WELL認証を施主が言い出したら現場は何をすればいいのか

「WELL認証を取る」と施主から聞いた瞬間、自分の仕事がどれだけ増えるのか見当がつかない現場代理人は多いはずです。結論から言うと、現場を直接縛るのは材料の前提条件3つ(アスベスト・鉛・水銀の制限/改修解体時のアスベスト・鉛・PCBの措置/屋外構造物の扱い)だけ。竣工検査とは別に、入居50%を超えてから認定機関の現地検証が1〜3日入ります。

  • WELL認証を取ると言われたが、俺の仕事は何が増えるんだ
  • LEEDと何が違うんだ。両方取るのか
  • 結局、現場で何を測られるんだ
  • 竣工検査とは別に検査が来るのか
  • 材料の縛りがあるらしいが、今から仕様を変えられるのか
  • アスベストの調査、石綿則でやっているやつとは別なのか
  • 誰がいつ測りに来る。段取りは誰が組むんだ
  • 費用は誰が出す。工事費に入っているのか
  • 点数は何点取ればいいんだ。必須項目と加点項目の違いが分からない
  • 11分野110項目と書いてある記事と10コンセプトと書いてある記事がある。どっちだ
  • 上司に一言でどう説明すればいいんだ

上記の様な悩みを解決します。

WELL認証は、建物の省エネ性能ではなく、そこで働く人の健康と快適性を評価する制度です。施主やテナントが取ると決めるもので、現場は「決まった後から」巻き込まれます。今回は制度の定義・評価項目・レベル・手順・費用といった基本を押さえた上で、施工者の側から見た論点を軸に整理しました。

検索して出てくるWELLの解説は、オフィス家具メーカー・不動産・設計事務所・認証コンサルのものがほとんどで、全員が「オフィスを良くする発注側」の視点で書いています。そのため、施工者が現場で何を縛られるのか、つまり材料の前提条件・改修解体時の措置・現地検証の時期といった話がまるごと抜け落ちています。この記事はそこを埋めることに全部使います。

それではいってみましょう!

目次

WELL認証は建物ではなく、そこにいる人を測る|LEEDとの線引き

WELL認証とは、結論「建物そのものの環境性能ではなく、その中で過ごす人の健康と快適性を評価する認証制度」のことです。運営しているのは米国のIWBI(International WELL Building Institute)で、空気・水・光・音・温熱といった、人が実際に浴びている環境を測って評価します。

同じ建築の認証でも、LEEDが測っているのは建物側の環境性能です。エネルギーや水資源、資材といった建物の作りを評価するLEEDに対し、WELLは評価の視点が人の側にあります。測っている対象が違うので、両方を取得する建物も出てきます。LEEDの種類やレベル、費用の考え方はこちらで整理しています。LEED認証とは?種類、レベル、費用、メリット、日本の事例など

現行版のWELL v2は、10のコンセプトで構成されています。Air(空気)、Water(水)、Nourishment(食物)、Light(光)、Movement(運動)、Thermal Comfort(温熱快適性)、Sound(音)、Materials(材料)、Mind(こころ)、Community(コミュニティ)の10個です。この10コンセプトで最大100点、これに加えてイノベーションで最大10点、合計110点満点という構成になっています(出典:GBJ「WELL v2 認証システム」https://www.gbj.or.jp/well/v2ratingsysytems/ 、IWBI「WELL Certification overview」2026年9月19日確認)。

「11分野110項目」という説明は誤り

日本語の解説記事には「11分野110項目」と書いているものがありますが、この表現は公表資料のどこにも出てきません。110という数字はv2の満点であって、項目の数ではないからです。旧版のWELL v1は7つのコンセプトに計100項目、これに最大5つのイノベーション項目という構成でした(出典:GBJ「WELL v1 評価項目」https://www.gbj.or.jp/well/well_v1_feature/ )。v1の「100項目」とv2の「110点」が混ざり、さらに分野数が11に化けたもの、と考えると辻褄が合います。上司や職長に説明するときは、項目数を数え上げるより「省エネの認証ではなく、空気・水・光・音・温熱を人の側で測る認証」と言い切るほうが早いです。

環境性能側の認証との位置づけを整理しておくと、設計との会話が噛み合いやすくなります。サスティナブル建築とは?3要素、ZEB・CASBEEなど

施主がこれを取ると言い出す理由も、この仕組みから読めます。WELLは書類審査だけで終わらず、認定機関が現地で空気や水を実測して確かめる制度なので(IWBI「What is performance verification?」2026年9月19日確認)、働く人の環境について「良くしました」ではなく「測って基準を満たしました」と第三者の名前で言える状態が手に入ります。取得したプロジェクトは一般財団法人グリーンビルディングジャパンが公開しているリストに載り、日本では2026年6月16日時点で94件が並んでいます(同リスト・2026年9月19日確認)。テナントや入居者に向けて示せる材料になる、というのが発注側の動機です。ここから先の投資判断は発注者と設計の領分なので、この記事では深追いしません。

