- 圧縮荷重ってなに?
- 引張荷重と何が違うの?
- 単位は何で書く?
- 座屈と圧縮ってどう違うの?
- コンクリートやSS400だと許容値はいくつ?
- 現場のどこで圧縮荷重を見るの?
上記の様な悩みを解決します。
圧縮荷重は、結論「部材を押し縮める方向にかかる外力」で、柱・支保工・基礎杭・コンクリート部材といった「上から重さを受ける部品」の設計で必ず出てくる基本量。引張荷重と一見対照的なのですが、圧縮側だけは 「材料の圧壊」と「細長い部材の座屈」の二段構え で耐力をチェックしないといけないクセモノで、構造計算でつまずく初学者が一番多いポイントです。本記事ではコンクリート・S造・木造それぞれの代表値を並べつつ、座屈との関係を切り分けて整理しておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
圧縮荷重とは?
圧縮荷重とは、結論「部材を押し縮める方向に作用する外力」のことです。
英語では compressive load(コンプレッシブロード)または compression load。記号は P や N(軸方向力のN)が使われ、軸力のうちマイナス側=圧縮、プラス側=引張として整理します。
圧縮荷重がかかる代表的な部位
圧縮荷重がかかる代表的な部位は、建物の柱(屋根・床の重量を受ける)、鉄筋コンクリートの基礎杭(押込み力を受ける)、鉄骨ブレースの圧縮側(X型ブレースの片側)、型枠支保工のサポート(コンクリート打設中の上載荷重)、仮設足場の建地(人・資材の自重)、木造軸組の通し柱・管柱、アーチ橋の桁・トンネル覆工、橋脚、というあたり。
「上から押し下げられる方向に外力が作用」というイメージ。建築物の柱は基本的に「圧縮で支える部材」なので、構造図で柱を見たら 「ここに圧縮荷重がかかる」 と頭の中で読み替えるのが第一歩です。
圧縮荷重と引張荷重の違い
引張荷重と圧縮荷重は、力の向きだけが反対の関係。ただし設計上の扱いが大きく違うので、ここを混同すると痛い目を見ます。
| 項目 | 引張荷重 | 圧縮荷重 |
|---|---|---|
| 力の向き | 部材を 伸ばす 方向 | 部材を 縮める 方向 |
| 部材の変形 | 長くなる | 短くなる |
| 破壊モード | 断面破断(材料の引張破壊) | ①材料圧壊 + ②座屈 の2モード |
| 鋼材での得意度 | 強い(引張強さ400〜800 N/mm²) | 強い(同等の値) |
| コンクリートでの得意度 | 弱い(圧縮の1/10程度) | 得意(基準強度 18〜36 N/mm²) |
| 細長い部材 | 細長くても断面通り効く | 細長いほど座屈で耐力が落ちる |
| 設計時の特徴 | 断面積で耐力が決まる | 断面積+細長比で耐力が決まる |
圧縮側に独特の「座屈」
引張側は「断面積が決まれば耐力が決まる」というシンプルな関係ですが、圧縮側は 細長い部材ほど横にたわんで耐力が落ちる(座屈)。これは座屈荷重の世界で、オイラーの式で扱う領域。長柱の設計では、圧縮応力度のチェックだけでなく、細長比 λ = Lk / i に応じた座屈耐力の照査が必須になります。

