- 施主が「グリーンビルディングで」と言い出したが、何をすればいいんだ
- そもそも法律用語なのか、ただの言い回しなのか
- CASBEE、BELS、ZEB、LEED、WELL…多すぎてどれがどれか分からない
- 設計の話でしょ?現場監督の自分に何が降ってくるの
- 2025年4月から省エネ基準が義務化されたと聞いたが、認証とは別の話なのか
- うちみたいな中小の現場には関係ない話なのか
- 施工計画書に何か書く必要があるのか
- 施主に聞かれたときに、何と答えれば恥をかかないんだ
- 自分の現場が該当するかどうか、どこで判断すればいい
- 結局、明日から何が変わるのか
上記の様な悩みを解決します。
グリーンビルディングは、環境に配慮した建物をまとめて呼ぶときの総称で、日本の法令が定義を置いている用語ではありません。ところが2025年4月に原則すべての新築へ省エネ基準への適合が義務付けられたことで、「環境に配慮した建物」の下限は法律の側へ移りました。今回は言葉の位置づけ・義務化された下限・認証制度の振り分けといった基本を押さえた上で、ESGやサステナビリティを扱うメディアやベンダーの記事では丸ごと抜け落ちている「施工中に設計が変わったとき、検査済証のために何が要るのか」まで、施工管理の目線で整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、制度改正の話が苦手な方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
「グリーンビルディング」に、日本の法令の定義は見当たらない
グリーンビルディングとは、結論「環境に配慮した建物をまとめて指す総称語であって、日本の法令や公的機関がこの語を定義した記述は見当たらない」ものです。法律用語なのか、ただの言い回しなのか。ここがはっきりしないまま会話が進むので、施主から出てきたときは「何を指しているのか」を聞き返すところから始まります。
実際に公的機関のページを当たった範囲を書いておきます。以下はいずれも2026年9月20日に全文を取得して検索した結果で、定義らしい定義には行き当たりませんでした。
- 環境省「グリーンビルナビ」:『グリーンビルディング普及促進に向けた改修効果モデル事業』という事業名として登場するだけで、語の定義は置かれていない
- 環境省「ZEB PORTAL」:この語の出現がゼロ
- 国土交通省のページ:海外の研究を紹介する文章の中で、用語として使われているだけ
- 国土交通省の別ページ:「社会・経済に求められる「グリーンビルディング」が評価される不動産金融市場の…」という形で、DBJ Green Building認証を説明する文脈に出てくるだけ
ここで但し書きが要ります。国土交通省のサイトには、グリーンビルディングの定義が載ったPDFが実在するからです。第1回グリーンインフラの市場における経済価値研究会(2023年12月14日)の資料5【話題提供】「グリーンインフラとグリーンビルデングについて」がそれで、作成者は株式会社ザイマックス不動産総合研究所の大西順一郎氏です。引かれているのは米国環境保護庁(EPA)の定義で、原文は「Green building is the practice of creating structures and using processes that are environmentally responsible and resource-efficient throughout a building’s life-cycle from siting to design, construction, operation, maintenance, renovation and deconstruction. (U.S. Environmental Protection Agency)」です。訳すと、立地の選定から設計・施工・運用・維持管理・改修・解体に至る建物のライフサイクル全体を通じて、環境に責任を持ち資源効率の高い構造物をつくり、そうしたプロセスを用いる実践、という意味になります(出典:国土交通省サイト掲載資料 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/content/001717242.pdf 2026年9月20日確認。なお原資料のタイトルは「グリーンビルデング」と表記されています)。
国交省のサイトに載ってはいるものの、民間の研究所が研究会で提供した話題の中で引用された米国の定義である、というのが正確な言い方になります。「どこにも定義が無い」と言い切ると、このPDFを見つけた相手に一発でひっくり返されます。
