耐力とは?強度との違い、降伏耐力、終局耐力、保有耐力など

  • 耐力ってなに?
  • 強度と耐力って同じ?違う?
  • 降伏耐力・終局耐力・保有耐力って?
  • 許容耐力ってどこに出てくる?
  • 保有水平耐力計算とは?
  • 現場では耐力をどう見たらいい?

上記の様な悩みを解決します。

「耐力」は構造設計の現場で強度より頻繁に登場する言葉ですが、「強度との違い」が曖昧なまま使っている人が意外と多い概念です。簡単に言うと、強度=材料が壊れる限界の力(単位面積当たり)耐力=部材として持てる限界の力(部材全体)。例えば鉄筋の強度はSD345=345 N/mm²ですが、柱としての耐力は2,000kNのように、「強度を断面積で積分して、座屈や圧縮の影響を加味した結果」が耐力。さらに降伏耐力・終局耐力・保有耐力と段階別に呼び分けがあります。本記事では、この紛らわしい言葉の使い分けと、施工管理として現場で見るときの考え方を整理します。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

耐力とは?

耐力とは、結論「部材や構造物が壊れずに保持できる限界の力(=破壊・降伏に至るまでの抵抗力)」のことです。

英語では strength または capacity(キャパシティ)と表現されますが、構造設計では bearing capacityresistance が文脈で使い分けられます。単位はN(ニュートン)または kN(キロニュートン)で、「部材1本として何kN耐えられるか」という形で表現されます。

ざっくりイメージ

椅子に座ったとき、椅子の脚が壊れずに支えてくれる力の限界。椅子に80kgの人が座る→大丈夫(脚の耐力以下)、椅子に150kgの人が座る→軋む(耐力近く)、椅子に200kgの人が座る→脚がバキッと折れる(耐力超過)、というイメージ。

→ この「折れる直前まで持てる力」が椅子の脚の耐力。建築の柱・梁・壁・基礎、すべての部材に同じ概念があります。

強度と耐力の違い

混同されがちな両者を整理します。

項目 強度 耐力
単位 N/mm²(=MPa) N または kN
対象 材料(鋼材・コンクリート単体) 部材(柱・梁・壁・基礎)
SS400の引張強度=400 N/mm² H鋼柱H300×300の圧縮耐力=2,500 kN
計算 試験で測定(引張試験など) 強度×断面積×補正係数
役割 材料選定の基準 部材設計・安全性の評価

→ つまり「強度は材料の性質」「耐力は部材の能力」。同じ材料でも部材の形状・サイズで耐力は変わる。

式で関係を理解する

最もシンプルな引張部材を例にすると、

引張耐力 N_t = 引張強度 σ_y × 有効断面積 A

例えばSS400(降伏強度235 N/mm²)で断面積100mm²の鋼材なら、引張耐力 = 235 × 100 = 23,500 N = 23.5 kN。強度に断面積をかければ耐力という関係。

ただしこれは最も単純な引張部材の話。圧縮部材(柱)は座屈の影響で、許容耐力<強度×断面積になります。

なぜ建築で耐力が大事か

設計の最終ゴールは「部材が壊れないこと」で、その判定に使うのが耐力。具体的には、設計荷重≦許容耐力(長期・短期)、終局時荷重≦終局耐力(極稀地震)、保有水平耐力計算で層全体の保有耐力≧必要保有水平耐力、というあたり。

→ つまり「設計時の主役は耐力、材料の主役は強度」。両者を区別して使えるようになると、構造計算書の読解が一気に楽になります。

軸方向力の話はこちらの記事も参考にしてください。

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強度との違い(具体例で整理)

強度と耐力、似ているようで違うこの2つを、具体例で並べます。

①材料の強度の例

材料単体の強さは「強度」で表現。

材料 強度の種類 数値
SS400(一般構造用鋼材) 引張強度 400〜510 N/mm²
SS400 降伏強度(降伏点) 235 N/mm²以上
SD345(異形鉄筋) 引張強度 490〜620 N/mm²
SD345 降伏強度 345 N/mm²以上
Fc24コンクリート 圧縮強度 24 N/mm²
Fc24コンクリート 引張強度 約2.4 N/mm²(圧縮の1/10程度)
木材(スギ) 圧縮強度(縦方向) 約25 N/mm²

→ いずれも「単位面積当たりの限界力」として表現される。これが強度。

②部材の耐力の例

材料を部材として組んだときの強さが「耐力」。

部材 耐力の種類 数値の例
H鋼柱H300×300×10×15 圧縮耐力(座屈考慮) 約2,400 kN(層高3m)
RC柱500×500(主筋12-D22) 軸方向圧縮耐力 約4,000 kN
RC梁300×600(主筋4-D22) 曲げ降伏耐力 約450 kN·m
高力ボルトF10TM22 1本当たり摩擦接合耐力 約95 kN(2面摩擦)
杭基礎(SC杭φ500、L=20m) 鉛直支持耐力 約1,500 kN/本

