- 束材ってなに?
- トラスの束材って何のために入ってる?
- 木造の「束(つか)」とは違うの?
- どんな大きさ・間隔で入れるの?
- 引張?圧縮?どっちで持ってる?
- 施工管理として何に気をつける?
上記の様な悩みを解決します。
「束材」(つかざい)はトラス構造や小屋組で上下の主部材をつなぐ短い垂直材のことです。木造の小屋組で見る「束(つか)」、鉄骨トラスの鉛直材、軽量鉄骨屋根の吊束など、文脈で意味は微妙に違いますが、共通するのは「メインの長尺材(上弦材・下弦材)を補強する短い垂直部材」という点。地味な部材ですが、これがないとトラスは形を保てず、小屋組は梁がたわんでしまいます。本記事では用途別の使い分け、サイズ、施工管理の見方まで整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
束材とは?
束材とは、結論「トラス構造で上弦材と下弦材を結ぶ短い垂直部材、または小屋組で梁・桁を支える短い柱状部材」のことです。
「つかざい」と読みます。英語では vertical(strut, post) と訳されますが、文脈により king post(キングポスト=中央束)や queen post(クイーンポスト=側束)と呼ばれます。
ざっくりイメージ
簡単な切妻屋根の小屋組を断面で見ると、一番下の水平な梁(=梁、または下弦材)、屋根の傾斜に沿った材(=垂木・登り梁、または上弦材)、中央〜各所に短い垂直材(=束材)、という構成。
→ この「下から上を支える、または上から下を吊る短い垂直材」が束材。鉛直方向の力を伝達する細い部材として働きます。
3つの代表用途
「束材」と一口に言っても、用途で意味が違います。トラス構造の鉛直材(屋根トラス・橋梁トラスの上弦と下弦をつなぐ部材)、木造小屋組の束(小屋梁から棟木・母屋を支える短い柱)、軽量鉄骨屋根の吊束(陸屋根や勾配屋根で天井を吊る短い垂直材)、という3つ。
→ いずれも「短い垂直部材」で「鉛直方向の力を分担する」点で共通。ただし圧縮で持つか、引張で持つかは構造により変わります。
なぜ束材が必要か
主部材(梁・上弦・下弦)だけで構造を組むと、梁が長すぎて中央でたわむ、屋根の重さを直接支点まで伝えられない、トラスの三角形が安定しない、というあたりが問題になります。
→ 束材を入れることで、「中間支点を作る」「力の伝達経路を分散」「形状を安定させる」役割を果たします。地味だけど、これがないと構造は成り立ちません。
トラス梁全般の話はこちらの記事を参考にしてください。

トラス構造の束材(垂直材)
トラス構造で束材は上弦材と下弦材を結ぶ垂直部材として登場します。
①トラスの基本構成
トラスは三角形を組み合わせた構造で、各辺は次の役割。上弦材(じょうげんざい=トラスの上側の辺、圧縮を受けることが多い)、下弦材(かげんざい=トラスの下側の辺、引張を受けることが多い)、斜材(しゃざい=上弦と下弦をつなぐ斜め材)、鉛直材(束材=上弦と下弦をつなぐ垂直材)、という4種類。
→ 4種類の部材が節点で接続されて全体が一体化。各部材は基本的に軸力(引張または圧縮)のみで力を伝える。
②束材の役割
トラスの中で束材が果たす役割は、上弦と下弦の間隔を一定に保つ(形状保持)、鉛直荷重を下弦から上弦へ伝達(または逆方向)、斜材と協力して三角形を構成、という3つ。
→ 「トラスの三角形が崩れないように支える縦の柱」がイメージ。屋根トラスでは中央の最も高い束材を「キングポスト(king post)」、両側の束材を「クイーンポスト(queen post)」と呼びます。
③軸力の方向(引張か圧縮か)
束材が引張で持つか圧縮で持つかは、トラスの形式と荷重で変わる。プラットトラス(下向き荷重)では鉛直材が引張で斜材が圧縮、ハウトラス(下向き荷重)では鉛直材が圧縮で斜材が引張、ワーレントラスでは斜材のみで束材なし(または装飾的)、というあたり。