言葉が揺れているのは、この総称語だけの事情でもありません。環境省はZEBについても「ZEB の定義は国内外で様々な議論や検討がされています」と書いています(出典:環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html 2026年9月20日確認)。環境配慮の建物という括りを俯瞰したい場合は、サスティナブル建築の3要素と評価制度の整理が近い話題を扱っています。
下限のほうは法律に移った|2025年4月からの省エネ基準適合義務
「2025年4月から省エネ基準が義務化されたと聞いたが、認証とは別の話なのか」。この疑問が、いちばん先に片づけるべきところです。結論から言うと別の話で、しかも認証よりこちらのほうが現場に効きます。
国土交通省が公開している改正の基本情報ページには、施行時期が表で整理されています。そこに「公布日から3年以内 ・原則全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付け ・構造規制の合理化 ・建築基準法に基づくチェック対象の見直し 等 [令和7年4月1日施行]」と書かれています(出典:国土交通省「R4年建築基準法・建築物省エネ法等改正 新旧対照条文等」最終更新日 令和7年4月1日 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kihonjouhou.html 2026年9月20日確認)。令和7年4月1日は2025年4月1日です。根拠になっているのは、同じページが挙げている「令和4年6月17日に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」」です(出典:同上)。
時間の流れで並べると、こうなります。
- 令和4年6月17日:「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布
- 令和6年4月1日:公布日から2年以内の施行分として、建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示、再エネ利用促進区域制度、防火規制の合理化などが施行済み
- 令和7年4月1日:公布日から3年以内の施行分として、原則全ての新築住宅・非住宅への省エネ基準適合義務、構造規制の合理化、建築基準法に基づくチェック対象の見直しなどが施行
- 床面積の合計が10㎡以下の建築は適用除外
上3つの出典はいずれも前掲の国土交通省ページ(2026年9月20日確認)です。4つ目については、建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律施行令(平成28年政令第8号)第3条が「法第十条第一項の政令で定める規模は、建築物の建築に係る部分の床面積…の合計が十平方メートルであることとする。」と定めています(出典:同施行令第3条・e-Gov法令データ 2026年9月20日確認)。法第10条第1項が政令で定める規模以下のものを除く建て付けなので、床面積の合計が10㎡以下の建築はこの義務から外れる、という読み方になります。
認証を取るかどうかと、適合しているかどうかは別の問題
まず切り分けたいのは、認証と適合が発生する条件がまったく違う点です。認証は、施主なり発注者なりが「取る」と決めた案件にだけ発生します。誰も決めなければ発生しません。対して適合義務のほうは、誰が何を言わなくても原則すべての新築にかかります。掲げるかどうかを選べるのが認証で、選べないのが適合です。
だから施主の口から「グリーンビルディングで」と出たとき、最初に確かめるのは「認証の話ですか、それとも法定の適合の話ですか」の一点になります。前者なら制度名と取得目標が決まっているはずで、後者なら設計図書と省エネ計算の中に答えがあります。この切り分けをせずに認証制度を調べ始めると、調べても調べても現場の段取りに繋がらない、という時間の使い方になりがちです。
もう1つ揃えておきたいのが時期の感覚です。改正法の公布が令和4年6月17日で、適合義務の施行が令和7年4月1日(出典:前掲の国土交通省ページ・2026年9月20日確認)。公布から施行まで3年近くあったということは、設計事務所も確認検査機関もその間に準備を進めてきたということでもあります。現場に情報が降りてくるのが最後になりやすいのは、この時間差のせいです。着工時点の設計図書はすでに義務化後の前提で組まれているのに、現場だけが「今年から何か変わったらしい」という粒度で受け取っている。そういう状態が普通に起こりえます。
「自分の現場が該当するかどうか、どこで判断すればいい」という疑問への答えも、ここから出ます。認証の有無は契約書と設計図書の特記仕様を見れば分かりますし、適合のほうは新築かどうかと規模の2点です。現場側で新しく調べ直す類の話ではありません。
「原則全ての新築」の「新築」を落として読まない
