- 柱の継ぎ目に付いてる板、これ何?
- そもそも何で柱に継手がいるの?
- スプライスプレートと何が違うの?
- なんで仮なのに高力ボルトを全数締めるの?
- いつ外すの?溶接の前?後?
- 外し方はガス切断でいいの?
- 切った跡は母材を削っていい?どこまで?
- UT検査って何を見てるの?
- 建て方精度ってどうやって確認する?
- 外し忘れたらどうなるの?
- 吊りピースと混同してしまう
- 弱軸方向の剛性って何の話?
- 撤去は誰がやるの?
- 結局、現場で何を確認すれば合格なの?
上記の様な悩みを解決します。
エレクションピースは、鉄骨造の柱継手に付く「仮止め用のプレート」です。建方図や鉄骨製作図で「EP」と書かれているのを見て、役割も外し方も分からないまま建方当日を迎える、という新人施工管理は多いです。今回は定義・なぜ必要か・取り付け位置・仮ボルト・外し方といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「建方精度の確認」「UT検査のタイミング」「撤去時の母材保護」「外し忘れ・是正トラブル」まで、現場で実際にハマるポイントを整理しました。
なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、鉄骨建方に初めて立ち会う方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
エレクションピースとは?
エレクションピースとは、結論「鉄骨の柱継手を現場溶接する前に、上下の柱をズレなく仮固定しておくための仮設プレート(とそれを留める高力ボルト)」のことです。
英語の erection(建て方・組み立て)+ piece(部材)が語源で、文字どおり「建方のための部材」です。工場で柱に溶接して取り付けておき、現場で柱を継ぐときに上下の柱を仮ボルトで固定。その後、本溶接(突合せ溶接)が終わって検査に合格したら、ガス切断で撤去します。つまり最初から「外す前提」で付いている仮設部材です。
ここを最初に押さえておくと、後の話が全部つながります。「仮設だから適当でいい」のではなく、「本溶接が終わるまでの間、柱の位置と力を一手に引き受ける重要な仮設」だから全数高力ボルトで締める。そして「本設ではない」から最後は撤去する。この2つの性格を両方持っているのがエレクションピースです。
鉄骨の継手全体の整理はこちらが詳しいです。

僕の整理では、エレクションピースは「柱継手の本溶接が完成するまでの”仮の手”」だと捉えると分かりやすいです。鉛筆を2本、断面同士でピッタリ合わせて立てるとき、手で押さえていないと合わせられませんよね。あの「押さえる手」を鋼材でやっているのがエレクションピースです。
なぜエレクションピースが必要なのか(柱継手と建て方精度)
エレクションピースを理解するには、「なぜ柱に継手が必要か」から押さえるのが近道です。
柱が長すぎて運べないから継手ができる
鉄骨造の階高は一般に3.0〜3.5m程度。5階建てなら単純計算で15m前後の柱になります。これほど長尺な柱は、工場で一本物に作ってもトレーラーの荷台に載らず、現場まで運べません。そこで柱を分割して運び、現場で継いで一本に仕上げます。この「継ぐ場所」が柱継手です。
柱継手の詳しい考え方はこちら。

継手の本溶接前に「位置を保持する」のが役割
分割した上下の柱を一体化させるには、突合せ溶接(完全溶け込み溶接)で剛接合にします。ただし溶接する前は上下の柱がバラバラなので、断面をピッタリ合わせて、ズレないように押さえておく必要があります。この「溶接前の位置保持・仮固定」を担うのがエレクションピースです。
剛接合・ピン接合の違いはこちらが参考になります。

エレクションピースが担う具体的な機能
- 上下の柱の断面(開先)を正しい位置に合わせて保持する
- 建方精度(柱の倒れ・ねじれ・目違い)を調整・保持する
- 弱軸方向の剛性を一時的に確保し、溶接が終わるまで継手の形状を保つ
- 本溶接中・溶接前に継手にかかる力を一時的に負担する
「弱軸方向の剛性」というのは、柱継手が本溶接で一体化する前は、横からの力に対して継手が弱い、ということです。その弱さをエレクションピースが一時的に補い、安全に溶接できる状態を作ります。
僕の感覚だと、エレクションピースの本質は「建方精度を出すための調整代」です。柱は工場製作の段階で寸法どおりに作ってあっても、現場で継ぐと必ず微妙なズレが出ます。そのズレをボルトの締め加減やライナー(調整板)で吸収して、垂直・通り・レベルを合わせ込む。その作業ができるのは、エレクションピースで仮固定されているからです。
鉄骨建方の流れ全体はこちらも参考になります。

