完成工事未収入金とは?売掛金との違い、紛らわしい4勘定、経審など

  • 完成工事未収入金って、要するに売掛金のことでいいの?
  • なんで建設業だけ名前が違うの?
  • 試算表に出てきたけど、多いのは良いことなの?悪いことなの?
  • 完成工事高と何が違うのかがピンとこない
  • 未成工事支出金とごっちゃになる
  • 工事未払金と未成工事受入金も並んでて、4つの区別がつかない
  • 仕訳の借方貸方まで、自分が覚える必要ある?
  • 経理から「未収が残ってる」と言われたけど、現場として何をすればいいの?
  • 自分の現場の数字が、会社の経審の点数に効いてたりするの?
  • 決算書のどこに載ってる科目なの?
  • 経理の言葉って、どこまで知っておけば恥をかかない?

上記の様な悩みを解決します。

完成工事未収入金は、工事を引き渡したのにまだ回収できていない代金を指す、建設業会計ならではの勘定科目です。要は売掛金の建設業版ですが、未成工事支出金・工事未払金・未成工事受入金と字面が似ていて、どれが資産でどれが負債なのかを取り違えたまま覚えがちです。今回は売掛金との違い・紛らわしい4勘定の見分け方・決算書での位置づけといった基本を押さえた上で、経理担当者向けの記事では出てこない、検収や請求の遅れが自社の数字と経営事項審査にどう響くのかまで、施工管理の目線で整理しました。

なるべく専門用語をかみ砕いて説明していくので、簿記を勉強していない方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

完成工事未収入金とは?

完成工事未収入金とは、結論「引き渡しが終わって売上は立っているのに、まだ入金されていない工事代金」のことです。一般の会社でいう売掛金を、建設業会計の言葉に置き換えた科目だと考えると早いです。

「要するに売掛金でいいのか」という理解は、実務上ほぼ正解です。相手から代金を回収する権利であること、貸借対照表の資産に載ること、入金されたら消えること。この3点は売掛金とまったく同じです。違うのは名前と、その名前が使われている理由のほうにあります。

では、なぜ建設業だけ呼び方が違うのか。建設業の財務諸表が、建設業法の様式で作られているからです。建設業許可を持つ会社は、毎年の決算変更届で建設業法施行規則に定められた様式の財務諸表を提出することになっていて、そこで使う勘定科目の分類も国土交通大臣の告示で定められています。完成工事未収入金は、その告示のなかで資産の部のⅠ流動資産に区分されている正式な科目名です(出典:昭和57年建設省告示第1660号「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類を定める件」・最終改正 令和4年4月11日国土交通省告示第473号。以下、本記事で「告示」と書いたらこれを指します)。自社の経理が読みやすさのために付けた社内用語ではなく、制度の側で決まっている名前だということです。

名前について、もう一つ注意しておきたい紛らわしさがあります。一般会計には「未収入金」という科目が別に存在していて、これは本業以外の取引で生じた債権、たとえば固定資産を売った代金の未回収分などを入れる箱です。完成工事未収入金は、この未収入金の建設業版ではありません。あくまで本業である工事の売上から生じた債権、つまり売掛金にあたる科目です。名前の後ろ半分だけを見て「本業以外のお金か」と読んでしまうと、決算書の読み方が根本からずれます。「完成工事」までがひとかたまりの科目名だと押さえてください。

ここで、試算表を見て「多いのは良いことなのか悪いことなのか」という疑問が出てきます。結論から言うと、額の大小そのものでは判断できません。売上が伸びれば完成工事未収入金も自然に増えるので、増えている=危ないとは限らないからです。見るべきは、完成工事高に対して比率が跳ね上がっていないか、そして「いつ引き渡した現場の分」が残っているかの2点です。半年前に引き渡した現場の代金が残っているなら、それは売上の伸びではなく回収の詰まりです。

科目としての位置づけをつかむには、1つの現場のお金が工事の進行にそってどう乗り換えていくかを追うのが早道です。まずは、工事が完成してから売上を立てる場合(工事完成基準に近い処理)で見ていきます。

  • 着工から施工中:現場に出ていった材料費・労務費・外注費・経費のうち、まだ完成工事原価に計上していない分が、未成工事支出金として資産に積み上がっていく
  • 前払金や中間金を受け取ったとき:受け取った代金のうち、まだ完成工事高に計上していない分が、未成工事受入金として負債に立つ
  • 完成・引き渡し:完成工事高(売上)と完成工事未収入金(回収する権利)が同時に立ち、積み上がっていた未成工事支出金は完成工事原価へ振り替わる
  • 入金:完成工事未収入金が現金預金に変わり、その現場の残高が消える

