:排水設備

設計項目 定常流前提の使い方
排水管径 排水負荷単位法(FU法)で定常流量に換算
通気管設計 排水時の管内圧力変動を平準化
トラップ封水保持 定常流条件で封水深を維持

③:空調設備(ダクト)

設計項目 定常流前提の使い方
ダクト径選定 設計風量で定常流、風速8 m/s前後
送風機静圧計算 ダクト摩擦損失+局部損失(定常流前提)
空気バランス 各吹出口・吸込口の流量を定常状態で平準化

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④:消火設備

設計項目 定常流前提の使い方
スプリンクラー 1個放水時の流量・圧力で配管径決定
連結送水管 消防車送水時の必要圧力計算
屋内消火栓 ノズル圧0.17 MPa以上、定常流条件

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⑤:換気設備

設計項目 定常流前提の使い方
換気回数 必要換気量を定常風量で確保
ガラリサイズ 通過風速を定常流で設定(一般2〜3 m/s)

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現場・施工管理での扱い

施工管理目線で、定常流関連の現場対応を整理します。

①:試運転調整時のバランス調整

施工後の試運転で、各吹出口・蛇口の流量を測定し、設計の定常流量に合わせて バランス調整 を行います。

設備 調整方法
空調 ダンパー絞り、VAV調整
給水 バルブ絞り、定流量弁
排水 通気の風量確認

→ 試運転で 「定常状態」を作り、各点の流量・圧力が設計値か をチェックします。

②:非定常状態(水撃)対策

定常流仮定の外側で起こる ウォーターハンマー などの非定常現象は、別途対策が必要です。

対策 内容
水撃防止器 エアバッファ、ダイヤフラム式
弁の緩開閉 急閉鎖を避ける制御
配管支持 振動・衝撃に耐える支持間隔

③:流量計測と検査

検査項目 計測法
給水流量 流量計(電磁式、超音波式)
風量 風速計、ピトー管
排水勾配確認 水流テスト

→ いずれも 定常状態で計測 することが鉄則。流量変動中は正確な値が出ません。

④:設計図書での確認

チェック項目 内容
配管・ダクトサイズ 定常流量に基づき妥当か
ポンプ揚程・送風機静圧 ベルヌーイ式の損失計算に整合
流速 給水2 m/s以下、排水主管適切、ダクト8 m/s前後

→ 設備設計図書のレビューで、これらが定常流前提で計算されているかを確認します。

定常流を扱う上での注意点

最後に注意点を整理します。

注意点①:「定常流=実流」ではない

実際の現場の流れは 完全な定常流ではない ことを理解しておく必要があります。設計は近似モデルであり、実流量は時間で変動します。設計の安全率(1.5〜2倍)で吸収する のが基本。

注意点②:起動・停止の瞬間は非定常流

ポンプ起動、ファン停止、バルブ急閉鎖の瞬間は 非定常流。この場面では別の解析(過渡応答・ウォーターハンマー)が必要で、定常流仮定では危険です。

注意点③:層流・乱流の前提も確認

定常流でも、流速が遅すぎると層流、速すぎると乱流に変わります。レイノルズ数Re で判定し、設計式が適用範囲内か確認します。建築設備の水流は 乱流(Re > 4,000)が標準

注意点④:エネルギー損失(摩擦・局部)の計上漏れに注意

理論ベルヌーイ式は 摩擦損失ゼロ の理想式。実務では 管摩擦係数λ、局部抵抗係数ζ を必ず計上。

損失の種類
直管摩擦損失 配管長 × λ × (v²/2g)
局部損失 曲がり、合流、弁、絞りなど

注意点⑤:時間変動の大きい設備は要注意

設備 時間変動の大きさ
給湯(瞬間湯沸かし) 大(負荷変動激しい)
排水(瞬間流入)
空調連続運転 小(ほぼ定常)
連続給水

→ 変動の大きい系統は 「ピーク負荷時の定常流」 で設計するか、変動シミュレーションを別途行います。

僕も施工管理として給水ポンプの試運転に立ち会ったとき、ベテラン設備技術者が「設計流量はQ=150 L/min、揚程30m。連続式とベルヌーイで管内流速1.8 m/sに収まっている。摩擦損失5m、局部損失3m、揚程22m+8m=30mで設計値ピッタリ」と即座に試運転データと設計を突き合わせていたのを聞いて、「定常流の式を体に入れている技術者は、実物の挙動と頭の中の計算がリアルタイムで照合できる」と痛感した記憶があります。設備設計の式の 「背景にある定常流仮定」 を知っているかどうかで、現場での判断速度がまるで違いますね。

定常流に関する情報まとめ

  • 定常流とは:流れの速度・圧力が時間によって変化しない流体の流れ
  • 「定常=動いていない」ではなく「時間変化がない」状態
  • 非定常流は起動・停止・水撃など過渡的な現象で発生
  • 連続の式・ベルヌーイの定理は 定常流が必須前提
  • 設備設計:給水・排水・空調・消火・換気いずれも定常流前提で容量決定
  • 施工管理:試運転バランス調整、流量計測は定常状態で実施
  • 非定常時:ウォーターハンマー対策、過渡応答解析が別途必要
  • 注意点:実流との乖離、起動停止時、層流/乱流、損失計上、変動の大きい系統

以上が定常流に関する情報のまとめです。

定常流仮定」は建築設備設計の出発点。配管径・ポンプ揚程・ダクトサイズなど、ほぼ全ての設計値がこの仮定の上で導かれていることを知っておくと、設計図書を読むときの解像度が一段上がります。一通り定常流に関する基礎知識は理解できたと思います。

合わせて、設備工事・流体に関連する知識もチェックしておきましょう。

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