- ルートギャップってなに?
- 開先のどの寸法を指してるの?
- 適正値ってどれくらい?
- ギャップが大きい・小さいとどうなる?
- JISでの基準はある?
- 現場でどう調整すればいい?
上記の様な悩みを解決します。
ルートギャップとは、結論「溶接する2つの母材の間にあるすき間の幅」のことです。鉄骨工事では、開先(ベベル)を加工した母材どうしを突き合わせて溶接しますが、ぴったり0mmで隙間なく付けるわけではなく、わざと一定の隙間を空けて溶接します。この隙間がルートギャップ。一見「ただの隙間」ですが、ここの管理を誤ると溶け落ち・融合不良・割れといった重大欠陥に直結するので、現場ではかなり重要な検査ポイントなんですね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
ルートギャップとは?
ルートギャップとは、結論「突合せ溶接で、開先の最深部(ルート部)における母材どうしの隙間幅」のことです。
英語ではRoot Opening(ルートオープニング)またはRoot Gap。日本では業界用語として「ルートギャップ」「ギャップ」「ルート間隔」などと呼ばれます。JIS Z 3001(溶接用語)では、
- ルート(root):開先の最深部
- ルート間隔(root opening):突合せ部における母材間のすき間
と定義されています。
開先溶接では、母材を斜めに削った(開先加工した)面どうしを突き合わせますが、この突合せの底部にわざと隙間を空ける理由は、
- 裏側まで溶け込ませるため:隙間がないと、最初のパスで裏側まで届かない
- 収縮ひずみを逃がすため:隙間が0だと収縮が応力として蓄積する
- 裏当て金との隙間整合:裏当て金を使う完全溶け込み溶接では密着精度のため
の3点。要するに「裏まできちんと溶け込ませるための作業余裕」として隙間を確保する、という発想です。
溶接そのものの基本はこちら。

開先における位置
「開先のどこがルートギャップ?」という疑問を解消するために、開先の各部位を整理しておきます。
開先の各部位
V開先を例にとると、
- 開先角度(Groove Angle):母材を削った全角度(例:35度)
- 開先深さ(Depth of Bevel):開先の高さ
- ルート面(Root Face):開先の最深部にある垂直な面の長さ
- ルートギャップ(Root Opening):突合せた母材間の隙間幅
- 裏当て金:開先の裏側に当てるバックアップ材
という5要素で構成されます。
ルートギャップは「開先の底=ルート部での母材間隔」なので、ルート面どうしの間の距離と言い換えてもOKです。
図でイメージするなら
母材A、母材Bが「ハの字」型に開先加工されて、底のほうがV字に開いている、というのが基本形。Vの底のところに幅3〜7mmの平行な隙間ができています。この底の隙間幅=ルートギャップです。
V開先・X開先・レ開先・K開先など、開先形状によってルートギャップの位置は微妙に変わりますが、「最も狭い部分の隙間」と覚えると間違いにくいです。
V開先以外の場合
- レ開先:片側だけ斜めに削った形。ルートギャップはルート面の下端
- X開先:両側から削ってルート面を中央に置く形。ルートギャップは中央のルート面間
- K開先:T継手で片側を斜めに削る形。ルートギャップは母材どうしのすき間
開先形状の選定は、板厚・溶接姿勢・強度要求で決まります。詳しくは溶接記事を参照してください。
突合せ溶接の話はこちら。
ルートギャップの適正値
ルートギャップは「狭ければ良い」「広ければ良い」というものではなく、用途・板厚・溶接方法に応じた適正値があります。
一般的な適正値(建築鉄骨)
建築鉄骨の柱梁接合(完全溶け込み溶接、裏当て金使用)の場合、
- ルートギャップ:5〜7mm
が標準的な値です。日本建築学会のJASS6(鉄骨工事標準仕様書)でも、この範囲が一般的に推奨されています。
板厚別の参考値
JIS Z 3604(炭素鋼および低合金鋼の被覆アーク溶接)などでは、板厚に応じて、
| 母材板厚 | ルートギャップ目安 |
|---|---|
| 6〜9mm | 0〜3mm |
| 9〜16mm | 3〜5mm |
| 16〜25mm | 5〜7mm |
| 25mm以上 | 7〜10mm |
と整理されることがあります。板が厚くなるほど隙間も広く取るのが基本傾向です。
開先溶接の溶接施工要領書(WPS)
実際の現場では、WPS(Welding Procedure Specification、溶接施工要領書)にルートギャップの目標値と許容範囲が記載されています。WPSを確認するのが施工管理の最初の仕事。
WPSの一般的な書き方は、
- 目標値:6mm
- 許容範囲:4〜8mm
のように、目標値±2mmで許容することが多いです。
許容差の規定
JASS6では、溶接組立精度の許容差として、
- ルートギャップの許容差:±2mm程度
が記載されています。プロジェクトによっては監理者が独自基準を設けることもあるので、特記仕様書も併せて確認します。
設計図書の役割と読み方は以下を参照してください。