この乗り換えの流れが頭に入っていれば、完成工事未収入金は「売上が立った瞬間に生まれて、入金の瞬間に死ぬ科目」だと分かります。そこに残っている額は「売上にはなったのに、まだお金になっていない分」そのものです。

図にすると、こういう乗り換えになります。

工事の進行にそって、未成工事支出金は完成工事原価へ、完成工事未収入金は現金預金へと乗り換わる流れの模式図 工事の進行にそって勘定科目が乗り換わる流れ 工事が完成してから売上を立てる場合(工事完成基準に近い処理) 着工から施工中 完成・引渡し 入金 資産 未成工事支出金 完成工事未収入金 現金預金 入金 負債 未成工事受入金 引渡しで収益へ振り替わる (前払金・中間金を受けた場合) 収益・費用 完成工事高(収益) 完成工事原価(費用) 引渡しで振替 完成工事高と完成工事未収入金は 引渡しの時点で同時に立つ ※模式図。金額の比率や期間の長さは実比率ではありません 出典:昭和57年建設省告示第1660号「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類を定める件」(最終改正 令和4年国土交通省告示第473号) | 施工管理の教科書

ここで一点だけ補足しておきます。上の並びは工事完成基準に近い処理の場合で、売上が立つのが引き渡しの時点だからこうなります。工期の長い工事で出来高に応じて売上を立てる処理を採っている場合は、引き渡しより前に完成工事高が計上され、それに対応する未収額も先に生まれます。告示の完成工事未収入金は「完成工事高に計上した工事に係る請負代金の未収額」と定義されているので、基準になるのは引き渡しそのものではなく、売上をいつ立てたかのほうです。

僕の整理では、現場の人間が経理と話すときに必要なのはここまでです。仕訳が切れる必要はなく、「資産か負債か」「いつ立って、いつ消えるか」の2つを言えれば、決算説明や原価会議の会話は成立します。恥をかくのは科目を知らないときではなく、資産と負債を逆に覚えているときです。

完成工事未収入金を含む紛らわしい4勘定の見分け方

建設業会計でつまずく最大の理由は、似た顔をした科目が4つ並んでいることです。結論、見分ける軸は2つしかありません。「完成しているか、まだ工事中か」と「これから何が起きる権利・義務なのか」です。

先に一覧で押さえてしまいます。売掛金と完成工事高も並べておくと、対応関係が一度に見えます。

科目 資産・負債・収益の別 一般会計での呼び方 いつ動くか
完成工事未収入金 資産(流動資産) 売掛金 引き渡して代金の請求権が確定したときに立ち、入金で消える
完成工事高 収益 売上高 履行義務を充足した時点で計上する(完成基準に近い処理なら引き渡しの時点)
未成工事支出金 資産(流動資産) 仕掛品 工事中に費用が出るたび積み上がり、引き渡しで完成工事原価へ振り替わる
未成工事受入金 負債(流動負債) 前受金 前払金・中間金を受け取ったときに立ち、引き渡しで完成工事高へ振り替わる
工事未払金 負債(流動負債) 買掛金 材料・外注の請求を受けたときに立ち、支払いで消える
売掛金 資産(流動資産) 売掛金 兼業(不動産・物販など)の売上のうち未回収の分

なお、この表の「いつ動くか」の欄は、工事が完成してから売上を立てる場合(工事完成基準に近い処理)を基準に書いています。進捗に応じて売上を立てる処理を採っている場合は、完成工事高と完成工事未収入金が立つのも、未成工事支出金が完成工事原価へ振り替わるのも、引き渡しの時点ではなく売上を計上した時点になります。この違いは次の見出しで分解します。

見分けるときは、科目名を丸暗記するのではなく次の順で見るのが早いです。

  • 頭が「完成」なら引き渡し済み、「未成」ならまだ工事中の科目だと切り分ける
  • 次に「これから何が起きるか」を考える。お金が入ってくる・原価に変わるなら資産、お金を払う・工事を提供する義務が残っているなら負債
  • 「支出金」「未払金」は自社から出ていくお金、「未収入金」「受入金」は相手とのやり取りで自社に入ってくるお金
  • 金額が大きく動いたときは、売上が動いたのか残高が動いたのかを分けて見る

