- そもそも建築模型って何のために作るの?
- 材料はスチレンボードでいいの?種類が多すぎて分からない
- カッターは普通ので大丈夫?何を揃えれば足りる?
- 縮尺って1/100と1/50どっちで作ればいい?
- まっすぐ切れないし、角が汚くなる
- 接着剤が糸を引いてベタベタになる
- 「面取り」ってよく聞くけど何のこと?
- 植栽とか人とか、添景はどう作るの?
- 実務でも模型って作るの?CADの3Dじゃダメ?
- 新人監督だけど模型を触ったことがない
上記の様な悩みを解決します。
建築模型は、図面という平面の情報を立体に起こして「実際どう見えるか」を確かめる道具です。設計課題で初めて作る人からすると、材料の名前も道具も手順も分からず、最初の1個で挫折しがちです。今回は模型の役割・材料・道具・作り方の手順・きれいに仕上げるコツといった基本を押さえた上で、施工管理の現場で模型がどう使われるかまで、現役の施工管理経験者目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現でまとめていくので、初めての方でも一通り作れるようになる内容かなと思います。
それではいってみましょう!
今すぐ動くつもりがなくても、他社の条件感を知っておきたい方はこちらもどうぞ。

建築模型とは?
建築模型とは、結論「建物や敷地を一定の縮尺で縮小し、立体で表現した模型」のことです。図面が「上から見た」「横から見た」情報を平面で表すのに対して、模型は立体そのものなので、ボリューム感・光の入り方・周囲との関係が一目で伝わります。
建築模型は大きく2種類に分けて考えると整理しやすいです。1つは検討途中でざっくり作る「スタディ模型」、もう1つは講評会や施主提案で見せる「提出模型(プレゼン模型)」です。
- スタディ模型:スタイロフォームや白いスチレンボードで素早く作る。形の検討が目的で、きれいさより回数
- 提出模型:スチレンボードやケント紙で丁寧に作る。人に見せる前提で、仕上げと縮尺の正確さが重要
- 敷地模型:建物周辺の地形・道路・隣家まで含めた模型。建物単体では分からない周辺との関係を見る
- 部分模型:階段・ディテールなど一部を大きな縮尺で作り、納まりを検討する
図面との関係を押さえておくと模型づくりの意味が分かりやすいので、図面の種類はこちらも参考にしてください。

現場目線で言えば、模型は「図面が読めない人に立体で伝える翻訳装置」です。設計者同士なら図面で会話できますが、施主や職人に説明するときは、模型が一つあるだけで打ち合わせの精度が段違いに上がります。学生の課題も本質は同じで、頭の中のイメージを他人と共有するために作る、と捉えると目的がブレません。
建築模型に使う材料
建築模型の材料は用途で使い分けます。最初は全部揃える必要はなく、下の中から2〜3種類で十分スタートできます。
| 材料 | 特徴 | 主な使いどころ |
|---|---|---|
| スチレンボード | 発泡スチロールの両面に紙を貼った板。軽くて加工しやすい | 壁・床・屋根など基本の面。最初の1枚はこれ |
| スチレンペーパー | 紙が貼られていないスチレンボード。薄いものは曲げられる | 曲面表現、ケント紙やジェッソを貼る下地 |
| スタイロフォーム | 断熱材の押出発泡ポリスチレン。厚みがあり削れる | スタディ模型、敷地の地形、既存建物のボリューム |
| プラ板 | 透明の薄いプラスチック板 | 窓ガラス、水面(下に色紙を敷く)の表現 |
| バルサ・木材 | 軽くて安い木の板や棒 | 軸組模型、家具などの添景、床の質感 |
| カスミソウ | 乾燥させた花材 | 樹木・植栽の表現。玉を取るとシンプルな木になる |
厚みは1〜7mmまであり、1/100前後の模型なら壁は2〜3mmが使いやすいです。購入先はレモン画翠・世界堂・ユザワヤなどの画材店、大学生協が定番で、細かい添景は100円ショップや手芸店でも揃います。
個人的には、初めての1個ならスチレンボード3mmだけで壁も床も屋根も作れるので、材料をあれこれ買う前にまず1種類で完成させる方が上達が早いと思います。材料集めに凝りすぎて手が止まるのが、初心者が一番ハマる落とし穴です。
建築模型づくりに必要な道具
道具は「切る・測る・貼る」の3系統で考えると、最小構成が見えてきます。次の6つが揃えば、ほとんどの模型は作れます。
- 30度カッター(黒刃)とカッターマット:模型づくりの主役。刃先が鋭角で細かく切れ、切れ味が落ちたらすぐ折る。マットは机と刃を守る
- 金尺(金属定規):15cm・30cm・60cmの3本があると便利。プラ定規は刃で欠けるのでNG
- スコヤ:直角を出す道具。これがあると直角と垂直がブレず、作業スピードが段違い
- スチノリ:スチレンボード用の接着剤。発泡素材を溶かさない。定番の1本
- スプレーのり:紙を面で貼るとき用。55は仮止め、77はしっかり接着
- ピンセット:小さなパーツや添景を扱うとき。指では届かない場所に効く
黒刃は切れ味が命で、5〜10回切ったら惜しまず折るのがきれいに切るコツです。刃をケチって切れない刃で押し切ると、断面が潰れて角が汚くなります。
道具一式は最小構成なら3,000〜5,000円ほどで揃います。実務だと、この「まっすぐ正確に切る」という所作は図面を正確に読む感覚とつながっていて、模型を何個か作った学生は現場に出てからも寸法の勘が良い、という印象があります。道具は消耗品と割り切って、切れ味だけはケチらないのがおすすめです。
建築模型の作り方の手順
建築模型は、次の6ステップで進めると迷いません。焦って組み立てから入らず、図面の準備と縮尺決めを先にやるのが失敗しないコツです。
- 図面を用意する:平面図・立面図・断面図を揃える。これが模型の設計図になる
- 縮尺を決める:作るサイズと目的に合わせて1/50・1/100・1/200などを選ぶ
- 図面を縮尺に合わせて印刷し、材料に写す:スチレンボードに図面を貼るか、寸法を写して切り出し線を引く
- パーツを切り出す:壁・床・屋根を1枚ずつ正確にカット。同じ寸法の面は重ねて一気に切ると揃う
- 面取りして接着する:接合部の紙を残す「面取り」をしてから、スチノリで箱状に組む
- 添景で仕上げる:植栽・家具・人・車などを加えてスケール感と生活感を出す
縮尺は「1/100が万能」と覚えておくと迷いません。住宅なら手のひらより一回り大きいくらいに収まり、細かすぎず粗すぎずでバランスが良いからです。全体を大きく見せたいなら1/50、敷地や配置を見せたいなら1/200、と目的で振り分けます。縮尺の考え方はこちらが詳しいです。