エレクションピースの取り付け位置とスプライスプレートとの違い
ここは心の声で混乱が多かったところです。柱継手まわりには似たプレートが複数あるので、役割で整理します。
取り付け位置
エレクションピースは、柱継手の位置に取り付きます。角形鋼管柱なら、継手の上下の柱に対して、柱の各面(多くは四方)にプレートを溶接で付け、上下のプレートを別のプレートとボルトで挟んで締めます。継手部の母材には、本溶接の邪魔にならないようスカラップ(溶接のための切り欠き)が設けられているのが一般的です。
スカラップの考え方はこちら。

スプライスプレートとの違い
| 項目 | エレクションピース | スプライスプレート |
|---|---|---|
| 目的 | 柱継手の溶接前の仮固定・建方精度確保 | 部材同士をボルトで連結する添え板 |
| 設置 | 工場で柱に溶接、現場で仮ボルト締め | 継手部に添えて高力ボルトで本接合 |
| 最終処理 | 本溶接後に撤去する | そのまま残る(本設) |
| 使われ方 | 主に柱の突合せ溶接継手の仮止め | 梁継手など高力ボルト接合で多用 |
ざっくり言うと、エレクションピースは「溶接で継ぐ柱を仮固定して、最後は外す」もの、スプライスプレートは「ボルトで継ぐ部材をつなぐ添え板で、そのまま残る」ものです。柱は突合せ溶接、梁はスプライスプレート+高力ボルト、という組み合わせが多いことを押さえると混乱しません。
スプライスプレートの詳細はこちら。

僕としては、この2つは「最後に残るか/外すか」で覚えるのが一番早いと思います。残るのがスプライスプレート(本設)、外すのがエレクションピース(仮設)。図面でEPと書いてあれば「これは後で撤去するやつだ」とすぐ判断できます。
エレクションピースの仮ボルトに全数高力ボルトを使う理由
心の声で多かった「仮なのに何で高力ボルトを全数締めるの?」に答えます。
エレクションピースのボルト接合は「仮止め」ですが、溶接が完了するまでは、継手にかかる力を実質的にこの仮ボルトが受け持ちます。建方途中の柱は、まだ本溶接されていないので、上の柱の自重・風荷重・建方中の外力などが継手にかかります。それを支えるのが仮ボルトです。ここが緩い・本数が足りないと、溶接前に柱がズレたり、最悪は不安定になります。だから「仮」でも全数を高力ボルトでしっかり締めるわけです。
使われるボルトは高力ボルト(ハイテンションボルト)で、六角の高力ボルトが用いられることが多いです。高力ボルトの種類や締付けはこちら。

施工管理が確認すること
- 仮ボルトが設計・施工要領で定められた本数・等級か(全数締めが基本)
- 締付けが規定どおり行われているか
- ボルト孔・座面に異常がないか
僕の考えでは、「仮ボルトだから本締めしなくていい」という思い込みが一番危ないです。エレクションピースの仮ボルトは、溶接が完了するまで継手を持たせる”つなぎ”の役割なので、本数・締付けは手を抜けません。ここを軽視すると建方中の安全に直結します。
鉄骨建方〜現場溶接で施工管理が確認すること
ここから先が、競合記事にほとんど書かれていない施工管理目線のパートです。エレクションピースは「建方精度を出して、安全に本溶接するための仮設」なので、その目的に沿って確認すべき項目を整理します。
建方精度の確認
本溶接の前に、柱の建方精度を測定・調整します。エレクションピースで仮固定された状態で、次を確認します。
- 柱の倒れ(垂直精度)
- 通り(柱の位置の通り芯からのズレ)
- レベル(天端の高さ)
- 継手の目違い・開先の状態
ズレがあれば、ボルトの締め加減やライナー(調整板)で建方精度を許容値内に追い込みます。この調整ができるのがエレクションピースの存在意義です。
天端・レベル管理の考え方はこちら。

本溶接(突合せ溶接)の管理
建方精度が出たら、柱継手を完全溶け込み溶接します。施工管理としては、溶接前に開先・裏当て金・予熱、溶接中の条件、溶接後の外観を確認します。溶接そのものの基本はこちら。

UT検査(超音波探傷試験)のタイミング
柱の突合せ溶接は完全溶け込み溶接なので、内部欠陥がないかをUT検査(超音波探傷試験)で確認します。心の声「UT検査って何を見てる?」への答えは、「溶接の内部に割れ・融合不良・ブローホールなどの欠陥がないかを、超音波で確かめている」です。
ここで重要なのが順番です。エレクションピースを撤去するのは、本溶接が終わってUT検査に合格してからです。検査前に外してしまうと、もし溶接にやり直しが必要になったとき、仮固定がない状態になってしまいます。
溶接欠陥の種類・判定はこちらが詳しいです。

