- 短絡ってなに?
- 原因は?
- 事故例について見てみたい
- 短絡電流はどうやって求めるの?
- 遮断方法って?
上記の様な悩みを解決します。
短絡とは何か?は意外と分かりにくい部分だと思います。ただ「短絡」という言葉は現場で頻繁に使用されますので、キッチリ理解しておきましょう。
この記事では短絡(ショート)とは?といったところから、原因、事故例、短絡電流の求め方、遮断方法などについて解説していきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
短絡(ショート)とは?
短絡(ショート)とは、結論「めちゃくちゃ小さい抵抗に電流が流れること」です。
オームの法則より「V=RI」ですのでつまり、電圧は電流と抵抗値を掛けたものになります。これを変形すると「I=V/R」ですよね。
この式から分かることは、抵抗が小さくなればなるほど電流の値は大きくなるということです。抵抗は「遮るもの」ですから、遮るものが少なくなれば電流の値が大きくなるのは簡単にイメージできると思います。
電圧の値が100Vだとしましょう。抵抗の値が100Ωだとしたら、電流の値は1Aになります。抵抗の値が10Ωだったら電流は10A、抵抗の値が1Ωだったら電流は100Aです。
短絡とはこのように、極端に小さい抵抗に電流が流れることです。
極端に小さい抵抗ということは、極端に大きい電流が流れますから事故に繋がります。短絡はいけないことなので、短絡が起こらないよう注意する必要があります。
短絡電流とは?(短絡電流の大きさ)
短絡電流とは、結論「短絡した際に流れる電流のこと」です。
極端に大きな電流になるので、事故電流と呼ばれたりもします。基本的に「よくない電流」としての認識が強いです。
結論、2000Aくらいです。
短絡電流の大きさはインピーダンスと電圧によって変化します。
建物が大きく、電圧が大きければ大きいほど、短絡電流の値は大きくなります。また、インピーダンスが小さければ小さいほど、短絡電流の値は大きくなります。
建物の規模やインピーダンスによっても異なりますが、一般的な住宅を想定すると、短絡電流は2000Aくらいです(ざっくり)。参考までに。
ちなみに、落雷は1000Aから20万Aですので、下手な落雷よりも大きいです。
あの雷よりも大きい電流が流れると考えると、短絡電流のヤバさが伝わるのではないでしょうか?
短絡電流の計算方法
それぞれの計算方法は下記です。
短絡電流の求め方
- 単相回路:短絡電流=V/Z(電圧/インピーダンス)
- 三相回路:短絡電流=V/√3Z(電圧/√3×インピーダンス)
三相の場合は、本来のインピーダンスに√3を掛けますので注意が必要です。
上記の方法が一般的ですが、パーセントインピーダンスを使用して求めるやる方もあります。これに関しては計算式が複雑になるので、この記事では省きます。
電験三種なんかを受験する場合は必要ですが、実際の業務ではほぼ使いません。
使われるとしたら、短絡電流用の遮断器の大きさを選定する際には使われたりします。電気設計とか、電気工事業者の所長など、上流工程に携わる人なら必要になるかもしれません。
ただ、受変電設備の検討はかなり経験が必要ですし、重要なポストに付いていなかったら気にしなくていいと思いますよ。
短絡事故とは?(事故例と共に)
短絡事故とは、結論「短絡電流により、悪い出来事が起こること」です。
そもそも短絡自体が悪い出来事ですが、、、。短絡事故は短絡が起こることによって、下記のように被害が起こってしまうことを指します。
短絡事故の具体例
- 短絡電流による火災
- 短絡電流によって電気設備が故障する
- 短絡電流に感電してしまった人がいる
短絡事故の具体例を挙げると「ネズミちゃんが電線をかじる」などが挙げられます。
ネズミちゃんは体が小さいので、盤の中に入りこんだりします。電線をエサと間違えてかじってしまうことにより、短絡事故が発生します。
結論、爆発します。
ネズミちゃんには抵抗がありますから、抵抗部分で電気エネルギーが熱エネルギーに変換されます。電流の値は莫大ですので、発生する熱エネルギーも莫大です。ドカン。
大きな熱エネルギーが発生するので、火災の危険性もあります。人によっては「短絡火災」と呼んだりもしますね。
要は短絡が起こると、熱が発生して、燃えます。短絡火災が発生すると、近くにある他の周辺設備まで事故が広がる可能性があるので、注意しなければなりません。
短絡の原因
短絡の原因その①誤接続
短絡の原因その①は「誤接続」です。