適正範囲外だとどうなる?
ルートギャップが適正範囲を外れると、確実に溶接欠陥につながります。具体的にどんな問題が起きるかを押さえておきましょう。
ギャップが小さすぎる場合
ギャップが狭すぎる(例:0〜2mm)と、
- 融合不良(Lack of Fusion):裏側まで溶け込まない、ルート部に未溶融層が残る
- 溶け込み不足(Lack of Penetration):完全溶け込み溶接にならない
- ブローホール:脱酸ガスが抜けにくくなり、気孔が残る
といった欠陥が出やすくなります。完全溶け込み溶接で融合不良があると、設計強度を満たさなくなるため、超音波探傷試験(UT)で発見されると斫って溶接やり直しが必須です。
ギャップが大きすぎる場合
ギャップが広すぎる(例:10mm以上)と、
- 溶け落ち(Burn-through):溶融金属が裏側に垂れ落ちる
- アンダーカット:母材のフチが過剰に溶かされてえぐれる
- 収縮ひずみ過大:板が大きく変形する
- 溶接金属量過多:パス回数が増えて熱履歴が大きくなり、母材の機械的性質が低下する
といった問題が出ます。ギャップが大きいと裏当て金との隙間が広がって、裏側まで母材が溶ける前に溶融金属が垂れ落ちるので、見た目にも分かりやすい欠陥になります。
スターラップに似た「クレーター割れ」
ルート部での溶接終端(クレーター部)で、ギャップが大きいまま溶接を終えると、クレーター割れと呼ばれる縦方向のひびが入りやすくなります。
割れ系の欠陥は超音波探傷で検出されると、深さに応じて全層斫り直しになります。再溶接は熱履歴が増えるため、できる限り一発で適正範囲に収めるのが鉄則です。
スランプ試験の許容範囲と発想は似ていて、適正値からの逸脱は欠陥の温床になります。

現場での調整方法
ルートギャップを適正値に保つために、現場で行う調整作業を整理しておきます。
組立精度の管理
鉄骨組立段階で、仮組立(仮付け溶接)の時点でルートギャップを目標値に合わせるのが基本です。
- 柱梁仕口:工場で仕口寸法を高精度に管理し、組立時にギャップを±1mmで合わせる
- 現場継手:エレクションピース+仮ボルトで仮組立し、隙間を確認
組立公差は鉄骨の建て入れ精度に直結するので、工場検査で開先寸法・突合せ寸法を確認しておくと現場での手直しが減ります。
裏当て金の活用
裏当て金(裏波金、フラックステープ含む)を入れることで、
- ギャップが多少大きくても溶け落ちを防げる
- 裏側のビード形状を整えやすい
- 完全溶け込み溶接の検査基準を満たしやすい
というメリットがあります。建築鉄骨ではほぼ全ての完全溶け込み溶接で裏当て金を使うのが標準。
当て板(裏当て鋼板)の固定
裏当て金は、ギャップを跨ぐように下から当てて、仮溶接または専用クリップで固定します。当て板と母材の密着が悪いと、当て板の隙間から溶融金属が漏れる「溶け落ち」が発生するので、密着確認も検査ポイント。
ギャップ過大時の対応
ギャップが目標値を大きく超えてしまった場合、
- 3mm程度の超過:ウィービング幅を広げて対応(溶接士の技量で吸収)
- 5mm以上の超過:肉盛り溶接(バタリング)でギャップを埋めてから本溶接
- 10mm以上の超過:母材に追加の鋼板を継ぎ足して開先を作り直し
の手順で対応します。10mm以上の超過は設計者・監理者の承認が必要になるので、勝手に判断しないこと。
測定器具
ルートギャップの測定には、
- テーパーゲージ(くさび形のゲージで隙間に差し込む)
- 隙間ゲージ(シックネスゲージ)
- デジタルキャリパ
を使います。検査記録に残す場合は、3点以上の測定値を記録するのが標準です。
開先測定と組立精度の話は、配筋検査の発想に似ています。

ルートギャップに関する情報まとめ
- ルートギャップとは:突合せ溶接の開先最深部(ルート部)における母材間のすき間
- JIS定義:JIS Z 3001で「ルート間隔(root opening)」として規定
- 適正値(建築鉄骨):5〜7mmが標準。板厚により0〜10mmで変動
- WPSでの管理:目標値±2mm程度で許容範囲を設定
- JASS6許容差:±2mm程度
- 小さすぎる場合:融合不良・溶け込み不足・ブローホール
- 大きすぎる場合:溶け落ち・アンダーカット・収縮ひずみ過大
- 裏当て金:建築鉄骨の完全溶け込み溶接ではほぼ標準採用
- 過大時の対応:3mm超は技量で吸収、5mm超は肉盛り、10mm超は母材手直し
- 測定器具:テーパーゲージ、隙間ゲージ、デジタルキャリパ
以上がルートギャップに関する情報のまとめです。
ルートギャップは「たかが隙間、されど隙間」で、ここを5〜7mmで管理できているかどうかが、鉄骨溶接の品質をほぼ決めてしまうくらい重要な寸法です。組立精度を上げて目標値に近づけることが正攻法ですが、現場では多少のばらつきは出るので、ばらつきが出たときの吸収幅をWPSと監理者協議で決めておくのがトラブル回避のコツですね。鉄骨検査の立会いでテーパーゲージを差し込む光景は鉄骨工事の風物詩なので、新人監督さんは積極的に立ち会って体に染み込ませると良いと思います。
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