- スラブ記号ってなに?
- S1とかS2、RSってどういう意味?
- ASとBSとCSの違いは?
- 構造図と施工図で書き方が違うって聞いたけど…
- 配筋表とどう対応してるの?
- 新人現場監督として何を見ればいい?
上記の様な悩みを解決します。
「スラブ記号」は構造図に必ず出てくる、スラブの種類・厚さ・配筋を1文字で識別するための記号。新人時代に一番つまずきやすいのが、設計事務所ごとに記号の運用が微妙に違うところ。「うちの現場のS1は別の現場のS2の意味」みたいなことが普通にあって、最初はかなり混乱させられます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
スラブ記号とは?
スラブ記号とは、結論「構造図・躯体図において、スラブ(床版・屋根版)の種類や仕様を1〜2文字のアルファベットと番号で表す記号」のことです。
英語ではSlab Mark / Slab Symbolなどと表記されますが、日本の建築実務では「S1」「RS」のような表記が定着しています。
→ ざっくり、「構造図でスラブの仕様を一発で識別するラベル」がスラブ記号、というイメージです。
役割とS1とS2の違い
スラブ記号の役割は、スラブの種類(一般スラブ/屋根/庇など)を識別する、同じ建物内で仕様の違うスラブを区別する、配筋表・スラブ厚さ表との紐付けキーになる、平面図・伏図・断面図で同じスラブを追跡できる、というあたり。つまり、構造図の中で「この場所のスラブは、配筋表のどの行を見ればいいか」を一発で示すラベルです。
S1とS2の違いは、同じ建物の床版でも、たわみ・荷重条件・配筋量が違えば別の番号で識別します。S1が基本仕様の床(厚さ150、上下D10@200など)、S2が荷重大の床(厚さ200、上下D13@150など)、S3が耐火区画上の床(厚さ200、配筋強化)、というあたり。数字は設計者が割り当てた一連番号にすぎず、「数字が大きいほど厚い」というルールはありません。配筋表を見て初めて仕様が分かります。
スラブ記号と平面図の関係
スラブ記号は伏図(梁伏図・スラブ伏図)に書かれることが最も多く、平面図にはあまり書かれません。平面図が意匠の床仕上げ・段差を表現、伏図が構造の梁・柱・スラブを真上から見た図、構造詳細図が配筋・寸法を含む詳細、というあたり。スラブ記号を追うときは伏図を開く、と覚えておくと探しものが早くなります。躯体図全体の読み方は別記事も参考にしてください。

スラブの定義・種類・特徴は別記事で詳しく整理しています。

スラブ記号の主な種類
実務で頻出するスラブ記号を整理します。「Sは床、頭文字でスラブの種類」と覚えると、初見の記号でもだいたい意味が推定できるようになります。
主な記号の意味
S(一般スラブ)はS1, S2, S3…で、最も基本のスラブ。建物の各階の床で、数字は仕様の違いを表す一連番号、通常厚さ150〜250mm程度。
RS(屋根スラブ)はRoof Slabの略で、最上階の屋根スラブ。防水勾配、断熱、防水押え用の保護コンクリート、笠木との取り合いがあるため一般スラブと区別、厚さ150〜200mmが一般的。
FS(床スラブ/フロアスラブ)はFloor Slabの略で、一般スラブをFSと書く設計事務所もあります。「S=スラブ全般、FS=特に床」という使い分けの場合と、「FS=1階土間スラブ」という使い方の場合あり(事務所差)。
AS(庇スラブ)はAwning Slabまたは Arched Slabの頭文字。出入口・窓上の庇のスラブで、片持ち(キャンチレバー)構造になることが多い、鉄筋は上端主筋が支配(下端には引張が出ない)、というあたり。
BS(バルコニースラブ)はBalcony Slabの略で、バルコニー、ベランダの床。防水勾配・水切り・手摺取り合いがあるため一般スラブと別仕様、ASと同じく片持ちの場合は上端主筋が支配、というところ。
CS(キャンチスラブ/片持ちスラブ)はCantilever Slabの略で、庇・バルコニー・玄関ポーチなど、片側だけで支える片持ちスラブ。上端筋が引張、下端は構造的に効かない(上下逆の配筋)、ASやBSと意味が重なることが多く設計事務所により使い分け、というあたり。
TS(トップスラブ)はTop Slabの略で、地下構造物(水槽、地下タンク)の天版。上載荷重(土・水・上層階)で大きな荷重がかかります。
WS(壁スラブ)はWall Slabの略で、構造的にスラブとして扱われる壁。耐震壁を含む場合も。「壁式構造の壁」を指すこともあれば、「水槽の側壁」を指すことも。
ESL/ES(設備スラブ/設備機械室床)はEquipment Slabの略で、設備重量機器(受水槽、ボイラー)の架台床。通常スラブより厚い、配筋強化が必要です。
CTS(土間コンクリートスラブ)は、Concrete Terr Slabもしくは独自表記で、1階・地下の土間スラブ。構造的にスラブ扱いしないこともあります。
主要スラブ記号一覧表
| 記号 | 意味 | 主な使われ方 |
|---|---|---|
| S1, S2 | 一般スラブ | 各階の床 |
| RS | 屋根スラブ | 最上階の屋根 |
| FS | 床スラブ | 一般床(事務所差) |
| AS | 庇スラブ | 出入口・窓上の庇 |
| BS | バルコニースラブ | バルコニー・ベランダ |
| CS | 片持ちスラブ | 玄関ポーチなど |
| TS | トップスラブ | 地下構造物の天版 |
| WS | 壁スラブ | 構造壁 |
| ES | 設備スラブ | 設備機械室床 |
注意点として、上記は一般的な用例で、設計事務所・ゼネコン社内基準で表記が異なることが普通にあります。最初のページ(構造図凡例・記号表)に必ず一覧があるので、現場ではまず凡例ページを開くのが鉄則です。
スラブ記号と配筋表の関係
スラブ記号は単独で存在するのではなく、必ず配筋表(スラブ配筋表)とセットで運用されます。
配筋表の基本構成
| 記号 | 厚さ | 上端主筋 | 下端主筋 | 上端配力筋 | 下端配力筋 |
|---|---|---|---|---|---|
| S1 | 150 | D10@200 | D10@200 | D10@200 | D10@200 |
| S2 | 180 | D13@200 | D10@200 | D10@200 | D10@200 |
| S3 | 200 | D13@150 | D13@200 | D10@200 | D10@200 |
| RS | 200 | D13@150 | D13@150 | D13@200 | D13@200 |
| BS | 180 | D13@150 | D10@200 | D10@200 | D10@200 |
伏図とのリンクと検査
伏図とのリンクは、伏図にS1・S2・RSなどの記号がプロットされていて、その仕様は配筋表の同じ記号の行を見る、という構造。伏図で位置を確認→S2と分かる→配筋表のS2行を見る→厚さ180、上端D13@200…→配筋作業の指示書ができる、という流れ。
配筋検査では、伏図の記号→配筋表の仕様→現場の鉄筋を一致させます。鉄筋の径(D10/D13/D16)、ピッチ(@150/@200)、上端筋・下端筋の本数と位置、かぶり厚さ、を確認。配筋検査の流れは別記事も参考にしてください。

