- 必要換気量って結局、何のために要る空気量なの
- 計算式が何種類もあって、どれを使えばいいか分からない
- 「一人30㎥/h」ってどこから出た数字?
- 換気回数(◯回/h)と必要換気量はどう繋がる
- シックハウスの0.5回/hと在室者の30㎥/h、別の話?
- 「法定換気量」と「必要換気量」って違うの
- 用途別(事務所・店舗・教室)でどれくらい必要
- 火気使用室(厨房)は別計算なの
- 確認申請でどの計算を出せばいい
- 結局どの式をどの場面で使えばいいか整理したい
上記の様な悩みを解決します。
必要換気量は、換気計算や確認申請で必ず出てくるのに、「計算式が複数あってどれを使うのか」「30㎥/hと0.5回/hがどう違うのか」で混乱しやすいテーマです。設備施工管理をしていると、換気計算書を作ったり、設計図の換気量が足りているか検算したりする場面で、ここを曖昧にしていると手が止まります。
今回は定義・3つの計算式・一人30㎥/hの根拠・建築基準法の基準といった基本を押さえた上で、現役の施工管理目線で「法定換気量との違い」「シックハウスや火気使用室の扱い」「用途別の目安」、そして最大の悩みである「どの式をどの場面で使うか」の判断フローまで、現場で実際に使える形で整理しました。
それではいってみましょう!
必要換気量とは?
必要換気量とは、結論「室内の空気を衛生的に保つために最低限必要な、1時間あたりの換気量(㎥/h)」のことです。
人が室内にいると、呼吸で二酸化炭素(CO2)が増え、ニオイや水蒸気もたまります。建材からは化学物質(ホルムアルデヒドなど)が出ることもあります。これらを薄めて空気をきれいに保つために、「最低これだけは外気と入れ替えないといけない」という量が必要換気量です。
混同しやすいのが「換気回数」です。換気回数は「1時間に部屋の空気が何回入れ替わるか(回/h)」を表す指標で、必要換気量とは次の関係でつながっています。
- 必要換気量(㎥/h)= 換気回数(回/h)× 部屋の容積(㎥)
- 換気回数(回/h)= 必要換気量(㎥/h)÷ 部屋の容積(㎥)
つまり、必要換気量は「絶対量(㎥/h)」、換気回数は「容積に対する倍率(回/h)」で、同じことを別の単位で見ているだけです。どちらも行き来できるので、片方が分かればもう片方も出せます。
僕の感覚だと、「必要換気量=量」「換気回数=ペース」と捉えると整理しやすいです。同じ換気回数でも、部屋が大きければ必要な量(㎥/h)は増える、という関係を最初に押さえておくと、後の計算で迷いません。
換気回数そのものの考え方は、こちらでも整理しています。

必要換気量の3つの計算方法(公式)
必要換気量の求め方は、主に次の3つです。場面によって使い分けます。
まず、占有面積(在室人数)から求める方法です。
- 必要換気量(㎥/h)= 20 × 部屋の床面積(㎡)÷ 一人あたりの占有面積(㎡/人)
これは建築基準法の機械換気の考え方(有効換気量 V=20Af/N)に対応する式で、一人あたり毎時20㎥を基準にしています。
次に、換気回数から求める方法です。
- 必要換気量(㎥/h)= 必要換気回数(回/h)× 部屋の容積(㎥)
用途ごとに「この部屋は何回/h」という目安が決まっているとき、容積を掛けて量を出します。換気回数nは、有効換気量Vと床面積A・天井高hから n=V÷(A×h) でも表せます。
最後に、二酸化炭素(CO2)濃度から求める方法です。
- 必要換気量(㎥/h)= 室内のCO2発生量(㎥/h)÷(室内の許容CO2濃度 − 外気のCO2濃度)
在室者が出すCO2を、許容濃度以下に薄めるのに必要な量を直接求める式で、ザイデル式と呼ばれる考え方の基本形です。
実務だと、この3つは「同じ必要換気量を、何を入力に使って出すか」の違いです。在室人数で見るか、用途ごとの換気回数で見るか、CO2汚染で見るか。どれを使うかは部屋の性質と求められている基準で決まるので、その判断は後半の判断フローで整理します。
在室者(CO2濃度)から求める方法と一人30㎥/hの根拠
実務で「一人あたり30㎥/h」という数字をよく見ますが、これはCO2濃度から求める式から導かれた値です。
