- 正の符号ってなに?
- 「+」って書かないとダメ?
- 計算でどう扱うの?
- 構造計算でいう「正」ってどっち方向?
- 「−」と並べたときの優先順位は?
- 図面で「+」が出てきたらどう読む?
上記の様な悩みを解決します。
構造計算書を読むと「+45.2kN」「+15度傾斜」「+10mm偏心」のように「+」が付いた数値が頻出します。意味は「正の値」ですが、構造計算では「正の方向」を計算前に取り決める必要があり、そのルールを知らないと正負を読み違えて応力分布の解釈を間違えることになります。本記事では正の符号の意味、書き方、計算ルール、構造計算での約束事まで、初心者向けに整理していきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
正の符号とは?
正の符号とは、結論「数値が0より大きい(プラスの値である)ことを示す記号 + のこと」です。
英語では Plus(プラス)または Positive Sign(ポジティブ・サイン)。日本語では「プラス」「正号」「加号」と呼ばれることもあります。
記号と意味の整理
| 記号 | 名前 | 意味 |
|---|---|---|
| + | プラス/加号/正号 | 加算、または正の数 |
| − | マイナス/減号/負号 | 減算、または負の数 |
→ 「+」と「−」は二刀流の記号で、計算では「加算・減算」、数値の前では「正・負」を表します。
「正の数」と「正の符号」の違い
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 正の数 | 0より大きい数(1、2.5、π、e など) |
| 正の符号 | その数が正であることを示す記号「+」 |
→ 例えば 3 は正の数。これに正の符号をつけると +3 と書きます。普段は省略されることが多いですが、文脈で「マイナスと対比したい」ときには明示的に書きます。
いつ「+」を書く?
| 場面 | 書き方 |
|---|---|
| 普通の計算 | 3 + 4 = 7(演算子として書く) |
| マイナスと並べて区別 | +3、−3 |
| 構造計算書で方向を明示 | +12.5 kN(圧縮を正と定義) |
| 図面で偏心方向 | +15 mm(右側プラスと定義) |
→ 数値の前の「+」は普段は省略します。しかし「負と紛らわしいとき」や「方向の意味を持つとき」は明示するのが原則。
正の符号の書き方・読み方
書き方や読み方のルールを整理します。
1. 演算子としての書き方
加算を表すとき、
- 3 + 4(数字の間に空白あり)
- 3+4(空白なしも可)
→ 一般には空白を空ける方が読みやすい。構造計算書では空白なしで詰めて書くことが多いです。
2. 数値の符号としての書き方
| 表記 | 意味 | コメント |
|---|---|---|
| +3 | 正の3 | 加算記号と紛らわしいので、文脈で判断 |
| (+3) | 正の3 | 括弧で囲んで明示 |
| 3 | 正の3(暗黙) | 普段はこれが普通 |
→ 「+(+3)」のように二重に書くのは特殊な場合(負の値を反転させる操作などの過程)以外は使いません。
3. 読み方
- 「+3」 → 「プラス3」または「正の3」
- 「3 + 4」 → 「3たす4」または「3プラス4」
- 「+15度」 → 「プラス15度」「正の15度」
→ 業界や教科書によって若干違うけど、「プラス」が一番通じやすいです。
4. 0 の符号は?
0 は「正でも負でもない」値です。
| 状態 | 表記 |
|---|---|
| ゼロ | 0 |
| 正のゼロ | +0(数学的には0と同じ) |
| 負のゼロ | −0(数学的には0と同じ) |
→ 普通の数学では「0は正でも負でもない」とされます。ただし「0以上」と言うと0を含み、「正」と言うと0を含まない、という区別もあるので、文脈で判断します。
「正の符号」と対になる「負の符号」については別記事で扱っています。

正の符号の計算ルール
正負の数を扱うときの計算ルールを整理します。
1. 加算・減算
| 式 | 結果 |
|---|---|
| (+3) + (+4) | +7 |
| (+3) − (+4) | −1 |
| (+3) + (−4) | −1 |
| (+3) − (−4) | +7(マイナス×マイナスでプラス) |
→ ポイントは「−(−x)= +x」。マイナスの数を引くと、結果はプラスに転じます。
2. 乗算・除算
| 式 | 結果 |
|---|---|
| (+3) × (+4) | +12 |
| (+3) × (−4) | −12 |
| (−3) × (−4) | +12 |
| (+12) ÷ (+4) | +3 |
| (−12) ÷ (−4) | +3 |
→ ルール:同符号同士は正、異符号同士は負。「同じ符号同士なら必ずプラス」と覚えると忘れません。
3. 累乗(べき乗)
| 式 | 結果 |
|---|---|
| (+3)² | +9 |
| (−3)² | +9(マイナスでも2乗でプラス) |
| (−3)³ | −27(奇数乗ならマイナスのまま) |
→ 「偶数乗」したらプラス、「奇数乗」したら符号そのまま、というルール。座屈計算や応力計算では2乗・4乗が頻出するので、符号は基本的にプラスになります。
2乗の詳細はこちらも参考にしてください。