僕の整理では、この制度で現場が構えるべきなのは「取るか取らないか」ではなく「取ると決まった後に何が降ってくるか」だけです。評価の枠組みそのものは発注者と設計の領分で、施工者に落ちてくるのは材料と、改修解体の措置と、竣工後の検証という3点に絞られます。

現場を直接縛るのは材料の前提条件3つ|アスベスト・鉛・水銀

現場を直接縛るのは、結論「Materialsコンセプトの前提条件(precondition)であって、点数を稼ぐ加点項目ではない」という点です。加点項目はどれを狙うかを発注者と設計が選べますが、前提条件は選べません。全プロジェクトが満たす前提なので、施工者が最初に読むのはX01からX03の3つになります。

そのうちX01(Fundamental Material Precautions)は、3つのPartに分かれています。

Part 1はアスベストの制限です。対象となる建材のアスベスト含有が重量比1%未満であることを求めています(出典:IWBI「WELL v2 X01」https://v2.wellcertified.com/en/v2.1/materials/ 2026年9月19日確認)。原文が対象として挙げているのは次の建材です。

  • 保温・断熱の系統材(thermal system insulation)
  • 表面仕上げ材(surfacing material)
  • ウォールボード、ミルボード
  • 弾性床仕上げ材、屋根および外壁のシングル材(金属外装を含む)
  • 建築用マスチック

Part 2は水銀の制限です。誘導灯、サーモスタット、スイッチ、電気リレーは水銀フリーであることを求め、ランプについては種類ごとに水銀量の上限を定めています(出典:同上)。

ランプの種類 水銀量の上限
T-8 4ft 3.5 mg
T-8 8ft 10 mg
T-5 直管 2.5 mg
T-5 環形 9 mg
T-8 U字形 6 mg
コンパクト形蛍光ランプ 3.5 mg
高圧ナトリウムランプ 400W以下 10 mg
高圧ナトリウムランプ 400W超 32 mg

Part 3は鉛の制限です。飲料水系統と給水器具については、米国の安全飲料水法(SDWA)が定める意味で鉛フリーであり、かつANSI認定の第三者認証機関による認証を受けていることを求めています。あわせて、屋内用の塗料と表面コーティングは総鉛90 ppm未満と定められています(出典:同上)。

意外に思われるのがVOCの扱いです。VOC低減はv1では前提条件でしたが、v2ではMaterialsの加点項目X11・X12に移っています(出典:IWBI「Understand changes from v1 to v2 pilot」)。VOC対策が消えたわけではなく、「落とせない前提条件」から「点数を取りに行く項目」へ位置づけが変わった、ということです。この線引きを持って仕様書と承認図を読むと、どこが交渉の余地がない要求で、どこが設計の選択なのかが分かれます。

個人的には、ここがWELLで一番誤解されている部分だと感じます。記事の多くは「評価項目」と一括りにして紹介しますが、施工者にとって前提条件と加点項目はまったく別物です。前提条件は材料承認の合否に直結し、加点項目は基本的に設計が選んだ結果として仕様に現れます。

改修と解体で効いてくるX02|石綿則の調査とは別建ての要求

改修や解体を含むプロジェクトでは、結論「X02が段取りを直接変える」ことになります。新築だけならX01の材料選定が中心ですが、既存建物に手を入れる工事では、着手前の調査と措置そのものが要求に入ってくるからです。

Part 1はアスベストです。認定されたリスクアセッサーまたはインスペクター技術者による現地調査を行い、Category IおよびCategory IIの非飛散性ACMを含めて、アスベストに由来する有害性の有無を判定することを求めています。参照先として名指しされているのは、米国連邦規則の40 CFR Part 61, Subpart M, §61.145(解体および改修に関する基準)です(出典:IWBI「WELL v2 X02」https://v2.wellcertified.com/en/v2.1/materials/ 2026年9月19日確認)。

Part 2は鉛で、40 CFR Part 745, Subpart D, §745.65 の定義を用いた現地調査を求めています(出典:同上)。

Part 3はPCBで、米国環境保護庁(EPA)の「Steps to Safe PCB Abatement Activities」に沿った措置を求めています(出典:同上)。原文が挙げている構成は次の4つです。

  • 性状の把握とサンプリング
  • 作業者の保護措置
  • 安全な保管と廃棄
  • 記録の保持

4つ目の記録の保持が要求に含まれている点は、現場の段取りに直結します。撮って残す前提で工程を組んでおかないと、後から遡って作れない類の記録だからです。

あわせて、X03(Outdoor Structures)も前提条件です。CCA処理木材の扱い、人工芝の鉛、新規に使うプラスチック材の制限を扱っているので、外構が絡む計画では屋外側にも前提条件があることを頭に入れておきます。