この順で見れば、未成工事支出金と未成工事受入金が資産と負債に分かれる理由も理屈で説明できます。未成工事支出金は自社が先に払って現場に注ぎ込んだお金なので、引き渡せば原価に変わる財産の置き場です。未成工事受入金は先にもらってしまったお金なので、工事を仕上げて渡す義務が残っている状態、つまり負債です。お金が入ってきたのに負債というのが直感に反しますが、まだ対価を返していないから負債、と考えると筋が通ります。

実務では、貸借対照表の紙面上の位置も手がかりになります。完成工事未収入金と未成工事支出金は資産の部に並び、工事未払金と未成工事受入金は負債の部に並びます。つまり4つのうちどれを見ているかは、資産と負債のどちら側に載っているかで半分は判別できるということです。科目名の意味を思い出せないときでも、載っている場所を見れば「これは自社の財産側か、義務側か」だけは即座に分かります。

まず整理しておきたいのが、完成工事高との違いです。ここは同時に立つぶん、いちばん混同されます。完成工事高は損益計算書の収益で、その期にいくら稼いだかを表します。完成工事未収入金は貸借対照表の資産で、いま現在いくら回収し残しているかを表します。同じ引き渡しの瞬間に生まれる双子ですが、完成工事高は期が変われば0からリセットされるのに対し、完成工事未収入金は回収されるまで残高として翌期に持ち越されます。「フローの完成工事高」と「ストックの完成工事未収入金」と覚えておけば取り違えません。

未成工事支出金との違いは、資産という点が同じなだけに厄介です。どちらも資産ですが、中身は正反対で、未成工事支出金は自社が払ったお金、完成工事未収入金は相手からもらう権利です。そして両者は時間的にも重なりません。同じ現場では、引き渡しの瞬間に未成工事支出金が完成工事原価へ振り替わり、入れ替わりで完成工事未収入金が立ちます。費用側の科目がどう積み上がって振り替わるのかは、対になる記事で分解しています。

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工事未払金は、完成工事未収入金のちょうど裏返しです。完成工事未収入金が「元請や発注者からもらう権利」なら、工事未払金は「下請や材料屋に払う義務」です。現場代理人の感覚だと、自分が出した注文書の残りが工事未払金、自分が出した請求書の残りが完成工事未収入金、という対応になります。負債側の相方についてはこちらで整理しています。

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最後に、意外と知られていないのが兼業分の扱いです。建設業の売上から生じた未回収分は完成工事未収入金ですが、不動産の賃貸や物販といった兼業の売上から生じた未回収分は、完成工事未収入金ではなく売掛金として分けて計上します(出典:国土交通大臣登録の経営状況分析機関である株式会社建設業経営情報分析センターの解説)。だから自社の貸借対照表に完成工事未収入金と売掛金が両方並んでいても、それは記入ミスではありません。兼業を持っている会社では当たり前の姿です。逆に、兼業の売上まで完成工事未収入金に混ぜてしまうと、建設業の完成工事高と対応しない残高になってしまいます。

正直なところ、現場の施工管理がこの6科目を仕訳できる必要はありません。ただ、決算説明で「未成工事支出金が増えた」「完成工事未収入金が減らない」と言われたときに、それが自社の財布のどちら側の話なのかを即座に判断できるかどうかで、その後の会話の質がまるで変わります。

完成工事未収入金の仕訳と計上のタイミング

ここまで読んで「借方貸方まで自分が覚える必要があるのか」と身構えている人もいると思います。結論、現場の施工管理が仕訳を切れる必要はありません。ただし「いつ完成工事未収入金が立つのか」というタイミングだけは、現場の動きと直結しているので知っておく価値があります。

計上のタイミングは一言で言えば、引き渡して代金の請求権が確定したときです。工事が終わっただけでも、請求書を出しただけでもなく、発注者の検収を経て「この金額を請求できる」と確定した時点で、完成工事高と完成工事未収入金が同時に立ちます。

現場の感覚とずれやすいので、何をもって確定とするかを分解しておきます。

  • 工事が物理的に終わった日:これだけでは科目は動かない
  • 発注者の検収・引渡しが完了した日:ここで請求権が確定し、完成工事高と完成工事未収入金が立つ
  • 請求書を発行した日:科目は既に立っている。請求書は権利を確認する書類であって、権利を生む書類ではない
  • 入金された日:完成工事未収入金が現金預金に振り替わって消える