この一文では、よく起きる読み違いが2つあります。1つは「すべての建築物が対象になった」と読んでしまうことです。原文が言っているのは新築の住宅・非住宅で、既存建物がそのまま義務の対象になるとは書かれていません。もう1つは「大きい現場の話だろう」と読んでしまうことです。原文にあるのは規模の線ではなく「原則全ての新築」で、明示的に外れる規模として置かれているのは前述の10㎡以下だけでした(出典:前掲の国土交通省ページおよび同施行令第3条・2026年9月20日確認)。中小規模の新築だから関係ない、という切り分けにはなっていません。
条文や告示の側には「原則」と書かれた以上の例外の有無が書かれていますが、それを現場が読み解く必要はありません。判断するのは設計と確認検査の側で、現場が知っておくべきなのは「新築なら原則かかる」という骨だけです。
表示の制度は1年早く動いていた
もう1つ押さえておきたいのが、1年早い令和6年4月1日に施行済みの「建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示」です(出典:前掲の国土交通省ページ・2026年9月20日確認)。適合義務は建てる側にかかり、表示のほうは売る側・貸す側にかかります。かかる相手が違うので、両者は別の制度として動いています。
同じ改正の中で、2年以内の施行分と3年以内の施行分に分けて並べられている点も読みどころです(出典:同上)。表示の制度を先に動かし、適合義務を後から効かせる順番になっているので、制度の名前だけを拾い読みすると前後関係が分からなくなります。
施主やテナントが環境の話をしてくるとき、売却や賃貸といった出口から逆算していることがあるのは、この表示の制度が先に動いているからだと見ることができます。建てる段階の適合義務を満たすだけでは終わらず、売る・貸す段階で性能を外に示す場面が制度として用意された、という順番です。この表示の仕組みと2025年4月の適合義務が何が違うのかについては、BELSの星の数と、義務化との線引きで整理しています。
僕の受け止めとしては、この義務化でいちばん変わったのは、環境性能が「意識の高い施主が追加で求めるもの」から「満たさないと検査が通らない前提条件」へ移ったことです。認証を取るかどうかは相変わらず任意ですが、下限のほうは選べません。設備や外皮の仕様が数年前より厳しく感じるとすれば、それは施主の趣味が変わったからではなく、適合を前提に組まれた設計図書と省エネ計算が現場に降りてきているから、という説明がつきます。そして明日から変わるのは、用語の知識ではなく、その計算の前提を崩さずに造り切る段取りのほうです。
設計を途中で変えたら、検査済証のために書面が要る
「設計の話でしょ?現場監督の自分に何が降ってくるのか」。この記事の答えはここです。結論「施工の途中で計画を変更したとき、検査済証の交付を受ける段で、その変更が軽微な変更に当たることを証する書面が要る」という一点になります。
建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律施行規則は、第13条に「軽微な変更に関する証明書の交付」という条を置いています。そこでは、検査済証の交付を受けようとする者が、その計画の変更が第5条の軽微な変更に該当していることを証する書面の交付を「所管行政庁又は登録建築物エネルギー消費性能判定機関に求めることができる」とされています(出典:建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律施行規則(平成28年国土交通省令第5号)第13条・e-Gov法令データ 2026年9月20日確認)。
語尾に注目してください。「求めることができる」であって、「提出しなければならない」ではありません。役所や判定機関の側から届くものでもありません。検査済証がほしい側が、自分で取りに行く書面です。誰かが段取りを組まなければ、組まれないまま竣工検査の日が来ます。現場監督にとって怖いのは義務の重さではなく、この「誰の仕事とも書いていない」という性質のほうです。
冒頭の疑問への答えも、結局ここに集約されます。設計の中身を決めるのは設計者ですが、施工中に計画がズレる瞬間を最初に見るのは現場です。ズレたことに気づいて、然るべき人へ渡す。降りてくる仕事はそこだけで、判断も証明も現場の外にあります。裏を返すと、現場が気づかずに流してしまえば、外にいる誰も気づけません。
この手続が特別な案件の話ではなくなったのも、前の章で見た義務化の結果です。原則すべての新築に適合が求められるようになったということは、省エネ計算を伴う案件が普通になったということでもあります(出典:前掲の国土交通省ページ・2026年9月20日確認)。認証を取らないごく普通の新築現場でも、施工中に計画が変われば同じ話が回ってくる、という理解でちょうどいいはずです。
軽微な変更とは何を指すのか
