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降伏比とは?計算式、意味、SN材の0.8以下の理由、確認方法など

  • 降伏比ってなに?
  • どうやって計算するの?
  • なんで0.8以下が大事って言われるの?
  • SS400、SM490、SN490で値が違う?
  • ミルシートでどう確認する?
  • 施工管理として何を見ればいい?

上記の様な悩みを解決します。

「降伏比」は、構造設計の図書や鉄骨検査の場で必ず登場する鋼材性能の指標で、地震時の建物の粘り強さを担保するためのキーワードです。「引張強さの何割で降伏してしまうか」という単純な比ですが、ここに「鋼材は降伏した後、どこまで粘って変形できるか」という耐震設計の核心が詰まっています。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

降伏比とは?

降伏比とは、結論「鋼材の降伏点を、引張強さで割った値」のことです。

英語ではYield Ratioで、記号はYRまたはY/Tで表されます。式にすると、降伏比(YR)= 降伏点(σy)/ 引張強さ(σu)。降伏点は鋼材が塑性変形を始める応力度、引張強さは鋼材が最大に耐えられる応力度、降伏比は降伏点が引張強さにどれだけ近いかの比、という関係です。

→ ざっくり、「鋼材の粘り強さを一発で表す比率」が降伏比、というイメージです。

降伏比の基本イメージと典型値

降伏比が小さい(例:0.6)と、降伏してから引張強さに達するまでの「余裕」が大きく粘り強い。降伏比が大きい(例:0.9)と、降伏してすぐに破断に至りやすく粘りが少ない、という関係。つまり降伏比は「降伏した後、どれだけ粘って変形できるか」を一目で示す指標です。

典型的な降伏比の値は次のとおり。

鋼種 降伏点 引張強さ 降伏比
SS400 245N/mm²以上 400〜510N/mm² 約0.5〜0.6(規定なし)
SM490 325N/mm²以上 490〜610N/mm² 約0.55〜0.65(規定なし)
SN400B 235〜355N/mm² 400〜510N/mm² 0.80以下
SN490B 325〜445N/mm² 490〜610N/mm² 0.80以下

他の指標との関係と登場シーン

降伏比と関連用語の関係としては、降伏点(単独でも構造計算に使う基本性能=許容応力度の元)、引張強さ(最大耐力・終局時の安全性に関わる)、降伏比(両者の比率=鋼材の変形能力を示す)、というあたり。

降伏比が登場するシーンは、建築鋼材の選定(SN材の使用判断=地震時の靭性確保)、鉄骨検査(ミルシートでの降伏比チェック)、構造設計(保有水平耐力計算での材料性能確認)、改修・補強設計(既存鋼材の性能評価)、というところ。要するに降伏比は、「鋼材の粘り強さ」を一発で表す指標で、特に地震を考える日本の建築では極めて重要な値ですね。

降伏比の計算式と物理的意味

降伏比の計算式は単純ですが、その物理的意味を理解しておくと建築鋼材の選定意図が腑に落ちます。

応力ひずみ線図での降伏比

鋼材の応力ひずみ線図は、比例域(応力に比例してひずむ=弾性領域)→降伏点(ここで一気に塑性変形が始まる)→降伏棚(応力が増えないままひずみが進む)→ひずみ硬化(再び応力が上昇していく)→引張強さ(最大点・最大耐力に到達)→破断(くびれて破断)、という形を描きます。降伏比は、降伏点と引張強さの比を表します。

降伏比が小さい鋼材は、降伏してから引張強さに到達するまでひずみが大きく進み、塑性変形によるエネルギー吸収量が大きく、地震時の繰返し変形に強い、というあたり。逆に降伏比が大きい鋼材は、降伏してすぐに引張強さに到達して塑性変形量が小さく、急に破断に至る危険性、という性格です。

地震との関係と数値で見る変形能力

地震時、建物は塑性ヒンジ(部材の塑性変形点)を意図的に発生させて地震エネルギーを吸収します。塑性ヒンジが発生する場所は梁端部・柱脚など、塑性変形でエネルギー吸収して揺れが減衰、というメカニズムで、このとき降伏比が小さい=塑性変形がたっぷりできる鋼材だと、より多くのエネルギーを吸収できるわけです。

