- 耐久設計基準強度ってなに?
- Fc・Fd・Fq の違いがよく分からない
- 計画供用期間と何の関係があるの?
- 短期・標準・長期・超長期で値は変わる?
- 呼び強度とどう違う?
- 施工管理で何を確認すればいい?
上記の様な悩みを解決します。
耐久設計基準強度とは、結論「コンクリート構造物が計画した供用期間中に所要の耐久性を確保するために必要な圧縮強度」のことです。記号は Fd(durability の d)。JASS 5(建築工事標準仕様書・コンクリート工事)で定められた概念で、計画供用期間(短期 / 標準 / 長期 / 超長期)に応じて 18 / 24 / 30 / 36 N/mm²の値が規定されています。設計者にとって紛らわしいのが 設計基準強度 Fc(構造強度を満たす値)と 品質基準強度 Fq(Fc と Fd の大きい方)の関係。これらをきちんと整理しないと「何を持って配合設計するか」が決まりません。本記事では、Fd の定義・Fc/Fq との違い・計画供用期間との対応・現場で何を確認すべきかを、施工管理が現場で混乱しないレベルで整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
耐久設計基準強度とは?
耐久設計基準強度とは、結論「構造物が計画供用期間中に必要な耐久性能を確保するために、コンクリートに求められる最低圧縮強度」のことです。
記号は Fd、単位は N/mm²。JASS 5(日本建築学会・建築工事標準仕様書 5:鉄筋コンクリート工事)で規定されています。
「耐久性」とは何を指すか
ここでいう耐久性は、
- 中性化への抵抗:表面から中性化が進み、鉄筋が錆びるのを遅らせる
- 塩害への抵抗:塩化物イオンの浸透を抑え、鉄筋を守る
- 凍害への抵抗:凍結融解作用への耐性
- アルカリシリカ反応の抑制:内部膨張ひび割れを防ぐ
- 化学的侵食への抵抗:硫酸塩・酸性環境への耐性
→ これらすべてに「コンクリートが緻密(高強度)であるほど有利」という関係があり、強度=耐久性の指標という考え方が JASS 5 に組み込まれています。
強度の単位 N/mm² の確認
1 N/mm² = 1 MPa = 約10 kgf/cm²
→ 「Fd=24 N/mm²」は約 240 kgf/cm²、「Fd=36 N/mm²」は約 360 kgf/cm²。
設計基準強度(Fc)の話はこちら。

Fc・Fd・Fq の違い
①3つの強度の役割分担
| 記号 | 名称 | 何を満たす強度か |
|---|---|---|
| Fc | 設計基準強度 | 構造耐力を満たす強度(構造設計から決まる) |
| Fd | 耐久設計基準強度 | 耐久性を満たす強度(計画供用期間から決まる) |
| Fq | 品質基準強度 | Fc と Fd の大きい方 |
②Fq=max(Fc, Fd)
最終的に 配合設計の目標になるのは 品質基準強度 Fq。
Fq = max(Fc, Fd)
→ 「Fc と Fd を比べて大きい方が Fq になる」というシンプルなルール。両方を満たす強度を選ぶ、という思想です。
③典型例で違いを見る
例えば計画供用期間が 長期(Fd=30 N/mm²)の建物で、構造設計から Fc=24 N/mm² が出てきたとき、
Fq = max(Fc=24, Fd=30) = 30 N/mm²
→ 構造的には24で足りるけど、耐久性のために30が必要。配合設計は Fq=30 を目標に進めます。
逆に、構造設計が要求する Fc=36 のときは、
Fq = max(Fc=36, Fd=30) = 36 N/mm²
→ Fc が支配的、耐久性も自動的に確保される。
④構造体強度補正値 mSn の追加
実際に生コン工場に発注する 呼び強度 Fbは、Fq に 構造体強度補正値 mSnを加えた値。
Fb = Fq + mSn
- mSn:標準養生試験体と構造体強度の差(季節・配合で3〜6 N/mm²)
- 季節補正:夏は強度発現が早いが乾燥で低下、冬は遅い → 季節別の係数
→ 「Fb(呼び強度)= max(Fc, Fd) + mSn」というのが配合設計の最終フロー。
⑤具体的な強度フロー
例:標準的な事務所ビル、長期供用、Fc=27 N/mm²、夏季打設(mSn=3 N/mm²)
Fc = 27(構造設計から)
Fd = 30(長期供用から)
Fq = max(27, 30) = 30
Fb = 30 + 3 = 33 → 呼び強度 33 で発注
→ 構造的には27で足りるが、耐久性確保のため30、それに季節補正をして 呼び強度33という具合。
呼び強度の話はこちら。

