- 足場に乗る人は、全員が特別教育を受けないといけないの?
- 低い足場なら要らない?何mからなの?
- 下で材料を渡すだけの手元も対象?
- 足場の上で手伝うだけなら受けなくていい?
- 何時間かかる?実技やテストはある?
- 作業主任者の講習を持っていたら、受け直さなくていい?
- フルハーネスの特別教育を受けていれば足りる?
- 受けさせないまま上げたら、会社はどうなる?
- 昔から足場をやっているベテランも受け直し?
- 一人親方も受けないといけないの?
上記の様な悩みを解決します。
結論、足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務に就くなら特別教育が要り、内容は学科教育で合計6時間以上です。地上や堅固な床上の材料の運搬・整理等だけは対象外で、足場上の補助作業は対象です。
足場の特別教育は、新規入場の書類で修了の有無を確かめる場面がある教育です。「手元は要らないはず」「5m未満なら不要」と思われがちな点もあります。しかも、補助作業をどこで線引きするのか、誰なら全部を省けるのかは、通達の文言まで読まないと決まりません。今回は根拠条文・科目と時間・作業主任者との違いといった基本を押さえた上で、補助作業の線引きと全部省略できる4区分を通達の文言で、さらに令和9年4月1日に施行予定の作業従事役員等への拡大まで、元請の施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、協力会社の入場書類を確かめる立場の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
足場の特別教育とは?組立て・解体・変更の業務に就く人へ事業者が行う学科教育
足場の特別教育とは、足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務に労働者を就かせるときに、雇っている事業者が行わなければならない安全のための教育です。中身は学科だけで、科目ごとの時間を足すと6時間になります。
この記事で引く条文は、e-Govで確認した2026年10月1日施行の現行版です(2026年11月4日確認)。根拠は3つの段に分かれています。
- 労働安全衛生法第59条第3項:危険又は有害な業務で厚生労働省令で定めるものに労働者を就かせるとき、事業者は特別の教育を行わなければならない
- 労働安全衛生規則第36条第39号:その業務の1つとして「足場の組立て、解体又は変更の作業に係る業務(地上又は堅固な床上における補助作業の業務を除く。)」を挙げている
- 安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第22条:第39号の業務の特別教育は「学科教育により行うものとする」とし、科目・範囲・時間を表で定めている
法律が「教育をしなさい」、規則が「どの業務で」、告示が「何を何時間」という分担です。義務を負うのは労働者を就かせる事業者なので、元請の立場から見ると、協力会社が自社の作業員に行う教育、という位置づけになります。
費用をどちらが持つか、どこで受けるかについては、この記事で確かめた法・規則・告示に定めは見当たりませんでした。条文から言えるのは、教育を行う義務を負うのが労働者を就かせる事業者だという点までです。
一方で、足場の組立て等作業主任者は名前が近いものの、別の仕組みです。違いは後半の見出しでまとめます。
手元・補助作業はどこまで対象か|通達が外しているのは地上の運搬・整理だけ
「手元だから要らないよね」という受け止め方は、この教育で見落としやすい点だと僕は考えています。規則の除外は「地上又は堅固な床上における補助作業の業務」と書かれていて、補助作業なら全部外れるわけではありません。
範囲を決めているのは、平成27年3月31日の厚生労働省通達(基発0331第9号)の細部事項です。そこには「「地上又は堅固な床上における補助作業」とは、地上又は堅固な床上における材料の運搬、整理等の作業をいうものであり、足場材の緊結及び取り外しの作業並びに足場上における補助作業は含まれないこと。」とあります。つまり、除外に入るのは地上や堅固な床の上で材料を運んだり整えたりする作業までで、緊結・取外しや足場の上での手伝いは除外の外、教育の対象に残る、という読み方です。
現場の動きに当てはめると、次のように分かれます。
- 地上で足場材を荷下ろしし、仮置き場に並べる:除外(地上の材料の運搬・整理)
- 堅固な床の上で、上の段へ渡す材料を整える:除外(堅固な床上の運搬・整理)
- 地上にいても、クランプを締める・外すなど足場材の緊結や取外しをする:対象
- 足場の上で材料を受け取る、支えるなどの手伝いをする:対象(足場上の補助作業)
- 解体だけの日に足場上で部材を外す:対象(第39号は組立て・解体・変更のどれでも当たる)
高さについても触れておきます。規則第36条第39号の文言には「高さ何m以上」という数字がありません。2mの足場でも、組立て・解体・変更の業務に就くなら教育の対象です。5mという数字は、後で出てくる作業主任者の選任の条文に書かれているもので、特別教育の線とは別物です。
脚立や足場台の上での作業をどう扱うかは、器具の区分から整理したほうが迷いません。足場台については足場台と脚立の区分を扱った記事で、ローリングタワーについては移動式足場の指針の整理で詳しく扱っています。
学科4科目と時間の内訳|合計6時間で実技の定めは無い