→ 要するに「降伏比が小さい=地震に粘り強い」という関係が、構造設計の核心です。

降伏点と引張強さの差が「塑性変形に使える余地」になります。例えばSN490B(降伏比0.8以下保証)なら、降伏点325〜445N/mm²、引張強さ490N/mm²以上、余地は最低65N/mm²(445→490の場合)、というかたち。この「余地」があるから、塑性変形時にひずみ硬化でエネルギーを吸収できるわけです。

建築鋼材における降伏比の規定

降伏比が鋼材の規格でどう扱われているかを整理します。

SS材・SM材・SN材の違い

SS材(一般構造用圧延鋼材:SS400など)は、JIS規格に降伏比の規定なし。降伏点と引張強さは下限値のみ規定で、結果として実際の降伏比はばらつく(0.5〜0.7程度)、建築の主要構造部材としての使用は制限される、というあたり。

SM材(溶接構造用圧延鋼材:SM400・SM490など)も、JIS規格に降伏比の規定なし。溶接性は規定されているが降伏比は自由で、結果として降伏比が高いロットも存在しうる、という性格。

SN材(建築構造用圧延鋼材:SN400・SN490など)は、JIS G 3136で降伏比0.80以下が規定。建築の主要構造部材専用に開発され、地震時の塑性変形能力をJIS規格レベルで保証する、現代の建築主要鋼材の標準です。

SN材の3種類と他の鋼材

SN材にはA種・B種・C種の3つがあります。SN400A・SN490Aは一般部位用で最低限の規定(降伏比規定なし)、SN400B・SN490Bは主要構造部材用で降伏比0.80以下・シャルピー吸収エネルギー規定、SN400C・SN490Cは溶接接合用で降伏比0.80以下・シャルピーに加え板厚方向特性(Z方向)規定、というあたり。

SN材以外の建築用鋼材としては、TMCP鋼(高強度・高靭性・高降伏比管理を兼ね備えた特殊鋼)、BCR・BCP(建築用冷間成形角形鋼管・降伏比規定あり)、STKR(一般構造用角形鋼管・降伏比規定なし)、というあたり。

「0.80以下」の根拠とSS材の制限

「0.80以下」という数字には、塑性変形性能を確保するための工学的根拠があります。降伏比0.80→降伏後に約25%の応力上昇余地(1/0.80 = 1.25)、これにより塑性ヒンジが安定的に発生・発達できる、地震時の繰返し荷重で部材が突然脆性破壊しない、というかたち。つまり「降伏点から引張強さまで20%以上の余裕がある鋼材を使え」という規格的な要請が、降伏比0.80以下の意味です。

SS材を建築主要構造部材に使えない理由は、降伏比のばらつきが大きく0.85や0.9のロットが混入する可能性、地震時に脆性破壊するリスクが計算でカバーできない、結果として建築基準法・告示でSS材の主要部材使用を実質制限、というあたり。ただし、鉄骨の小梁・胴縁・母屋など二次部材レベルではSS400も普通に使われます。

降伏比の確認方法と施工管理

施工管理として、現場で降伏比をどう確認するかを整理します。

ミルシートと鋼材ロット管理

鉄骨が現場に納入される際、ミルシート(鋼材検査証明書)が必ず付いてきます。

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ミルシートには、鋼種(SN490Bなど)、降伏点(実測値)、引張強さ(実測値)、降伏比(実測値または計算値)、シャルピー吸収エネルギー(B種・C種)、化学成分、が記載されます。

施工管理として、ミルシート受領時に、設計図書の指定鋼種と一致しているか、降伏比0.80以下(SN-B、SN-C材の場合)、シャルピー吸収エネルギーの規定値以上、を必ずチェックします。

鋼材ロットの管理では、ミルシートと鋼材をロット単位で照合、鋼材表面のロール印(メーカー・鋼種・寸法)と確認、ロット混入を防ぐため搬入時の受入検査で識別管理、というあたりが基本。通常、現場で降伏点・引張強さを実測することはない(試験設備が必要)ので、ミルシート=書類で品質確認するのが一般的です。重要案件では第三者機関での再検査を行うこともあります。

