- 引張ってなんて読むの?いんちょう?ひっぱり?
- 会議で「いんちょう」って言って恥かきたくない
- 引張力と引張強さって何が違うの?
- 引張応力・引張荷重も別物?似た言葉が多すぎる
- 引張の英語ってtension?tensile?
- ミルシートに出てくる引張強さの数字の意味は?
- SS400の引張強さっていくつ?
- 現場で引張ってどこに出てくるの?
- コンクリートが引張に弱いってよく聞くけど本当?
- 引張まわりの言葉を一度に整理したい
上記の様な悩みを解決します。
「引張」は建築・構造でごく当たり前に出てくる言葉ですが、読み方を間違えやすく、しかも「引張力」「引張応力」「引張荷重」「引張強さ」と似た言葉が次々に出てきて整理がつかない、という人が多い用語です。
今回は引張の読み方という基本を押さえた上で、施工管理目線で「引張力・引張応力・引張荷重・引張強さの違い」「英語・記号・単位」「SS400などの引張強さの数値の見方」「鉄筋やコンクリートなど現場での使い方」まで、現役の施工管理経験者の視点で整理しました。
読み方だけサッと知りたい人にも、用語まで一気に整理したい人にも役立つようにまとめていきます。
それではいってみましょう!
引張の読み方とは?
引張の読み方は、結論「ひっぱり」です。「いんちょう」は誤りなので注意してください。
「引張」は「引っ張り」「引張り」と送り仮名つきで書くこともありますが、建築では漢字だけの「引張」と書くのが普通です。アクセントは「ひ」を強く言うのが一般的ですが、アクセントなしで平坦に言う人も多く、どちらでも通じます。大事なのは「いんちょう」と読まないことです。
関連する用語の読み方も、まとめて押さえておくと現場で困りません。
| 用語 | 読み方 |
|---|---|
| 引張 | ひっぱり |
| 引張力 | ひっぱりりょく |
| 引張応力 | ひっぱりおうりょく |
| 引張強さ | ひっぱりづよさ |
| 引張試験 | ひっぱりしけん |
| 圧縮 | あっしゅく |
| 圧縮応力 | あっしゅくおうりょく |
「引張」とセットでよく出てくる「圧縮」は「あっしゅく」と読みます。これも「あっぱく」などと読み間違えやすいので合わせて覚えておきましょう。
僕の感覚だと、読み方の不安は「会議や打ち合わせで声に出すとき」に一番効いてきます。「いんちょう」と言ってしまうと一発で経験の浅さが伝わるので、まず「引張=ひっぱり」「圧縮=あっしゅく」の2つだけは確実にしておくと安心です。
引張の意味と圧縮との違い
引張とは、結論「物を引き伸ばすこと」、その引き伸ばす力を「引張力」といいます。反対に物を押し縮めることが「圧縮」で、その力が「圧縮力」です。
引張と圧縮は、向きが正反対の力としてセットで覚えます。
| 項目 | 引張 | 圧縮 |
|---|---|---|
| 何をする力か | 物を引き伸ばす | 物を押し縮める |
| 力の名前 | 引張力 | 圧縮力 |
| 部材内部の力 | 引張応力 | 圧縮応力 |
| イメージ | ロープを両端から引く | 柱を上から押す |
たとえば、ロープや鉄筋を両端から引っ張ると引張力が働き、柱を上から押すと圧縮力が働きます。引張力・圧縮力の中身はそれぞれこちらが詳しいです。