→ プラットとハウは斜材の向きが逆転しているだけで、束材の力の向きが正反対になります。
④束材のサイズ
トラスは部材ごとに力の大きさに応じてサイズを変えるのが基本。束材は、軸力が小さい(中間部分は荷重分散後)→細い断面でOK、上弦・下弦より細くしてコスト・重量を抑える、木造では90mm角〜120mm角程度、鉄骨では山形鋼L65×6〜L75×6または鋼管φ60〜φ80程度、というあたり。
→ 主部材より一回り細い断面が定石。
⑤現場で見る束材
体育館・工場の屋根トラス、または橋梁を見上げると、上下の太い梁の間に等間隔で並ぶ短い垂直材が見えます。これが束材。屋根トラスで1.5〜3mピッチで配置、橋梁で5〜10mピッチ(規模次第)、木造小屋トラスで2〜3mピッチ、というあたりが目安。
→ 「等間隔の短い縦材」を見たら、それは束材の可能性が高い。
トラス梁の力学はこちらも参考にしてください。

木造小屋組の束材(束・小屋束)
木造住宅の小屋組では「束(つか)」「小屋束(こやづか)」と呼ばれる束材が登場します。
①木造小屋組の構成
切妻屋根の和小屋(伝統工法)を例にすると、①小屋梁(下層の梁=構造の下弦材)、②小屋束(小屋梁の上に立つ短い垂直材)、③棟木・母屋(小屋束の上に乗る水平材)、④垂木(屋根勾配に沿った斜め材)、⑤野地板(屋根の下地板)、という構成。
→ この中で「小屋梁から棟木・母屋を支える短い柱」が小屋束。
②小屋束のサイズ
一般住宅の場合、
| 部位 | サイズ(mm) |
|---|---|
| 小屋束(中央=最高) | 105×105〜120×120 |
| 小屋束(中間) | 90×90〜105×105 |
| 棟束(最高位置) | 105×105〜120×120 |
→ 大きい束は柱と同じくらいのサイズになります。中央ほど高くなるため、座屈防止のために断面を確保する必要があります。
③小屋束の配置
小屋束の配置は、梁間方向が1.5〜2mピッチ(構造強度に応じて)、桁行方向が1〜1.5mピッチ(屋根の重さに応じて)、中央の最高束を棟束(むねづか)と呼び他の束より太い、というあたり。
→ 数多くの束で屋根を支える「多支点支持」の構造。
④床束との混同に注意
木造には「床束」(ゆかづか)という別物の束材があります。
| 種類 | 位置 | 役割 |
|---|---|---|
| 小屋束 | 小屋裏 | 屋根を支える |
| 床束 | 床下 | 床(根太・大引)を支える |
→ 同じ「束」でも、屋根用と床用で全然別の部材。混同しないよう注意。床束はこちらの記事も参考にしてください。
⑤施工管理の視点(木造)
施工管理の視点は、小屋束の継手(ホゾ・込栓・羽子板ボルト)が確実に組まれているか、風による引張力が出るとホゾが抜ける可能性→金物補強、大空間(吹抜けなど)では束ではなく洋小屋トラスで支える方が合理的、というあたり。
→ 棚梁や和小屋伝統工法では束が多用されますが、金物併用が現代の標準。
軽量形鋼の話はこちらの記事も参考にしてください。

軽量鉄骨屋根の吊束
陸屋根や勾配屋根の軽量鉄骨工事では、天井を吊るための吊束(つりづか)として束材が使われます。
①吊束の役割
天井下地の野縁(LGS)を、上の構造体(スラブまたは屋根スラブ)から吊って支える短い垂直材。屋根スラブから天井までの距離(=ふところ)を吊束で繋ぐ、吊束は引張軸力で天井荷重を持つ、上端は躯体に固定・下端は野縁受けに接続、というあたり。
②吊束のサイズ
軽量鉄骨天井(LGS天井)の吊束は通常、主体材がφ9 全ねじボルトまたは吊ボルト、ピッチが900〜1,000mm程度(野縁受けに沿って)、取付はインサート金物で躯体に固定、というあたり。
