- 展開公式ってどんな公式?
- 二乗の公式の種類が知りたい
- (a+b)³ みたいな三乗も覚えるべき?
- 公式を覚えるコツはある?
- 構造計算で展開公式は出てくるの?
- 計算ミスを減らすコツは?
上記の様な悩みを解決します。
展開公式とは、結論「(a+b)² や (a+b)(a−b) のように、かっこを含む式を展開するときに使える、決まったパターンの公式」のことです。1つひとつかっこを地道に展開していくよりも、公式を覚えてしまえば一瞬で答えが出る。建築の世界でも、平行軸の定理 I = I_g + A·d² の右辺を変形したり、固有周期の式の二乗を扱ったりするときに、展開公式が日常的に登場します。覚えてしまえば一生使える数学の道具なので、ここで一気に整理してしまいましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
展開公式とは?
展開公式とは、結論「(a+b)² のような、かっこ付きの式を展開した結果のパターンを、公式として覚えてしまったもの」のことです。
英語では expansion formulas または algebraic identities。「乗法公式」と呼ばれることもありますが、展開公式 ≒ 乗法公式で、ほぼ同じものを指します。
「展開する」とは何か
「展開する」とは、かっこを外してそれぞれの項のかけ算を実行し、最終的に「項の足し算・引き算の形」に直すことです。
(x + 3)(x + 2)
= x·x + x·2 + 3·x + 3·2
= x² + 2x + 3x + 6
= x² + 5x + 6
これは1つひとつ分配法則で広げれば、公式を知らなくても解けます。ただ、毎回これをやっていると時間が掛かるし計算ミスも増える。「(x + 3)(x + 2) = x² + 5x + 6」というパターンとして覚えてしまえば、瞬時に答えが出るわけです。
因数分解との関係
展開公式の逆向きが「因数分解」。
展開:(x + 3)(x + 2) → x² + 5x + 6
因数分解:x² + 5x + 6 → (x + 3)(x + 2)
両方とも同じ公式を逆方向から使うだけなので、展開公式を覚えれば因数分解もすぐできるようになる、という関係です。
整式と整理の仕方の話はこちらの記事もどうぞ。

二乗の展開公式
最頻出の3つ。これは確実に暗記しましょう。
①(a + b)² の展開
(a + b)² = a² + 2ab + b²
②(a − b)² の展開
(a − b)² = a² − 2ab + b²
③(a + b)(a − b) の展開
(a + b)(a − b) = a² − b²
これは「和と差の積は二乗の差」と呼ばれる超頻出公式。建築の世界でも、たとえばモール円の応力計算や、断面性能の差を取る場面でちらほら顔を出します。
④応用:(ax + b)(cx + d) の展開
(ax + b)(cx + d) = acx² + (ad + bc)x + bd
これは中学校で「たすき掛け」として習う形ですね。
⑤具体例で確認
(x + 5)² = x² + 2·5·x + 5² = x² + 10x + 25
(x − 3)² = x² − 6x + 9
(x + 4)(x − 4) = x² − 16
(2x + 3)(3x − 1) = 6x² + (−2 + 9)x + (−3) = 6x² + 7x − 3
二乗の公式は、構造計算の中でも特によく出てくるので、ぱっと見て展開結果が言える状態まで覚えるのが目標です。
三乗の展開公式
二乗ほど頻出ではないですが、たまに出てくるので押さえておきましょう。
①(a + b)³ の展開
(a + b)³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³
②(a − b)³ の展開
(a − b)³ = a³ − 3a²b + 3ab² − b³
符号が「+ − + −」と交互に並ぶのがポイント。
③(a + b)(a² − ab + b²) と (a − b)(a² + ab + b²)
(a + b)(a² − ab + b²) = a³ + b³
(a − b)(a² + ab + b²) = a³ − b³
「三乗の和と差」の公式。これは知らないと初見で展開するのがしんどいので、形だけでも覚えておきたい。
④パスカルの三角形
(a + b)ⁿ の係数は、パスカルの三角形に従って並びます。
| n | 展開係数 |
|---|---|
| 1 | 1, 1 |
| 2 | 1, 2, 1 |
| 3 | 1, 3, 3, 1 |
| 4 | 1, 4, 6, 4, 1 |
| 5 | 1, 5, 10, 10, 5, 1 |
n = 4 以上の展開は、係数を覚えるよりパスカルの三角形を書くほうが早いです。建築の構造計算で4乗以上が出てくる場面はかなりレアですが、振動論や級数展開で稀に登場します。
展開公式の覚え方とコツ
公式の暗記は単純作業ですが、いくつかの工夫で楽になります。
①最低限覚えるべき5つを優先
全部いっぺんに覚えようとせず、最頻出の5つから。
- (a + b)² = a² + 2ab + b²
- (a − b)² = a² − 2ab + b²
- (a + b)(a − b) = a² − b²
- (x + a)(x + b) = x² + (a + b)x + ab
- (a + b)³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³
ここまで反射で出るようになれば、構造計算の式変形は8割問題なくこなせます。
②声に出して唱える
「えーじじょー、ぷらす、にーえいびー、ぷらす、びーじじょー」のように、音のリズムで覚えるのが一番速いです。視覚だけより、音と組み合わせるほうが定着率が上がる。
③図形で覚える
(a + b)² は、1辺が (a + b) の正方形の面積として描くと「a² の正方形 + ab の長方形2つ + b² の正方形」が見えます。
+---+---+
|a² |ab |
+---+---+
|ab |b² |
+---+---+
数学嫌いの人ほど、この図イメージから入ったほうが定着しやすいですね。
④ミスしやすい点に注意
- (a − b)² の真ん中は −2ab(マイナスを忘れない)
- (a + b)(a − b) は a² − b²(真ん中の項は消える、これが盲点)
- (a + b)³ の真ん中2項は 3a²b と 3ab²(係数3を忘れない)
公式を書き出して何度か手で展開してみると、間違いやすいパターンが体に染みます。
ベクトルの内積や成分の話はこちらの記事もどうぞ。