「請求書を出したから売上が立つ」と思い込んでいる人は多いのですが、順番は逆です。検収で権利が確定しているから請求書が出せる、というのが会計上の筋道になります。ここを取り違えていると、検収が済んでいないのに請求だけ先に上げてしまうといった事故が起きます。

仕訳の形も見ておきます。以下の金額はすべて説明のために置いた仮の数字(単位:万円)で、実際の工事金額とは関係ありません。

場面 借方 貸方
請負金額1,000の工事を引き渡し、請求権が確定した 完成工事未収入金 1,000 完成工事高 1,000
同時に、積み上げてきた原価を振り替えた 完成工事原価 800 未成工事支出金 800
代金1,000が入金された 現金預金 1,000 完成工事未収入金 1,000
進捗40%の時点で収益を計上した 完成工事未収入金 400 完成工事高 400

上3行が、工事完成基準に近い処理のパターンです。引き渡しの期に売上と原価をまとめて計上し、入金で残高が消えます。いちばん素直な形なので、まずこの3行が読めれば十分です。

4行目が、工事進行基準に近い処理のパターンです。工期が決算をまたぐ工事で、進捗に応じて期ごとに売上を分けて計上していきます。なおこの処理では、この売上に対応する原価も同じ期に完成工事原価として計上されます。原価が引き渡しの期にまとめて落ちる完成基準とは、ここが違います。ここでもう一点だけ補足しておくと、進捗に応じて収益を計上しても、契約上まだ発注者に請求できる状態になっていないことがあります。この場合、確定した請求権である完成工事未収入金とは別の科目(契約資産など)で区別する会社もあるので、自社の決算書に見慣れない科目が並んでいたら経理に聞いてみてください。進捗に応じて売上を立てる考え方そのものは、こちらが詳しいです。

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分割で検収を受ける工事も、考え方は同じです。工区や棟ごとに部分引渡しをして、その都度検収と請求が確定していく契約なら、確定した分だけ完成工事高と完成工事未収入金が立っていきます。現場としては「まだ全体は終わっていない」という感覚でも、契約上そこで請求権が確定していれば、会計の側では売上が立っているわけです。逆に、社内の出来高報告としては進んでいても契約上の検収がまとまっていなければ、完成基準に近い処理の会社では、その分の原価は未成工事支出金に留まったままになります。

「うちはどっちの処理なのか」は、正直なところ経理に聞くのがいちばん早いです。目安としては、期中の月次試算表で完成工事高が引き渡し月にドンと立つ会社は完成基準に近い処理、毎月じわじわ積み上がる会社は進行基準に近い処理だと見当がつきます。会社の規模や工事の長さによって適用されるルールが変わるので、社内でも工事ごとに扱いが違うことがあります。

もう一つよく出るのが「収益認識基準に変わって現場の何が変わったのか」という疑問です。会計のルールとしては、従来の工事完成基準・工事進行基準を定めていた基準が「収益認識に関する会計基準」に整理され、履行義務を果たした時点で収益を認識するという考え方に統一されました。ただ、現場から見た変化はもっと単純です。進捗に応じて売上を立てる処理が主流になったぶん、現場が報告する出来高や進捗率が、そのまま会社の売上金額を動かすようになりました。出来高報告が「事務作業」から「決算の元データ」に格上げされた、という理解でおおむね合っています。

消費税がいつ乗るのかも、つまずきやすいところです。基本的な考え方として、工事の消費税は引き渡した日を基準に課税されます。つまり入金の有無とは関係なく、引き渡した時点でその工事分の消費税が発生します。完成工事未収入金を税込で計上するか税抜で計上するかは会社の経理方針によって異なり、決算書の残高の見え方も変わります。なお、消費税の課税時期や仕入税額控除といった税務上の個別判断については、必ず会社の経理か顧問税理士に確認してください。

僕の考えでは、現場の人間がこの節から持ち帰るべきなのは仕訳の形ではなく、「検収が確定するまで、会社の帳簿の上ではその工事は1円も売上になっていない」という一点です。ここが次の話につながります。