そして施工者として一番押さえておきたいのが、X02が参照しているのが米国連邦規則とEPAのガイドラインだという点です。日本国内の工事であれば、石綿障害予防規則や大気汚染防止法に基づく義務は当然にかかります。X02はそれとは別建ての要求で、どちらかを満たせばもう一方が免除される関係ではありません。国内側の義務は国内法の枠組みで、WELLの要求はWELLの枠組みで、両方を並行して満たす計画にする必要があります。国内の石綿関係の実務はこちらにまとめています。石綿の特別教育とは?対象業務、5科目4.5時間、修了証、作業主任者との違いなど

僕の見立てでは、WELLで現場が事故りやすいのはここです。「アスベストの調査はいつもどおりやっている」で済ませると、参照している規則が違うまま進み、後から調査のやり直しになりかねません。改修・解体が含まれる案件では、着手前にX02の3つのPartを設計と認証側に確認しておくのが安全です。

測りに来るのは竣工後|入居50%を超えてから1〜3日

現地検証は、結論「工事が完了し、プロジェクトの入居率が50%以上になってから実施される」ものです。竣工検査と同時に行われるものではありません。例外として、Coreプロジェクトは入居前に試験を完了する扱いが認められています(出典:IWBI「What is performance verification?」2026年9月19日確認)。

現地検証は3つの要素で構成されています。

  • パフォーマンステスト(実測)
  • 現地での写真記録
  • 独立した第三者によるレビュー

実測を行うのはPerformance Testing Agentで、WELLのコンセプトのうちAir、Water、Light、Thermal Comfort、Soundにまたがる環境データを実地で収集します(出典:同上)。日本側の解説では、IWBIにより認定されたPTO(Performance Test Organization)の資格を有する第三者計測機関が、1〜3日以上かけて空気質・水質・光・音・温熱感の指標を測定し、あわせて写真撮影によるスポットチェックを行う、と説明されています(出典:GBJ「WELLとは」)。施工者が自分で測るのではなく、第三者が入ってくる工程だという点がポイントです。

測られる値のイメージとしては、PM2.5が15 μg/m3未満、ホルムアルデヒドが27 ppb未満といった水準が示されています(出典:IWBI「WELL v2」Air コンセプト A01 Fundamental Air Quality・2026年9月19日確認)。完成した空間で実際にこの数字が出るかを見に来る、という性格の検証です。

不適合だった場合の扱いについては、公表資料で確認できた範囲では、再試験の回数や追加費用の条件までは示されていません。ここは推測で埋めずに、契約前にプロジェクト側と計測機関に条件を確認しておく項目として扱うのが現実的です。

現場目線で言えば、この工程は工期表の外側に1本ぶら下がっている、と捉えておくと事故が減ります。引き渡してしばらく経ち、テナントが半分入ってから第三者が測りに来るわけで、そのとき現場事務所は解散しています。誰が立ち会い、指摘が出たら誰が直すのかを、引き渡し条件の打合せで先に握っておく話になります。

点数の仕組み|前提条件は0点、加点だけが40〜80点をつくる

点数の仕組みは、結論「前提条件は必須だが1点も入らず、点数は加点項目だけでつくる」という構造です。IWBIも前提条件について、達成しても点数は付与されない必須要件だと明記しています(出典:IWBI「WELL Certification overview」2026年9月19日確認)。日本側の解説でも、すべての必須項目である24 Feature、48 Partを満たした上で加点項目を積む、と説明されています(出典:GBJ「WELLとは」)。

認証レベルと必要点数の関係は次のとおりです(出典:IWBI「WELL Certification overview」2026年9月19日確認)。

認証レベル 必要点数 コンセプトごとの最低点
WELL Bronze 40点 指定なし
WELL Silver 50点 各コンセプト1点以上
WELL Gold 60点 各コンセプト2点以上
WELL Platinum 80点 各コンセプト3点以上

SilverからPlatinumにはコンセプトごとの最低点が付く、という条件が効いてきます。総得点さえ足りればよいのではなく、10コンセプトに薄く広く点を配る必要がある構造です。実務で押さえておきたいのは、前提条件を1つ落とすと点数の話に進む前に認証そのものが成立しないという点で、材料の前提条件が現場にとって重いのはそのためです。どの加点を狙うかは発注者と設計の判断なので、施工者はその選択の結果が仕様に現れるのを確認する側に回ります。

費用は3本立て|現地検証費は見積りの外にある

費用は、結論「登録料・認証料・現地検証費の3本立てで、3本目だけIWBIの料金の外にある」構造です(出典:IWBI「What does WELL Certification cost?」2026年9月19日確認)。

