- 腹起しってどこに付ける部材なの?
- 切梁とどう違うの?
- サイズはどう決まるの?
- いつ取り付けるの?
- 後から配管とぶつかったりしない?
- 設計図で何を確認すればいい?
上記の様な悩みを解決します。
腹起しは、山留め工事で親杭やシートパイルが背面の土圧で内側に倒れてこないように、内側から水平に押さえる支保部材です。切梁とセットで「土留めの命綱」と呼ばれる部位で、ここの設計と段取りがおかしいと、最悪は山留めごと崩壊します。地下工事を任された施工管理者がまず押さえておきたい部位ですね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
腹起しとは?
腹起しとは、結論「親杭・シートパイルの背面側に水平に取り付けて、土圧をいったん受けてから切梁に流すための鋼製の梁」のことです。
英語では「Wale」または「Waling」。読み方は「はらおこし」。
「腹起し=梁の役」「切梁=突っ張り棒の役」と覚えるとシンプルです。土圧の流れは次のようになります。
土圧の伝達ルート
- 背面の土が親杭・シートパイルを内側に押す
- 親杭が腹起しに水平荷重を伝える
- 腹起しが切梁にバトンタッチ
- 切梁が反対側の腹起し→反対側の親杭へ受け流す
つまり腹起しは「親杭からの水平力を集めて、切梁という突っ張り棒に渡す中継点」です。腹起しがないと、切梁を均等な間隔で当てられず、親杭の中間部が局所的に折れてしまうイメージですね。
土留め工法そのものについては、こちらでも触れています。


腹起しの構造と切梁との役割分担
腹起しはH形鋼を水平に連ねた梁です。これを親杭の内側に1本の連続線として通します。長尺のH形鋼を継ぎながら、敷地外周をぐるりと一周させるイメージです。
切梁は腹起しの上から見ると、反対側の腹起しに向かって直交方向に走る突っ張り材です。火打ち梁(45度の補強材)が、腹起しと切梁の入隅に入って剛性を稼ぎます。
| 部材 | 配置 | 役割 |
|---|---|---|
| 親杭・シートパイル | 鉛直 | 背面土を直接受け止める |
| 腹起し | 水平・連続 | 土圧を集めて切梁に流す |
| 切梁 | 水平・直交 | 反対側の腹起しを突っ張る |
| 火打ち梁 | 斜め | コーナー部を補強 |
切梁の詳細は別記事で書いていますのでよろしければ。

腹起しのサイズ選定の考え方
腹起しのサイズは掘削深度・敷地スパン・土質から構造設計で決まります。実務でよく出てくる目安は次の通り。
腹起しサイズの一般的な目安
| 掘削深度 | 腹起し(H形鋼) | 想定用途 |
|---|---|---|
| 〜3m | H-200×200 | 浅い設備ピット、地下車庫 |
| 3〜6m | H-300×300 | マンション地下1階 |
| 6〜10m | H-350×350 〜 H-400×400 | オフィス地下2階、地下駐車場 |
| 10m超 | H-450×450 〜 H-500×500 | 大型ビル、地下鉄駅出入口 |
数字で押さえておきたいのは、深度が3m深くなると腹起しのせいが100mmずつ大きくなるという感覚値です。設計図書で「6m掘ってるのにH-200×200」みたいな腹起しが指定されていたら、まず構造担当に再確認するレベル。
材種はSS400 or SM490が標準で、特に重要構造ではSM490が指定されます。

段階施工の流れ
腹起しは地下深さに応じて、複数段(2〜5段)を段階的に取り付けます。「1段目を取り付ける前に深く掘ってはいけない」のが鉄則です。
標準的な段階施工
- 親杭・シートパイル打ち込み完了
- 1段目腹起し設置レベル(GL-1〜2m)まで掘削
- 1段目腹起し+切梁+火打ち梁を取付(ここが完了するまで掘削停止)
- 2段目設置レベル(GL-4〜5m)まで掘削
- 2段目腹起し+切梁+火打ち梁を取付
- (以降、段数を追加しながら所定深度まで)
- 構造躯体完成後、上から順に盤替え(撤去)
ここで一番事故が起きるのが「3段目を取り付ける前に深く掘り過ぎた」というケース。元請から見ると掘削業者と支保工業者が別職種なので、1段組んだら掘削を一時停止して支保確認、また掘るというリズムを工程表で明文化しておかないと崩壊事故につながります。
土留め全体の関連はこちらもどうぞ。

設備工事との取り合いで気をつけること
ここからが、土工視点だけでは見落としがちな、設備施工管理側の話です。
腹起しは敷地外周を1m前後の高さで水平に走る連続梁なので、地下躯体の壁配筋・スリーブ・配管ルートと高さが必ず干渉します。先行打設したい部位の壁筋が、腹起しの真下や真上に重なるパターンが頻出。
設備工事側で事前に確認すべきポイント
- 腹起しの上下に何mmの逃げがあるか:壁筋の組立てスペース
- 盤替え時期と設備配管の先行可否:配管を先行すると腹起し撤去で破壊する
- EPS・PSのスリーブ位置:腹起しと取り合う位置のスリーブは設置不可
- 電気引込みの貫通箇所:腹起しと干渉しない高さに変更
- アンカーボルト位置:腹起しの取付ボルトと壁配筋の干渉
私が以前、地下2階のオフィスビル新築でEPSの電気立上げを担当したとき、3段目の腹起しが設計でEPSの配線立上げ位置のド真ん中に来ていることに配筋検査の段階で気づき、構造担当・土工事業者と3者協議してEPSルートを左に300mmずらしました。腹起しのH-350×350が走っているところには、後から壁を欠けません。配筋検査前に腹起し位置を設備図に転記しておくのが、後手にならないコツです。
配筋検査の話はこちらに詳しく書いています。

腹起しに関する情報まとめ
- 腹起しとは:親杭の背面土圧を集めて、切梁に流すための水平のH形鋼の連続梁
- 切梁との関係:腹起しが「梁」、切梁が「突っ張り棒」、両者セットで初めて土留めが成立する
- サイズの目安:深度+3mごとにH形鋼のせいが100mm大きくなるイメージ。SS400 or SM490が標準
- 段階施工:1段組み立てるまでは深く掘らない。これを守らないと崩壊事故に直結
- 設備工事との取り合い:腹起しの高さは壁配筋・スリーブ・配線立上げと必ず干渉する。配筋検査前に設備図に転記しておくのが鉄則
腹起しは「土工事業者の仕事だから」と他人事にしがちな部材ですが、設備工事の段取りまで連鎖する超重要部位です。設計図書を渡されたら「この腹起しのレベルに、自分の配管・配線・スリーブが何本かぶっているか」を最初に確認する習慣を付けると、後の手戻りがほぼゼロになります。
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