計画供用期間と耐久設計基準強度
JASS 5 では、計画供用期間ごとに Fd の値が規定されています。
①計画供用期間の4区分
| 区分 | 計画供用期間 | 想定建物 |
|---|---|---|
| 短期 | 約30年 | 仮設建築物、暫定使用建物 |
| 標準 | 約65年 | 一般的な建物(事務所、住宅、店舗) |
| 長期 | 約100年 | 学校、病院、公的施設 |
| 超長期 | 約200年 | 重要文化財、超長寿命建物 |
→ 一般の住宅・事務所は 「標準」、学校・病院は 「長期」、というのが標準的な選び方。
②計画供用期間別の Fd
| 計画供用期間 | Fd(N/mm²) |
|---|---|
| 短期 | 18 |
| 標準 | 24 |
| 長期 | 30 |
| 超長期 | 36 |
→ 一般的な事務所(標準供用期間)では Fd=24 N/mm²、つまり 「最低でも 24 N/mm² の強度が必要」となります。
③計画供用期間と中性化との関係
中性化の進行速度は コンクリート強度に反比例します。
| 強度 | 中性化深さ(30年後の目安) |
|---|---|
| 18 N/mm² | 約30〜40 mm |
| 24 N/mm² | 約20〜25 mm |
| 30 N/mm² | 約15〜20 mm |
| 36 N/mm² | 約10〜15 mm |
→ かぶり厚 30mm を確保すれば、Fd=24 で 約65年は中性化が鉄筋に到達しない、というのが標準供用期間の根拠。
④Fd が低いとどうなるか
Fd を低く設計すると、
- 中性化が早く鉄筋に到達 → 鉄筋腐食、爆裂、補修費用増大
- 塩害・凍害への抵抗が低下
- 構造寿命が大幅に短くなる
→ 「初期コストを抑えても、長期的にはメンテ費用で逆転する」のが低強度コンクリートの落とし穴。
中性化の話はこちら。

かぶり厚の話はこちら。

耐久設計基準強度の決め方
実際に Fd を決めるフローを整理します。
①計画供用期間の決定
設計者が建物用途・発注者の要求から計画供用期間を決定。
- 発注者の意向(「100年もたせたい」等)
- 建物用途の標準(学校 → 長期、住宅 → 標準)
- 構造種別の傾向(RC → 標準〜長期、SRC → 長期〜超長期)
→ 計画供用期間が決まれば、Fd は JASS 5 の表から自動的に決まる。設計者の裁量は基本的にここだけ。
②構造設計から Fc を決定
並行して、構造設計者が 荷重・スパン・部材寸法から必要な Fc を計算。
- 一般的な事務所:Fc=21〜30 N/mm²
- 高強度コンクリート建物:Fc=36〜60 N/mm²
- 超高強度(超高層):Fc=80〜100 N/mm²
→ 構造設計の 柱断面積・配筋量を抑えるほど Fc を上げる必要があります。
③Fq=max(Fc, Fd) で品質基準強度確定
Fc と Fd を並べて、大きい方を Fq として採用。
④構造体強度補正値 mSn の決定
打設季節・配合・養生環境から mSn を決定(3〜6 N/mm²)。
| 季節 | 標準的な mSn |
|---|---|
| 春・秋 | 3 |
| 夏 | 3〜6(高温で蒸発・乾燥が問題) |
| 冬 | 6 |
→ 季節補正は 生コン工場と相談して決定。
⑤呼び強度 Fb の確定
Fb = Fq + mSn
→ これが 生コン発注時の呼び強度。「Fb = 30 N/mm²、スランプ18 cm、粗骨材最大寸法 20 mm」のような JIS A 5308 の指定で発注します。
設計基準強度との関係はこちら。