主筋と配力筋の方向は、スラブの短辺方向と長辺方向で決まります。短辺方向=主筋方向(応力大)、長辺方向=配力筋方向(応力小)、というあたり。伏図には主筋方向の矢印が書かれることが多く、配筋表の「主筋」がどっち向きか、現場で迷わないように一致させます。
構造図と施工図でのスラブ記号運用の違い
スラブ記号は構造図と施工図(躯体図)で表現が変わります。新人時代に混乱しがちなポイントです。
構造図と施工図
構造図のスラブ記号は、設計者(構造設計事務所)が作成、簡潔にS1・RS・BSなど、配筋表とセットで運用、構造的な意味(応力、たわみ)を踏まえた記号、というあたり。
施工図(躯体図)のスラブ記号は、ゼネコン施工管理が作成、構造図のS1を細分化することが多い、S1a / S1bのように同じ仕様でも位置別に番号付け、スリーブ・配管・墨出し位置の記載に合わせて番号が増殖、配筋ピッチ・鉄筋本数を伏図上に書き込む、というあたり。
図面同士の整合性については、構造図のS1が施工図ではS1a/S1b/S1cに分かれていても、配筋仕様は同一であるはず。施工図化の段階で配筋仕様が変わっていたら、それは設計変更です。
スラブ記号ごとの配筋詳細を断面図化したのがスラブ配筋詳細図。記号と配筋表だけでは見えにくい端部処理(梁との取り合い)を表現します。設計図と施工図の違いは別記事も参考にしてください。


スラブ記号の読み方手順(新人向け)
新人施工管理として、初めて構造図を渡されたときの読み方手順をまとめます。
読み方の5ステップ
手順①:凡例ページを開く。構造図の最初の数ページに「記号凡例」「略号一覧」があります。「スラブ記号」が独立したページに掲載されていることもあれば、構造図の総合凡例の中に含まれていることも。現場の図面でしか通用しない記号もあるので、必ず凡例で確認します。
手順②:伏図でスラブ記号の位置を確認。各階の梁伏図・スラブ伏図を開き、スラブ記号がどの位置に配置されているかを確認。柱と梁で囲まれた区画ごとに1つの記号が振られているのが基本です。
手順③:配筋表で仕様を読む。伏図で「S2」と分かったら、配筋表のS2行を見て、厚さ、上端主筋・下端主筋の径とピッチ、上端配力筋・下端配力筋の径とピッチ、かぶり厚さ、開口補強筋の指定、を読み取ります。
手順④:断面詳細図で端部処理を確認。スラブの梁との取り合い部分は伏図と配筋表だけでは分かりません。断面詳細図で、上端筋の梁内定着長、下端筋の梁内定着長、端部の余長・フック処理、を確認します。
手順⑤:施工図に落とし込む。施工図(躯体図)には、構造図の記号を細分化(S1a, S1b等)し、スリーブ位置、給排水管・電気配管の貫通位置、補強筋の位置、墨出し基準、を加えていきます。墨出しの基本は別記事も参考にしてください。

