- 「引張」って何て読むの?
- 「ひっぱり」と「いんちょう」、どっちが正しい?
- 引張力・引張強さは何て読むの?
- 英語で言うと?
- 現場と教科書で読み方が違う気がするんだけど…
- 設計図書ではどう書かれている?
上記の様な悩みを解決します。
「引張」は施工管理・構造設計・材料試験のあらゆる場面で出てくる超頻出ワードですが、読み方が2通りあって初学者は混乱しがちです。「ひっぱり」と「いんちょう」、どっちでもいいのか、それとも使い分けがあるのか。一度すっきり整理しておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
引張の読み方は2つある
引張の読み方は、結論「ひっぱり」と「いんちょう」の2通りです。
→ ざっくり、「現場ではひっぱり、規格書ではいんちょう」という棲み分け、というイメージです。
基本的な使い分け
それぞれの基本的な使い分けは、ひっぱりが建設・製造業の現場で使われる「訓読み中心」の読み方で日常会話・現場コミュニケーション用、いんちょうが学術・教科書・JIS規格本文などで使われる「音読み中心」の読み方でフォーマルな文書用、というあたり。
漢字の読みとしては、「引(ひく/いん)」「張(はる/ちょう)」の組み合わせなので、訓読み×訓読み=「ひっぱり」(音便で「く」が促音化)、音読み×音読み=「いんちょう」、というかたち。どちらも文法的には正解です。現場では「ひっぱり」、論文や規格書では「いんちょう」が圧倒的に多いと覚えておけば、ほぼ困りません。
現場での体感シェア
現場での体感シェアとしては、鉄筋・鉄骨工事の現場会話で99%が「ひっぱり」、設計図書の漢字表記でそのまま「引張」(読み手任せ)、JIS規格の本文で「引張」と書いて「いんちょう」と読ませるケースが多い、大学・高専の教科書で構造力学では「いんちょう」・材料学では両方混在、というあたり。
つまり、書き言葉では同じ「引張」、話し言葉では「ひっぱり」が普通という関係です。施工管理として現場で「いんちょう」と発音すると、職人さんから「ん?」という顔をされるレベルでマイナーなので、現場コミュニケーションは「ひっぱり」一択でいきましょう。
引張がつく主要用語の読み方
引張は単独で使うより、複合語として使われる方が多い言葉です。代表的な複合語の読み方を整理しておきます。
鉄筋・鉄骨まわりの引張用語
主要な複合語の読み方は次の通り。
| 用語 | 一般的な読み方(現場) | 学術的な読み方 |
|---|---|---|
| 引張力 | ひっぱりりょく | いんちょうりょく |
| 引張強さ | ひっぱりつよさ/ひっぱりごうど | いんちょうごうど |
| 引張応力度 | ひっぱりおうりょくど | いんちょうおうりょくど |
| 引張試験 | ひっぱりしけん | いんちょうしけん |
| 引張鉄筋 | ひっぱりてっきん | いんちょうてっきん |
| 引張破壊 | ひっぱりはかい | いんちょうはかい |
| 引張荷重 | ひっぱりかじゅう | いんちょうかじゅう |
| 引張側 | ひっぱりがわ | いんちょうがわ |
| 引張縁 | ひっぱりえん | いんちょうえん |
「引張側」「引張縁」のような構造設計の用語は、特に現場では「ひっぱりがわ」「ひっぱりえん」という読み方しかほぼ聞きません。逆に「引張弾性係数」のような材料学の用語だと「いんちょうだんせいけいすう」と読む人もチラホラいます。
「引張強さ」は「ひっぱりつよさ」、または「ひっぱりごうど」と読まれるケースが多いです。「強さ」を「つよさ」と読むか「ごうど」と読むかは、文脈次第。JIS規格本文だと「引張強さ(いんちょうごうど)」と書かれているケースもあって、表記と読みが一致しない場面があります。
引張の英語表記(tension・tensile)
英文資料・図面・カタログでは英語表記が出てきます。
主要な英語表記
引張に対応する主要な英語は、tension(テンション)(引張力・引張状態・引張応力の名詞)、tensile(テンサイル)(引張に関する/引張用の、という形容詞)、pulling(引っ張ること=口語的)、traction(牽引力=一部の機械工学・自動車分野)、というあたり。
英語+引張の主な用語は、引張力(tensile force=テンサイルフォース/tension force)、引張強さ(tensile strength=テンサイルストレングス)、引張応力(tensile stress=テンサイルストレス)、引張試験(tensile test=テンサイルテスト/tension test)、引張破壊(tensile failure)、引張側(tension side)、引張弾性係数(modulus of elasticity in tension)、というところ。
英文の構造図面では「T-side」「T+」と書いて引張側を示すケースもあります。日本の図面で「引張側」と書く部分が、英文だと簡略化されてアルファベット記号になっている、という違いです。外資系メーカーのスペックシートやアメリカ規格(ASTM)の資料を読むときは、tensile / tensionの使い分けを押さえておくと内容理解が早くなりますよ。