僕の整理では、施工管理の確認順序は「建方精度を出す → 本溶接 → UT検査合格 → エレクションピース撤去」です。この順番を崩さないことが、品質と安全の両面で効いてきます。特に「検査前に外さない」は徹底すべきポイントです。
エレクションピースの外し方と撤去時の注意点
エレクションピースは仮設なので、最後は撤去します。ここも施工管理として品質に直結するパートです。
外し方の基本手順
- 柱継手の本溶接が完了している
- UT検査(超音波探傷試験)で合格している
- ガス切断でエレクションピースを母材から切り離す
- 切断跡をグラインダー(サンダー)で母材面まで滑らかに仕上げる
撤去作業は、現場溶接を請け負う業者がそのまま行うことがほとんどです。
撤去時の最大の注意点:母材を傷つけない
心の声「切った跡は母材を削っていい?どこまで?」への答えがここです。ガス切断は、エレクションピース側で切り、母材(柱本体)を傷つけないように残して切るのが原則です。切り残しはグラインダーで母材面まで滑らかに仕上げますが、削りすぎて母材を凹ませると、それ自体が断面欠損・応力集中の原因になります。
つまり「付いていた跡が分からないくらい綺麗に、かつ母材を削りすぎない」という微妙なさじ加減が必要です。仕上げ後は、母材表面に傷・えぐれ・アンダーカットが残っていないかを確認します。
外し忘れ・是正のリスク
- 外し忘れ:撤去前提の仮設なので、残っていると検査指摘や見栄え・防錆処理上の問題になります。撤去チェックを建方の出来形確認に組み込むのが安全
- 母材損傷:削りすぎ・ガス傷で母材を痛めた場合、是正(補修溶接・グラインダー再仕上げ)が必要になり、補修溶接はさらに検査対象になります
- 塗装・耐火被覆前の確認:撤去跡の仕上げが済んでいないと、塗装・耐火被覆をかけた後に発覚すると手戻りが大きい
僕の感覚だと、エレクションピースの撤去は「外す」より「外した跡をどう仕上げるか」が本番です。切るのは誰でもできますが、母材を傷つけずに面一に仕上げ、撤去跡を全数チェックする。ここを出来形確認のルーチンに入れておくと、塗装・耐火被覆後の手戻りを防げます。
エレクションピースと吊りピースの違い
心の声「吊りピースと混同する」への答えです。名前が似ていて、どちらも仮設で最後に撤去する点が共通するので混乱しやすいですが、役割が全く違います。
| 項目 | エレクションピース | 吊りピース |
|---|---|---|
| 役割 | 柱継手の溶接前の仮固定・建方精度確保 | 部材をクレーンで吊り上げるための玉掛け用ピース |
| 付く位置 | 柱継手部 | 吊り上げる部材(梁・柱など)の吊り点 |
| 使うタイミング | 建方〜本溶接まで | 揚重(クレーンで吊る)とき |
| 最終処理 | 本溶接・検査後に撤去 | 揚重後に撤去 |
ざっくり、エレクションピースは「継手を仮固定する」ためのもの、吊りピースは「クレーンで吊る」ためのものです。どちらも仮設で撤去しますが、目的は「固定」と「吊り上げ」で別物だと押さえれば混同しません。
吊りピースとの違いの詳細はこちら。

