- PASってなに?普通のスイッチと何が違う?
- なんで電柱の上に付いてるの?
- SOGってどういう意味?
- UGSやLBSと何が違う?
- 年次点検で何をするの?
- 故障するとどうなる?
上記の様な悩みを解決します。
PAS(パス、Pole Air Switch)は、高圧受電をしている工場やビルの電柱の上にちょこんと付いている装置です。普段は意識されませんが、「波及事故を防ぐ最後の砦」として現場の電気管理で超重要な存在で、年次点検でも必ず触ります。
「PASを切る/入れる」という作業ひとつで、敷地内全域が停電→復電する装置なので、手順とリスクを知らずに触ると大事故になります。逆に言えば、PASのことが分かると、自家用電気工作物の保安規定がちゃんと立体的に見えるようになる、という話。
この記事では、PASの役割・SOG制御・構造・UGS/LBSとの違い・施工と点検の注意点まで、施工管理視点で網羅的に整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
PAS(気中開閉器)とは?
PAS(気中開閉器、Pole Air Switch)とは、結論「自家用電気工作物の責任分界点に設置する、空気を絶縁媒体とした高圧開閉器」のことです。
要するに、「ここから先は需要家(受電する側)の責任ですよ」という境目に置く入口のスイッチです。空気を絶縁体として使うので「気中」、電柱(pole)に付くので「Pole Air Switch」、略してPAS。
PASの3つの主役機能
1. 通常時のON/OFF(保守作業時の電源切り)
2. 地絡事故が起きた時に自動で切る
3. 過電流(短絡)が起きた時に自動で切る
PASは6.6 kVの高圧を切る能力があり、定格電流は200A・300Aクラスが一般的。月1回の月次点検と年1回の年次点検でも、PASの状態確認は必須項目です。
なぜPASが必要なのか
電力会社の柱上開閉器(区分開閉器)と需要家のキュービクルの間に挟まる装置で、需要家側で地絡や短絡などの事故が起きたときに、事故電流が電力会社側に波及するのを防ぐ役割を果たします。
これがいわゆる「波及事故防止」で、PASがちゃんと動かないと「うちの工場で漏電したら、隣の街区まで停電させちゃった」という最悪の事態になり得ます。波及事故を起こすと、関連する全需要家への賠償+電力会社への顛末書が発生して、保安管理上の大事故扱い。
PASを含む高圧受電設備の全体像はこちらが詳しいです。
「責任分界点」という考え方
需要家の保安責任は「責任分界点」より先から発生します。PASの一次側(電源側)が電力会社の責任、PASの二次側(負荷側)が需要家の責任、という割り切り。PASそのものは需要家の所有物・保安対象です。
| 区分 | 範囲 | 責任 |
|---|---|---|
| 電源側(一次側) | 電力会社の柱上機器〜PAS入口まで | 電力会社 |
| PAS〜キュービクル〜負荷 | PAS〜需要家敷地内全部 | 需要家 |
PASの役割と必要性
PASがどんな場面で動くのかを整理します。
1. 平常時(保守作業時のON/OFF)
年次点検で全停電を取るとき、PASを開放(OFF)してキュービクル内の機器を作業可能状態にします。「PASを切ったら需要家敷地内は完全に電源遮断」になるイメージ。
2. 地絡事故時の自動遮断
需要家構内で地絡(電線と大地が短絡する事故)が起きると、PASのSOG制御装置がそれを検出してPASを自動遮断します。漏電遮断器(ELB)と似た役割を、高圧側で果たすのがPASです。
3. 過電流事故時の自動遮断
需要家構内で短絡が起きて大電流が流れると、PASは過電流ロック機能が働き、電力会社側の遮断器が落ちた後にPASが分離する仕組みになっています。これで短絡電流の電力会社側への波及が防げる。
地絡の話はこちらが詳しいです。