成人が事務作業など通常活動をしているとき、呼吸で出すCO2はおよそ毎時0.02㎥/人とされます。これを、
- 室内の許容CO2濃度:0.1%(1,000ppm)
- 外気のCO2濃度:おおむね0.03〜0.04%(300〜400ppm程度)
という条件で薄めるのに必要な量を計算すると、
- 0.02 ÷(0.001 − 0.0004)≒ 33㎥/h・人
となり、おおむね一人あたり30㎥/h前後という数字が出てきます。これが「在室者一人につき30㎥/h」の根拠です。
ここで大事なのが、外気のCO2濃度を引く点です。室内を1,000ppm以下にしたくても、外気にもCO2が含まれているので、「室内許容濃度 − 外気濃度」の差で薄める必要があります。この差が小さいほど、同じCO2を薄めるのに大量の換気が要る、という関係になります。
室内CO2を1,000ppm(0.1%)以下に保つ基準は、建築基準法施行令でビルの居室などに義務づけられています。人が密集する会議室や教室では、この在室者基準(CO2基準)で計算するのが実態に合うことが多いです。
個人的には、CO2基準は「人が主な汚染源の部屋」で効く考え方だと整理しています。人がたくさん入る部屋ほど、面積より人数で換気量が効いてくるので、占有面積や人数を入力にした計算が現実的になります。
建築基準法・法定換気量と必要換気量の違い
「法定換気量」と「必要換気量」は、似ていますが指す範囲が違います。
- 必要換気量:衛生・健康のために本来必要な換気量という、広い概念
- 法定換気量:建築基準法などの法令が「最低限これだけは確保しろ」と定めた換気量
法定換気量は、必要換気量という考え方を法令として最低ラインに落とし込んだもの、という関係です。建築基準法まわりで関係するのは、主に次の3つです。
- 居室の換気(建築基準法28条・施行令20条の2):機械換気なら有効換気量 V=20Af/N(一人20㎥/h基準)
- シックハウス対策(24時間換気):住宅等の居室で換気回数0.5回/h以上
- 火気使用室(厨房など):燃焼に応じた別の計算
確認申請で出すのは、この法令上の基準を満たしていることを示す計算です。「衛生的に理想の量」ではなく「法令の最低ライン以上か」を示すのが申請の目的なので、まずは法定換気量を満たすことが出発点になります。
換気計算の全体像は、こちらが参考になります。

シックハウス対策の0.5回/hと火気使用室
法定換気量の中でも特に混同されやすいのが、シックハウス対策の0.5回/hと、在室者基準の30㎥/h(または20㎥/h)です。これは目的が違う、別の基準です。
シックハウス対策は、2003年の建築基準法改正で導入されたもので、建材から出るホルムアルデヒドなどの化学物質を排出するのが目的です。住宅等の居室では、原則として換気回数0.5回/h以上(その他の居室は0.3回/h以上)の機械換気(24時間換気)が義務づけられています。これは「人」ではなく「建材」を汚染源とした基準なので、在室人数とは無関係に、部屋の容積に対して効いてきます。
一方、在室者基準(CO2を薄めるための20〜30㎥/h・人)は「人」を汚染源とした基準です。両者は目的も汚染源も違うため、どちらか一方ではなく、その部屋にかかる基準をそれぞれ満たす必要があります。
24時間換気・シックハウス対策の詳細は、こちらでも触れています。

火気使用室(ガスコンロのある厨房など)は、さらに別計算です。燃焼に伴う排ガスを排出するため、理論排ガス量に係数を掛けた換気量が必要で、在室者基準やシックハウス基準とは別枠で確保します。なお、IHなど火を使わない電化厨房は燃焼換気の法規制こそありませんが、熱・水蒸気・ニオイの排出のため、ミニキッチンで200㎥/h以上、一般家庭用の電化厨房で300㎥/h以上の換気が望ましいとされます。
用途別の必要換気量・換気回数の目安
用途別の換気回数の目安は、建築設備設計基準などで示されています。代表的なものを整理すると次のようになります。
| 用途 | 換気回数の目安 |
|---|---|
| 事務室・会議室 | 在室者基準(人数)で算定。CO2 1,000ppm以下 |