引張と圧縮を含む応力ひずみの全体像については、こちらにまとめてあります。

圧縮荷重の単位
圧縮荷重の単位は、結論「N(ニュートン)またはkN(キロニュートン)」が標準です。
単位の整理は、N(ニュートン)で1 kgf ≒ 9.81 N、kN(キロニュートン)で1 kN = 1,000 N、MN(メガニュートン)で1 MN = 1,000 kN(大規模構造で使用)、kgf(重量キログラム)が旧単位で1 kgf ≒ 9.81 N、tf(重量トン)で1 tf ≒ 9.81 kN、というあたり。
換算の早見
| 単位 | 換算 |
|---|---|
| 1 kN | ≒ 102 kgf |
| 1 tf | ≒ 9.81 kN |
| 100 kN | ≒ 10.2 tf |
例えば「柱1本に圧縮荷重 1,500 kN」と書かれていれば、約 153 tf=約153トンの重量が乗っかっているイメージ。10階建ての中層建物の柱で1,000〜2,000kNあたりがゴロゴロ出てくるので、慣れてくると「kN表記でも体感重量が思い浮かぶ」ようになります。
圧縮荷重の計算方法
圧縮荷重の計算は、引張側と同じく2段階で考えます。
①「外力としての圧縮荷重」を求める計算
外力としての圧縮荷重を求める計算は、上階からの軸力(梁反力の累積)、屋根・床の死荷重×負担面積、積載荷重×負担面積、雪荷重×負担面積(多雪地)、というあたり。
「この柱は何階分の重量を受けるか」を計算する段階。下層の柱ほど累積荷重が大きくなるので、構造計算書では1階柱が最も大きな圧縮荷重を受ける、という形で出てきます。
②「許容できる圧縮荷重」を求める計算(耐力計算)
ここが引張側と決定的に違うところで、短柱(圧壊側)と長柱(座屈側)の2方向チェックが必要になります。短柱なら許容圧縮荷重P = 許容圧縮応力度fc × 有効断面積A、長柱ならオイラー座屈荷重Pe = π² × E × I / Lk²、という式。
実務では、許容圧縮応力度 fc が細長比 λ に応じた低減係数で割り引かれるので、「圧縮応力度の低減 + 断面積」で実質一発計算できる形にまとめられているケースが多いです。鉄骨告示・木造告示などにそれぞれの式が整備されています。
例:柱に圧縮荷重 1,000 kN がかかる場合
必要断面積(許容応力度200 N/mm²と仮定)は1,000,000÷200=5,000 mm²、これはH300×300×10×15の断面積(約11,800 mm²)ならクリア、というかたち。
ただし細長比が大きいと、200 N/mm² がたとえば 80 N/mm² まで落ちるので、必要断面積が2.5倍にふくらみます。「鉄骨柱は太いほど・短いほど圧縮に強い」と覚えておけば直感は外しません。
主要材料の圧縮許容値
実務でよく使う材料の圧縮側の代表値を整理しておきます。
鋼材(短柱の許容圧縮応力度・短期)
| 材質 | 降伏点 | 短期許容圧縮応力度(短柱) |
|---|---|---|
| SS400 | 235 以上 | 235 N/mm² |
| SN400B | 235〜355 | 235 N/mm² |
| SM490 | 325 以上 | 325 N/mm² |
※細長比が大きい長柱では、上記値が低減されます。実務では構造計算書の「許容圧縮応力度表」を参照。
コンクリート(設計基準強度ベース・短期)
| 設計基準強度 Fc | 短期許容圧縮応力度(目安) |
|---|---|
| 18 N/mm² | 12 N/mm²(長期 6) |
| 21 N/mm² | 14 N/mm²(長期 7) |
| 24 N/mm² | 16 N/mm²(長期 8) |
| 30 N/mm² | 20 N/mm²(長期 10) |
| 36 N/mm² | 24 N/mm²(長期 12) |
木材(針葉樹・基準強度ベース)
| 樹種 | 圧縮基準強度 Fc |
|---|---|
| スギ(無等級材) | 17.7 N/mm² |
| ヒノキ(無等級材) | 20.7 N/mm² |
| ベイマツ(無等級材) | 22.2 N/mm² |
ここで分かるのは、鋼材の圧縮許容値は鉄筋コンクリートの10〜20倍だということ。だから少ない断面積で大きな荷重を受けられるのが鉄骨造(S造)の強みなのですが、その代わり「細長くなるとすぐ座屈する」のが弱点。RC造は「コンクリートの太い柱で圧縮を効率よく受け、引張は鉄筋に分担させる」発想で組み立てられている、というのが構造の基本ストーリーです。


現場で圧縮荷重が問題になる場面
施工管理として「圧縮荷重」を意識するシーンを並べておきます。
①基礎杭の押込み耐力
建物全体の鉛直荷重を、最終的に地中の杭へ伝えるのが基礎の役目。1本あたりの押込み圧縮荷重が、杭の長期許容支持力以下になっているかをチェックします。地盤調査のN値で杭先端の支持力+周面摩擦力を出して、必要本数を逆算する流れですね。

②型枠支保工のサポート計算
コンクリート打設中、生コンクリート+型枠+作業員+打設機械の重量がすべてサポート材へ圧縮で乗ってきます。1本あたり何トン受けるかを計算して、サポートの本数・配置を決定。過密に立てたつもりが横倒れ=座屈で重大事故になるケースがあるので、座屈との合わせ技で要注意。

③仮設足場の建地
枠組足場の建地(縦の支柱)には、1本あたり 1,200 kgf 以下(労安規則)といった許容値が定められています。資材の積み上げが規定を超えると座屈・転倒。とくに高層階で建地が長くなる現場ほど、座屈側のリスクが顕在化します。
④鉄骨X型ブレースの圧縮側
地震時、X型ブレースは「片方が引張、もう片方が圧縮」になります。圧縮側は座屈で耐力が大幅にダウンするので、「実質、引張側の片側だけが効いている」と見立てて設計するのが実務上の定番。圧縮側を主役にしたい場合は、座屈拘束ブレース(BRB)を使うことになります。

僕も新人時代に、鉄筋コンクリートの大梁を支える支保工サポートを「多少多めに立てておけば安心」と考えて打設に入ったら、サポート間隔は十分でも長さの座屈余裕が足りず、わずかにせり上がる現象を経験したことがあります。圧縮荷重は「太さ」だけ見ていて「長さ」を忘れると痛い目にあう。これが圧縮の怖さだなと痛感した一件でしたね。
圧縮荷重に関する情報まとめ
- 圧縮荷重とは:部材を押し縮める方向に作用する外力
- 引張との違い:圧縮側は 圧壊と座屈の2モードでチェックが必要
- 単位:N、kN、MN(1 tf ≒ 9.81 kN)
- 計算:許容圧縮荷重 P = 許容圧縮応力度 fc × 有効断面積 A(細長比で fc が低減)
- 代表値:SS400 短期 235 N/mm²、Fc24コンクリート 短期 16 N/mm²、ヒノキ 20.7 N/mm²
- 現場での出番:基礎杭・支保工サポート・足場建地・鉄骨ブレース圧縮側
以上が圧縮荷重に関する情報のまとめです。
圧縮荷重は「上から押される力」というシンプルな概念ですが、実務では 「圧壊」と「座屈」の二段構えで耐力を見ないと安全側に振り切れません。とくに長い柱・サポート・建地のように細長くなる部材は、断面積以上に「長さ」が効いてくる。この感覚をつかむと、構造図や仮設計画書を見るときの解像度が一段アップしますよ。一通り圧縮荷重の基礎知識は理解できたと思います。
合わせて、応力ひずみや座屈の周辺知識も押さえておくと、構造の全体像がグッと立体的に見えるようになります。




