- 玉掛けって何の作業なの?
- 資格は必要?無資格でやったらダメ?
- 技能講習と特別教育、何が違うの?
- 「1トン」って吊る荷物の重さのこと?
- 講習は何日かかって、いくら?
- 作業の流れや合図のやり方は?
- 地切りって何?
- 鉄骨建方で玉掛けの何を管理すればいい?
- 玉掛けの事故ってどう防ぐ?
上記の様な悩みを解決します。
玉掛けは、クレーンで荷を吊るときにワイヤロープなどを荷に掛け外しする作業で、つり上げ荷重1トン以上のクレーン等では玉掛け技能講習、1トン未満では玉掛け特別教育の修了が求められます。そして「1トン」は吊る荷物の重さではなく、使うクレーンのつり上げ荷重のことです。ここを荷の重さで判断すると、必要な資格も入場時のチェックも的外れになります。
本記事では、安衛法61条・施行令20条16号・クレーン則221条・222条に沿って玉掛け技能講習と特別教育の区分を整理したうえで、玉掛け用具の使ってはいけない基準(ワイヤロープの一よりの間で素線の10%以上が切断、直径減少7%超、キンク、著しい形くずれや腐食)まで落とし込みます。
新規入場者の修了証の確認や巡視で何を見るかまで、施工管理の視点でまとめました。
それではいってみましょう!
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玉掛けとは?
玉掛けとは、結論「クレーンなどで荷を吊るときに、ワイヤーロープやスリングを荷に掛けたり外したりする作業」のことです。
クレーンのフックと荷をつなぐ唯一の接点なので、ここが甘いと吊り荷がそのまま落ちます。掛け方ひとつが重大災害に直結するため、つり上げ荷重1トン以上のクレーン等の玉掛けは技能講習、1トン未満は特別教育と、法令で資格が決められている作業でもあります。
「玉掛け」の「玉」は、荷を吊るための輪(アイ)やフックにかける部分を指すとされ、その輪を掛けることから「玉掛け」と呼ばれています。鉄骨建方では、柱や梁といった重量物をクレーンで所定の位置まで吊り上げるたびに玉掛けが発生するので、建方作業とは切っても切れない関係です。流れ全体は鉄骨建方の手順と管理ポイントで整理しています。
現場目線で言えば、玉掛けは「クレーン作業の入口であり、安全の要」です。クレーンオペレーターがどれだけ上手でも、玉掛けがいい加減なら荷は落ちます。新人のうちは「ただロープを掛けるだけ」に見えますが、実際は荷の重心・吊り具の選定・掛け方・用具の傷みまで判断する作業で、施工管理はその判断が正しく回っているかを見る立場にあります。
玉掛けに必要な資格
玉掛けは、使うクレーンのつり上げ荷重によって必要な資格が法令で分かれています。無資格での玉掛け作業は法令違反になります。
| つり上げ荷重 | 必要な資格 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1トン以上 | 玉掛け技能講習の修了(ほか職業訓練の玉掛け科の修了者など) | クレーン等安全規則第221条 |
| 1トン未満 | 玉掛け特別教育の修了 | クレーン等安全規則第222条第1項 |
ここで一番つまずきやすいのが「1トン」の意味です。これは吊る荷物の重さではなく、クレーン側の能力(つり上げ荷重)を指します。
- つり上げ荷重:クレーン側が持っている能力の値(そのクレーンの銘板や仕様書で確認する)
- 定格荷重:つり上げ荷重とは別の値で、作業半径などの条件で変わる(資格の判断に使うのはつり上げ荷重の方)
- 吊り荷の重さ:その日に吊る荷そのものの質量(資格の判断には使わない)
つまり、500kgの荷を吊る場合でも、使うクレーンのつり上げ荷重が1トン以上なら、玉掛け技能講習の資格が必要になります。「荷が軽いから特別教育でいい」という判断は誤りなので、現場では必ずクレーンの能力で判断します。つり上げ荷重の前提になる重さの単位は重量の単位(kg・kN・t)の整理が参考になります。
なお、玉掛けの資格があってもクレーンを運転できるわけではありません。クレーン運転は別の資格(運転士免許や運転技能講習・運転特別教育など)が必要で、玉掛けとクレーン運転はセットで考えます。運転側の資格の区分はクレーン運転に必要な資格、現場でよく出てくる機種は小型移動式クレーンの解説にまとめています。
実務だと、ここの「つり上げ荷重で判断する」を勘違いしている人がときどきいます。施工管理として作業者の資格を確認するときは、荷の重さではなく使用するクレーンの能力を基準にチェックするのが鉄則です。
根拠になる条文
資格の話は「なんとなく1トンで分かれる」と覚えがちですが、条文をたどると判断の筋が通ります。まず労働安全衛生法第61条第1項が、政令で定める業務には免許や技能講習の修了者など資格を持つ者でなければ就かせてはならない、と事業者に義務づけています。
その政令にあたる労働安全衛生法施行令第20条第16号に、「つり上げ荷重が一トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務」が挙がっています。これを受けてクレーン等安全規則第221条が、玉掛け技能講習を修了した者などでなければ就かせてはならない、と具体的な資格を定めています。