| 教室 | 在室者基準(人が密集するため人数で効く) |
| 住宅の居室 | シックハウス対策で0.5回/h以上 |
| 便所 | 5〜15回/h程度 |
| 書庫・倉庫・物品庫 | 5回/h程度 |
| 厨房(火気使用室) | 燃焼に応じた別計算(理論排ガス量ベース) |
| 駐車場 | 10回/h程度 |
ポイントは、「人が主役の部屋は在室者基準(人数)」「建材が問題になる住宅居室はシックハウスの0.5回/h」「ニオイ・熱・ガスが問題の部屋(便所・厨房・倉庫)は用途別の換気回数」と、汚染源によって使う基準が変わる点です。同じ建物でも部屋ごとに当てはめる基準が違うので、図面では部屋用途ごとに確認していきます。
どの式をどの場面で使うか(判断フローと図面チェック)
ここが、計算式を並べただけの記事では分からない、施工管理が実際に判断するときの勘所です。3つの計算方法は、汚染源で使い分けると迷いません。
- その部屋の主な汚染源は何かを考える
- 人が主役(事務室・会議室・教室)→ 在室者基準。占有面積から V=20Af/N、または人が密集するならCO2基準(30㎥/h・人)
- 住宅等の居室(建材が問題)→ シックハウス対策の0.5回/h以上で算定
- ニオイ・熱・ガスが主(便所・厨房・倉庫・駐車場)→ 用途別の換気回数 × 室容積
- 複数の基準がかかる部屋は、それぞれを満たす(一番大きい量が支配的になる)
確認申請で出すときは、対象の部屋にかかる法令基準(居室なら20Af/N、住宅居室ならシックハウスの0.5回/h、火気使用室なら燃焼換気)で計算し、それを満たす換気設備の有効換気量を示します。
設計図の換気量が足りているかを検算するときは、
- 図面から部屋の床面積・天井高・容積、在室人数(または占有面積)を拾う
- その部屋にかかる基準で必要換気量を計算する
- 設計されている換気設備の有効換気量(給気・排気の風量)が、必要換気量以上かを確認する
- 換気回数に直して(必要換気量÷容積)、用途の目安と照らす
という順で見ると、抜けなくチェックできます。
現場目線で言えば、必要換気量でつまずく原因のほとんどは「式が分からない」ことではなく、「その部屋にどの基準を当てればいいか分からない」ことです。汚染源(人か、建材か、ニオイ・熱・ガスか)から基準を選ぶ、という1ステップを先に置くだけで、3つの式が一気に整理されます。第1種〜第3種換気といった換気方式は「どうやって換気するか(給排気の組み合わせ)」の話で、必要換気量「どれだけ換気するか」とは別の軸なので、まず必要な量を出してから方式を選ぶ、と切り分けると混乱しません。
必要換気量に関する情報まとめ
- 定義:室内の空気を衛生的に保つために最低限必要な1時間あたりの換気量(㎥/h)
- 換気回数との関係:必要換気量=換気回数 × 室容積。量とペースの違いで相互に変換できる
- 3つの計算式:占有面積(V=20Af/N)/換気回数 × 容積/CO2濃度(ザイデル式の基本形)
- 一人30㎥/hの根拠:成人のCO2発生量0.02㎥/hを、室内1,000ppm・外気400ppm程度の差で薄める計算から
- 建築基準法:居室CO2は1,000ppm以下。法定換気量は必要換気量を法令の最低ラインにしたもの
- シックハウス対策:住宅等の居室で0.5回/h以上の24時間換気(汚染源は建材)
- 火気使用室:燃焼排ガス量に応じた別計算。電化厨房は法規制なしだが300㎥/h程度が望ましい
- 用途別:人が主役は在室者基準、住宅居室は0.5回/h、便所・厨房・倉庫は用途別換気回数
- 使い分け:汚染源(人/建材/ニオイ・熱・ガス)で使う基準を選ぶのが判断の起点
以上が必要換気量に関する情報のまとめです。
必要換気量は、3つの計算式を暗記することより、「その部屋の汚染源は何か」を起点に、当てる基準(在室者・シックハウス・火気使用室)を選ぶことが本質です。汚染源から基準を選び、必要な量を出し、設計の有効換気量がそれを満たすかを検算する。この流れが身につけば、換気計算書の作成も図面チェックも確認申請も、迷わず進められるようになるはずです。
必要換気量に関するよくある質問
Q1:必要換気量と換気回数は何が違いますか?
