構造力学や水理学の勉強で出てくる「浮心」。重心とごっちゃになりやすく、メタセンタまで絡むと一気に分からなくなる用語です。
- 浮心って一言で言うと何?
- 重心や図心と何が違うの?
- 浮力やアルキメデスの原理とどうつながる?
- メタセンタ(傾心)って結局なに?
- なんで船は傾いても元に戻るの?
- 計算式の I とか V って何を指してる?
上記の様な悩みを解決します。
浮心は、浮力の中心を表す点のことです。船や浮き桟橋の安定、そして地下構造物の浮き上がりまで関わる、構造・水理の基礎用語になります。試験でもよく問われるところなので、重心との違いとセットで理解しておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
浮心とは?
浮心とは、結論「浮力の中心(浮力が作用する点)」のことです。
もう少し噛み砕くと、浮力は「物体が押しのけた液体の重さ」によって生まれる、物を押し上げる力です。その押しのけた液体の体積の中心に、浮力がまとまって作用すると考えます。この点が浮心です。だから浮心は「水中に沈んでいる部分(水を押しのけた部分)の体積の中心」と言い換えられます。
ポイントは、浮心が見ているのは「物体全体」ではなく「水中に入っている部分だけ」だということです。物体が深く沈めば沈むほど押しのける体積が増えるので、浮心の位置も変わっていきます。ここが、物体全体で決まる重心との決定的な違いになります。
僕の整理では、浮心は「水を押しのけた分の図心」と覚えるのが一番ブレません。重さではなく体積(しかも水に浸かった部分だけ)の中心、という一点を押さえれば、後の話はすべてここから派生していきます。
浮心と重心・図心の違い
結論から言うと、浮心・重心・図心は「何の中心か」が違うだけで、考え方は同じ仲間です。
混同しやすいので、3つを並べて整理します。重心は「重さ(質量)の中心」で、物体全体の重力が作用する点です。図心は「面積や体積の幾何学的な中心」で、密度を考えない純粋な形の中心です。そして浮心は「水中に沈んだ部分の体積の中心」になります。
それぞれの違いを整理すると、次のとおりです。
- 重心:重さの中心。物体全体で決まり、物体が傾いても物体内での位置は動かない
- 図心:形(面積・体積)の中心。密度が一様なら重心と一致する
- 浮心:水を押しのけた部分の体積の中心。沈み具合で位置が動く
密度が一様な物体では、重心は物体全体の中心にありますが、浮心は水に浸かった下半分側の中心になります。つまり、ふつうは重心の方が浮心より上にきます。この上下関係が、次に説明する浮体の安定の話で効いてくるので、ここはしっかり区別しておきたいところです。重心と図心そのものの求め方は、別記事で詳しく整理しています。


浮心と浮力・アルキメデスの原理
浮心を理解するには、結論「浮力=押しのけた液体の重さ」というアルキメデスの原理を押さえるのが近道です。
アルキメデスの原理は「物体は、自分が押しのけた液体の重さと同じだけの浮力を受ける」というものです。式にすると、浮力は「水の単位体積重量 × 物体が押しのけた体積」で表せます。この浮力という力が、押しのけた体積の中心、つまり浮心にまとめて働く、という関係になっています。
浮く・沈むの条件も、この力のつり合いで説明できます。
- 物体の重さ > 浮力 → 沈む
- 物体の重さ = 浮力 → その深さで静止して浮く
- 物体が沈むほど押しのける体積が増えて浮力も増す → どこかで重さと釣り合う
船が水面で静止していられるのは、ちょうど「重さ=浮力」になる深さ(喫水:きっすい)でバランスしているからです。なお、浮力計算で使う水の重さの扱いは下記が参考になります。