→ 比較的細い棒(ロッド)を吊束として使うケースが多い。
③吊束の留意点
吊束の留意点は、長すぎる吊束(2m超など)は座屈・揺れに注意→振れ止め追加、大規模震災後は「吊天井の脱落」が問題化→振れ止め基準が強化(平成26年建築基準法改正)、振れ止めは斜め材を併用して横方向の動きを防ぐ、というあたり。
→ 「吊束だけで天井を支える」のは古い考えで、現代は振れ止めセットが標準。
④施工管理視点
施工管理視点は、吊束のピッチが図面通りか、振れ止めの取付角度・本数が指定通りか、インサート(または躯体側固定金物)が確実に効いているか、というあたり。
→ 天井脱落事故は人命に関わるので、吊束は地味だが命綱。
LGS関連はこちらも参考にしてください。

束材の施工管理ポイント
ここまで3種類の束材を見てきましたが、施工管理として共通の観点を整理します。
①材料・規格の確認
材料・規格の確認は、鉄骨トラスがJIS G 3101 SS400 / G 3192 形鋼規格 / 設計指定材、木造束が含水率15%以下・防腐処理・JAS規格・無垢/集成材、吊束(天井)がJIS B 1180 ボルト・メーカー指定インサート、というあたり。
→ 材料の規格確認は強度・耐力の前提。
②取付精度
取付精度は、鉛直精度が±5mm以内(地震時の挙動に影響)、高さ寸法が±3〜5mm(屋根勾配・天井高に影響)、接合部は設計通りの締付トルク・溶接脚長、というあたり。
→ 束材の精度が出ていないと、上部の主部材(棟木・上弦材・天井野縁)が歪む。
③腐食・劣化対策
腐食・劣化対策は、鉄骨が塗装・メッキ・耐火被覆、木造が防腐処理(クレオソート、ACQなど)、吊束は屋外側は錆対策(SUS仕様、めっき強化)、というあたり。
→ 束材は目に見えにくい部位だけに、初期施工で対策しないと20年後に発覚するトラブルの元。
④継手・接合部
継手・接合部は、鉄骨トラスが節点部のガセットプレート溶接・高力ボルト、木造束が込栓・羽子板ボルト・短ホゾ差し、吊束がインサート・ハンガー金物、というあたり。
→ 「束材本体より接合部のほうが重要」のが共通点。本体は単純な軸力部材だが、接合部の納まりが構造の信頼性を決める。
⑤現場での見落としポイント
僕も電気施工管理時代に、天井裏で「吊束の振れ止めが省略されていた」現場に遭遇したことがあります。設計図には書いてあるのに、施工が忘れていた…というケース。図面と現物の照合(目視・写真記録)、振れ止め・水平つなぎの本数チェック、施工後の点検口を残しておく(後日確認しやすく)、というあたりが押さえどころ。
→ 束材は「ない」と気づきにくい部材なので、施工時のチェックが重要。
束材に関する情報まとめ
最後に、束材の重要ポイントを整理します。
- 定義:トラスの上下弦材をつなぐ短い垂直材、または小屋組・天井で短い垂直支持材
- 3つの用途:トラス鉛直材、木造小屋束、軽量鉄骨吊束
- トラスでの役割:形状保持・荷重伝達・三角形構成
- 軸力:プラットトラス=引張、ハウトラス=圧縮(用途次第)
- サイズ:主部材より一回り細い断面が定石
- 木造小屋束:中央に最高束(棟束)、ピッチは1〜2m
- 吊束:吊ボルト+振れ止めで天井支持(平成26年法改正で振れ止め強化)
- 施工管理:材料・取付精度・腐食対策・継手金物の確認
以上が束材に関する情報のまとめです。
束材は「見た目が地味な短い垂直材」ですが、トラス・小屋組・天井の形状と耐力を維持する縁の下の力持ち。用途による意味の違い(トラス・木造・天井)、圧縮か引張かの判断、接合部の重要性を押さえておけば、構造図の読解と現場の施工管理がより深く見えるようになりますよ。一通り束材の基礎知識は理解できたと思います。
合わせて読みたい関連記事はこちら。