構造設計図書との突合と現場運用

設計図書の構造特記仕様書には、使用鋼種(SN490Bを主要部材に使用、など)、降伏比規定(0.80以下)、試験方法(JIS規格準拠、必要なシャルピー試験など)、が記載されます。施工管理は、設計図書の指定通りの鋼材が納入されているかをミルシートで確認する役割を担います。

鋼材識別の現場運用としては、鋼材は色マーキングで鋼種を識別する場合がある(メーカー独自)、鉄骨業者の製作要領書で識別ルールを確認、現場保管時の異種鋼材混入を防止、というあたり。

建築鋼材の降伏比規定一覧

建築鋼材の降伏比規定を一覧で整理しておきます。

鋼種 用途 降伏比規定 主な使用部位
SS400 一般構造用 なし 二次部材
SM400 溶接構造用 なし 一般部材(限定的)
SM490 溶接構造用・高強度 なし 限定使用
SN400A 建築構造用 なし 二次部材
SN400B 建築構造用 0.80以下 主要部材
SN400C 建築構造用・溶接 0.80以下 溶接接合主要部材
SN490A 建築構造用・高強度 なし 二次部材
SN490B 建築構造用・高強度 0.80以下 主要部材(最も多用)
SN490C 建築構造用・高強度溶接 0.80以下 溶接接合主要部材

現場での体験談・法令・改修

僕が大規模物件の鉄骨検査に立ち会ったとき、ミルシートで降伏比0.81のロットが1ロット混入しているのを発見したことがありました。SN490Bの規定(0.80以下)をわずかに超えていたため、構造設計者と協議の上、そのロットは構造主要部材から除外し、二次部材(小梁の胴縁取付け部材)に転用する対応となりました。「降伏比は数字としては小さな差でも、規格を厳密に守ることで耐震性能を担保している」という設計思想を、現場対応の中で実感した経験でした。鉄骨業者からも「SN材のミルシートは1枚ずつ降伏比を確認するのが標準」という話を聞き、自分の中の基準が一段上がりました。

降伏比規定は、国土交通省告示(告示2464号など)でも建築基準法に基づき建築主要構造部材の鋼材として規定されています。設計者・施工管理者は、法令的にも降伏比0.80以下の鋼材を使う義務があるという理解が必要です。

既存建物の鋼材は、当時の規格に基づき製造されており、現在のSN材より降伏比が高い場合もあります。1980年代以前の鉄骨はSS材が主流で降伏比未管理、現在の耐震診断では実測または推定値で降伏比を評価、既存鉄骨の補強・改修時は降伏比含めた性能評価が必須、というあたりが実務感覚です。

降伏比に関する情報まとめ

  • 降伏比とは:鋼材の降伏点を引張強さで割った値(YR = σy / σu)
  • 物理的意味:降伏してから引張強さに到達するまでの「塑性変形の余地」
  • 降伏比が小さい=粘り強い:地震時のエネルギー吸収能力が高い
  • 建築鋼材の規定:SN-B材・SN-C材で0.80以下が規定(JIS G 3136)
  • 0.80以下の根拠:降伏後に約25%の応力上昇余地が確保され、塑性ヒンジが安定発達できる
  • SS材・SM材:降伏比規定なし、建築主要部材への使用は制限
  • 代表的な値:SN490Bは降伏比0.80以下保証で建築主要部材の標準
  • 確認方法:ミルシートで降伏点・引張強さ・降伏比を必ずチェック
  • 施工管理者の視点:ミルシート受領時の降伏比確認、ロット混入防止、設計図書の指定鋼種との突合

以上が降伏比に関する情報のまとめです。

降伏比は「鋼材の粘り強さ」を一発で表す耐震設計の重要指標で、SN材の0.80以下規定は、地震多発国日本の建築界が長年積み上げてきた工学的判断の結晶です。施工管理としてミルシートを受領するとき、「降伏比がちゃんと0.80以下になっているか」を見るだけで、構造性能を支える1つの責任が果たせます。SS材・SM材・SN材の使い分けの背景まで理解しておくと、設計者との会話の解像度も一段上がりますね。

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