→ 同じH鋼でも層高や横補剛で耐力が変わる、同じRC柱でも主筋本数で変わる。「部材の状況に応じた限界力」として計算される。

③なぜ強度=耐力にならないか

「強度×断面積=耐力」と単純化できないのは、圧縮部材は座屈の影響で許容応力度が低減、長尺部材は細長比が大きいほど許容応力度を下げる、接合部はボルト孔欠損で有効断面積が減る、コンクリートは鉄筋とコンクリートの分担比・かぶり厚の影響、温度・経年で高温・腐食で耐力低下、といった補正が入るから。

→ つまり「強度はあくまで理論最大値」で、「現実の耐力はそこから減らした値」として設計される。

④日常会話でのごっちゃ感

実務では会話の中で「強度」と「耐力」を混同して使うケースもあります。「この梁、もう少し強度が欲しい」は文脈的には耐力(梁としての能力を指す)、「コンクリート強度を上げる」は文脈的には強度(材料単体)、「保有耐力計算」はこれは耐力(部材・構造物全体)、というあたり。

→ 厳密には区別すべきですが、口語では混在する。書面・計算書では必ず区別するのがプロのマナー。

⑤「強度がある」と「耐力がある」の使い分け

使い分けは、「鉄筋は強度がある」が材料が強い(N/mm²レベル)、「この柱は耐力がある」が部材として持てる(kNレベル)、「強度試験」がコンクリートテストピース・鋼材試験片、「耐力試験」が部材の実大載荷試験、というあたり。

→ 試験の種類でも区別される。コンクリート圧縮試験は強度試験、柱の載荷実験は耐力試験

降伏比などコンクリート系の話はこちらの記事も参考にしてください。

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降伏耐力・終局耐力・保有耐力の使い分け

「耐力」と一言で言っても、段階別の呼び方があります。これを使い分けられると構造計算書が読めるようになります。

①降伏耐力

「降伏」とは、材料が弾性域から塑性域に移る瞬間の力。鉄筋なら降伏点(SD345なら345 N/mm²×断面積)、鋼材なら降伏応力度(SS400なら235 N/mm²×断面積)、部材としての降伏耐力 = 降伏応力度×有効断面積、というあたり。

「永久変形が始まる限界」が降伏耐力。許容応力度設計では、長期荷重に対しては降伏耐力の70%程度を許容耐力としています。

②終局耐力

部材が完全に破壊する直前の力。降伏よりさらに大きい。鋼材の終局強度(引張強さ。SS400なら400〜510 N/mm²)、コンクリート部材の最大荷重(圧縮破壊・曲げ崩壊)、部材としての終局耐力 = 引張強度×有効断面積×補正係数、というあたり。

「破壊する寸前の最大力」が終局耐力。極稀地震(レベル2地震動)に対する設計で使う概念。

③保有耐力

建物全体・層全体が地震に対して保持している水平方向の耐力。各層の柱・梁・壁が降伏した後の崩壊メカニズムで計算、層単位で「この階は何kN横向きに耐えられるか」を算出、必要保有水平耐力(=想定地震力)と比較して安全性を評価、という流れ。

保有水平耐力 ≥ 必要保有水平耐力であれば、極稀地震でも建物は崩壊しない、と判断できる。

④許容耐力

「許容耐力」は安全率を考慮した、設計上で使ってよい耐力上限。長期許容耐力は常時荷重に対する許容(降伏耐力×安全率0.6〜0.7)、短期許容耐力は地震時等に対する許容(降伏耐力×安全率0.85〜0.9)、というあたり。

→ 許容応力度設計では「設計外力 ≤ 許容耐力」を満たすように部材を選定。

⑤4種類の耐力の関係

数値の大きさ順は、

許容耐力 < 降伏耐力 < 終局耐力
保有耐力 = 全部材の崩壊メカニズム時の耐力(層単位)

→ 実用上、許容耐力で長期設計、降伏耐力・終局耐力で地震時設計、保有耐力で建物全体評価、と段階を分けて使い分ける。

⑥呼び分けの早見表

耐力の種類 単位 使う場面
許容耐力 kN/部材 一次設計(常時・中地震)
降伏耐力 kN/部材 一次・二次設計の境界
終局耐力 kN/部材 二次設計(大地震)
保有水平耐力 kN/層 建物全体の地震時安全性

→ 構造計算書を読むときは、「どの段階の耐力の話か」を頭に置きながら読むと内容が整理できます。

降伏比の解説はこちらの記事を参考にしてください。

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保有水平耐力計算と耐力

建築基準法で求められる「保有水平耐力計算」は、耐力の集大成のような検討。簡単に整理します。

①保有水平耐力計算とは

階高31m以下の建物でルート3(動的解析より簡略な耐震計算)を選ぶと、保有水平耐力計算が必須になります。各層の柱・梁・壁が降伏したときの水平耐力を計算、これが必要保有水平耐力(≒設計地震力)を上回ることを確認、上回れば極稀地震に対して建物が崩壊しないと評価、という流れ。