材料によって、引張に強いもの・弱いものがあります。鋼材は引張にも圧縮にも強い一方、コンクリートは圧縮に強く引張に弱い、といった性質の違いがあり、これが鉄筋コンクリートの考え方につながります(後述)。
僕の整理では、引張は「圧縮とセットで、向きが逆の力」と捉えるのが一番分かりやすいです。引っ張るか押すか、伸びるか縮むか。この対比で覚えると、引張まわりの言葉も圧縮まわりの言葉も同時に整理できます。
引張力・引張応力・引張荷重・引張強さの違い
ここが、ほかの読み方解説記事ではあまり整理されていない部分です。「引張◯◯」という似た言葉が4つあり、これを混同すると話が噛み合わなくなります。一気に整理します。
4つの用語の違い
| 用語 | 意味 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 引張力 | 部材を引き伸ばそうとする外力 | 外から加わる引っ張る力 |
| 引張荷重 | 部材に引張として加わる荷重 | 引張力とほぼ同義で使われる |
| 引張応力 | 引張力により部材内部に生じる力(内力) | 部材の中に生まれる抵抗力 |
| 引張強さ | 材料が引張に耐えられる限界の力(物性値) | その材料が持つ強さの上限 |
違いを押さえるポイント
- 引張力・引張荷重:外から加わる力。引張荷重は「荷重としての引張力」を指し、ほぼ同義で使われる
- 引張応力:引張力を受けて部材の内部に生じる力。引張力が「原因」なら引張応力は「結果」
- 引張強さ:今かかっている力ではなく、その材料がどこまで耐えられるかという「限界値(材料固有の値)」
特に間違えやすいのが「引張応力」と「引張強さ」です。引張応力は「今この部材にかかっている力」、引張強さは「この材料が耐えられる限界の力」。現在の値か、限界の値か、という決定的な違いがあります。引張応力の詳細はこちら、引張荷重はこちらが参考になります。


設計では「かかっている引張応力 < 許容される引張応力度」となるよう部材を決めます。許容引張応力度の考え方はこちらが詳しいです。

僕の考えでは、この4語は「外力(引張力・引張荷重)→内力(引張応力)→限界値(引張強さ)」という流れで並べると一発で整理できます。バラバラに暗記するより、「加わる力」「生じる力」「耐えられる限界」の3段で捉えると、どの言葉が出てきても位置づけが分かります。
引張の英語・記号・単位
図面・規格・海外資料では英語表記も出てきます。読み方とあわせて押さえておくと、ミルシートや英語の材料規格を見たときに困りません。
英語表記
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 引張 | tension |
| 引張の(形容詞) | tensile |
| 引張力 | tensile force |
| 引張強さ | tensile strength |
| 引張試験 | tensile test |
| 圧縮 | compression |
「tension(テンション)」が名詞の引張、「tensile(テンサイル)」が「引張の〜」という形容詞です。引張強さは「tensile strength」、引張試験は「tensile test」と、tensileを使った複合語で表します。
記号と単位
- 力(引張力・引張荷重)の単位:N(ニュートン)、kN(キロニュートン)
- 応力・強さの単位:N/mm²、MPa(メガパスカル)※1N/mm²=1MPa
- 引張強さの記号:σB や Fu などで表されることが多い(資料による)
引張強さや応力は「単位面積あたりの力」なので、単位はN/mm²(=MPa)になります。この「力そのもの(kN)」と「単位面積あたりの力(N/mm²)」の単位の違いも、引張力と引張強さを区別する手がかりになります。
僕の感覚だと、英語表記は「tension=引張、tensile=引張の」の2つさえ押さえれば、tensile strength・tensile testといった複合語は自然に読めるようになります。海外メーカーの材料証明書を見る機会がある人は、この2語だけでも知っておくと一気にハードルが下がります。
引張強さの数値の見方(SS400・ミルシート)
引張強さは、鋼材を選ぶときやミルシート(鋼材検査証明書)を見るときに直接出てくる数値です。代表的な値の見方を押さえておきましょう。
代表的な鋼材の引張強さ
| 鋼材 | 引張強さの目安 |
|---|---|
| SS400 | 400〜510 N/mm²程度 |
| SN400 | 400〜510 N/mm²程度 |
| SM490 | 490〜610 N/mm²程度 |
SS400の「400」は、引張強さが400N/mm²級であることを表す数字です。SS材・SM材・SN材といった一般構造用の鋼材は、名前の数字が引張強さの目安になっているので、材料記号を見ただけでおおよその強さが分かります。
ただし注意したいのが鉄筋です。鉄筋(SD345・SD390など)の数字は引張強さではなく「降伏点」を表します。同じ「数字つきの材料記号」でも、鋼材(鋼板・形鋼)は引張強さ、鉄筋は降伏点、と意味が違う点は取り違えないようにしましょう。H形鋼などの強度の見方はこちらが参考になります。