同じ規則の第5条は、軽微な変更を「建築物のエネルギー消費性能を向上させる変更その他の変更後も建築物エネルギー消費性能確保計画が建築物エネルギー消費性能基準に適合することが明らかな変更」と定めています(出典:同規則第5条・e-Gov法令データ 2026年9月20日確認)。条文が並べているのは2つで、性能を向上させる方向の変更と、変更後も基準への適合が明らかな変更です。裏を返せば、適合が明らかとは言えない変更は、この枠には入りません。
条文が「建築物のエネルギー消費性能を向上させる変更」をわざわざ先に挙げているところは、読み方として押さえておきたい部分です。性能を良くする方向の変更まで軽微な変更の枠に置いているということは、良くする方向であっても当初の計画からはズレる、という前提で条文が組まれているわけです。現場の感覚だと「性能が上がるなら黙って進めていいだろう」と考えがちですが、条文の作りはその逆を向いています。
僕の読み方では、現場が詰まりやすいのは判断の主体です。変更が軽微に当たるかどうかを決めるのは現場ではありませんし、証明する書面を出すのも現場ではありません。それなのに、変更が発生する場所は現場です。判断する人と、書面を出す人と、変更を起こす人がバラバラに置かれているので、間に立つ誰かが段取りを引かないと話が止まります。
止まり方には型があります。材料が入らないので同等品で進めたい、という相談が専門工事業者から上がってくる。現場としては納まりと性能が同等なら問題ないと判断する。ところがその材料が省エネ計算の前提に入っていた場合、判断すべきは納まりではなく計算のほうです。現場の常識で処理できる変更と、計算の前提に触る変更が、見た目では区別しにくいところに難しさがあります。
だから現場として最初にほしいのは、制度の知識ではなく一覧です。省エネ計算の前提として扱われている仕様が、外皮と設備のどこまでなのか。それが手元にあれば上がってきた相談をその場で仕分けられますし、無ければ変更のたびに全件を設計へ投げるしかありません。投げる件数が増えるほど回答は遅くなるので、着工前にこの一覧をもらえるかどうかで、後半の段取りの軽さはかなり変わります。
書面を求める先が2つ並んでいる
第13条が挙げている交付先は、所管行政庁と登録建築物エネルギー消費性能判定機関の2つです(出典:前掲の同規則第13条・2026年9月20日確認)。条文が2つを並べている以上、どちらに求めるかは案件ごとに決まります。現場が好きなほうを選べる類の話ではないので、着工前に「この案件はどちらか」を設計か申請の担当者に確認しておくのが安全です。
窓口が変われば、必要な様式も、受け付けから交付までの日数も変わり得ます。工程表に日数を載せる段になって初めて相手先を調べ始めると、その調べる時間ごと工期を食うことになります。
検査済証の日から逆算して工程に載せる
変更が出るたびに設計へ投げる経路を作っておくと、この構造はかなり楽になります。逆に、竣工間際にまとめて棚卸しをすると、書面を求める時間も、指摘が出たときに手を戻す時間も残っていません。取りに行く書面である以上、日数は自分たちの段取りの中に確保しておくしかない、ということです。
検査済証は工事が完了したことを確認した証しとして扱われる書類なので、ここで止まれば引き渡しに向けた段取りが丸ごと滞ります。書面の要否が分かるのが遅いほど、取り返せる時間は短くなる。この非対称さが、変更を都度処理すべき理由になります。
その前提で、着工前に決めておきたいのは次のような点になります。
- 省エネ計算の前提になっている仕様(外皮・設備)のうち、どれが変わると計画に影響するのかを、設計と設備の担当者の間で先に線引きしておく
- 変更が出たときに、軽微な変更に当たるかを誰が判断するのかを決めておく
- 証明する書面を、所管行政庁と登録建築物エネルギー消費性能判定機関のどちらに求めるのかを確認しておく
- 検査済証の予定日から逆算して、書面が必要になった場合の日数を工程表の上に載せておく
- 変更の経緯(いつ、何を、なぜ変えたか)を、後から遡れる形で残しておく
記録の残し方も後から効いてきます。変更が起きた日付、変更前後の仕様、誰が判断したか。この3点が揃っていない記録は、後から説明資料に組み直せません。写真と議事録、承認図の版を揃えて残しておくというだけの話ですが、変更が10件20件と積み上がってから遡って作るのは現実的ではありません。
「施工計画書に何か書く必要があるのか」という疑問も、ここから逆算すると答えが出ます。制度の名前や理念を書き写すことに意味はなく、書く価値があるのは、変更が出たときの連絡経路と判断者、そして記録の残し方です。下請や専門工事業者への周知も同じで、伝えるべきは制度の説明ではなく「材料や機器を替えたいときは、着手前に必ず現場事務所を通す」という一行で足ります。制度の名前を出しても現場は動きませんが、この一行なら朝礼でも新規入場者教育でも通ります。省エネ計算の前提に触る材料かどうかを判断するのは現場ではない、という前提に立てば、周知すべき内容はここまで削れます。
認証の側には、施工段階の公表基準が見当たらない