誤接続の意味は「間違えて違う電線を接続してしまった」という話ではありません。作業している最中に誤って電気的接続が起こってしまったという意味です。
例えば改修工事の最中、盤付近には電流が流れている電線がたくさんあります。
盤の近くで作業に夢中になっていて、持っている電線が電流が流れている電線と繋がってしまうのが誤接続です。
人なんて10アンペアあれば簡単に命を落としますからね。2000Aが人体に流れ込んだら、200回はあの世にいかなければなりません。
盤付近もしくは電流が流れている電線の近くで作業する際は、誤接続に十分注意しましょう。
短絡の原因その②絶縁被覆の劣化
短絡の原因そのは「絶縁被覆の劣化」です。
この世に劣化しないものなんてありません。勿論、電線も劣化します。
電線は基本的に二重構造や三重構造になっていますよね。中に芯線(実際に電流が流れるところ)があり、芯線の周りに絶縁被覆があります。
絶縁被覆があるから人は電線に触れても感電しませんが、経年劣化やその他要因で絶縁被覆が破れ、芯線が剥き出しになってしまうことがあるんです。
芯線には電気が流れているので、触ったらアウトです。短絡します。
短絡の原因その③ネズミちゃん
短絡の原因そのは「ネズミちゃん」です。
先ほどの短絡事故例でも話しましたが、ネズミちゃんは電気事故あるあるですよ。割と戦犯で、他の事故にも幅広く携わります。
電線を入れる部分にはパテが塗られていますし、盤が開けっ放しにされていることも無いんです。パテは水が入らないようにする為のものですが、ネズミの侵入対策にもなっています。
ただ、ネズミは1.5cmから3cmもあれば侵入します。
盤に直接入ることはなくても、盤に入る配管に侵入し、配管を伝って盤まで辿りついたりするんです。対策が大変ですね。
短絡電流を遮断するには?
短絡電流を遮断するには、結論、配線用遮断器を使います。
開閉器でも、断路器でも遮断することはできません。短絡電流を遮断できるのは、遮断器だけです。遮断器と断路器と開閉器の違いについては別の記事でまとめるので、気になった方はチェックしてみてください。
配線用遮断器を使いますといっても、配線用遮断器にも大きいものから小さいものがあります。20Aまでしか遮断できないものもあれば、200Aまで遮断できるものもあるんです。
例えば、遮断器容量が1500Aだとして2000Aの短絡電流が発生したとすると、遮断器容量を超えているので短絡電流を遮断することができません。遮断器が機能せず、短絡電流が流れ続けてしまいます。
「じゃあとりあえず一番大きいのにしておけばいいんじゃね?」
という発想だと、経済的ではありませんし盤のスペースも取られてしまいます。(遮断容量の大きい遮断器はサイズが大きい)
先ほども言ったとおり、短絡電流の大きさは条件によって異なります。
正確に短絡電流の大きさを想定し、適切な遮断器の選定をする必要があります。
短絡電流の遮断には保護強調が使われる場合もある
短絡電流の遮断には保護強調が使われる場合もあります。
保護強調とは「短絡電流を遮断する為に、段階的に遮断器を設置すること」です。
10Aの遮断器が10個あれば、100Aの短絡電流を遮断できます。一つの遮断器ではなく、複数の遮断器を使って短絡電流を遮断しようという考え方です。
建物で短絡電流が発生すると、建物に電気を供給している電線に電気が逆流して、そこから隣の建物に短絡電流が流れていってしまったりもするんです。
よって、短絡電流しかり、異常電流は広い範囲に広がらないよう、措置が必要になります。
その為の手段の一つが保護強調という訳です。
短絡に関する情報まとめ
短絡に関する情報まとめ
- 短絡とは:めちゃくちゃ小さい抵抗に電流が流れること
- 短絡電流とは:短絡した際に流れる電流のこと
- 短絡電流の大きさ:2000Aくらい
- 短絡電流の計算方法:単相なら「I=V/Z」三相なら「I=V/√3Z」
- 短絡事故とは:短絡電流により、悪い出来事が起こること
- 短絡事故の原因:誤接続、絶縁被覆の劣化、ネズミちゃん
- 短絡電流を遮断するには:配線用遮断器、保護強調
以上が短絡に関する情報のまとめとなります。
電気は便利な反面、非常に危険です。間違えて使えば命を落としてしまう危険性もありますし、自分が加害者になってしまう可能性もあります。
適切な知識を身につけて、自分の身を守れるようにしましょう。
また、短絡と似た様な単語で「地絡」というものもあります。合わせて知識として理解しておきましょう。
下に分かりやすい記事のリンクを貼っておくので、よかったら読んでみてください。