SOG制御とは何か
PASとセットで出てくるキーワードがSOG。これがPASの頭脳です。
SOGの意味
SOGはStorage Over Current Groundの略で、「過電流ロック付き地絡継電装置」のこと。地絡を検出する地絡継電器(GR)と過電流をロックする機能がセットになった制御装置です。
SOG制御装置の3つの構成要素
1. 地絡検出(GR=地絡継電器)
2. 過電流ロック(OC=オーバーカレント)
3. 制御電源(VT付き)
PAS本体には電源がないので、SOG制御装置側で電源を作ってPASに「切れ」と指令を出します。
SOGの動作シーケンス
平常時 → 地絡発生 → SOGの動作 → PAS開放、という流れを順を追って整理します。
| ステップ | 動作 |
|---|---|
| 1 | 需要家構内で地絡発生 |
| 2 | 零相変流器(ZCT)が地絡電流を検知 |
| 3 | SOG内の地絡継電器(GR)が動作判定 |
| 4 | SOGがPAS開放指令を出す |
| 5 | PASが開放(電源遮断) |
ここで効いてくるのが「過電流ロック」の機能。短絡事故のような過大電流が流れているときは、先に電力会社側の遮断器が動作するまでPASが切れないようにロックします。これがないと、PASが先に切れてしまって短絡電流の遮断容量を超えてPAS自身が爆発する危険があるんですね。
GR・DGR・ZCTとの関係
PASで使われる地絡検出装置は、ZCTで電流を検知 → 地絡継電器(GR/DGR)で判定 → SOGがPAS指令 という流れ。
- ZCT(零相変流器):地絡電流を検出するセンサー
- GR(地絡継電器):単純な地絡継電器
- DGR(地絡方向継電器):方向性付き、高機能で誤動作が少ない
DGRはGRに比べて「自構内の地絡か、外部の地絡か」を方向で判別できるので、他需要家の地絡で自分のPASが切れる誤動作を防げます。新設の高圧受電設備ではDGRが標準。ZCTの話はこちらが詳しいです。

PASの構造と種類
PASの中身を物理的に見ていきます。
PASの本体構成
| 部品 | 役割 |
|---|---|
| 接点(電極) | 切るときに離れて電源を遮断 |
| 絶縁筒 | 接点まわりの絶縁 |
| 操作機構 | 手動操作・自動投入の機構 |
| ZCT(内蔵型もあり) | 地絡電流検出 |
| VT(内蔵型もあり) | SOG電源用変圧器 |
PASは電柱の上に水平に取り付けられた箱型が主流で、操作ハンドルが地上から届く位置にあります。緊急時には地上から手動操作で開放できます。
種類による違い
PASは絶縁媒体・操作方式でいくつかバリエーションがあります。
| 種類 | 絶縁媒体 | 特徴 |
|---|---|---|
| PAS(気中開閉器) | 空気 | 標準的、屋外用 |
| GR付PAS | 空気+GR内蔵 | コンパクト |
| DGR付PAS | 空気+DGR内蔵 | 誤動作が少ない |
| VCS(真空電磁接触器) | 真空 | アーク消弧能力高い |
| GIS | SF6ガス | 縮小型受電設備で使用 |
UGS(地中設置型)との違い
PASが架空電線(電柱)からの引込み用に対して、地中引込みの場合はUGS(Underground Gas Switch)が使われます。
| 項目 | PAS | UGS |
|---|---|---|
| 設置場所 | 電柱の上 | 地上ピット内・キュービクル内 |
| 絶縁媒体 | 空気 | SF6ガス(または真空) |
| 引込み方式 | 架空電線 | 地中ケーブル |
| コスト | 安い | 高い |
| 景観 | 電柱の上に出る | 地中で目立たない |
商業地・住宅地で電柱を立てたくない場合はUGS+地中引込みが選択され、工場・郊外ではPAS+架空が一般的、というのが大体の使い分けです。
PAS、UGS、LBSの違い
ここで紛らわしい3つの開閉器を比較します。
LBSとの違い
LBSはLoad Break Switch(高圧交流負荷開閉器)の略で、キュービクルの中に入っている開閉器です。
| 項目 | PAS | LBS |
|---|---|---|
| 設置場所 | 電柱の上(屋外・引込み口) | キュービクル内 |
| 役割 | 引込み点の開閉・地絡保護 | キュービクル内の負荷開閉 |
| 遮断能力 | 大電流の遮断はできない(過電流ロックで対応) | 負荷電流の開閉のみ |
| 連動装置 | SOG | 通常は単独 |
「PASは『家の門』、LBSは『家の中の各部屋のスイッチ』」のイメージで覚えると整理しやすいです。LBSの話はこちらが詳しいです。

