- 経営事項審査って結局なに?毎年やってるけど説明できない
- なんで公共工事に出るだけでこんな審査がいるの?
- 「入札参加資格」と「経審」って別物なの?
- X1とかYとかZとか、アルファベットが多すぎて頭に入らない
- 総合評定値Pの計算式を見た瞬間に閉じたくなる
- 結局うちの点数は高いの低いの?何点が普通?
- 申請って何をどの順番で出すの?
- いくらかかるの?期限を切らすとどうなる?
- 上司に「点数を上げろ」と言われたけど何が一番効く?
- なんで急に「1級取れ」「講習行け」って言われるの?経審と関係あるの?
- 俺が資格を取ると会社の点数は何点上がるの?
上記の様な悩みを解決します。
経営事項審査(経審)は、公共工事の入札に参加する建設業者なら避けて通れない審査制度です。経理や総務の担当が手続きするケースが多いので、現場の施工管理からすると「毎年なんかやってるな」くらいの距離感になりがちです。ですが実は、技術者一人ひとりの資格や、現場で請けた工事の中身が、会社の点数に直接効いてきます。
今回は経審の定義・評点項目・申請の流れ・費用といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「なぜ自分が資格を取れと言われるのか」「技術者が経審にどう絡むのか」まで踏み込んで整理しました。なるべく専門用語をかみ砕いて説明していくので、書類業務に明るくない方でも全体像を掴める内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
経営事項審査(経審)とは?
経営事項審査とは、結論「公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が、必ず受けなければならない経営力・施工能力の客観的な審査制度」のことです。略して「経審(けいしん)」と呼ばれます。
実施するのは国土交通大臣または都道府県知事で、建設業者の規模・財務・技術力・社会性などを点数化します。目的は、公共工事の品質を確保し、発注者が「この会社に任せて大丈夫か」を客観的な数字で判断できるようにすることです。つまり経審は、税金を使う公共工事の入口で「ふるいにかける」ための仕組みだと考えると分かりやすいです。
毎年、経理や総務が決算後にバタバタと申請しているのを横目で見ている施工管理の方も多いはずです。あの一連の手続きが経審で、結果は「総合評定値(P点)」という一つの数字に集約されます。この点数が高いほど、規模の大きい公共工事の入札に参加しやすくなります。
公共工事の入札そのものの仕組みは、こちらで詳しく整理しています。

僕の感覚だと、経審は「会社の通信簿を毎年つけ直して、その点数で出られる公共工事の大きさが決まる制度」と捉えておくと、後の評点項目の話がスッと入ってきます。
なぜ経審が必要なのか|公共工事と入札参加資格の関係
経審が必要な理由は、結論「公共工事の入札に参加するための”入場券”を得る前提条件だから」です。経審を受けずに公共工事の競争入札に参加することは、原則できません。
ここで多くの人が混乱するのが「経審」と「入札参加資格(指名願い)」の関係です。この2つは別物で、順番があります。まず経審を受けて総合評定値Pを取得し、その点数をもとに各発注機関(国・都道府県・市町村など)へ入札参加資格の申請を行う、という二段構えになっています。経審はあくまで「会社の力を点数化する全国共通の審査」で、入札参加資格は「その点数を使って、特定の発注者の入札に登録する手続き」です。
発注者は、経審で出た客観点(P点)と、各自治体が独自に加える主観点を合わせて、業者を等級(ランク)に格付けします。このランクによって「A等級は◯円以上の工事」「B等級は◯円まで」というように、参加できる工事の規模が決まります。だから会社が「経審の点を上げたい」と言うときは、たいてい「今より上のランクに行って、大きい工事を取りたい」という意味なんです。
経審を受ける主なメリットを整理すると、次のとおりです。
- 国や自治体が発注する公共工事の競争入札に参加できる
- ランクが上がれば、より大規模で利益の取りやすい工事を狙える
- 第三者機関の点数なので、民間工事でも「経営が健全な会社」のアピール材料になる
- 自社の経営状況を客観的な数字で毎年把握できる
公共工事の発注者がどう業者を選ぶかは、総合評価方式の記事も合わせて読むと理解が深まります。

