瞬停とは?原因、対策、試験、検出器、再始動リレーなど

  • 瞬停ってなに?
  • 原因はどんなものがあるの?
  • どんな対策をすればいいの?
  • 試験について詳しく知りたい
  • 検出器って?
  • 再始動リレーの概要について知りたい

上記のような悩みを解決します。

瞬停は電気設備を設計する上では外せない事象です。建物の電気設備において重要な項目ですので、正しい知識を抑えておきましょう。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

 

瞬停とは?

瞬停とは、結論「一瞬だけ停電すること」です。

正式名称は「瞬時停電」でして、それを略して瞬停と読んでいます。

例えば、電線に雷が落ちると、電圧が一瞬低下しますよね。この電圧低下のことを「瞬低(瞬間電圧低下)」と呼び、それに伴って発生する停電のことを瞬停と呼びます。

では具体的に、どれくらいの時間停電するのかというと「約1分」と言われています。正確にいうと、送電されない時間が1分くらいです。落雷が発生した電線には落雷の電気が残っているので、1分くらいは電路から切り離さなければならないんですね。

この辺は繊細にやらなければなりません。電線は近くの建物がまとまっているので、下手したら複数の建物に影響が出てしまいます。それでは困りますよね。そこで1分間は停電するんです。

『1分って一瞬じゃなくね?』と思うかもしれません。

これは停電の定義上の問題でして、1分間電路を切り離すのは、電力会社が意図的に行なっているから停電に分類されないんです。電気が送電されていなくても、停電とは言わなかったりする場合があるということです。

つまり瞬停とは「一瞬だけ停電すること」という意味ですが、「1分間送電されないこと」とも言えます。「瞬」と入ると間違えやすいので、注意するようにしましょう。

 

瞬停の原因

瞬停の原因は、結論「送電線への落雷」です。

まず、瞬停は瞬低が原因となって引き起こされます。では瞬低が発生する原因はなにか?と考えると、送電線への落雷なんです。つまり「送電線への落雷→瞬低が発生→瞬停が発生」という流れになります。これが一番代表的な原因ですね。

もう少し突っ込んだ話をすると、瞬停は電圧が低下することによって引き起こされます。何が言いたいかというと、送電線への落雷以外にも電圧が低下したら瞬停は発生するということです。

例えば、近くにある建物の負荷が同時多発的に大きくなると瞬停が発生したりします。

具体的に言えば、工業地帯なんかでよく発生する現象です。工業地帯にあるのは工場であり、工場には大きな負荷があります。

「需要率」という考え方をしますが、要するに全ての負荷を耐えられるように設計されてないんです。

全ての負荷を耐えられるように設計すると設備費用が膨大になります。実際、全ての負荷が同時に使われることなんてありませんし、最大でも80%くらいが同時に使われる想定で電気設備が設計されたりします。

建物単体では大きな問題には繋がりません。ただ、近くにある工場群が同時に強い負荷を使うと、工場群一帯に供給する電気が足りなくなったりします。すると電圧が低下(瞬低)し、瞬停が発生するといった流れです。

瞬停の原因として代表的なものは「送電線への落雷」ですが、本質はそこではなく、瞬低が発生することにあります。他の要因で瞬低が発生したら、瞬停が発生してしまうんです。

 

瞬停の対策

まず大枠の考えとして、瞬停を完全に無くすことはできません。

先ほどの「瞬停の原因」の部分でも言いましたが、瞬停の原因は送電線への落雷だったとします。落雷を無くすことはできませんし、それに伴った電圧低下も防ぐことは難しいんです。

ではどうするかというと、別の電源から送電するという方法を取ります。

要するに瞬停の何が問題かというと、電源が供給されなくなって電気が止まってしまうことが問題なんです。瞬停が発生したとしても、電気を供給することができればなんら問題は無い訳ですよね。

瞬停の対策とは、瞬停を無くすことではなく、瞬停が発生しても問題なく電気を供給することに尽きます。そこにフォーカスした対策方法であることをまずに認識しましょう。

具体的なやり方としては、下記の2種類があります。

瞬停の対策方法

  • コンデンサを使用するパターン
  • バッテリーを使用するパターン

 

コンデンサ形

コンデンサを使用することで、瞬停の対策とすることができます。

そもそもコンデンサとは何かというと「電気を貯めて放電できる電気素子のこと」です。瞬停が発生する前に電気を貯めておき、瞬停が発生し、送電線から電気が供給されなくなったら電気を放出して電気を供給します。

このコンデンサ型の瞬停対策では、下記の2種類があります。

コンデンサ型の瞬停対策

  • 常時商用給電方式
  • 不足電圧補償方式

先に「不足電圧補償方式」の解説をした方が分かりやすいかもしれません。

不足電圧補償方式とは、瞬停によって不足した電圧のみをコンデンサから供給する方式のことです。ざっくりとした説明をしますが、100Vの電源が瞬停によって70Vまで落ちたら、30V分だけコンデンサから供給するイメージです。

対して「常時商用給電方式」とは、完全にコンデンサからの電源供給に切り替えるパターンです。100Vの電源があったとしたら、100Vをコンデンサから供給するイメージです。