現場監督の段取りが完成工事未収入金に変わるまで

ここが、経理担当者向けの解説記事ではまず出てこない、現場の人間にとっての本題です。結論から言うと、完成工事未収入金は経理が作っている数字ではなく、現場代理人が検収と請求をどう段取ったかの結果そのものです。

まず、自分が検収をもらうのが遅れると何が起きるか。検収が確定しないと請求権が確定せず、完成工事高も完成工事未収入金も立ちません。一方で、その現場にかかった費用は未成工事支出金として資産に積み上がったままです。損益計算書の上では売上も原価も出てこないので、数字を見ているだけでは何も起きていないように見えます。ところが実際には、材料費や外注費の支払いは先に出ていっています。検収の遅れは「静かに資金だけが出ていく状態」を長引かせる、ということです。

次に、出来高の請求を1か月遅らせたらどうなるか。請求が翌月にずれれば、入金は支払いサイトのぶんだけさらに後ろにずれます。ここまでは誰でも想像がつきますが、問題はそれが決算月をまたいだときです。本来その期に立つはずだった完成工事高が丸ごと翌期に移り、その期の売上と利益が減ります。現場としては1か月の遅れでも、会社の決算では「今期の売上ではなくなる」という不連続な結果になります。

経理から「未収が残っている」と言われたときに現場が確認すべきことも、実はそれほど多くありません。

  • 検収書・引渡書をもらっているか、その日付が請求月と合っているか
  • 請求書を提出したか、提出先と提出期限は合っていたか
  • 追加変更工事の精算が積み残しになっていないか
  • 出来高の締め日と、社内の請求処理の締め日がずれていないか
  • その現場の入金予定日を、経理と同じ認識で持てているか

現場でよくあるのは、工事そのものは終わっているのに追加変更分の精算が宙に浮いていて、その分だけ残高が残り続けているパターンです。これは経理側からは「回収遅れ」に見えますが、実態は現場の精算未了なので、経理が催促しても動きません。現場が精算を締めない限り解消しない残高、というものが確かに存在します。

出来高の確認そのものの手順はこちらにまとめています。

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元請の支払いが単純に遅いケースも当然あります。この場合、自社の帳簿では完成工事未収入金が減らないまま残り続けることになります。工事は終わっている、原価も確定している、それなのに資産だけが居座っている状態です。現場としてできるのは、遅れの理由が自社側の書類不備なのか相手側の支払いサイトなのかを切り分けて、経理に事実として伝えることです。ここが曖昧なままだと、経理は現場に催促し、現場は「うちは出した」と返す不毛なやり取りが続きます。

個人的には、施工管理の仕事は引き渡した瞬間に終わりではなく、完成工事未収入金が現金預金に変わるまでが1セットだと思っています。工程表には載っていない工程ですが、ここを詰められる現場代理人は、所長や経理から見ると明確に信頼できる人になります。

完成工事未収入金が経営事項審査の点数に効く仕組み

自分の現場の数字が会社の経審に効いているのか、という疑問に答えます。結論、効いています。しかも完成工事未収入金は、経営事項審査の評点の計算式のなかに名前が出てくる科目です。

経営事項審査では、財務内容を評価する経営状況の評点Yが、8つの指標をもとに算出されます。そのうちの1つが「営業キャッシュフロー(絶対額)」で、この指標の算式のなかで、売掛債権が「受取手形+完成工事未収入金」と定義されています。そして売掛債権の増減額は、キャッシュが出ていく側として符号を反転させて算入されます(出典:国土交通大臣登録の経営状況分析機関である株式会社建設業経営情報分析センターの解説/登録番号22)。

言い換えると、期末の完成工事未収入金が前期末より増えていれば、その増加分は営業キャッシュフローを押し下げる方向に働きます。利益がしっかり出ていても、回収が遅れて残高が膨らんでいれば、経審の経営状況の評価にはマイナスに効くということです。ここは直感に反するところで、「売上が伸びて未収も増えた」という健全に見える状態でも、計算式の上ではキャッシュフローを削る方向に入ります。

そもそも、なぜ利益ではなくキャッシュフローを見る指標が置かれているのか。理由は、建設業が「利益は出ているのに手元に現金がない」という状態を起こしやすい業種だからです。材料費も外注費も先に出ていくのに、入金は引き渡しの後。この時間差を埋めているのが会社の運転資金で、その負担の大きさは損益計算書だけを見ても分かりません。完成工事未収入金の増減がキャッシュフローの計算に組み込まれているのは、まさにこの時間差を数字として捕まえるためです。