時間と中身は、安全衛生特別教育規程第22条の表で決まっています。条文は「学科教育は、次の表の上欄に掲げる科目に応じ…時間以上行うものとする」という書き方なので、表の時間は下限です。
| 科目 | 時間(以上) | 範囲 |
|---|---|---|
| 足場及び作業の方法に関する知識 | 3時間 | 足場の種類、材料、構造及び組立図/足場の組立て、解体及び変更の作業の方法/点検及び補修/登り桟橋、朝顔等の構造並びにこれらの組立て、解体及び変更の作業の方法 |
| 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 | 0.5時間 | 工事用設備及び機械の取扱い/器具及び工具/悪天候時における作業の方法 |
| 労働災害の防止に関する知識 | 1.5時間 | 墜落防止のための設備/落下物による危険防止のための措置/保護具の使用方法及び保守点検の方法/感電防止のための措置/その他作業に伴う災害及びその防止方法 |
| 関係法令 | 1時間 | 法、令及び安衛則中の関係条項 |
規程が示しているのは科目ごとの時間で、合計の6時間は3+0.5+1.5+1を足した数字です。告示が「合計6時間」と書いているわけではないので、社内の教育計画を作るときは科目ごとの時間で組んだほうが、規程との突き合わせがしやすくなります。
もう1つ押さえたいのが実技です。第22条は「学科教育により行う」としか書いておらず、実技教育の規定がありません。同じ規程でも、第23条のロープ高所作業と第24条のフルハーネスの特別教育は「学科教育及び実技教育により」と書かれていて、ここが対照的です。足場の特別教育は座学の6時間で完結する、というのが条文から言えることです。
表の範囲を見ると、半分の3時間が、足場の種類・構造、組立て・解体の方法、点検及び補修などに充てられています。種類ごとの構造の違いは足場の種類の解説にまとめているので、受講前後の復習に使えます。
作業主任者・フルハーネス・職長教育との違いと、通達が全部省略を認める4区分
ここは「どれを受ければいいのか」が混ざりやすいところです。まず作業主任者から分けます。
労働安全衛生法施行令第6条は作業主任者を選任すべき作業を挙げていて、第15号が「つり足場(ゴンドラのつり足場を除く。以下同じ。)、張出し足場又は高さが五メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業」です。こちらは、現場でその作業を指揮する作業主任者を置くかどうかの条文で、置く条件に足場の形式と高さが入っています。特別教育は、作業に就く一人ひとりが受ける教育で、条件に高さがありません。同じ現場で、作業主任者を置いたうえで、作業に就く人に特別教育も行う、という重なり方になります。作業主任者の講習や職務は足場の組立て等作業主任者の記事に分けています。
次に、すでに別の資格を持っている人の扱いです。規則第37条は、科目の全部又は一部について「十分な知識及び技能を有していると認められる労働者」には、その科目の特別教育を省略できるとしています。足場の特別教育について、どんな人が全部を省けるかを具体的に示したのが、平成27年3月31日の通達(基発0331第10号)第3の1で、「次の各号に掲げる者は、特別教育の科目の全部について省略することができること。」として次の4つを挙げています。
- 「(1)足場の組立て等作業主任者技能講習を修了した者」
- 「(2)建築施工系とび科の訓練(普通職業訓練)を修了した者、居住システム系建築科又は居住システム系環境科の訓練(高度職業訓練)を修了した者等足場の組立て等作業主任者技能講習規程(昭和47年労働省告示第109号)第1条各号に掲げる者」
- 「(3)とびに係る1級又は2級の技能検定に合格した者」
- 「(4)とび科の職業訓練指導員免許を受けた者」
作業主任者の技能講習を修了している人や、とびの1級・2級の技能検定に合格している人は、全科目を省略できる側に入っています。
一方で、この4区分にフルハーネスの特別教育と職長教育は入っていません。フルハーネスの特別教育は規程第24条で別に定められた教育で、学科と実技の両方がある別物です。職長教育も別の教育です。どちらかを受けていても、それを理由に足場の特別教育を省略できるとは通達に書かれていないので、足場の組立て等に就くなら足場の特別教育は別に確かめておく必要があります。フルハーネスの側の対象や時間はフルハーネス特別教育の記事で確認できます。
個人的には、入場書類で「作業主任者の修了証があるから特別教育の記録は無し」という作業員が来たときに、それが通達の(1)に当たる正当な省略なのか、単なる書類の抜けなのかを区別できるかどうかが、元請側の確認の質を分けると考えています。
受けさせずに足場へ上げたとき|罰則・記録3年・入場時に見るもの
特別教育を行わずに足場の組立て等の業務に就かせると、労働安全衛生法第59条第3項の違反になります。罰則は第119条で、「六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」です。この「拘禁刑」という表記は、令和4年法律第68号の施行日である2025年6月1日の版から使われています。
教育をしたあとの書類にも義務があります。規則第38条は「事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない。」としています。記録を作って3年残すのは、教育を行った事業者、つまり作業員を雇っている協力会社の義務です。
元請として新規入場のときに確かめておきたいのは、次のような点です。
