- 建退共ってそもそも何の制度?
- 誰が加入できるの?一人親方は?
- 掛金(証紙)はいくらで誰が負担するの?
- 紙の証紙と電子申請ってどう違うの?
- 加入するメリットは?
- 申請手続きの流れは?
上記の様な悩みを解決します。
建退共は建設業の現場で働く労働者が、 元請・下請の枠を越えて退職金を積み立てられる 国の制度です。新規入場者教育のときに必ず話題に出るやつで、現場代理人や総務担当としては仕組みを正確に理解しておきたいところ。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
建退共とは?
建退共とは、結論「建設業の現場で働く労働者のための国の退職金制度」のことです。
正式名称は 建設業退職金共済制度。1964年に中小企業退職金共済法に基づいて発足し、 独立行政法人勤労者退職金共済機構(建退共本部) が運営しています。建設業の特殊性として、 複数の元請・下請を渡り歩いて働く ことが多いため、1社の退職金制度では積み立てが分断される問題があります。建退共はこれを解決するため、業界全体で1つの退職金口座を持てるようにしたのが特徴。
2024年3月時点で、約30万社の建設会社が加入し、被共済者(労働者)は約280万人。建設業で働く労働者の半数以上が登録している、業界では最もポピュラーな制度の一つです。
ざっくり仕組みを書くと:
- 建設会社(事業主)が建退共本部に加入
- 労働者ごとに 共済手帳 が発行される
- 労働者が現場で働いた日数に応じて、事業主が 掛金(証紙または電子) を手帳に貼付・記録
- 労働者が退職時、手帳の貼付日数に応じた退職金を受け取る
「退職金を、勤務先ではなく業界全体で積み立てる」発想が建退共のコアです。
建退共の加入対象(一人親方は加入できる?)
加入対象は 建設業の作業員 が原則です。
事業主として加入できる人
- 建設業の元請会社、下請会社(規模問わず)
- 個人事業主の建設業者(雇用している作業員のために加入)
被共済者(手帳が発行される人)
- 加入事業主に雇用される建設現場作業員
- 大工、鉶工、電気工事士、設備工、塗装工、土工、その他建設作業員
一人親方の取り扱い
ここが現場で一番質問される部分です。
- 純粋な「一人親方」(雇用関係なし、請負だけ)は 原則として被共済者にはなれません
- ただし、 任意組合方式 で「一人親方の建退共組合」を組織し、組合経由で加入する方法があります
- 一人親方が他社に雇用された期間があれば、その期間は事業主側で証紙貼付してもらうことで建退共に組み入れられます
現場代理人として「うちの会社、一人親方しか使ってないんだけど建退共どうしてるの?」と聞かれたら、 本人に建退共組合への加入意思を確認 してください。元請として勝手に加入させることはできません。
現場で対応する書類
新規入場者教育のタイミングで、 作業員名簿 に建退共の手帳所持の有無を記入する欄があります。手帳を持っていない作業員には、所属会社の総務に確認を促す。
作業員名簿の書き方はこちらにまとめています。

建退共の掛金(証紙)
掛金は、結論「労働者1人1日あたり320円(2024年4月以降)」です。
掛金の金額
| 制度 | 掛金日額 | 月額換算(22日) |
|---|---|---|
| 建退共 | 320円 | 7,040円 |
掛金日額は2021年10月の改定で310円→320円に値上げされました。今後も改定の可能性があるので、最新は建退共本部の公式情報を確認してください。
負担者:原則として元請が負担
公共工事では、 元請が下請の労働者分も含めて掛金を負担 するのが原則。請負代金の中に建退共掛金分が「事業者負担」として算入されているからです。発注者→元請→下請、と流れた金で証紙・電子方式の掛金が払われる。
民間工事では契約次第ですが、 公共工事のルールに準じて元請負担 が一般的。
証紙(紙)方式と電子申請方式
2020年10月から、 電子申請方式(電子建退共システム) が本格運用されました。これにより:
- 紙の証紙:従来通り。元請が証紙を購入し、下請の手帳に貼付
- 電子申請:元請がシステム上で日数を申請し、共済機構が電子的に記録
2025年4月時点では、 公共工事の電子申請方式への完全移行 が段階的に進んでいる最中です。元請として現場運用するときは、 発注者の指示を確認 してください。地方自治体ごとに移行スピードが違います。
証紙の現物管理