では認証や表示の側はどうか。CASBEEやBELSといった制度の公開ページを当たった範囲では、施工段階で現場が何を記録し、何を提出するのかを定めた公表基準は見当たりませんでした(2026年9月20日時点で各制度の公開ページを確認した範囲)。施工中の手続として条文の形で読めるものは、いまのところ省エネ法側のこの軽微変更の証明書です。
認証を取る案件では、申請側が独自に施工中の提出物を求めてくることはあり得ますが、それは制度が一律に定めた基準ではなく、そのプロジェクトの取り決めとして降りてきます。どちらなのかを最初に確かめておくと、根拠を聞いても誰も答えられない書類作りを避けられます。公表基準が見当たらないということは、施工段階について現場が自力で予習できる材料が制度側にはほとんど無い、ということでもあります。この章の話を、認証を取るか取らないかとは切り離して、新築の現場全部の話として構えておくほうが実務には合います。なお、確認申請そのものの流れや必要書類まで押さえ直したい場合は、建築確認の流れと必要書類が詳しいです。
認証は、その上に乗る任意の物差し|どれが何を測るのか
CASBEE、BELS、ZEB、LEED、WELL。名前が多すぎてどれがどれか分からない、という声の多い領域ですが、下限が法律に移ったあとで見ると整理は簡単です。結論「法律が下限を決めている以上、認証は下限より上を測って外に示すための任意の物差し」になります。
国内制度の代表であるCASBEEは、「2001年4月に国土交通省住宅局の支援のもと産官学共同プロジェクトとして、建築物の総合的環境評価研究委員会を設立し、以降継続的に開発とメンテナンスを行っている」と説明されています。同じページは、CASBEEを「建築物の環境性能で評価し格付けする手法である。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステムである。」としています(出典:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター https://www.ibecs.or.jp/CASBEE/CASBEE_outline/about_cas.html 2026年9月20日確認)。
任意と書きましたが、現場に近いところで例外的に効いてくるのもCASBEEです。運営側は「現在、一部の地方自治体では、一定規模以上の建築物を建てる際に、環境計画書の届出を義務付けており、その際にCASBEEによる評価書の添付が必要となります」と説明しています(出典:IBECs「自治体によるCASBEEの活用」https://www.ibecs.or.jp/CASBEE/CASBEE_outline/local_cas.html 2026年9月20日確認)。制度そのものは任意でも、建てる場所によっては届出の添付書類として回ってくる、ということです。対象かどうかは自治体側の条例の話なので、建設地の届出制度を着工前に確認するのが早道になります。
海外発のものでは、USGBCが自らLEEDを「LEED is the most widely recognized green building rating system in the world.」(訳:LEEDは世界で最も広く認知されているグリーンビルディング評価システムである)としています(出典:USGBC「LEED rating system」https://www.usgbc.org/leed 2026年9月20日確認)。
この記事は言葉の振り分けまでが守備範囲です。それぞれの中身は個別の記事に置いてあります。
- CASBEE:建築物の環境性能を評価して格付けする国産の手法。ランクや評価方法、自治体の届出制度はCASBEEのランクと自治体の届出制度が担当しています
- BELS:星の数やBEI、2025年4月の適合義務との違いはBELSの星の数と、義務化との線引きにまとめています
- ZEB:建物のエネルギー消費量を正味でどこまで減らせたかを測る制度。段階の区分と中身、ZEHとの違いや補助金はZEBの4段階とZEHとの違いに譲ります
- LEED:米国発の評価システム。種類やレベル、費用、日本の事例はLEED認証の種類とレベル、費用の目安で整理しています
- WELL:施工者の側が何を縛られるのかはWELL認証で現場が実際に動く範囲が詳しいです
個人的には、施主から名前が出たときの聞き返し方は1つで足ります。「どれを、誰に見せるために取るのですか」。ここが決まっていれば現場が備える書類も逆算できますし、決まっていないなら、それはまだ方針表明であって仕様ではありません。
世界のほうでも、言葉は1つに決まっていない
発注者はESGの文脈で言っているのか、本当に建物の性能を求めているのか。ここを見分けたいときに効くのが、海外の資料でも語が1つに定まっていないという事実です。