実務だと、図面で「EP」「吊りピース」「PL」などの記号が並ぶと新人は混乱しがちですが、「この仮設は何のため(固定?吊り?)に付いているか」を一つずつ確認していくと、役割で区別できるようになります。
エレクションピースでよくあるトラブルと是正
最後に、現場で実際に起きやすいトラブルと是正の方向性を整理します。
| トラブル | 起きる原因 | 是正・対策の方向性 |
|---|---|---|
| 撤去前に外してしまった | 検査順序の理解不足 | UT合格を撤去の条件としてルール化 |
| 母材を削りすぎた | グラインダー仕上げのやりすぎ | 補修溶接・再検査、削りすぎ防止の周知 |
| 仮ボルトの本数不足・締付け不良 | 「仮だから」の油断 | 全数締めの徹底、締付け確認 |
| 撤去し忘れ | 出来形確認に撤去チェックがない | 撤去確認を建方の確認項目に組み込む |
| 建方精度が出ない | 仮固定の調整不足 | ライナー・締め加減で精度を追い込む |
僕としては、エレクションピース起因のトラブルは「順序」と「仕上げ」に集約されると感じます。順序=検査前に外さない、仕上げ=母材を傷つけない。この2つさえ徹底できれば、撤去まわりの問題はほぼ防げます。逆にここを現場任せにすると、塗装・耐火被覆後に発覚して大きな手戻りになるので、施工管理が撤去のチェックまで責任を持つのが大事です。
エレクションピースに関する情報まとめ
- 定義:柱継手を現場溶接する前に上下の柱を仮固定するための仮設プレート(と高力ボルト)。最後は撤去する
- 必要な理由:長い柱は分割して運ぶため継手ができ、その継手を本溶接するまで位置保持・建方精度確保が必要
- 役割:開先の位置合わせ/建方精度(倒れ・通り・レベル)の調整・保持/弱軸方向の剛性の一時確保
- 取り付け位置:柱継手部の各面に溶接、スカラップを設けて本溶接の邪魔にならない形状
- スプライスプレートとの違い:エレクションピースは外す仮設、スプライスプレートは残る本設
- 仮ボルト:溶接完了まで継手の力を負担するため、全数を高力ボルトで締める
- 施工管理の順序:建方精度を出す→本溶接→UT検査合格→撤去
- 外し方:UT合格後にガス切断し、グラインダーで母材を傷つけずに面一に仕上げる
- 撤去の注意点:検査前に外さない/母材を削りすぎない/撤去し忘れを出来形確認で防ぐ
- 吊りピースとの違い:エレクションピースは仮固定用、吊りピースは揚重用
以上がエレクションピースに関する情報のまとめです。
エレクションピースは「柱継手の本溶接が完成するまでの仮の手」です。役割を一度理解すれば難しくありませんが、施工管理として大事なのは用語の暗記ではなく、「建方精度を出す→本溶接→UT合格→撤去」という順序を守り、撤去跡を母材を傷つけずに仕上げること。検査前に外さない、母材を削りすぎない、撤去し忘れない。この3つを出来形確認のルーチンに組み込めると、鉄骨建方の品質と安全をしっかり押さえられるようになるはずです。
エレクションピースに関するよくある質問
Q1:エレクションピースとスプライスプレートは何が違いますか?
最大の違いは「最後に残るか、外すか」です。エレクションピースは柱継手を溶接する前の仮固定用で、本溶接・検査が終わったら撤去する仮設部材です。一方スプライスプレートは、部材同士をボルトで連結する添え板で、そのまま本設として残ります。柱は突合せ溶接で継ぎ、梁はスプライスプレート+高力ボルトで継ぐことが多い、と覚えておくと区別しやすいです。
Q2:仮止めなのに、なぜ高力ボルトを全数締めるのですか?
エレクションピースは「仮」ですが、柱継手の本溶接が完了するまでは、継手にかかる力(上の柱の自重・風・建方中の外力)を実質的にこの仮ボルトが負担するからです。本数が足りなかったり締付けが甘いと、溶接前に柱がズレたり、建方中の安全に影響します。だから仮止めでも全数を高力ボルトでしっかり締めます。「仮だから本締めしなくていい」は誤解です。
Q3:エレクションピースはいつ外しますか?
柱継手の本溶接が完了し、UT検査(超音波探傷試験)に合格してから外します。検査前に外してしまうと、もし溶接にやり直しが必要になったときに仮固定がない状態になってしまいます。順序は「建方精度を出す→本溶接→UT検査合格→撤去」が基本で、この順番を崩さないことが品質・安全の両面で重要です。
Q4:外し方と、外した跡の処理はどうしますか?
UT検査合格後に、ガス切断でエレクションピースを母材から切り離し、切断跡をグラインダーで母材面まで滑らかに仕上げます。このとき最も大事なのが「母材(柱本体)を傷つけない・削りすぎない」ことです。削りすぎて母材を凹ませると断面欠損や応力集中の原因になります。仕上げ後は、母材表面に傷やえぐれが残っていないかを確認します。撤去は現場溶接の業者が請け負うことがほとんどです。
Q5:エレクションピースと吊りピースは同じものですか?
別物です。エレクションピースは柱継手を溶接前に仮固定するためのもの、吊りピースは部材をクレーンで吊り上げる(玉掛けする)ためのものです。どちらも仮設で最後に撤去する点は共通しますが、役割は「仮固定」と「吊り上げ」でまったく違います。図面で記号が並んでいたら、「この仮設は固定用か、吊り用か」を確認すると区別できます。
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