なお、評点Yを構成する残り7つの指標が何か、それぞれのウェイトがどれくらいかについては、本記事では触れません。確認できた一次情報の範囲を超えるためです。ここで押さえてほしいのは、完成工事未収入金という科目名が経審の算式に実際に登場するという事実のほうです。

現場の段取りとの接続も見ておきます。

  • 決算月の直前に引き渡しだけ済ませ、請求と回収が翌期にずれると、完成工事高は立つが完成工事未収入金の期末残高も同時に膨らむ
  • 期末までに回収まで終わっていれば、完成工事高は立ったうえで残高は増えない
  • 1現場あたりの金額は小さくても、全社の期末残高はその足し算でできている
  • 経審の点数は公共工事の入札参加資格に直結するので、会社が取れる工事の幅、つまり次に自分が任される現場に返ってくる

もちろん、決算月に合わせて工事を無理に前倒ししろという話ではありません。工程も品質も安全も、そんな理由で動かすものではないです。ただ、決算前に「引き渡しと請求と入金のどこまで年度内に入るか」を経理と共有しておくだけで、会社側は数字の着地を読めるようになります。現場が出せる情報としては、これがいちばん価値があります。

決算での扱いと回収できなくなったときの処理

決算書のどこに載る科目なのか、そして回収できなくなったらどう処理されるのかを最後に押さえておきます。結論、通常は貸借対照表の流動資産に載り、回収が危うくなると場所と扱いが変わります。

まず通常の状態です。完成工事未収入金は、貸借対照表の資産の部のうちⅠ流動資産に区分されます(出典は前述の告示。以下この節で同じ)。ここで押さえておきたいのは、工事の請負代金の未収額は本業の営業取引から生まれた債権なので、回収に1年以上かかっていても、それだけで流動資産から外れるわけではないという点です。実際、告示は預金に「決算期後1年以内に現金化できると認められるもの」、短期貸付金に「決算期後1年以内に返済されると認められるもの」という期間の線引きを置いていますが、完成工事未収入金にはそうした線引きがありません。この科目で1年という期間が出てくるのは、次に説明する例外の場面だけです。

では、どうなったら流動資産から外れるのか。告示は、完成工事未収入金のうち「破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で決算期後1年以内に弁済を受けられないことが明らかなもの」を、投資その他の資産に記載すると定めています。取引先が破産・民事再生・会社更生に入った場合や、同じ取引先から受け取った手形が不渡りになった場合のように、回収できないことが明らかになって、初めて移ります。告示の書き方も「破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権」で、法的整理だけに限られてはいません。移った先では破産更生債権等という科目で並ぶので、決算書のこの行に金額が入っていたら、どこかの取引先が飛んだという意味になります。

決算での扱いを段階で整理すると、次のようになります。

  • 通常:流動資産に完成工事未収入金として計上され、回収されれば現金預金に振り替わる
  • 回収が怪しくなってきた段階:回収できないと見込まれる額を見積もり、貸倒引当金として計上する(告示でも貸倒引当金は、受取手形・完成工事未収入金など流動資産の部に属する債権の貸倒見込額を一括して記載する科目とされています)
  • 相手の倒産等で回収できないことが明らかになった段階:破産更生債権等として投資その他の資産へ区分を移す
  • 回収不能が確定した段階:積んである貸倒引当金を取り崩して充て、足りない分を貸倒損失として費用に落とす

なお、この4つは必ずこの順に進むわけではありません。得意先が法的整理に入れば、区分替えと引当金の計上は同じ決算で同時に行われるのが普通ですし、引当金を積む間もなく貸倒損失になることもあります。

貸倒引当金は、まだ回収できないと確定したわけではない段階で、あらかじめ損失の見込みを織り込んでおくための仕組みです。決算書を「実態より良く見せない」ための調整だと考えると分かりやすいです。ただし、貸倒引当金や貸倒損失を税務上いつ損金にできるかについては要件が定められているので、この判断は会社の経理と顧問税理士に任せてください。現場の人間が踏み込む領域ではありません。