耐久設計基準強度に関する注意点
施工管理として 押さえておくべき注意点を整理します。
①計画供用期間が設計図書に明記されているか
設計図書(特記仕様書)に「計画供用期間:標準(約65年)」のような明記があるか必ず確認。明記がない場合は、Fc から Fq=Fd を逆算できないので、設計者に問い合わせること。
→ 「特記なし=標準」と勝手に解釈するのはトラブルの元。書面で確認するクセをつけると安心。
②配合報告書で Fb と Fq を確認
生コン工場が出してくる 配合計画書で、
- 呼び強度 Fb(発注値)
- 配合強度 F’c(設計強度に余裕を加えた値、Fb+1.73σ など)
- 設計基準強度 Fc・耐久設計基準強度 Fd・品質基準強度 Fq
→ これらが整合しているかを 着工前にチェックするのが施工管理の基本ワーク。
レミコンの話はこちら。

③構造体強度の確認は28日 / 91日 / 構造体補正後
構造体強度は 3つの試験で評価します。
| 試験 | 目的 |
|---|---|
| 標準養生 28日 | 配合の妥当性確認 |
| 構造体強度推定試験(28日) | 構造体に近い状態での強度推定 |
| 91日試験(高強度・低熱の場合) | 長期強度の確認 |
→ 試験結果がすべて Fq 以上を満たすことを確認。万が一不合格の場合は、コア抜き試験 → 構造評価 → 補強・撤去判断の流れになります。
④管理材齢を契約書に明記
通常は 28日材齢で管理ですが、低熱ポルトランド・高強度コンクリートでは 91日材齢になることがあります。管理材齢が28日と91日で配合が変わるので、生コン発注前に確定させておくのが大事。
低熱ポルトランドの話はこちら。

⑤Fd は強度規定だが、それだけでは耐久性は十分でない
Fd は 強度の最低基準ですが、耐久性確保には 水セメント比・かぶり厚・養生などの管理も並行で必要。
- 水セメント比(W/C)の上限:標準供用期間で 65%以下、長期で 60%以下
- かぶり厚:30 mm 以上が標準
- 湿潤養生期間:5 日以上(環境による)
→ 「Fd を満たしたから耐久性 OK」ではなく、配合・施工・養生の3点セットで耐久性が確保される、というのがポイント。
水セメント比の話はこちら。

⑥コア抜き試験で実物の強度確認
工事完了後、構造体の コア抜き試験で実物の強度を確認することがあります。
- 試験体強度と 構造体強度の差を mSn で推定していますが、実物のコア試験で再確認
- 強度不足の場合、構造評価 → 補強検討
→ コア抜き試験のサンプリング箇所・本数は、設計者・施工者・第三者検査機関が合意して決めます。
⑦特殊環境では追加の耐久性検討
JASS 5 の標準値は 一般環境を想定。以下のような 特殊環境では追加の耐久性検討が必要です。
- 海岸地帯(塩害環境):Fd を1段階上げる、塩害用混和材使用
- 凍害地域(北海道・東北):AE 剤・凍結融解抵抗試験
- 酸性土壌・温泉地:耐酸性配合、表面保護
→ 特殊環境では設計者・コンクリート技士と相談して、標準を超える耐久性検討を実施します。
耐久設計基準強度に関する情報まとめ
- 耐久設計基準強度(Fd):所要耐久性を確保するために必要な圧縮強度、JASS 5で規定
- 3つの強度の関係:Fq = max(Fc, Fd)、Fb = Fq + mSn
- 計画供用期間別の Fd:短期18 / 標準24 / 長期30 / 超長期36 N/mm²
- 計画供用期間の目安:標準65年(一般建物)、長期100年(学校・病院)、超長期200年(重要文化財)
- 強度と耐久性の関係:強度が高いほど中性化・塩害・凍害に強い
- 決め方:①計画供用期間決定 → ②Fc 計算 → ③Fq=max(Fc,Fd) → ④mSn 加算 → ⑤呼び強度 Fb
- 施工管理の注意点:①計画供用期間の明記、②配合計画書のチェック、③標準養生+構造体推定、④管理材齢の確認、⑤水セメント比・かぶり・養生も並行管理、⑥コア抜き試験、⑦特殊環境の追加検討
以上が耐久設計基準強度に関する情報のまとめです。Fd は「何年もたせる建物か」を強度で表現した数字で、JASS 5の表を引くだけと言えばそれまでですが、Fc とどっちが大きいかで配合設計が変わるという設計フロー全体への影響が大きい数値。施工管理側でも「特記仕様書に計画供用期間が書かれているか」「配合計画書の Fb が正しいか」を確認するクセをつけると、思わぬ強度不足トラブルを防げますね。
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