1トン未満のほうは、労働安全衛生法第59条第3項(危険・有害な業務に就かせるときの特別の教育)を受けて、クレーン等安全規則第222条第1項が「つり上げ荷重が一トン未満」のクレーン等の玉掛けに特別教育を行うよう事業者に求めています。
見落とされがちなのが、義務を負うのは会社だけではない点です。つり上げ荷重1トン以上の玉掛けについて、労働安全衛生法第61条第2項は、資格を持つ者以外は「当該業務を行なつてはならない」としていて、無資格の職人本人も玉掛けをしてはいけません。「ちょっと手伝うだけ」で掛けさせるのは、会社と本人の両方にとってアウトだと押さえておきます。
修了証は携帯が義務
1トン以上の玉掛けに就く人は、作業中に修了証などの資格を証する書面を持っていなければなりません。労働安全衛生法第61条第3項が「免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない」と定めています。
条文が求めているのは「資格を証する書面」の携帯で、コピーで足りるかどうかまでは条文から読み取れません。現場で迷う運用を残さないなら、入場時に原本を確認し、作業中も本人に持たせておくのが確実です。新規入場者教育のタイミングで、資格の種類とクレーンのつり上げ荷重が合っているかをセットで見ておくと、あとで配置を組み替えるときにも困りません。
18歳未満は玉掛けに就けない(補助作業は除く)
年齢の制限もあります。年少者労働基準規則第8条第10号は、満18歳に満たない者を就かせてはならない業務として「クレーン、デリック又は揚貨装置の玉掛けの業務」を挙げています。
ただし同じ号のかっこ書きで「二人以上の者によつて行う玉掛けの業務における補助作業の業務」は除かれています。17歳の新人を玉掛けの主役にすることはできませんが、2人以上で行う玉掛けの補助として関わらせることは条文上除外されている、という整理です。どこまでが補助かは現場で曖昧になりやすいので、施工管理としては年少者を配置するときに役割を作業計画に書き分けておくのが無難です。
技能講習と特別教育の違い
玉掛け技能講習と特別教育は、対象も中身もはっきり違います。受講を検討するときの比較表です。講習時間は告示(玉掛け技能講習規程・クレーン取扱い業務等特別教育規程)の表どおりの値です。
| 項目 | 玉掛け技能講習(1トン以上) | 玉掛け特別教育(1トン未満) |
|---|---|---|
| 講習時間 | 学科12時間+実技7時間(標準・計19時間) | 学科5時間以上+実技4時間以上 |
| 日数 | 目安として計3日程度(実施機関の日程で異なる) | 目安として計2日程度(実施機関の日程で異なる) |
| 修了試験 | あり(学科試験と実技試験。玉掛け技能講習規程第5条) | 告示(クレーン取扱い業務等特別教育規程第5条)に修了試験の定めはない。理解度の確認の有無は受講先の案内で確認 |
| 費用の目安 | 2万円台が目安(実施機関で異なる) | 1万円台が目安(実施機関で異なる) |
| 年齢の制限(就業) | 18歳未満は玉掛けの業務に就けない(2人以上で行う補助作業を除く) | 同左(年少者労働基準規則第8条第10号) |
| 実務での使い勝手 | ほとんどの現場で通用する | 1トン未満のクレーンに限定される |
技能講習の学科12時間の内訳は、クレーン等に関する知識1時間・玉掛けに必要な力学に関する知識3時間・玉掛けの方法7時間・関係法令1時間です。実技7時間は、質量目測や玉掛用具の選定・使用、0.5トン以上の荷を使った基本作業と応用作業が6時間、手や小旗などを使った合図が1時間です(玉掛け技能講習規程第2条)。技能講習の時間は「講習時間により行う」とされていて、特別教育のような「以上」は付いていません。
特別教育のほうは、学科が知識1時間・力学1時間・玉掛けの方法2時間・関係法令1時間で計5時間、実技が重量目測と玉掛けの方法3時間・合図1時間で計4時間です。こちらは「時間以上行なうものとする」とされていて、下限の時間です(クレーン取扱い業務等特別教育規程第5条)。
費用と日数は、同じ技能講習でも実施機関によって変わります。表の値は目安にとどめ、申し込む前に受講先の案内で金額と日程を確認してください。
結論から言うと、これから玉掛けを本格的にやるなら技能講習を取るのがおすすめです。特別教育は1トン未満に限定されるため使える場面が狭く、現場で扱うクレーンの多くは1トン以上だからです。最初から技能講習を取っておけば、ほぼすべての玉掛け作業に対応できます。
技能講習には修了試験があり、学科試験は学科講習の科目について、実技試験は実技講習の科目について行うと決められています(玉掛け技能講習規程第5条)。出題の範囲は講習でやる内容なので、まじめに取り組めば合格できます。実技でやること(質量目測や基本作業の流れ)と当日の準備は、玉掛け技能講習の実技試験の解説で詳しく書いています。