圧縮(あっしゅく)との対比で理解する
「引張」を理解するうえで一番分かりやすいのが、対義語の「圧縮(あっしゅく)」とセットで考えることです。
引張と圧縮の対比
| 項目 | 引張(ひっぱり) | 圧縮(あっしゅく) |
|---|---|---|
| 力の方向 | 部材を 伸ばす 方向 | 部材を 縮める 方向 |
| 部材の変形 | 長くなる | 短くなる |
| ひずみの符号 | プラス(+) | マイナス(-) |
| RC造での担当 | 主に 鉄筋 が抵抗 | 主に コンクリート が抵抗 |
| 鋼の特性 | 引張強さ400〜800 N/mm² | 圧縮も同等の強度 |
| コンクリートの特性 | 引張は弱い(圧縮の1/10程度) | 圧縮は得意 |
RC造(鉄筋コンクリート造)が成立しているのは、まさにこの「引張は鉄筋、圧縮はコンクリート」という役割分担のおかげです。コンクリートは引張に弱いので、引張側に鉄筋を配置することで構造として成り立つ訳ですね。
設計図でよく見る「引張側に鉄筋を配置」という表現は、この物理的な性質を反映した配筋計画です。下端筋・上端筋の配置位置を決めるとき、その梁・スラブのどちら側が引張になるかを把握しておくのが基本中の基本になります。
設計図・施工図での「引張」の使われ方
施工管理として現場で「引張」を見るシーンを整理しておきます。
図面別の使われ方
配筋詳細図での例は、「梁下端は引張側のため、定着長を確保」、「片持ち梁の上端を引張側として配筋」、「逆梁では上端筋が引張側になる」、というあたり。
鉄骨製作図での例は、「引張側溶接は完全溶込み開先」、「ハイテンションボルトは摩擦接合(引張側でも適用)」、「ガセットプレートの引張耐力=○○ kN」、というところ。
特記仕様書での例は、「鉄筋の引張試験成績書を提出すること」、「アンカーボルトは引張耐力○○kN以上」、「ロックボルトの引張試験を施工後に実施」、というあたり。
ミルシート(鋼材試験成績書)の例は、「引張強さ:450 N/mm²(合格基準400以上)」、「降伏点:250 N/mm²」、「伸び:22%」、というところ。
→ 「引張」は構造の根幹を表す用語なので、図面・仕様書・試験成績のどこを見ても出てきます。読み方が分かるだけでなく、「どの部分が引張で、何が引張に抵抗しているか」をセットで理解しておくと、構造図の読み方がぐっと深まりますね。
現場でよく使われる慣用表現
最後に、施工管理として現場で耳にする「ひっぱり」関連の口語表現を整理します。
現場の会話例
現場の会話例としては、「ここ、ひっぱりがかかるからフックを足して」(梁端部の上端筋に引張力が作用するから、定着フックを追加して)、「ボルトをひっぱり気味に締めて」(ボルトに適切な引張軸力をかける)、「ひっぱりに弱い場所だから補強が必要」(引張応力が大きく出る箇所だから補強が必要)、「テスター当ててみたけど、ひっぱり強度は問題なし」(引張試験結果が基準値内)、「いんちょうしけんのデータ届いた?」(引張試験のデータが到着したか確認=レアケース)、というあたり。
「ひっぱり」は完全に職人言葉として浸透している単語です。電気・設備の世界でも「ケーブルのひっぱり張力」「引張試験」という言い回しは普通に使われます。
僕が電気施工管理時代、ケーブル布設で引張張力を制御する場面で、「この区間はひっぱりがキツくなるから中継プーリングしよう」と職長さんが指示を出していた光景を覚えています。CVケーブルの引張張力には公式の許容値(断面積×7.0kgf/mm²等)があり、超えると芯線が伸びてしまう。「引張」は鉄骨・鉄筋だけでなく、電気工事の現場でも日常用語なんですね。
引張の読み方に関する情報まとめ
- 引張の読み方:ひっぱり(現場・口語)/いんちょう(学術・規格本文)
- 現場での圧倒的多数派:「ひっぱり」(音便で「く」が促音化)
- 主な複合語:引張力・引張強さ・引張応力度・引張試験・引張鉄筋
- 英語:tension(名詞)/tensile(形容詞)
- 対義語:圧縮(あっしゅく)。RC造は「引張=鉄筋、圧縮=コンクリート」の役割分担
- 設計図で多用:配筋詳細図・鉄骨製作図・特記仕様書・ミルシート
- 現場の口語表現:「ひっぱりがかかる」「ひっぱり強度」「ひっぱり気味に締める」など
以上が引張の読み方に関する情報のまとめです。
「ひっぱり」と「いんちょう」、どちらも正しい読み方ですが、現場では『ひっぱり』、論文や規格本文では『いんちょう』という棲み分けを意識しておけば、ほぼ困らないはずです。引張は構造の根幹を担う用語なので、読み方とともに「どこに引張が出るか」「何が引張に抵抗しているか」をセットで覚えておきましょう。一通り基礎知識は理解できたと思います。
合わせて、引張に関わる構造・材料の関連知識も押さえておくと、構造設計の読み解き力が一段アップしますよ。








