- モーメントの正負って、教科書によって違ってて混乱する
- 時計回りが正?反時計回りが正?どっち?
- 結局どっちで覚えればいいの?
- 力のモーメントと曲げモーメントの符号がごっちゃになる
- 「下側引張が正」ってどういう意味?
- 下に凸とか上に凸とかイメージできない
- BMD(曲げモーメント図)をどっち側に描けばいい?
- なんで分野や教科書で符号の決め方が違うの?
- 符号の理解って現場で何の役に立つの?
- 符号ミスをなくす手順が知りたい
上記の様な悩みを解決します。
モーメントの正負は、構造力学でほぼ全員がつまずくポイントです。最大の理由は「教科書や分野によって符号の決め方が違う」ことと、「力のモーメントの正負と曲げモーメントの正負がごちゃ混ぜに説明される」ことの2つです。今回はモーメントの正負の基本を押さえた上で、施工管理目線で「2つの正負の違い」「なぜ符号がバラバラなのか」「BMDの描き方」「配筋とのつながり」まで、混乱の元を1つずつ解きほぐす形で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
モーメントの正負とは?
モーメントの正負とは、結論「モーメント(回転させる作用)が、どちら向きの回転かを+−の符号で表したもの」のことです。
ここで最初に知っておくべき、最も重要な事実があります。それは「モーメントの正負に、絶対的な正解はない」ということです。時計回りを正にしても、反時計回りを正にしても、計算上はどちらでも構いません。大切なのは「1つの計算の中で基準を統一すること」だけです。
多くの人が混乱するのは、この「自分で決めていい」という前提を知らずに、教科書Aと教科書Bで符号が逆になっているのを見て「どっちが正しいんだ」と悩んでしまうからです。実際にはどちらも正しく、流儀が違うだけ、という場面がほとんどです。
そしてもう1つ大事なのが、モーメントの正負には「力のモーメントの正負」と「曲げモーメントの正負」という、別々の話が2つあることです。この2つは決め方の考え方が違うので、混ぜて理解しようとすると一気に分からなくなります。本記事では、まずこの2つを分けて整理していきます。
構造力学の全体像はこちらが参考になります。

僕の感覚だと、モーメントの正負でつまずく人の9割は「絶対的な正解がある」と思い込んでいるのが原因です。「符号は自分で決めるルールで、計算内で統一できていればよい」という大前提を最初に飲み込むだけで、混乱の半分は消えます。
力のモーメントの正負と符号の決め方
まず「力のモーメントの正負」から整理します。力のモーメントとは、物体を回転させようとする作用で、「力 × 腕の長さ(回転中心までの距離)」で求めます。
力のモーメントの符号は、回転の向きで決めます。
| 回転の向き | 符号の付け方の例 |
|---|---|
| 時計回り | 正(+)とすることが多い(構造力学の一例) |
| 反時計回り | 正(+)とする流儀もある(数学・物理の標準) |
どちらを正にしてもよいですが、構造力学の教科書では「時計回りを正」とするものが比較的多いです。一方、数学・物理では「反時計回りを正」とするのが標準(右手座標系)です。だから「数学では反時計回りが正と習ったのに、構造の本では時計回りが正になっている」という食い違いが起こります。これは間違いではなく、分野ごとの流儀の違いです。
時計回りか反時計回りかの見分け方は、回転中心を決めて「力がその点をどちら向きに回そうとしているか」をイメージするのがコツです。力の作用線と回転中心の位置関係で向きが決まります。
この符号が実際に使われるのが、力のつり合い計算です。物体が静止しているとき、ある点まわりのモーメントの合計はゼロになります(ΣM=0)。このとき、時計回りを正と決めたら、反時計回りのモーメントはマイナスとして足し合わせ、合計がゼロになるように反力などを求めます。
反力やつり合いの3条件はこちらで詳しく解説しています。