4. 累乗根(√)
平方根 √ は「正の値」を返します。
- √9 = 3(正の値、−3ではない)
- ±√9 = ±3(プラスマイナスを意識して明示)
→ ルート記号自体が「正の符号」を内包している、と覚えると整理しやすいです。
5. 絶対値
|x| は「x の符号を取り除いた値」=「正の値」を返します。
- |+3| = 3
- |−3| = 3
- |0| = 0
→ 絶対値は「常に正(または0)」。建築の構造計算で、変形量や応力の大きさだけを評価したいときに使います。
構造計算での「正」の定義(方向の約束事)
ここが本記事のキモ。建築の構造計算では、「正」とは何かを最初に定義してから計算します。これを「符号規約」と呼びます。
1. 軸力(圧縮 vs 引張)
| 符号規約 | 圧縮 | 引張 |
|---|---|---|
| RC構造設計(建築学会) | 正(+) | 負(−) |
| 鋼構造設計(建築学会) | 圧縮 | 引張(場合により正) |
| 土木の設計 | 圧縮を正 | 引張を負 |
| 一般物理 | 引張を正 | 圧縮を負 |
→ 建築のRC・SRCでは「圧縮を正」とする慣習。これは「コンクリートが主に圧縮を負担する」ことに起因します。一方、応力解析ソフトでは「引張を正」の規約を使うことが多く、結果の符号が逆転するので注意が必要。
2. 曲げモーメント(上に凸 vs 下に凸)
| 符号規約 | 上に凸の曲げ | 下に凸の曲げ |
|---|---|---|
| 建築構造設計 | 正(+) | 負(−) |
| 土木の設計 | 下凸を正 | 上凸を負 |
→ 「梁が下にたわむ=下に凸=負のモーメント」が建築の伝統。M図を描くときに、正の値を下側に描く慣習もここに由来します。
3. せん断力(時計回り vs 反時計回り)
| 符号規約 | 時計回りに切断面を回す力 | 反時計回り |
|---|---|---|
| 建築構造設計 | 正(+) | 負(−) |
→ 「左から見たときに、切断面の左側が上向き=正」というルール。Q図(せん断力図)を描くときの符号規約として標準的です。
4. 変位・回転(x軸正方向、反時計回り)
| 物理量 | 正の方向 |
|---|---|
| x方向変位 | 右向き |
| y方向変位 | 上向き |
| z方向変位 | 紙面手前(または上) |
| 回転角 | 反時計回り(数学的標準) |
→ 構造解析ソフトでは、これらの軸を最初に定義してから入力します。「+10mm偏心」と書いてあったら、定義した正方向に10mmずれている、という意味。
5. 風圧・地震力の方向
| 力 | 正の方向 |
|---|---|
| 風圧(建物に当たる側) | 圧縮(押す)方向 |
| 地震力 | X方向またはY方向の正側 |
| 雪荷重 | 下向き(負と書く設計者もあり) |
→ 風や地震は「両方向に作用する可能性」があるので、計算では正側と負側の両方を検討して、不利な側で設計します。
正と負を混同しないコツ
実務で正負を混同すると、応力分布の解釈を間違えたり、配筋設計を逆向きにしたりする致命的なミスにつながります。混同を避けるコツを整理します。
コツ1:計算前に符号規約を明文化する
構造計算書の冒頭、または前提条件として、
- 軸力:圧縮を正
- モーメント:上凸を正
- せん断力:時計回り(左から見て)を正
- 変位:右向き・上向きを正
のように記載しておきます。「自分なりのルール」ではなく、社内・業界の標準規約に従うのが基本。
コツ2:「結果が正になるか負になるか」を計算前に予想する
例えば、梁の中央に下向き集中荷重がかかると、中央の曲げモーメントは「下に凸」になります。建築の規約では「下凸=負」なので、計算結果は負の値で出てくるはず——と予想しておくと、計算結果が予想と逆だった場合に「あれ?」と気付けます。
コツ3:図と符号を必ずセットで描く
M図・Q図・N図を描くときは、
- 正側を上、負側を下に描く(または逆)
- 軸の正方向を矢印で明示する
- 符号の規約を凡例に書く
→ 数字の正負を見ただけで分かるように描かないと、後で別の担当者がレビューしたときに誤読される、ということが起きます。
コツ4:「+」を省略しない場面を覚える
| 場面 | 「+」を書くか |
|---|---|
| 普通の正の数 | 省略可(書かない) |
| 負の値と並ぶ場面 | 必ず書く |
| 方向を表す場面 | 必ず書く |
| 計算過程の中間結果 | 省略可だが、明示すると追跡しやすい |
→ 「+15mm 偏心」を「15mm 偏心」と書くと、もしかして方向を意識していない雑な値?と勘違いされる場面もあるので、文脈で書き分けが必要です。
コツ5:絶対値と符号を区別する
「応力が大きい」と言ったとき、
- 数値が大きい:絶対値 |σ| が大きい
- 引張側に大きい:正の値が大きい
- 圧縮側に大きい:負の値が大きい
→ 設計判断では「絶対値」を評価することが多いですが、配筋方向の決定には「符号」が必須。状況に応じて使い分けます。
「負の符号」の使い方は別記事で詳しく扱っています。

正の符号に関する情報まとめ
- 正の符号とは:数値が0より大きいことを示す記号「+」
- 演算子としての+:加算を表す
- 数値の前の+:その数が正であることを示す(普段は省略)
- 加算・減算ルール:同符号同士はそのまま、異符号は引き算扱い
- 乗除ルール:同符号同士は正、異符号同士は負
- 構造計算での「正」:軸力(圧縮)/モーメント(上凸)/せん断(時計回り)/変位(軸正方向)
- 混同しないコツ:符号規約を明文化、結果を予想、図と符号をセット、+の省略を場面で判断
- 絶対値との関係:|x| は符号を取り除いた正の値
以上が正の符号に関する情報のまとめです。一通り基礎知識は網羅できたかなと思います。「+」と「−」はとてもシンプルな記号ですが、構造計算では「方向の意味」を持ち、それを最初に決めるか決めないかで計算書の信頼性が変わります。M図・Q図・N図を読むときは、必ず「正がどちら向きか」を確認するクセをつけると、応力分布の解釈で迷うことがなくなりますよ。
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