スラブ記号と施工管理
施工管理として、スラブ記号は配筋・打設の段取りに直結します。
配筋・検査・スリーブ
配筋の段取りでは、スラブ記号別に、鉄筋径ごとの集計(D10、D13、D16)、必要本数・長さ、加工指示、を出します。記号別の配筋表が分かれば、鉄筋の発注数量もここから割り出せます。
配筋検査のポイントは、スラブ記号と配筋表を照合しながら、現場の配筋を一区画ずつ確認。主筋径・ピッチ、配力筋径・ピッチ、上端筋と下端筋の重なり具合(スペーサー位置)、端部の梁内への定着長、開口補強筋の有無、をチェックします。
スリーブ位置との取り合いでは、スラブには電気・給排水・空調の配管が貫通します。スリーブ位置と主筋・配力筋がぶつかる場合、補強筋(スリーブ補強筋)を追加して鉄筋の連続性を担保。スリーブ補強筋の仕様も配筋表の中に入っていることが多いです。スリーブの基本は別記事も参考にしてください。

打設・体験談
打設の段取りでは、スラブ記号ごとにコンクリートの厚さが違うので、打設前にレーザーで厚さを設定。S1(厚さ150)が床型枠から150mm上で天端管理、S2(厚さ180)、RS(厚さ200+防水勾配)、というかたち。打設時の天端定規(ブリッジ・トンボ)も厚さ別に準備します。
ある中規模物件のRC造で、伏図の「BS(バルコニースラブ)」を「S1(一般スラブ)」と誤読した職長が、配筋を一般スラブ仕様で組んでしまった事例を見たことがあります。BSは上端主筋D13@150のところ、組まれていたのはD10@200。配筋検査で発見できたから無事に組み直せましたが、もし発見漏れで打設に進んでいたら、片持ち先端のたわみ・ひび割れで補修工事が必要になるところでした。「Sだから一般スラブ」と決めつけず、必ず凡例と配筋表で確認するのが基本です。
スラブ記号に関する注意点
最後に、現場で誤解しがちなポイントを整理します。
事務所差・同一番号・改修
①記号の意味は事務所差がある:「BS」がバルコニースラブの事務所もあれば、Box Slab(地下構造物の側面)の事務所も。凡例で確認が鉄則です。
②同じ番号でも仕様違いがあり得る:「うちの会社のS2は厚さ180」と覚えていても、別の現場では厚さ200ということも。図面ごとに毎回確認が必要。
③改修・増築時の注意:既存図面のスラブ記号が、現在の社内基準と違うことがあります。改修工事では当時の配筋表をそのまま信じるのが原則で、新基準に読み替えないこと。
整合性・かぶり
④構造図と施工図でズレが起きていないか:構造設計者が出した記号と、施工図化した記号が仕様レベルで食い違っているケースは要注意。設計変更扱いになっていれば良いが、サイレント変更だと施工後に発覚して大変なことになります。
⑤平面図との整合:意匠の平面図には床仕上げ(フローリング、タイル)が書かれていて、構造のスラブ記号とは別世界。意匠図の段差・床下げが構造図のスラブ厚さに反映されているかを意匠と構造の打ち合わせで確認。
⑥配筋表のかぶり厚さ:スラブ記号の配筋表にはかぶり厚さが書かれていますが、屋外スラブ・屋内スラブ・地下スラブで値が違います。建築基準法施行令第79条と日本建築学会のJASS5でかぶりの基準値が定められています。図面の寸法ルールは別記事も参考にしてください。

スラブ記号に関する情報まとめ
- スラブ記号とは:構造図・躯体図でスラブの種類・仕様を識別する記号。配筋表との紐付けキー
- 主な種類:S1/S2(一般スラブ)、RS(屋根)、FS(床)、AS(庇)、BS(バルコニー)、CS(片持ち)、TS(地下天版)、WS(壁スラブ)、ES(設備)
- 配筋表との関係:伏図の記号→配筋表の同じ記号の行→厚さ・主筋・配力筋・かぶりの仕様
- 構造図と施工図の違い:構造図はS1のまま、施工図ではS1a/S1bと細分化。配筋仕様は変わらない前提
- 読み方手順:凡例ページ→伏図で位置確認→配筋表で仕様確認→断面詳細図で端部処理→施工図に展開
- 施工管理視点:配筋発注の集計、配筋検査の照合、スリーブ補強、厚さ別の打設管理
- 注意点:記号の意味は事務所差あり、同じ番号でも仕様は図面ごとに確認、改修工事は当時の図面通りに
以上がスラブ記号に関する情報のまとめです。
スラブ記号は「凡例ページを開く習慣」さえ身につけば、それほど難しい話ではない領域。逆に言うと、凡例を確認せずに前現場のクセで読み流すのが配筋ミスの最大原因。新人時代に「S1って書いてあるけどこの現場ではどんな仕様?」と立ち止まって確認する習慣が、結果的に配筋検査でのリスクを大きく下げます。一通りスラブ記号の基礎知識は理解できたと思います。
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