似た概念の偶力との違いはこちらが参考になります。

正直なところ、力のモーメントの正負は「計算を始める前に、時計回りと反時計回りのどちらを正にするか自分で決めて、紙の端にメモする」だけでミスが激減します。決め方そのものより、決めたものを最後まで貫くことの方が大事です。
曲げモーメントの正負(下側引張が正)
次が、混乱の本丸である「曲げモーメントの正負」です。こちらは力のモーメントとは別の決め方をするので、切り替えが必要です。
曲げモーメントとは、部材(梁など)を曲げようとする断面力のことです。その正負は「回転の向き」ではなく「部材がどちら側に曲がるか(どちら側が引っ張られるか)」で決めます。
一般的な建築・材料力学での決め方は次の通りです。
| 変形のしかた | 符号 | どこが引張か |
|---|---|---|
| 下に凸(U字に下がる)に曲がる | 正(+) | 部材の下側が引張 |
| 上に凸(山形)に曲がる | 負(−) | 部材の上側が引張 |
「下側引張が正」という言葉は、これを指しています。梁の真ん中に上から荷重が載ると、梁はU字に下がるように曲がります。このとき、梁の下側の繊維は引き伸ばされ(引張)、上側は縮められます(圧縮)。この「下が引張」の状態を正とする、というのが建築での一般的な約束です。
「下に凸」がイメージしにくければ、物干し竿の真ん中に重い物を吊るした状態を思い浮かべてください。竿は真ん中が下がってU字になり、竿の下面が伸びますよね。あの「下面が伸びる(引張)」状態が正の曲げモーメントです。
逆に、片持ち梁(一端が固定された梁)の固定端や、連続梁の支点の上では、梁が上に凸に曲がり、上側が引張になります。これが負の曲げモーメントです。
曲げモーメントを含む断面力の全体像はこちらが参考になります。

部材内部で引張と圧縮が切り替わる境目(中立軸)はこちらで解説しています。

僕の整理では、曲げモーメントの正負は「回転で考えない」のが最大のコツです。力のモーメントは回転の向き、曲げモーメントは引張の位置(下が引張か上が引張か)。この切り替えができると、曲げの符号が一気に整理されます。
力のモーメントと曲げモーメントの正負は別物
ここが、競合の解説記事ではあまり強調されない、混乱の核心です。「力のモーメントの正負」と「曲げモーメントの正負」は、決め方の基準がそもそも違います。
| 項目 | 力のモーメントの正負 | 曲げモーメントの正負 |
|---|---|---|
| 何で決める | 回転の向き(時計回り/反時計回り) | 変形・引張の側(下凸か上凸か) |
| 使う場面 | 力のつり合い計算(ΣM=0) | 曲げモーメント図(BMD)、断面の設計 |
| 判断の対象 | 力が回転中心を回す向き | 部材のどちら側が引っ張られるか |
多くの初学者がつまずくのは、この2つを同じ「モーメントの正負」として一緒くたに覚えようとするからです。「時計回りが正」と「下側引張が正」は、まったく別のルールで、適用する場面も違います。
つまり、1つの問題の中で、反力を求める段階では「力のモーメント=時計回りが正」で計算し、曲げモーメント図を描く段階では「曲げモーメント=下側引張が正」に切り替える、という頭の使い分けが必要になります。ここを意識せずに混ぜると、符号がぐちゃぐちゃになります。
個人的には、ノートに「①反力=回転の向きで正負」「②曲げ=引張の側で正負」と2行で書き分けておくのが効くと思っています。この2つが別ルールだと自覚するだけで、構造力学の符号ミスは大幅に減ります。混乱は知識不足ではなく、2つを区別していないことから来ているケースが本当に多いです。
なぜ分野や教科書で符号が違うのか
「結局どっちで覚えればいいの?」という疑問に、正面から答えます。結論から言うと、分野・教科書ごとに約束が違うので、唯一の正解はありません。
符号の決め方が分かれる理由を整理します。
- 数学・物理:反時計回りを正とする(右手座標系の標準ルール)
- 建築・土木の構造力学:時計回りを正とする教科書が多い(ただし統一されてはいない)
- 曲げモーメント:建築・材料力学は「下側引張(下凸)を正」とするのが一般的
- 曲げモーメント図:引張側に描く流儀が、建築構造の実務で広く使われる
特に曲げモーメントには、正式に統一された符号ルールがありません。だから問題集・教科書・先生によって定義が違い、それを知らないと「自分の答えと模範解答の符号が逆だ、間違えた」と勘違いしてしまいます。
ここで大事なのは「使っている教材・問題が、どの約束を採用しているかを最初に確認する」ことです。約束さえ合わせれば、計算の中身は同じです。試験では、問題文や図の中に符号の定義が示されていることも多いので、解き始める前に確認するのが鉄則です。
僕の考えでは、独学する人は「自分の使う1冊の流儀に統一する」のが一番安全です。あれこれ別の教材を混ぜると符号の約束がぶつかって混乱するので、メインの参考書を1つ決めて、その符号ルールで頭を固める。建築なら「力のモーメントは時計回り正、曲げは下側引張正」で揃えておけば、実務でも試験でも大きく外しません。
構造力学の公式まわりはこちらにまとめがあります。