- その作業員が組立て・解体・変更の業務に就くのか、地上での運搬・整理だけなのか
- 雇っている事業者が足場の特別教育を行った記録(受講者・科目)があるか
- 全部省略で済ませているなら、通達の4区分のどれに当たるのか(それ以外なら、則第37条の「十分な知識及び技能」と認めた根拠は何か)
- 平成27年7月1日より前から従事している人なら、経過措置の扱いで受けたのか
- 職長教育やフルハーネスの特別教育だけで済ませていないか
なお、修了証の発行や有効期限、再教育の要否は、この記事で確認した条文と告示には定めが見当たらなかったので、ここでは断定しません。手元に来た書類が記録の写しなのか講習機関の修了証なのかは、受講者と科目が読み取れるかで見ておけば足ります。安衛則の条番号の全体像は労働安全衛生規則の条番号を一覧にした記事で引けます。
平成27年の義務化と、令和9年4月からの作業従事役員等への拡大
足場の業務が特別教育の対象に加わったのは、平成27年3月5日公布の改正省令(平成27年厚生労働省令第30号)からで、施行は平成27年7月1日です。それより前から足場をやっている人がいるため、改正には経過措置が付いていました。
まず、附則第2条は、施行の際に現に第39号の業務に従事していた人について、平成29年6月30日までは特別教育を行わなくてよいとしていました。この猶予はすでに終わっています。
次に、基発0331第10号の第3の2は、適用日の時点で現に従事していた人について、科目の時間を短くできるとしていました。
| 科目 | 経過措置で認められた時間 |
|---|---|
| 足場及び作業の方法に関する知識 | 1時間30分 |
| 工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識 | 15分 |
| 労働災害の防止に関する知識 | 45分 |
| 関係法令 | 30分 |
合計すると3時間(算出値)でしたが、これは平成27年7月1日の時点で現にその業務に就いていた人のための扱いでした。いま新しく足場の業務に就く人に当てはめられる時間ではありません。また同じ通達の第3の3は、適用日より前に足場の特別教育の全部又は一部の科目を受講していた人は、その科目を省略できるとしていました。ベテランの記録に短い時間の教育が残っている場合は、この経過措置の短縮時間で受けたものか、適用日より前に受けた科目の記録かを、受講日と科目から確かめることになります。
いまの第59条第3項は、事業者が「労働者」をこの業務に就かせるときの教育を定めた条文です。次に、これから施行される改正です。令和7年法律第33号(2025年5月14日公布)で、労働安全衛生法第59条に第4項が加わり、施行は令和9年4月1日の予定です。2026年11月時点ではまだ施行されていません。新しい第4項は「作業従事役員等は、労働者と同一の場所において前項の業務に就くときは、同項に規定する教育を受けなければならない。」という文言です。
作業従事役員等は、改正後の第42条第3項で「事業者(厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する者に限る。)又は個人事業者(これらの者が法人である場合には、その代表者又は役員)である作業従事者」と定義されています。一人親方や少人数の会社の役員が、労働者と同じ場所で足場の業務に就く場面がこれに当たりうる、という整理です。一人親方なら全員が対象と言い切れる書き方ではないので、該当するかは定義の文言に当てはめて判断してください。あわせて、同じ改正で第119条第1号に「若しくは第四項」が加わるため、令和9年4月1日からは第4項の違反にも同条の罰則が及びます。規則第36条第39号の文言は、令和9年以降に施行予定の各版でも現行と同じです。
私見ですが、元請の入場確認はこれまで「雇われている作業員」を前提に組まれてきたので、令和9年4月までに、一人親方や職長を兼ねる役員の受講状況も同じ台帳で拾えるようにしておくのが無理のない備えだと思います。
足場の特別教育に関する情報まとめ
- 足場の特別教育とは:法第59条第3項・則第36条第39号・特別教育規程第22条にもとづき、組立て・解体・変更の業務に就く労働者へ事業者が行う学科教育
- 補助作業の線引き:外れるのは地上・堅固な床上の材料の運搬・整理等だけ。緊結・取外しと足場上の補助は対象で、条文に高さの数字は無い
- 科目と時間:4科目を3・0.5・1.5・1時間以上、合計6時間(算出値)で、実技の規定は無い
- 他の資格・教育との違い:作業主任者は令第6条第15号の選任の話。通達が全部省略できると示しているのは4区分で、フルハーネス特別教育や職長教育は入っていない
- 受けさせなかったとき:第119条で6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金。記録は則第38条で3年保存
- 義務化と今後:平成27年7月1日施行、経過措置は平成29年6月30日で終了。第59条第4項の作業従事役員等への拡大は令和9年4月1日施行予定
以上が足場の特別教育に関する情報のまとめです。
足場の特別教育は、受けたかどうかより「その人が足場の上で何をするのか」から決まる教育です。入場時に作業内容を一言聞き、地上の運搬・整理だけなのか、緊結や足場上の手伝いまでするのかを分けておけば、手元の扱いで迷う場面はほとんど無くなるはずです。令和9年4月の改正に向けて、一人親方の受講状況まで入場書類で拾える形にしておくと、僕はあとで慌てずに済むと考えています。