引張強さと降伏点・ヤング率の違い
引張試験では、引張強さ以外にも重要な値が測定されます。混同しやすいので整理します。
- 引張強さ:材料が耐えられる最大の引張力(破断に至る前の最大値)
- 降伏点:材料が元に戻らない変形(塑性変形)を始める力。設計では主にこちらを基準にする
- ヤング率:力に対する変形のしにくさ(剛性)を表す値
設計で部材の安全性を見るときは、引張強さより手前の「降伏点」を基準にすることが多いです。引張強さは「壊れる限界」、降伏点は「元に戻らなくなる手前」と捉えると違いが分かります。降伏点の詳細はこちらが詳しいです。

正直なところ、ミルシートを毎回隅々まで読む施工管理は多くないですが、「SS400の400は引張強さ」「設計で効くのは降伏点」という2点を知っているだけで、材料の話に入っていけます。引張強さと降伏点を取り違えないことが、材料を語るうえでの最初の一歩です。
現場で引張が出てくる場面
「引張なんて構造計算の中の話」と思われがちですが、現場のあちこちに引張は登場します。読み方や用語の解説だけでは見えてこない、現場での引張の登場場面を押さえておきましょう。
引張が効く代表的な場面
- 鉄筋:コンクリートの引張に弱い部分を、引張に強い鉄筋が肩代わりする。梁の下端筋・スラブの主筋が引張を負担
- 高力ボルト:接合部で部材を締め付け、引張力で固定する
- ワイヤー・PC鋼材:吊り材やプレストレスで、引張力を積極的に利用する
- アンカーボルト:柱脚で引き抜き(引張)に抵抗する
引張鉄筋がどこに配置されるかはこちらが参考になります。

高力ボルトの引張による締め付けはこちらが詳しいです。

コンクリートが引張に弱い、の意味
「コンクリートは引張に弱い」というのは本当です。コンクリートは圧縮には強い一方、引張力に対しては圧縮の10分の1程度の強さしかなく、引っ張られるとひび割れてしまいます。
- コンクリート:圧縮に強い・引張に弱い
- 鉄筋:引張に強い
- 鉄筋コンクリート:圧縮はコンクリート、引張は鉄筋が分担する組み合わせ
だから梁やスラブでは、引張がかかる側(梁なら下端、片持ちなら上端)に鉄筋を多く配置します。「引張に弱いコンクリートを、引張に強い鉄筋で補う」——これが鉄筋コンクリートの根本の発想です。部材内部に生じる力(内力)の考え方はこちらが参考になります。