曲げモーメント図(BMD)の描き方と符号
符号の話が一番効いてくるのが、曲げモーメント図(BMD)です。符号を間違えると、図が上下逆さまになってしまいます。
建築構造で広く使われる描き方のルールを整理します。
- 曲げモーメント図は「引張側(部材が伸びる側)」に描く
- 単純梁に上から荷重が載ると、中央が下側引張(正)なので、図は下側に膨らむ
- 片持ち梁や連続梁の支点上は上側引張(負)なので、図は上側に出る
- 集中荷重では直線、等分布荷重では曲線(放物線)になる
描き方のコツは、まず「部材がどう変形するか(どちらに凸になるか)」をイメージすることです。荷重で梁がU字に下がるなら下側が伸びる=引張なので、その下側に図を描きます。変形のイメージと図の向きが一致するので、符号を丸暗記しなくても描けるようになります。
単純梁の中央に集中荷重が載るケースなら、中央で最も大きく下に凸になるので、中央で曲げモーメントが最大になり、図も中央が一番下に膨らむ三角形になります。
曲げモーメント図の書き方はこちらで詳しく解説しています。

せん断力図との関係(Q図とM図)はこちらが参考になります。

実務だと、BMDは「符号で覚える」より「変形の絵で覚える」方が確実です。符号は約束ごとなので教材で変わりますが、「荷重がかかったら梁はどう曲がるか」という物理は変わりません。変形をイメージしてから引張側に描く、という順番にすると、符号の流儀が違う教材に当たっても対応できます。
符号の理解が配筋・実務にどうつながるか
「符号の理解って現場で何の役に立つの?」という疑問に答えます。実は、曲げモーメントの正負は、施工管理が見る配筋に直結しています。
鉄筋コンクリートの梁では、引張がかかる側に主筋(引張鉄筋)を配置します。コンクリートは圧縮に強く引張に弱いので、引っ張られる側を鉄筋で補強するわけです。そして「どちら側が引張になるか」を決めているのが、まさに曲げモーメントの正負です。
| 部位 | 曲げモーメント | 引張側 | 主筋を入れる位置 |
|---|---|---|---|
| 単純梁の中央 | 正(下側引張) | 下側 | 梁の下端 |
| 連続梁の支点上 | 負(上側引張) | 上側 | 梁の上端 |
| 片持ち梁の固定端 | 負(上側引張) | 上側 | 梁の上端 |
たとえば、連続梁では中央と支点上で曲げモーメントの符号が逆転します。だから配筋も、中央付近は下端に主筋が多く、支点上では上端に主筋が多くなります。配筋図を見て「なぜここで主筋が上下入れ替わっているのか」が分かるのは、曲げモーメントの符号が理解できているからです。
主筋の考え方はこちらで解説しています。

引張鉄筋の配置ルールはこちらが参考になります。

現場目線で言えば、曲げモーメントの符号が読めると、配筋検査の精度が上がります。「この部位は上側引張だから上端の主筋が効く、ここのかぶりや本数が重要だ」と、図面の意図を理解した上で検査できるからです。符号は試験のための知識に見えて、実は配筋という現場の実務に直結している、というのが押さえどころです。
符号ミスを防ぐ手順
最後に、符号ミスを減らす実践的な手順をまとめます。構造力学の計算で符号を間違える人は、たいてい同じところでつまずいています。
ミスを防ぐ手順は次の通りです。
- 計算を始める前に、力のモーメントの正方向(時計回りか反時計回りか)を決めて紙にメモする
- 反力を求める段階では、その正方向で統一してΣM=0を立てる
- 曲げモーメントの段階に入ったら、頭を「下側引張が正」に切り替える
- 各点の曲げモーメントは、変形(下凸か上凸か)をイメージして符号を確認する
- BMDは符号に頼り切らず、変形の絵と一致しているか最後に見比べる
特に効くのが、手順1の「最初に正方向を決めてメモする」ことと、手順3の「曲げに入ったら頭を切り替える」ことです。前述のとおり、力のモーメントと曲げモーメントは別ルールなので、この切り替えを意識的にやるだけで混乱が激減します。
検算のコツとしては、答えの符号と変形のイメージが食い違っていないかを必ず確認することです。「計算ではプラスなのに、絵では上に凸(上側引張=マイナスのはず)」となっていたら、どこかで符号を取り違えています。
構造力学の問題演習はこちらも参考になります。