  • Enrollment fee(登録料):一律 $3,000
  • Program fee(認証料):$0.16/sq ft、最低 $8,000、上限 $98,000。WELL Coreは $0.08/sq ft
  • Performance testing fee(現地検証費):認定を受けたWELL Performance Testing Organizationへ直接支払い、認証料とは別建て

3本目の現地検証費は、プロジェクトの規模や試験の範囲などによって変わるため、計測機関に見積りを取るようIWBIが案内しています。つまり、公表された金額が存在しません。ここが「工事費に入っているのか」という疑問に対する答えの核心で、認証料まではIWBIの料金表で読めますが、現地検証費は誰がどの契約で負担するのかを個別に決めるしかない部分です。

正直なところ、この3本目を最初に確認しておかないと、竣工後に費用の押し付け合いが起きます。金額が公表されていないということは、見積書のどこにも自動的には現れないということなので、施工契約と認証コンサル契約のどちらに入っているのかを着工前に文書で確認しておくのが安全です。

申請の単位と有効期間|WELL CoreとWELL Certification、3年ごとの再認証

申請の単位は、結論「2種類のうちどちらかを選ぶ」形です。自社で使うスペースを対象とするWELL Certificationと、ベースビルを対象とするWELL Core Certificationの2つが用意されています。WELL Coreについては、プロジェクト面積の60%以上が1つ以上のテナントによって占有されているか、または共用部として機能していることが条件とされています(出典:IWBI「Define your WELL project boundary」2026年9月19日確認)。テナントビルで誰が申請するのかという疑問は、この区分で切り分けると整理しやすくなります。

有効期間は3年間で、継続には再認証が必要です(出典:GBJ「WELLとは」)。引き渡した後の運用フェーズの話なので、施工者の直接の守備範囲からは外れますが、建物側が3年ごとに実績を問われる制度だという前提は知っておいて損はありません。

日本での取得実績は、GBJの集計で94件です(2026年6月16日現在。出典:GBJ「日本のWELL認証プロジェクト リスト」2026年9月19日確認)。全国の建物数から見れば珍しい部類で、社内に経験者がいないのが普通、という規模感です。

社内にWELL AP保有者がいない場合の扱いについては、WELL APはWELL認証の評価員(レビュアー)とは異なり、認証取得のための評価はできない、と説明されています(出典:GBJ)。評価する側の資格ではない、という点だけ押さえておき、プロジェクトにどういう体制が必要かは個別の契約で確認する、という整理が公表資料で確認できる範囲です。

WELL認証と現場の関わり方まとめ

  • WELL認証:建物の環境性能ではなく人の健康と快適性を測る制度。v2は10コンセプトで100点、イノベーション10点を加えた110点満点
  • 「11分野110項目」は誤り。110はv2の満点であって項目数ではなく、v1は7コンセプト計100項目
  • 現場を直接縛るのは材料の前提条件X01。アスベスト1%未満、屋内塗料の総鉛90 ppm未満、水銀ランプのmg上限が具体値
  • VOCはv2では前提条件ではなく加点項目X11・X12。落とせない要求と設計の選択を混ぜない
  • 改修・解体ではX02。40 CFRとEPAガイドラインを参照する要求で、日本の石綿則や大防法の義務とは別建てに両方かかる
  • 現地検証は竣工後、入居50%以上になってから。第三者のPTOが1〜3日、空気・水・光・温熱・音を実測する
  • 前提条件は0点。Bronze 40点からPlatinum 80点まで、Silverからはコンセプトごとの最低点が付く
  • 費用は登録料・認証料・現地検証費の3本立て。現地検証費はIWBIの料金の外にあり金額が公表されていない
  • 申請はWELL CertificationとWELL Coreの2種類、有効期間3年。日本は94件(2026年6月16日現在)
  • 取ると決めるのは施主やテナント側で、狙いは働く人の環境を第三者の実測で証明すること。施工者はその決定の後に、材料と記録で関わる

以上がWELL認証と現場の関わり方のまとめです。

施主からWELLの話が出たら、確認する順番は3つです。まず改修・解体が含まれるか(含まれるならX02で段取りが変わる)、次に材料の前提条件がどこまで仕様書と承認図に落ちているか、最後に現地検証の時期と費用負担を誰が持つか。この3点を着工前に潰しておけば、現場側でやることは通常の材料承認と記録の延長線に収まります。

WELL認証と並んでよく名前が挙がるLEED認証は、結局何を測っているのかが違います。LEED認証とは?種類、レベル、費用、メリット、日本の事例などで全体像を掴んでおくと、施主や設計との打合せで話が早くなります。改修・解体が絡む案件なら、国内側の義務として石綿の特別教育とは?対象業務、5科目4.5時間、修了証、作業主任者との違いなども併せて確認しておいてください。

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