決算書全体のどこに何が並ぶのかを俯瞰しておくと、この科目の居場所がもっとはっきりします。

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現場目線でこの節から持ち帰るとすれば、完成工事未収入金は「回収が遅れているだけ」と「相手が飛んだ」で決算上の扱いが分かれる、ということです。相手が飛べば区分は投資その他の資産の破産更生債権等へ移り、引当金という形で利益も削ります。遅れているだけならすぐ区分は動きませんが、同じ額が何年も居座っていれば、経理は回収可能性を確認して別の科目へ移すかどうかを判断することになります。現場から見て意味があるのは、遅れの理由がどちらなのかを早めに切り分けて伝えることのほうです。

完成工事未収入金に関する情報まとめ

  • 完成工事未収入金とは:引き渡し済みで未回収の工事代金。売掛金の建設業版で、国土交通省告示により流動資産に区分される正式な科目名
  • 紛らわしい4勘定の見分け方:「完成」なら引き渡し後、「未成」なら工事中。これから入るお金・原価に変わるものは資産、これから払う義務・工事を渡す義務は負債
  • 完成工事高との違い:完成工事高はその期のフロー、完成工事未収入金は回収まで持ち越すストック
  • 兼業分の扱い:建設業の売上分は完成工事未収入金、不動産や物販など兼業の売上分は売掛金に分ける
  • 仕訳と計上タイミング:検収を経て請求権が確定した時点で完成工事高とセットで立ち、入金で消える。仕訳を切れる必要はない
  • 現場との接続:検収の遅れ・出来高請求の遅れ・追加変更の精算未了が、そのまま残高の滞留になる
  • 経営事項審査:経営状況の評点Yの指標のひとつ「営業キャッシュフロー(絶対額)」の算式で、売掛債権=受取手形+完成工事未収入金と定義され、増加分はキャッシュアウト側に入る
  • 決算での扱い:通常は流動資産。相手の倒産等で1年以内の弁済が見込めないことが明らかになったものだけ破産更生債権等として投資その他の資産へ移す。回収懸念には貸倒引当金、確定したら引当金を取り崩して充て不足分が貸倒損失

以上が完成工事未収入金に関する情報のまとめです。

完成工事未収入金は、経理の専門用語の顔をしていますが、中身は「終わった仕事のうち、まだお金になっていない分」というだけの単純な科目です。そして、その残高を作っているのは経理ではなく現場です。検収の日付、追加変更の精算、出来高請求の締め。この3つを詰めておけば、自分の現場の残高は素直に消えていきます。次の決算前に、自分が担当している現場の「引き渡し済みで未入金の額」を一度だけ棚卸ししてみてください。その数字を経理と共有できる現場代理人は、社内での見え方が確実に変わります。なお、税務上の個別判断については会社の経理・顧問税理士に確認するのが確実です。

予算と実績のずれをどう分解するかは、別の記事で扱っています。

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完成工事未収入金について現場からよく出る質問

Q1:建設業経理士の勉強で覚えた理解のまま、実務でも通用しますか?

科目の性質と仕訳の考え方はそのまま通用します。試験は区分と仕訳の正確さを問うのに対し、実務で問われるのは「いつ立って、いつ消えるか」と「残高が残っている理由」です。ただし、兼業分の分け方や収益認識の適用の仕方は会社ごとに違うので、自社の処理は経理に確認してください。建設業の経理まわりの資格の全体像は、こちらで整理しています。

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Q2:完成工事未収入金が多い会社は危ないということですか?

額の大きさだけでは判断できません。売上規模が大きければ残高も大きくなるためです。見るべきは完成工事高に対する比率と、古い債権が滞留していないかの2点です。回収サイトの長い元請が中心なら、比率が高くても正常な範囲ということもあります。

Q3:受取手形は完成工事未収入金に含まれますか?

含まれません。受取手形は別の科目として計上されます。ただし経営事項審査の営業キャッシュフローの算式では、売掛債権として受取手形と完成工事未収入金を合算して扱うので、指標を見るときは2つセットで確認するのが正しい読み方です。

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先送りしたぶんだけ、次の現場の選択肢が狭くなる
検収の日付や追加変更の精算まで詰められる人ほど、任される現場は大きくなります。ただ、現場を任される範囲が広がるほど、「施工管理技士はいつ取るのか」を聞かれる場面も先にやってきます。資格の段取りは、時間ができてから始めるものではなく、今の現場が終わる前に組んでおくものです。

  • 働きながら通学講座に数十万を出す踏ん切りがつかない
  • 独学で始めたものの、自分の解き方が合っているのか確かめる相手がいない
  • 「来年でいいか」と先送りしているうちに、同期が先に受かっていた

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