自分としては、符号ミスは才能や理解度の問題ではなく「手順の問題」だと捉えています。正方向を最初に決める、力と曲げで頭を切り替える、最後に変形の絵で検算する。この3つを習慣にすれば、符号で減点される回数は確実に減っていきます。
モーメントの正負に関する情報まとめ
- モーメントの正負は回転や曲げの向きを+−で表したもので、絶対的な正解はなく計算内で統一するのが本質
- 「力のモーメントの正負」と「曲げモーメントの正負」は別ルール。混ぜると混乱する
- 力のモーメント:回転の向きで決める。構造力学は時計回りを正とする教科書が多い(数学は反時計回り正)
- 曲げモーメント:引張の側で決める。下に凸(下側引張)が正、上に凸(上側引張)が負
- 「下側引張が正」とは、梁がU字に下がって下面が伸びる状態のこと
- 分野・教科書で符号が違うのは流儀の差。使う教材の定義を最初に確認する
- BMDは引張側(伸びる側)に描く。変形の絵をイメージすると符号を間違えにくい
- 曲げモーメントの符号は配筋に直結。引張側に主筋を入れる(支点上は上端、中央は下端)
- ミス防止は「正方向を最初にメモ→力と曲げで頭を切り替え→変形の絵で検算」
以上がモーメントの正負に関する情報のまとめです。
モーメントの正負でつまずく原因は、知識不足というより「絶対の正解があると思い込むこと」と「力のモーメントと曲げモーメントを区別していないこと」の2つです。符号は自分で決める約束で、力のモーメントは回転の向き、曲げモーメントは引張の側、という2つのルールを分けて押さえれば、混乱はほどけます。さらに曲げの符号は配筋にそのままつながるので、試験のためだけでなく、現場で図面を読む力としても効いてきます。
モーメントの正負に関するよくある質問
Q1:モーメントの正負は、時計回りと反時計回りのどちらが正ですか?
絶対的な正解はなく、計算の中で統一されていればどちらでも構いません。数学・物理では反時計回りを正とするのが標準ですが、建築・土木の構造力学では時計回りを正とする教科書が多いです。だから教材によって符号が逆になることがありますが、これは間違いではなく流儀の違いです。実務では「計算を始める前に正方向を決めてメモし、最後まで貫く」ことが、正解の符号を覚えることより大事です。
Q2:力のモーメントと曲げモーメントの正負は、何が違うんですか?
決め方の基準が違います。力のモーメントの正負は「回転の向き(時計回りか反時計回りか)」で決め、力のつり合い計算(ΣM=0)で使います。一方、曲げモーメントの正負は「部材のどちら側が引っ張られるか(下側引張か上側引張か)」で決め、曲げモーメント図や断面の設計で使います。この2つを同じ「モーメントの正負」として混ぜて覚えると混乱します。反力を求める時は回転の向き、曲げを扱う時は引張の側、と頭を切り替えるのがコツです。
Q3:「下側引張が正」とは、具体的にどういう状態ですか?
梁に上から荷重が載って、梁がU字に下がるように(下に凸に)曲がった状態のことです。このとき梁の下側の繊維は引き伸ばされ(引張)、上側は縮みます(圧縮)。この「下が引張」の状態を正の曲げモーメントとするのが、建築・材料力学の一般的な約束です。物干し竿の真ん中に重い物を吊るすと、竿が下がって下面が伸びますよね。あの下面が伸びる状態が正、と覚えると分かりやすいです。
Q4:曲げモーメント図(BMD)は、どちら側に描けばいいですか?
建築構造では「引張側(部材が伸びる側)」に描くのが一般的です。単純梁に上から荷重が載ると中央が下側引張になるので、図は下側に膨らみます。片持ち梁や連続梁の支点上は上側引張になるので、図は上側に出ます。描く時のコツは、符号で覚えるより「荷重で梁がどう変形するか」をイメージすることです。下に凸なら下側、上に凸なら上側に描けば、符号の流儀が違う教材に当たっても間違えにくくなります。
Q5:モーメントの符号は、施工管理の実務で役に立ちますか?
役に立ちます。曲げモーメントの正負は、鉄筋コンクリート梁の配筋に直結しているからです。引張がかかる側に主筋(引張鉄筋)を入れるので、「どちら側が引張か」を決める曲げモーメントの符号が分かると、配筋図の意図が読めます。たとえば連続梁では中央と支点上で符号が逆転するため、主筋の位置も上下入れ替わります。これを理解していると、配筋検査で「この部位はどの鉄筋が効くか」を踏まえて見られるので、検査の精度が上がります。
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