紙の証紙は、現物が郵便切手のような小さな紙片。元請の現場事務所で保管し、下請の手帳に毎日貼って消印を押す。これがルーズになると、 「いつ誰の何日分を貼ったか分からない」状態 になり、後から再発行・補正の手間が膨大に。電子方式に切り替わると、こうした管理作業が劇的に減ります。
建退共の電子申請方式の運用
電子申請方式は、現場の運用が大きく変わるので別立てで書きます。
仕組み
- 元請が 電子建退共サイト にログイン
- 各下請の労働者ごとに、就労日数を月次で申請
- 共済機構が電子的に記録(紙の証紙不要)
メリット
- 証紙の現物管理から解放される
- 紛失・消印漏れのリスクがない
- 月次の申請なので、現場代理人の日々の作業が減る
- 累計日数がシステム上で見える化される
デメリット・注意点
- 元請ごとにシステム登録が必要
- 下請も自社の労働者がいつ・どの現場で何日働いたかをまとめる必要がある
- 紙の手帳にも電子分の日数を反映させる「日数追記」のルールが2022年〜運用中
- システム障害で月末ギリギリに申請できなくなる事例もあるので、 月の早い段階で入力 が望ましい
現場運用の現実
2026年4月時点では、 大手元請 ≒ 電子方式、地場の中小元請 ≒ 紙の証紙 の混在期。下請業者からすると「現場ごとに方式が違って混乱する」というのが正直なところです。新規入場者教育の場で、どちらの方式かを最初にアナウンスするのが施工管理の役目。
新規入場者教育の進め方はこちら。

建退共のメリット
労働者・事業主それぞれの目線で整理します。
労働者側のメリット
- 元請・下請を渡り歩いても 退職金口座は1つ にまとまる
- 退職時、加入期間と日数に応じた退職金を受け取れる
- 国の制度なので倒産リスクなし。雇用主が倒産しても影響なし
- 永年勤続表彰として、特定加入年数で割増給付がある
事業主側のメリット
- 公共工事の 経営事項審査(経審) で評価点が加算される
- 福利厚生として労働者へのアピールになり、採用・定着で有利
- 掛金は 損金扱い で計上できる
経営事項審査の中で建退共の加入実績は W点(社会性等) に直結します。経審の点数を1点でも上げたい中堅ゼネコン以下にとっては、加入と適切運用は事実上必須。
建退共の手続きの流れ
事業主が新規加入する場合の流れを書きます。
1. 加入申込
建退共本部の都道府県支部に 共済契約申込書 を提出。事業主としての契約番号が発行される。
2. 共済手帳の交付
雇用している労働者全員分の 被共済者申請書 を提出。後日、労働者ごとの共済手帳が事業主に届く。
3. 労働者への手帳交付
事業主が労働者に手帳を渡す。手帳には氏名・生年月日・契約者番号が記載されている。
4. 証紙の購入 or 電子申請の登録
- 紙:建退共本部から証紙を購入し、現場で貼付
- 電子:電子建退共システムにログインし、月次で労働者の就労日数を申請
5. 退職時の手続き
労働者が建設業を辞めるとき、 退職金請求書 を本部に提出。手帳の累計日数に応じて退職金が振り込まれる。
手続きで詰まりやすいポイント
- 建退共と中退共の重複:建設業以外の業種では中小企業退職金共済(中退共)に入る会社が多く、建設専業に転換した時期に建退共と併存しているケースで証紙運用が混乱
- 手帳紛失:紛失時は再交付申請が必要。本人確認資料・労務記録の提出を求められる
- 元請倒産による証紙の宙ぶらりん:紙の証紙は元請が貼り忘れると永久に消えてしまう。電子方式の方が安全
建退共に関する情報まとめ
- 建退共とは:建設業の労働者向け退職金共済(業界全体で積立)
- 加入対象:事業主は建設会社、被共済者は雇用された建設作業員
- 一人親方:原則は対象外、任意組合経由で加入可
- 掛金:1人1日320円(2024年4月時点)。原則元請負担
- 方式:紙の証紙方式と電子申請方式が併存。公共工事は電子化が進行中
- メリット(労働者):退職金口座が1つにまとまる、倒産リスクなし
- メリット(事業主):経営事項審査で加点、損金算入
- 手続き:加入申込→手帳交付→証紙/電子で日数記録→退職時に請求
以上が建退共に関する情報のまとめです。
建退共は「制度の存在は知っているけど、現場運用は誰かに任せきり」という施工管理が結構多い領域です。電子申請への移行が進む中で、紙の証紙運用と電子方式が同じ現場に混在することも珍しくありません。新規入場者教育で建退共方式を最初にアナウンスし、作業員名簿の手帳記入欄を埋める、月末に証紙貼付・電子申請を漏れなく完了させる──ここまで現場代理人としてフォローできれば、現場の安全管理書類のレベルが一段上がります。グリーンファイルや作業員名簿、新規入場者教育の関連知識と合わせて押さえておきましょう。