個人的には、経審を「会社が大きい公共工事に挑むためのランク戦」と捉えると、現場の自分にも関係する話だと腹落ちしやすいと思っています。
経審の評点項目(X1・X2・Y・Z・W)と総合評定値Pの仕組み
経審の点数は、結論「5つの評点項目に、それぞれ決まった重み(ウェイト)を掛けて合計した”総合評定値P”」で表されます。アルファベットが多くて身構えますが、要は「会社を5つの角度から採点して、加重平均する」だけです。
総合評定値Pの計算式は次のとおりです。
P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W
5つの評点項目が、それぞれ何を見ているのかを表にまとめます。ここだけ押さえれば、経審の全体像はほぼ掴めます。
| 記号 | 評点項目 | 何を見るか | Pに占める割合 |
|---|---|---|---|
| X1 | 完成工事高 | 事業の規模(売上) | 25% |
| X2 | 自己資本額・平均利益額 | 経営の体力と収益性 | 15% |
| Y | 経営状況 | 財務の健全性(8指標で分析) | 20% |
| Z | 技術職員数・元請完成工事高 | 技術力と元請としての実績 | 25% |
| W | その他(社会性等) | 社会保険・退職金・法令遵守など | 15% |
ポイントは、ウェイトが一番大きいのが「X1(完成工事高)」と「Z(技術力・元請実績)」で、それぞれ25%を占めることです。この2つが合わせてPの半分を握っているので、点数を本気で動かしたいなら、まずこのX1とZがどう決まるかを知るのが近道になります。
特にZ点は、技術職員の人数とその資格、そして元請として完成させた工事高で決まります。つまり現場の施工管理・技術者が直接関わってくるのがこのZ点で、ここが後半の山場です(詳しくは「施工管理・技術者が経審に効く場面」で解説します)。
Y点は財務諸表をもとに、負債抵抗力・収益性・財務健全性・絶対的力量という4つの観点から8つの指標で会社の経営状態を分析します。決算書の中身がそのまま点数になるイメージで、経理の腕の見せどころでもあります。
建設業特有の決算書の読み方は、財務諸表の記事でかみ砕いています。

実務だと、X1〜Wの細かい計算式まで現場が覚える必要はなくて、「Pの内訳は5つ、配点が大きいのはX1とZ」という骨格さえ頭に入っていれば、上司や経理との会話には十分ついていけます。
経審の申請の流れ|決算変更届→経営状況分析→経営規模等評価
経審の申請は、結論「決算変更届の提出 → 経営状況分析申請 → 経営規模等評価申請、という3ステップを毎年この順番で回す」流れになっています。いきなり経審本体を申し込むのではなく、前さばきの手続きが要るのがポイントです。
順番に何をするのかを整理します。
- 決算変更届の提出:毎事業年度の終了後、許可行政庁へ提出する報告書。工事経歴書・財務諸表・納税証明書などを添付し、決算日から原則4か月以内が期限
- 経営状況分析申請:登録経営状況分析機関(CIICなど)に財務諸表を提出し、Y点(経営状況評点)を算出してもらう。結果通知まで数日〜1週間程度
- 経営規模等評価申請・総合評定値請求:許可行政庁へ申請し、Y以外のX1・X2・Z・Wを審査。経営状況分析の結果通知書を添えて提出し、最終的に総合評定値Pが確定する
現場の施工管理が直接この申請書類を作ることは少ないですが、無関係ではありません。決算変更届に添付する「工事経歴書」は、その年に施工した工事を業種ごとに整理したもので、現場が日々残している実績データがそのまま材料になります。完成工事高(X1)も元請完成工事高(Z)も、元をたどれば現場が積み上げた工事の集計です。だから「どの工事をどの業種で計上するか」という整理は、経理だけでなく現場の協力があって初めて正確になります。
元請・下請の区分が点数に効いてくる話は、こちらも参考になります。