必要換気量は「1時間あたりに必要な空気の量(㎥/h)」という絶対量で、換気回数は「1時間に部屋の空気が何回入れ替わるか(回/h)」という容積に対する倍率です。両者は「必要換気量=換気回数 × 部屋の容積」という式でつながっていて、同じことを別の単位で見ているだけです。必要換気量を容積で割れば換気回数に、換気回数に容積を掛ければ必要換気量に変換できます。
Q2:「一人あたり30㎥/h」という数字はどこから来ていますか?
CO2濃度から必要換気量を求める式から導かれた値です。成人が通常活動で出すCO2が毎時約0.02㎥/人、室内の許容CO2濃度を0.1%(1,000ppm)、外気のCO2濃度を0.03〜0.04%程度として、「0.02 ÷(0.001 − 0.0004)」を計算すると、おおむね30㎥/h・人前後になります。室内を1,000ppm以下に保つための、人を汚染源とした換気量の目安です。
Q3:シックハウスの0.5回/hと、在室者の30㎥/hは別の話ですか?
別の基準です。目的も汚染源も違います。シックハウス対策の0.5回/h(24時間換気)は、建材から出るホルムアルデヒドなどの化学物質を排出するためのもので、汚染源は「建材」、人数とは無関係に容積で効きます。在室者基準の20〜30㎥/h・人は、人の呼吸で出るCO2を薄めるためのもので、汚染源は「人」です。住宅の居室では両方がかかることもあり、その場合はそれぞれを満たす必要があります。
Q4:確認申請ではどの計算を出せばいいですか?
その部屋にかかる法令基準で計算します。一般の居室なら機械換気の有効換気量 V=20Af/N(一人20㎥/h基準)、住宅等の居室ならシックハウス対策の換気回数0.5回/h以上、火気使用室なら燃焼に応じた換気量、という具合です。申請の目的は「衛生的に理想の量」ではなく「法令の最低ライン以上であること」を示すことなので、対象の部屋に該当する基準を満たす計算を提出します。
Q5:火気を使わない電化厨房(IH)でも換気は必要ですか?
燃焼換気の法規制はありませんが、換気は必要です。IHなど火を使わない厨房でも、調理に伴う熱・水蒸気・ニオイを排出するために、ミニキッチンで200㎥/h以上、一般家庭用の電化厨房器具で300㎥/h以上の換気が望ましいとされます。法規制がないからといって換気を省くと、結露やニオイの原因になるので、用途に応じた換気量を確保します。
Q6:必要換気量と第1種〜第3種換気は関係ありますか?
軸が違う話なので、分けて考えます。必要換気量は「どれだけ換気するか(量)」、第1種〜第3種換気は「どうやって換気するか(給気・排気の組み合わせ方式)」です。第1種は給気・排気とも機械、第2種は給気が機械、第3種は排気が機械、という方式の違いです。実務の手順としては、まず必要換気量を計算で出し、その量を確保できる換気方式(第1〜3種)を選ぶ、という順になります。
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