三者の役割の違いまとめ
| 装置 | 設置 | 主役割 | 自動遮断 |
|---|---|---|---|
| PAS | 電柱(架空) | 引込み点開閉・地絡保護・波及防止 | あり(SOG連動) |
| UGS | 地上ピット(地中) | 引込み点開閉・地絡保護・波及防止 | あり(SOG連動) |
| LBS | キュービクル内 | 高圧母線・トランス1次側の開閉 | なし(手動) |
PASの施工と点検における注意点
施工管理として押さえるべき論点を整理します。
1. 施工時の引込み高さと離隔
PASの設置位置は電気事業法・内線規程で最低高さが決まっています。
| 引込み線の高さ | 最低基準 |
|---|---|
| 道路横断 | 6.0 m以上 |
| 横断歩道橋上 | 5.0 m以上 |
| その他一般部 | 4.5 m以上 |
現場で引込みを下ろし切れないと、後付けで電柱を建て増す事態になります。設計段階で引込みルートと電柱位置の整合を確認するのが必須。
2. 絶縁体の汚損対策
気中開閉器は塩害・粉塵汚損で絶縁性能が落ちることがあります。
| 環境 | 対策 |
|---|---|
| 海岸近く | 耐塩仕様PAS、塩害洗浄 |
| 砂利・骨材プラント周辺 | 粉塵対策、定期清掃 |
| 化学プラント | 耐ガス仕様PAS |
「汚れた絶縁体は地絡を起こす」のは事実なので、設置環境に応じた仕様選定を最初に行います。
3. 年次点検の核作業
年次点検ではPASの開放→キュービクル全停電→点検作業→投入の復電、というシーケンスで進みます。
PAS年次点検の作業順序
1. PAS開放(操作ハンドル)
2. 検電器で無電圧確認
3. 短絡接地(安全のため)
4. キュービクル内点検
5. 短絡接地撤去
6. PAS投入(復電)
7. 受電後の動作確認
「PAS投入後の最初の数十秒」が一番ヒヤヒヤする時間で、事故が残っていたらここで再び波及事故になります。年次点検では、PAS投入前にキュービクル各機器の異常がないかをきっちり確認するのが鉄則。
検電器の話はこちらが詳しいです。

4. SOG装置の試験
年次点検ではSOG装置の動作試験が必須項目です。
| 試験項目 | 内容 |
|---|---|
| GR動作試験 | 模擬地絡電流を流して動作確認 |
| PAS開放試験 | SOGからの指令でPASが開くか |
| OC動作試験 | 過電流ロック機能の確認 |
| 絶縁抵抗測定 | 制御回路と動力回路 |
絶縁抵抗測定の話はこちらが詳しいです。

5. 経年劣化と更新時期
PASは法定耐用年数15年程度ですが、現場では20年以上使われているケースも普通にあります。設置後10年程度から劣化兆候が出始め、接点摩耗・絶縁低下・操作機構の渋りが出てきます。
| 劣化症状 | 兆候 |
|---|---|
| 接点摩耗 | 投入後の電圧低下、発熱 |
| 絶縁低下 | 漏れ電流増加、絶縁抵抗値の低下 |
| 操作渋り | 手動操作の硬さ |
点検記録で経年変化を追跡し、更新計画を立てるのが保安管理者の重要な仕事です。
6. 「波及事故ゼロ」の意識
PASが正常に動いていれば、自構内の事故が外に波及することは原則ない。逆にPASが故障していると、1回の地絡で街区全体が停電する可能性があります。「PASを毎年確実に点検する」ことが、街全体の電力品質を守る、というくらいの意識を持っておきたいです。
PASに関する情報まとめ
- PASとは:自家用電気工作物の責任分界点に設置する気中開閉器
- 役割:保守時の電源切/地絡事故の自動遮断/波及事故防止
- SOG制御:地絡継電器+過電流ロック付き地絡継電装置。PASの頭脳
- 動作シーケンス:地絡→ZCT検出→GR判定→SOG指令→PAS開放
- GR/DGR:DGRは方向性付きで誤動作が少ない、新設の標準
- UGS/LBSとの違い:PASは電柱上、UGSは地上、LBSはキュービクル内
- 施工管理の注意点:引込み高さ/環境対応/年次点検手順/SOG試験/経年劣化/波及事故防止意識
以上がPASに関する情報のまとめです。
PASは「ちっちゃい箱なのに街区を守っている装置」で、施工管理で高圧受電を担当することになったら一番丁寧に扱う対象です。SOG制御の理解、年次点検の作業手順、波及事故への影響——この3点が頭に入っていれば、現場で電気主任技術者と対等に話ができます。電気管理は「事故が起きないことが最高の成果」なので、地味で目立たないPASに敬意を払いましょう。
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