②計算の概要

保有水平耐力 Qu = 部材ごとの降伏耐力 × メカニズム形成時の係数
必要保有水平耐力 Qun = Ds × Fes × Qud

ここでQudが標準せん断力係数×重量(地震層せん断力)、Dsが構造特性係数(粘り強さ)、Fesが形状特性係数(剛性率・偏心率)。

→ 詳細は省きますが、「層ごとの降伏耐力を全部足したもの」が保有水平耐力、と覚えておけば概念はOK。

③Ds(構造特性係数)の重要性

Dsは「建物の粘り強さ」を表す係数。粘り強い構造(ラーメン構造)でDs=0.25〜0.30(必要保有耐力が小さい)、脆い構造(壁式)でDs=0.55〜0.70(必要保有耐力が大きい)、というあたり。

「降伏後にどれだけ変形できるか」が建物の必要耐力を左右する。粘り強い建物は耐力が小さくても済む、脆い建物は耐力を多めに持たせる必要がある。

④施工管理として知っておくべきこと

保有耐力計算は設計者の領域ですが、施工管理としても、保有耐力は全部材が想定通り配筋されて初めて成立、配筋の本数・径・位置が違うと計算の前提が崩れる、特に主筋・帯筋の不足は耐力に直結、というあたりは押さえておきたい。

→ 配筋検査で「設計通りか」を厳格にチェックすることが、計算上の保有耐力を実現する施工管理の責任。

剛性率・偏心率(Fesに関係)はこちらの記事を参考にしてください。

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現場で耐力を見る視点

施工管理として、現場で耐力を意識する場面を整理します。

①材料受け入れ時

材料の強度が、設計通りであることを確認することで、設計上の耐力が成立します。鉄筋ならミルシートでSD345等の規格・降伏点・引張強度を確認、コンクリートなら呼び強度で発注しテストピースで実圧縮強度を確認、鋼材ならミルシートでSS400・SM490等の規格を確認、というあたり。

→ 材料強度が設計値を満たさないと、計算上の耐力は実現しない。ミルシートチェックは耐力管理の入り口

②配筋検査での確認

部材の耐力は主筋・帯筋・配置で決まります。配筋検査では、主筋本数・径・位置が設計通りか、帯筋(フープ)・スターラップのピッチが設計通りか、かぶり厚が確保されているか、定着長・継手位置が規定通りか、というあたりを確認。

→ 「配筋表通り」が耐力の前提。1本でも欠けたり位置がずれたりすると、計算上の耐力は実現しない。

③コンクリート品質

コンクリートの圧縮強度が、柱・梁の耐力に直結。配合報告書・テストピース試験成績書、スランプ・空気量・温度などの受入検査、28日強度の試験結果、というあたりが要点。

→ 設計基準強度Fcに対し、構造体強度補正値+必要強度を満たすことが要求される。

④打設・養生の管理

材料が良くても、施工が悪いと耐力は出ない。バイブレーターの掛け方(ジャンカ防止)、養生期間と温度管理(強度発現)、打ち継ぎ目の処理(継ぎ目の弱点化を防ぐ)、というあたりがポイント。

→ 「設計上の耐力を現場で実現する」のが施工管理の本質的な仕事。

ミルシートのチェック方法はこちらの記事を参考にしてください。

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⑤完成後の構造健全性

竣工後も、耐力は鉄筋の腐食(中性化・塩害)、コンクリートのひび割れ(かぶり剥落)、鋼材の塗装劣化(発錆)、不同沈下による変形、といった要因で低下する可能性があります。

長期維持管理計画で、これらを定期的にチェックすることで耐力低下を抑える。

耐力に関する情報まとめ

最後に、耐力の重要ポイントを整理します。

  • 定義:部材や構造物が壊れずに保持できる限界の力(N、kN)
  • 強度との違い:強度=材料(N/mm²)、耐力=部材(N、kN)
  • 段階別の呼び方:許容耐力 < 降伏耐力 < 終局耐力
  • 保有水平耐力:層全体の崩壊時水平耐力(必要保有水平耐力と比較)
  • 計算式の基本:耐力=強度×断面積×補正係数(座屈・接合部欠損等)
  • 設計の使い分け:長期=許容耐力、地震時=降伏耐力・終局耐力、極稀地震=保有耐力
  • 現場での視点:材料強度+配筋+施工品質=設計耐力の実現
  • 維持管理:腐食・ひび割れ等で経年劣化、定期チェックが必要

以上が耐力に関する情報のまとめです。

耐力は「強度を部材として使えるレベルまで落とし込んだ実力値」で、構造計算書の主役です。強度との区別(N/mm² vs kN)、段階別の呼び分け(許容・降伏・終局・保有)、現場での実現方法(材料・配筋・施工)を押さえておけば、構造計算書の読解と現場の品質管理がつながって見えるようになりますよ。一通り耐力の基礎知識は理解できたと思います。

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