展開公式が建築の構造計算で出てくる場面
「数学の公式なんて建築には関係ないでしょ?」と思っている人ほど、実はあちこちで出てきます。具体例で見ていきます。
①平行軸の定理の展開
ある軸まわりの断面二次モーメント I は、図心軸まわりの I_g に Ad²(断面積 × 軸間距離の二乗)を加えた式で表されます。
I = I_g + A · d²
ここで d² = (d_1 − d_0)² のように2点間の距離が差で書かれているケースでは、展開公式 (a − b)² = a² − 2ab + b² を使って展開する場面が出てきます。
②固有周期の式の二乗
1自由度系の固有周期は
T = 2π · √(m / k)
両辺を二乗すると
T² = 4π² · m / k
「両辺を二乗する」操作の中で展開公式の感覚を使っています。3.14 を含む式の二乗は、(2π)² = 4π² と素早く出せるかどうかで計算スピードが変わってきます。
③RC梁の応力ひずみ計算(応力の差の二乗)
RC梁のひび割れ後の挙動を扱う式に、(σ_y − σ_c)² のような応力差の二乗が出てきます。これも展開公式 (a − b)² の出番。
④モール円の式の整理
応力解析でおなじみのモール円。中心と半径を求める計算で、(σ_x − σ_y)² や (τ_xy)² の項を扱うため、二乗の展開公式が頭に入っていないと式が読めません。
⑤コンクリートの配合計算
水セメント比 W/C を二乗で扱う実験式(圧縮強度 σ ≒ A − B·(W/C)² など)では、(W/C)² の値を求めるために二乗の感覚が必要。展開公式そのものを直接使う場面は少ないですが、二乗を含む式を見たときに反射で展開できる体を作っておくと、構造系のテキストがぐっと読みやすくなります。
[talk words=’構造力学のテキストを開いていて、(a − b)² の式が出てきた瞬間に「a² − 2ab + b²」と展開できないと、その先の説明が全部止まってしまうんですよね。逆に二乗の展開公式が反射で出るようになると、参考書のページをめくるスピードが2倍くらいになる感覚があります。資格試験の勉強で公式に詰まる時間が減ると、本質的な理解に時間を回せるので、地味な公式暗記の効果は侮れない。’ name=”” avatarimg=”https://seko-kanri.com/wp-content/uploads/2020/02/c-run.png” avatarsize=70 avatarbdcolor=#d0d0d0 avatarbdwidth=1 bdcolor=#d0d0d0]
断面二次半径や座屈計算の話はこちらでも触れています。

展開公式に関する情報まとめ
- 展開公式とは:かっこ付きの式を展開した結果を、決まったパターンとして覚えた公式
- 別名:乗法公式(ほぼ同義)
- 二乗の最頻出3公式:(a+b)²、(a−b)²、(a+b)(a−b)
- 三乗:(a+b)³、(a−b)³、a³+b³、a³−b³
- 4乗以上:パスカルの三角形で係数を出す
- 覚え方:最頻出5公式に絞る/声に出す/図形イメージで覚える
- 注意:(a−b)²の真ん中は−2ab/(a+b)(a−b)は真ん中の項が消える
- 建築での出方:平行軸の定理、固有周期の二乗、モール円、応力ひずみの二乗項、配合計算
以上が展開公式に関する情報のまとめです。
一通り展開公式の基礎知識は理解できたかなと思います。展開公式は中学・高校で習う基礎ですが、構造力学のテキストでは「公式は当然知っている前提」で省略されてサラッと変形が進んでいきます。逆に言えば、ここがスラスラ読めるかどうかで、構造系の参考書の理解スピードがまるきり変わってくる。地味な暗記ですが、一生使える道具として早めに自分のものにしておくと、後の勉強がぐっと楽になりますよ。
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