World Green Building Councilのページが説明しているのは “sustainable built environment” という語で、原文は「A sustainable built environment protects and enhances people, places and the natural environment, and is critical to reducing greenhouse gas emissions and tackling the climate crisis.」です。訳は、持続可能な建築環境は人・場所・自然環境を保護し高めるものであり、温室効果ガスの排出削減と気候危機への対応に不可欠である、となります(出典:World Green Building Council「What is a Sustainable Built Environment?」https://worldgbc.org/what-is-a-sustainable-built-environment/ 2026年9月20日確認)。説明されているのは “sustainable built environment” であって “green building” ではありません。日本語にすると両方とも「環境に配慮した建物」あたりに落ちてしまうため、これをグリーンビルディングの定義として引くと、語がすり替わったまま話が進みます。
一方でUSGBCは、前掲のとおり自らの制度を “green building rating system” と呼んでいます。海外では、green building は制度の名前の中で生きている語で、理念のほうは別の語で語られている。そう捉えておくと、英語の資料を読むときに迷いません。
件数の話も同じ構えで読みます。Green Building Japanが公開している「日本のLEED認証プロジェクト リスト」は「2026年9月15日現在」とされ、一覧の連番は415まで振られています。ただし同じページには、次の断りが置かれています。
- 「このリストとUSGBCが公表しているデータに相違がある場合は、USGBC/GBIGのデータを正とします。」
- 「※再認証を受けていないプロジェクトを含む」
- 連番の最大は415で、日付は「2026年9月15日現在」
出典はGreen Building Japan「LEED認証プロジェクト リスト」(https://www.gbj.or.jp/leed/about_leed/certified-projetcts/ 2026年9月20日確認)です。運営側が自分で正の所在を別に置き、再認証を受けていないものも含むと断っている以上、「日本には415件ある」と単独で言い切れる数字ではありません。このリストに415番まで並んでいる、という読み方が正確です。
正直なところ、施主との会話でこの手の数字を出すのは得策ではないと感じています。件数は数え方で動きますが、2025年4月に適合義務が施行された事実は動きません。軸にするなら後者のほうがはるかに頑丈です。
グリーンビルディングに関する情報まとめ
- 言葉の位置づけ:日本の法令・公的機関が定義した記述は見当たらない総称語。国交省サイトにある定義は、民間の研究所が研究会で引用した米国EPAのもの
- 義務になった下限:令和7年4月1日(2025年4月1日)施行で、原則全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合義務。床面積の合計10㎡以下は適用除外
- 施工中の設計変更:計画を変えたら、検査済証の交付を受ける段で軽微な変更に当たることを証する書面が要る。条文は「求めることができる」なので、取りに行く側の段取りが必要
- 認証の位置づけ:法律の下限の上に乗る任意の物差し。ただしCASBEEは自治体の届出で評価書の添付が必要になる場合がある
- 海外の言葉:WorldGBCが説明しているのは “sustainable built environment” で別の語。日本のLEEDリストの連番415には断りが2つ付いている
以上がグリーンビルディングに関する情報のまとめです。
現場目線で言えば、施主から「グリーンビルディングで」と言われたときにやることは2つだけです。1つは、その言葉が法律の下限の話なのか、上に乗せる認証の話なのかを切り分けること。もう1つは、認証の話なら「どれを、誰に見せるために取るのか」を確認し、法律の話なら施工中の変更が出たときの判断者と連絡経路を先に決めておくことです。用語を覚え直す必要はありません。降りてくるのは言葉ではなく、設計変更が出た日の段取りのほうですから。
国内制度の全体像から押さえ直すならCASBEEのランクと自治体の届出制度とZEBの4段階とZEHとの違いが入口になります。海外の認証が絡む案件を抱えているなら、あわせて読むならLEED認証の種類とレベル、費用の目安とWELL認証で現場が実際に動く範囲の2本です。