僕の整理では、経審の申請は「決算を締める→財務をYで採点してもらう→残りをまとめて採点してもらう」の3段ロケットで、現場は工事実績の正確さで貢献できる、という関係性です。
経審の費用と有効期限|1年7ヶ月の壁
経審にかかる費用と有効期限は、結論「実費は数万円規模だが行政書士に頼むと十数万円、そして有効期限は審査基準日から1年7ヶ月」です。この「1年7ヶ月」という中途半端な期間が、現場でも地味に効いてくるポイントになります。
費用の目安を整理します。金額は業種数や依頼先によって変わるので、あくまで一般的な水準です。
| 費目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 経営状況分析手数料 | 約13,000円 | 登録分析機関(CIIC等)へ支払う。機関により差あり |
| 経営事項審査手数料 | 1業種11,000円程度 | 2業種目以降は2,500円程度ずつ加算 |
| 行政書士報酬 | 15万円〜 | 依頼する場合。事務所により幅が大きい |
有効期限が「審査基準日(原則は決算日)から1年7ヶ月」というのがミソです。なぜ1年ちょうどでないかというと、決算から審査結果が出るまでにタイムラグがあるため、その期間を見込んで7ヶ月の余裕が設けられているからです。
ここで怖いのが経審の空白期間です。次の年度の結果通知が前年の有効期限内に間に合わないと、その瞬間から公共工事の入札に参加できない空白が生まれます。せっかく狙っていた案件があっても、経審が切れていれば土俵にすら上がれません。だから多くの会社は、決算後できるだけ早く一連の手続きを回して、期限が切れる前に新しいP点を取得しようとします。
現場目線で言えば、繁忙期に経理から「工事経歴書の確認お願いします」と急かされるのは、たいていこの空白を避けるためのスケジュールが背景にあります。実務だと、その依頼が来たら後回しにせず早めに返すのが、結果的に会社の入札機会を守ることにつながります。
経審の点数を上げる方法|評点別の実務アクション
経審の点数を上げる方法は、結論「5つの評点項目それぞれに加点のツボがあり、短期で効くものと中長期でじっくり効くものを分けて攻める」のがセオリーです。やみくもに頑張るより、配点の大きい項目と、すぐ動かせる項目を見極めるのが先です。
評点別に、代表的な対策を整理します。
- X(完成工事高):工事進行基準の活用や、認められた業種間での完成工事高の振替(積上げ)で、申請する完成工事高を最適化する
- Y(経営状況):借入金・固定資産を減らして財務指標を改善する。負債を減らすのが王道で、自己資本比率も上がる
- Z(技術力):上位資格を持つ技術者を増やす、監理技術者講習を受講させる、元請工事の比率を高める
- W(社会性等):社会保険への加入、建退共・中退共などの退職金制度、法定外労災への加入、建設業経理士2級の取得など
短期で動かしやすいのはW点です。社会保険や退職金制度、保険加入は「やるかやらないか」で決まる加点なので、未対応の項目があれば比較的すぐ点に反映できます。一方、Y点(財務改善)やZ点(技術者育成・資格取得)は、一朝一夕には動かず、中長期で効いてくる項目です。
施工管理として知っておきたいのは、Z点とW点には現場側で貢献できる加点が含まれていることです。資格取得(Z)も、建退共のような退職金制度の整備(W)も、現場に近いところで点数に効きます。建退共の仕組みはこちらで解説しています。

現場目線で言えば、「点数を上げろ」という指示は抽象的に聞こえますが、分解すれば「資格を取る」「保険に入る」「元請工事を増やす」といった具体的な行動の集合です。自分が動かせるのはどの項目か、を意識すると指示が腹落ちします。
施工管理・技術者が経審に効く場面|Z点と資格・元請比率
ここが本記事の核心です。結論から言うと「施工管理・技術者個人の資格と、現場が元請として完成させた工事高は、Z点を通じて会社の経審に直接効く」。だから会社は技術者に「資格を取れ」「講習へ行け」と言うんです。
「なんで急に1級取れと言われるのか」「俺が資格を取ると何点上がるのか」という心の声に、ここで具体的に答えます。Z点を構成する技術職員数の評価では、技術者一人ひとりが持つ資格に応じて点数が割り振られます。
| 技術者の区分 | 1人あたりの点数 |
|---|---|
| 1級技術者で監理技術者講習を修了 | 6点 |
| 1級技術者 | 5点 |
| 監理技術者補佐 | 4点 |
| 登録基幹技能者講習修了者 | 3点 |
| 2級技術者 | 2点 |
| その他の技術者 | 1点 |
この表を見ると、上司の言葉の意味が一気に分かります。あなたが2級(2点)から1級(5点)になれば、会社の技術職員点数は1人あたり3点ぶん増えます。さらに監理技術者講習まで修了すれば6点で、最大の評価です。「1級を取れ」「講習に行け」は、会社のZ点を直接押し上げる最も確実な手段が、技術者の資格アップだからなんです。
しかも、加点対象になる技術者には「審査基準日以前に6か月を超えて在籍している(恒常的な雇用関係にある)こと」という条件があります。だから会社は、優秀な技術者に長く居てほしいし、資格手当を出してでも資格取得を後押しします。経審のZ点は、会社が技術者を大事にする経済的な理由そのものだと言えます。
もう一つ現場が握っているのが「元請完成工事高」です。Z点は技術職員点数と元請完成工事高を4対1で合算するので、下請ではなく元請として完成させた工事を増やすことも加点に効きます。現場で「元請案件を取りにいく」のは、利益率だけでなく経審の観点でも合理的なわけです。
主任技術者・監理技術者といった役割の整理は、こちらが分かりやすいです。