その現場によって適切な方式を選んでいきます。

 

バッテリー形

バッテリー形の瞬停対策も存在します。

そもそもコンデンサとバッテリーの違いがどこにあるのか?といったところですよね。具体的には、下記のような違いがあります。

コンデンサとバッテリーの違い

  • コンデンサ:短時間、高電圧、容量は小さい
  • バッテリー:長時間、定電圧、容量は大きい

短い時間を送電するのに向いているのがコンデンサであり、長時間の送電に向いているのがバッテリーです。似ているものですが、明確に違うものですので注意しましょう。

例えば長時間の停電が発生してしまうような場合だと、バッテリー形が採用されます。

対して、そこまで長くない時間の送電停止だとコンデンサタイプの対策用品が使われたりします。想定する場合によって使い分けていく形です。

 

瞬停の検出には瞬停検出器を使う

瞬停の検出には瞬停検出器を使用します。

具体的にどのようなタイミングで検出するかというと、結論「半サイクル分の電圧低下を検出する」です。要するに半周期分くらいになります。多くの瞬停検出器が半サイクル分です。

1ms以下の落ち込みは検出しません。電気は微妙に揺れているので、1ms以下の落ち込みで検出してしまうと、感度が良すぎて利便性に欠けるんですよね。

とはいっても、実際に瞬停が発生した時に検出してくれないと困りますよね。そこで定義されたのが「半サイクル」という訳です。

瞬停検出器は多くのメーカーで製作されています。

他の機器とは違って、バリエーション豊かですので、多くの瞬停検出器を見てみましょう。

瞬停検出器を作っているメーカー

  • オムロン
  • 東洋電機
  • マックエイト
  • SKジャパン

 

瞬停の試験について

建物を作る際、瞬停が発生しても問題が無いか?をあらかじめ試験しておく必要があります。

具体的なやり方としてはシミュレーターを使う方法があります。

電源と負荷の間にシミュレーターを挟み、シミュレータで電圧を変動させます。実際に瞬停が起こった時も電圧は変動しますから、シミュレーターで再現しているという訳です。

よく試験関係のサイトでは「電圧ディップ」という単語が出てきます。電圧ディップとは、結論「瞬低(瞬時電圧低下)」ですので、分かりにくいですが覚えておきましょう。

瞬停の試験方法には「IEC 61000-4-11:2004」という規格があります。

IEC 61000-4-11:2004に乗っ取った機器を作ることができれば大丈夫といったような指標ですね。この試験をクリアしなければ品質が補償されません。

具体的には下記のような条件が記されています。

IEC 61000-4-11:2004電圧ディップ(Voltage Dips)電力供給システムのある地点において発生し、短時間で復帰する、規定の電圧ディップしきい値以下への突然の電圧低下。

短時間停電(Short Interruption)電力供給システムのある地点において発生し、短時間で復帰する、規定の短時間停電しきい値以下へのすべての相の突然の電圧低下。

いずれの現象も、ほとんどの場合、送電システムに備えられた各種保護機能の働きにより、短い時間で復旧する。電圧ディップと短時間停電のちがいは、商用電源に生じた障害の影響により、送電システムに備えられた遮断機が動作したかどうかである。遮断器が動作すると、停電は全ての相に及び、復帰に要する時間も長くなる。これが短時間停電である。一方、障害が瞬時に消失して遮断器が動作せず、短ければ半周期、長くても数十周期で電圧が復旧するのが、電圧ディップである。

 

瞬停再始動リレーについて

瞬停が発生すると、一瞬機器が止まります。その止まった機器を再始動するリレーが電気設備には必要になってきます。パソコンでいうなら再起動みたいなものです。

注意点としては、施工場所に気をつけることです。

要するに瞬停再始動リレーは電子機器になります。濡れてしまったら機能しませんよね。よって結露しない場所だったり、水のかからない場所に施工する必要があったりします。

窓際に置いておくと、冬になったりすると窓に水がつき、それが瞬停再始動リレーにいってしまったりします。となると瞬停した際に瞬停再始動リレーが機能しなくなり、困ってしまうという訳です。

また、周囲温度においても「-10°〜+45°」といった決まりがあったりします。明確には製品によって異なるので各種確認が必要です。

ちなみに、瞬停再始動リレーは下記のようなメーカーが製作しています。

瞬停再始動リレーを製作しているメーカー

  • 三菱電機
  • 富士電機機器制御
  • オムロン

 

瞬停に関する情報まとめ

瞬停に関する情報まとめ

  • 瞬停とは:一瞬だけ停電すること
  • 瞬停の原因:送電線への落雷
  • 瞬停の対策方法:コンデンサ形、バッテリー形
  • 瞬停試験のやり方:シミュレーターで再現する
  • 瞬停検出器:上章参照
  • 再始動リレー:上章参照

以上が瞬停に関する情報のまとめです。

一通り瞬停の基礎知識は網羅できたと思います。

似たよう瞬停の対策用品として採用されているコンデンサは、どの制御機器でも採用されています。知識として必須ですので、抑えるべき知識は抑えておきましょう。

下にコンデンサについて分かりやすく書いた記事のリンクを貼っておくので、よかったら読んでみてください。それでは。