僕の整理では、引張を理解すると「なぜここに鉄筋を入れるのか」が腑に落ちます。配筋図を見て「この位置は引張がかかるから主筋が密なんだな」と読めるようになると、配筋検査の見方も変わってきます。引張は計算の中だけでなく、現場の鉄筋・ボルト・吊り材に直結している、という感覚を持っておくと役立ちます。
読み方・用語でつまずかないための注意点
最後に、引張まわりでミスしやすいポイントを整理しておきます。
よくある間違いと対策
- 「いんちょう」と読む:引張は「ひっぱり」。圧縮は「あっしゅく」
- 引張応力と引張強さの混同:応力は「今かかっている力」、強さは「耐えられる限界」
- 引張力と引張応力の混同:力は外から加わる、応力は部材内部に生じる
- 単位の取り違え:力はN・kN、応力や強さはN/mm²(=MPa)
- 引張強度と引張強さ:ほぼ同じ意味で使われる(材料が引張に耐える強さの度合い)
引張まわりの言葉の地図
| 段階 | 用語 | 単位 |
|---|---|---|
| 外から加わる力 | 引張力・引張荷重 | N・kN |
| 部材内部に生じる力 | 引張応力 | N/mm² |
| 材料が耐えられる限界 | 引張強さ・引張強度 | N/mm² |
僕としては、引張まわりは「読み方は1回覚えれば終わり、用語は流れで整理する」のが効率的だと感じます。読み方は「ひっぱり・あっしゅく」を確実に。用語は「加わる力→生じる力→耐えられる限界」の3段で並べる。この2点を押さえれば、引張という言葉でもう迷うことはなくなるはずです。
引張に関する情報まとめ
- 読み方:引張は「ひっぱり」。「いんちょう」は誤り。圧縮は「あっしゅく」
- 意味:引張=物を引き伸ばすこと、その力が引張力。圧縮(押し縮める)と正反対
- 似た用語の違い:引張力・引張荷重(外力)→引張応力(内力)→引張強さ(限界値)
- 英語:引張=tension、引張の〜=tensile、引張強さ=tensile strength
- 単位:力はN・kN、応力・強さはN/mm²(=MPa)
- 引張強さ:SS400の「400」は引張強さ400N/mm²級を表す。設計で効くのは降伏点
- 引張強さ・降伏点・ヤング率:限界の力・元に戻らなくなる手前・変形のしにくさ
- 現場での使い方:鉄筋・高力ボルト・ワイヤー・アンカーボルトで引張が登場
- コンクリート:圧縮に強く引張に弱い。引張は鉄筋が分担する=鉄筋コンクリートの発想
以上が引張の読み方と関連用語に関する情報のまとめです。
引張は「ひっぱり」と読む——まずはこの読み方を確実にするだけで、会議や打ち合わせの不安は消えます。その上で、引張力・引張応力・引張荷重・引張強さを「加わる力→生じる力→耐えられる限界」の流れで整理し、鉄筋やボルト、コンクリートといった現場の場面と結びつけて理解しておくと、引張は単なる用語ではなく「現場の力を読む道具」になります。読み方と意味の両方を押さえて、引張を自分のものにしていきましょう。
引張の読み方に関するよくある質問
Q1:引張の正しい読み方は何ですか?
「ひっぱり」が正しい読み方です。「いんちょう」と読むのは誤りなので注意してください。「引っ張り」「引張り」と送り仮名つきで書くこともありますが、建築では漢字だけの「引張」と書くのが一般的です。セットで出てくる「圧縮」は「あっしゅく」と読みます。会議や打ち合わせで声に出す機会があるので、この2つは確実に覚えておきましょう。
Q2:引張力と引張強さは何が違いますか?
引張力は「部材に外から加わる引っ張る力」、引張強さは「材料が引張に耐えられる限界の力(材料固有の値)」です。引張力は今かかっている力、引張強さはどこまで耐えられるかという上限値、という決定的な違いがあります。さらに、引張力を受けて部材内部に生じる力が「引張応力」です。「加わる力(引張力)→生じる力(引張応力)→耐えられる限界(引張強さ)」という流れで整理すると混乱しません。
Q3:引張の英語は何と言いますか?
名詞の引張は「tension(テンション)」、「引張の〜」という形容詞は「tensile(テンサイル)」です。引張力は tensile force、引張強さは tensile strength、引張試験は tensile test と、tensile を使った複合語で表します。「tension=引張、tensile=引張の」の2つを覚えておけば、海外メーカーの材料証明書なども読みやすくなります。
Q4:SS400の引張強さはどのくらいですか?
SS400の引張強さは、おおよそ400〜510N/mm²程度です。鋼材名の「400」という数字が、引張強さ400N/mm²級であることを表しています。SS材・SM材・SN材などの一般構造用鋼材は名前の数字が引張強さの目安になっているため、材料記号を見ればおおよその強さが分かります。ただし鉄筋(SD345など)の数字は引張強さではなく降伏点を表すので、混同しないよう注意してください。また設計で部材の安全性を見るときは、引張強さより手前の「降伏点」を基準にすることが多い点も押さえておきましょう。
Q5:コンクリートが引張に弱いというのは本当ですか?
本当です。コンクリートは圧縮には強い一方、引張に対しては圧縮の10分の1程度の強さしかなく、引っ張られるとひび割れてしまいます。そこで、引張に強い鉄筋を、引張がかかる位置(梁なら下端、片持ちなら上端など)に配置して引張を分担させます。「引張に弱いコンクリートを、引張に強い鉄筋で補う」というのが鉄筋コンクリートの根本の発想です。
Q6:引張強さと引張強度は同じですか?
ほぼ同じ意味で使われます。どちらも「材料が外部から引っ張られる力にどれだけ耐えられるか」という強さの度合いを指します。引張強度は、試料が耐えられる最大の引張荷重を、引張力に垂直な断面積で割って算出します。文脈や資料によって呼び方が変わるだけで、意味としては同じものと考えて差し支えありません。
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