1級施工管理技士を取る価値は、年収や肩書きだけの話だと思われがちですが、会社にとっては経審のZ点という形でも返ってきます。資格取得を考えている方は、この勉強法の記事も覗いてみてください。

僕の考えでは、経審のZ点を知っておくと「資格を取れ」という指示が”会社都合の押し付け”ではなく”自分の市場価値と会社の点数が一致するポイント”に見えてきます。ここを理解しているかどうかで、資格取得へのモチベーションはだいぶ変わるはずです。
経審の点数の目安とよくある質問
最後に、点数の目安と、現場でよく出る疑問をFAQ形式でまとめます。「結局何点が普通なの?」という心の声に、まず数字で答えます。
総合評定値Pは、平均がおおむね700点前後になるように制度設計されています。中小の建設業者なら700点あれば十分公共工事を狙え、800点を超えると優良、1,000点以上は地域でもトップクラスの評価です。逆に500点を下回ると、入札で選ばれにくくなる水準とされています。理論上の最高点は2,100点台に達しますが、実際にそこへ近づける会社はごくわずかです。
経審の平均点はどれくらいですか?
総合評定値Pの平均は700点前後です。これは「平均的な会社が700点になるよう」点数のテーブルが設計されているためです。自社のP点が700点台なら標準的、800点以上あれば公共入札で優位に立ちやすい水準だと考えてよいでしょう。
経審を受けないと公共工事はできませんか?
発注者から直接請け負う公共工事の競争入札に参加するには、原則として経審が必須です。ただし下請として民間経由で公共工事に関わる場合は、その下請会社自身が経審を受けていなくても施工に参加できるケースがあります。元請として公共工事を取りにいくなら経審は避けて通れない、と理解しておけば実務上は十分です。
技術者が転職すると、前の会社の経審点は下がりますか?
その技術者が抜けたぶん、次の審査基準日では技術職員点数(Z点)が下がる可能性があります。経審の加点対象は在籍6か月超の技術者なので、有資格者の退職は会社のZ点に響きます。これは裏を返せば、有資格の技術者は転職市場でも、受け入れ先の経審を押し上げる人材として価値がある、ということです。
自分で全部やるべきか、行政書士に頼むべきか?
計算が複雑で、業種振替や財務指標の最適化には専門知識が要るため、行政書士に依頼する会社が多いです。とはいえ施工管理の立場なら、丸投げの内容を「自分の資格や現場の実績がどの評点に効くか」だけ理解しておけば、社内の議論には十分ついていけます。
経営事項審査に関する情報まとめ
- 経営事項審査(経審)とは:公共工事の入札に参加する建設業者が必ず受ける、経営力・施工能力の客観的な審査制度
- なぜ必要か:公共工事の入札参加資格の前提。経審のP点をもとに各発注者が業者をランク付けする
- 評点項目:X1(完成工事高)・X2(自己資本等)・Y(経営状況)・Z(技術力・元請実績)・W(社会性等)の5つを加重平均して総合評定値Pを算出
- 配点の山:X1とZがそれぞれ25%で最大。Pの半分を握る
- 申請の流れ:決算変更届 → 経営状況分析申請 → 経営規模等評価申請の3ステップ
- 費用と有効期限:実費は数万円、行政書士依頼で15万円〜。有効期限は審査基準日から1年7ヶ月で、空白期間に注意
- 点数アップ:W点は短期、Y点・Z点は中長期。資格取得と保険・退職金制度が現場でも効く
- 技術者と経審:1級なら5点、監理技術者講習修了で6点。資格アップが会社のZ点を直接押し上げる
以上が経営事項審査に関する情報のまとめです。
経審は経理や総務の仕事だと思われがちですが、点数の半分近くを握るZ点は、技術者一人ひとりの資格と現場の元請実績で動きます。「1級を取れ」という上司の言葉の裏には、こういう仕組みがあったわけです。一通り経審の基礎知識は理解できたと思います。自分の資格が会社の何点に効くのかを知っておくと、キャリアの考え方も少し変わってくるはずです。