メタセンタ(傾心)と浮体の安定・復原力
結論、浮体が傾いても元に戻るか転覆するかは「メタセンタと重心の上下関係」で決まります。
メタセンタ(傾心)とは、浮体が少し傾いたときに、新しい浮心から立てた鉛直線が、もとのまっすぐな状態での中心線と交わる点のことです。傾くと水中に入る形が左右で変わるので、浮心は傾いた側へ移動します。この移動した浮心から上に伸ばした線が、船の中心線と交わる高さがメタセンタです。
安定するかどうかは、このメタセンタ(M)と重心(G)の位置で次のように決まります。
- メタセンタが重心より上にある → 傾きを戻す向きのモーメント(復原力)が働き安定
- メタセンタが重心より下にある → 傾きをさらに大きくする向きに働き転覆
- メタセンタと重心の距離 GM が大きいほど、復原力が強く安定する
この「重心からメタセンタまでの距離 GM」を復原性の指標として使います。GMがプラスなら復原力が働いて元に戻り、マイナスなら転覆する、というわけです。
正直なところ、ここが浮心まわりで一番つまずく部分だと思います。コツは「浮心は傾くと動く、重心は動かない。だから両者の関係で安定が決まる」と一文で握っておくこと。傾いたときに浮心が外側へ逃げてくれるおかげで、戻すモーメントが生まれる、というイメージです。
浮心の求め方・計算式
浮心の求め方は、結論「水を押しのけた部分(没水部)の体積の中心を出す」ことです。
基本は図心と同じで、水中に沈んでいる立体の体積の中心位置を求めます。形が単純な角柱状の物体なら、喫水(水面から物体の底までの深さ)の半分の位置が浮心の高さ、と考えれば十分なことが多いです。試験では、まず「重さ=浮力」のつり合い式から喫水を出し、その喫水から浮心の高さを求める、という流れがよく出ます。
安定計算で使う、浮心とメタセンタの距離(BM)は次の式で表されます。
- BM = I ÷ V
- I:喫水面(水面で切った断面)の断面二次モーメント
- V:没水体積(水を押しのけた体積)
ここで I は「水面で切った面の、傾きにくさ」を表す断面二次モーメントで、V は「沈んでいる部分の体積」です。幅の広い船ほど I が大きくなり、BM が大きく=安定しやすくなる、という現実とも一致します。断面二次モーメントの意味そのものは、別記事で詳しく解説しています。

僕の感覚だと、計算式は丸暗記より「I が大きい=幅広で倒れにくい、V で割る=沈みが深いほど効きが薄まる」と意味で覚えた方が、試験でも引き出しやすいです。
建築・土木の現場で浮心・浮力が効く場面
結論、浮心や浮力は机上の話ではなく、地下構造物の「浮き上がり」という形で施工管理にも関わってきます。
地下ピットや地下タンク、ボックスカルバート、ケーソンといった地中・水中の構造物は、地下水位が高いと水の浮力を受けます。中身が空の状態だと、構造物自体の重さより浮力が勝って、文字どおり浮き上がってしまうことがあります。これは「押しのけた水の重さ(=浮力)> 構造物の重さ」になっている状態で、浮力の考え方そのものです。
現場で出会う浮力がらみの場面を挙げておきます。
- 地下水位の高い敷地で、空のピットや地下タンクが浮き上がる
- 施工中の函体(ボックスカルバート等)が、埋め戻し前に浮上する
- 浮き桟橋や台船など、水に浮かべて使う仮設構造物の安定
- コンクリートカヌーのような、浮体の安定を競う題材
対策としては、構造物の自重を増やす、押え盛土やウェイトを載せる、地下水位を下げる(ディウォータリング)、浮上防止アンカーを打つ、といった方法がとられます。水圧と浮力の基礎は下記も合わせて読むと現場の判断がつながります。

僕の考えでは、浮心・浮力を「船の話」で終わらせず「地下構造物が浮く理屈」まで結びつけておくと、試験知識が現場の納得感に変わります。構造力学全体の位置づけを確認したいときは、こちらもどうぞ。

浮心に関する情報まとめ
- 浮心とは:浮力の中心。水を押しのけた部分の体積の中心のこと
- 重心・図心との違い:重さの中心が重心、形の中心が図心、没水部の体積の中心が浮心。ふつう重心が浮心より上
- 浮力との関係:浮力=押しのけた液体の重さ(アルキメデスの原理)。浮力が浮心に作用する
- メタセンタ:傾いたときの浮心の鉛直線が中心線と交わる点。重心より上なら安定、下なら転覆
- 計算式:浮心とメタセンタの距離 BM=I/V(I=喫水面の断面二次モーメント、V=没水体積)
- 現場での意味:地下ピット・函体の浮き上がりなど、浮力対策として実務に直結する
以上が浮心に関する情報のまとめです。
一通り、浮心の意味から重心との違い、メタセンタ、計算、そして現場での浮力対策まで繋げて整理できたかなと思います。浮心は「重さではなく、押しのけた体積の中心」という一点を押さえれば、安定の話も計算も一本の線でつながります。重力側の中心である重心や、その求め方の理解も合わせて固めておくと、構造の問題で迷わなくなります。