「面取り」は初心者がつまずきやすいので補足します。3mmのスチレンボードをただ直角に突き合わせると、断面の発泡部分が見えて角が汚くなります。そこで接合する側の発泡部分だけをカッターで削ぎ、片面の紙だけ残してから貼ると、紙同士がぴったり合って角がシャープに決まります。地域によっては「紙残し」とも呼びます。ここを覚えるだけで、模型の見栄えが一段変わります。
建築模型をきれいに仕上げるコツ
同じ図面から作っても、仕上がりに差が出るのは切り方と接着です。講評でよく指摘される部分でもあるので、次の5点を意識すると一気に見栄えが良くなります。
- カッターは立てず、水平から15〜30度に寝かせて、力を入れず何回も刃を通して切る
- 直線は必ず金尺、直角は必ずスコヤを当てる。フリーハンドで切らない
- 接着はスチノリを薄く付け、少し乾かして粘りが出てから貼るとズレず糸を引かない
- 縮尺を全パーツで統一する。添景の人や家具のサイズがズレると一気に安っぽく見える
- スプレーのりは段ボール箱の中や屋外で吹く。部屋がベタベタになる事故を防ぐ
とくに効くのは「刃をこまめに折る」ことです。切れ味の落ちた刃で押し切るのが、角が潰れる最大の原因なので、もったいなくても折ってください。
正直なところ、きれいな模型は器用さより「手順を守っているか」で決まります。まっすぐ測って、鋭い刃で、薄く貼る。この3つを外さなければ、不器用でも十分見られる模型になります。1個目で下手なのは全員同じなので、数をこなす前提で気楽に取り組むのが上達の近道です。
建築の現場でも役立つ模型の使い方
ここは他の解説記事があまり触れない部分ですが、模型は学生の課題だけの道具ではありません。施工管理や設計の実務でも、立体で伝える場面は意外と多いです。
- 施主説明:図面が読めない施主に、完成イメージや窓からの見え方を模型で伝える。工務店の営業が住宅模型を作るのはこのため
- 納まりの確認:階段・吹き抜け・複雑な屋根など、図面だけでは把握しづらい箇所を部分模型で立体確認する
- 合意形成:施主・設計・施工で「ここに壁」「窓はこの高さ」と模型を囲んで話すと、認識のズレが減る
- 新人教育:1/100で建物を一度作ると、図面のスケール感が体に入る。図面上の寸法が現物でどれくらいかを掴める
「CADの3Dビューがあれば模型はいらないのでは」と思うかもしれませんが、現場目線で言えば両者は役割が違います。3Dは一人で画面を回して確認するのに強く、模型は複数人で同時に囲んで指をさしながら話すのに強いです。打ち合わせのテーブルに実物があると、施主も職人も自然と手が伸びて意見が出やすくなります。
新人監督で模型を触ったことがない人ほど、一度スチレンボードで簡単な箱を作ってみることをおすすめします。図面の1/100という数字が、手のひらの上でどれくらいの大きさになるのかを一度体感しておくと、現場で図面を見たときの寸法の想像力がまるで変わってきます。
この手の知識が身についているなら、それは会社の外でも通用する経験です。年収・拘束時間・職種のどれを変えたいかで選ぶ形にまとめています。

建築模型づくりでよくある質問
最後に、初めて模型を作る人からよく出る疑問をまとめておきます。
- Q. 予算はいくらかかる?:道具の最小構成で3,000〜5,000円、材料は模型1個あたり数百〜2,000円程度。最初の初期投資さえ済めば、2個目以降は材料費だけです
- Q. 不器用でも作れる?:作れます。仕上がりは器用さより手順で決まるので、まっすぐ測る・鋭い刃・薄く貼るを守れば大丈夫です
- Q. どのくらい時間がかかる?:1/100の住宅スタディなら数時間、提出模型で丁寧に作ると1〜2日が目安。徹夜前提にせず、切り出しと組み立てで日を分けると楽です
- Q. 添景の人や車はどうする?:市販の模型用フィギュアやカスミソウを使うのが手軽。自作するなら縮尺だけは全体と必ず合わせます
- Q. スタイロとスチレンボード、どっちを使う?:形をざっくり検討するスタディはスタイロ、人に見せる提出模型は面がきれいなスチレンボード、と使い分けます
建築模型は、最初の1個さえ完成させれば一気にコツが掴めます。材料や道具を完璧に揃えることより、まずスチレンボード1枚で小さな箱を作ってみることから始めてみてください。図面を立体で捉える感覚は、設計でも施工でも一生使える財産になります。