個人的には、迷ったら技能講習一択だと思っています。費用も日数も技能講習のほうが多くかかりますが、特別教育だと「このクレーンは1トン以上だから君は作業できない」という場面が出てきて結局取り直すことになりがちです。最初から上位の技能講習を取る方が、長い目で見て効率的です。
講習が短くなる人(短縮コースと免除科目)
経験や他の資格によって、技能講習の時間が短くなる人がいます。以前この記事で技能講習の学科を「11時間」と書いていましたが誤りで、標準コースの学科は12時間(実技7時間)です。学科11時間になるのは、下の表にある第4条の短縮コースの場合です。短縮・免除は次のように書き分けられています(玉掛け技能講習規程第3条・第4条)。
| 対象になる人 | 短くなる内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| クレーン・デリック運転士免許、移動式クレーン運転士免許、揚貨装置運転士免許を持つ人/床上操作式クレーン運転技能講習・小型移動式クレーン運転技能講習の修了者 | 「玉掛けに必要な力学に関する知識」と「運転のための合図」が免除 | 第3条 |
| 令第20条第6号・第7号や安衛則第36条第6号・第15号〜第17号の業務に6か月以上従事した経験がある人など | 「運転のための合図」のみ免除 | 第3条 |
| つり上げ荷重1トン以上のクレーン等の玉掛けの補助作業(または制限荷重1トン未満の揚貨装置の玉掛け)に6か月以上従事した人 | 学科11時間(玉掛けの方法が6時間)+実技5時間(玉掛けが4時間・合図1時間) | 第4条第1項 |
| つり上げ荷重1トン未満のクレーン等の玉掛けの業務に6か月以上従事した人 | 第4条第1項の表から合図を除いた科目(学科11時間・実技4時間) | 第4条第2項 |
「クレーンの免許を持っていると講習が短くなる」という話は、この第3条の免除のことです。どの区分で申し込めるかは、経験の証明方法も含めて受講先が確認するので、該当しそうな人は申込みの段階で受講先に相談しておくと当日の手戻りがありません。
玉掛け作業の流れと方法
玉掛け作業は、おおむね次の5ステップで進みます。どの工程も安全に直結します。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ①打合せ | 荷の重さ・重心、使う吊り具、合図者を確認する |
| ②吊り具の選定・点検 | 荷重に合ったスリング・ワイヤーを選び、損傷がないか点検 |
| ③掛け付け | 荷の重心を見極めてスリングを掛ける(掛け方を選ぶ) |
| ④地切り・移動 | わずかに浮かせて荷の安定を確認してから本吊り・移動 |
| ⑤荷降ろし・玉外し | 安定した場所に降ろし、荷が落ち着いてから玉を外す |
スリングの掛け方には、目掛け・あだ巻き掛け・半掛け・あや掛けなど複数の方法があり、荷の形状や重さで使い分けます。掛け方を誤ると荷がずれたり滑ったりするので、ここは技能講習でしっかり学ぶところです。
特に重要なのが④の「地切り」です。地切りとは、荷を地面からわずかに浮かせる動作のことで、ここでいったん止めて荷の傾き・吊り具のバランスを確認します。いきなり高く吊り上げず、地切りで安全を確かめてから本吊りに移るのが鉄則です。
吊り上げてから荷が回ったり振れたりするのを抑えるには、荷に介錯ロープを取って離れた位置から誘導します。使い方と手で荷に触れない理由は介錯ロープの使い方にまとめています。
正直なところ、玉掛けで事故が起きるのは「地切りを省略して一気に吊った」「重心を見誤って荷が振れた」といった場面が多いです。手順を1つずつ確実に踏むことが、そのまま事故防止になります。
玉掛け用具の点検と「使ってはいけない」基準
手順②の「吊り具の点検」は、職人の勘に任せる工程ではありません。何がどこまで傷んだら使えないかは、クレーン等安全規則に数値で書かれています。施工管理として押さえておくと、朝礼後の用具点検を「見た」で終わらせずに済みます。
まず、玉掛けの作業を行うときは、その日の作業を開始する前にワイヤロープ等の異常の有無を点検し、異常を認めたら直ちに補修しなければなりません(クレーン等安全規則第220条)。点検の義務を負うのは事業者で、毎日の作業開始前が基準です。
| 用具 | 使ってはいけない状態 | 根拠 |
|---|---|---|
| ワイヤロープ | 一よりの間で素線(フィラ線を除く)の数の10パーセント以上が切断している/直径の減少が公称径の7パーセントを超える/キンクした/著しい形くずれ又は腐食がある | 第215条 |
| つりチェーン | 伸びが製造時の長さの5パーセントを超える/リンクの断面の直径の減少が製造時の10パーセントを超える/き裂がある | 第216条 |
| フック・シャックル・リング等の金具 | 変形している/き裂がある | 第217条 |
| 繊維ロープ・繊維ベルト(ベルトスリング) | ストランドが切断している/著しい損傷又は腐食がある | 第218条 |
ワイヤロープは、一よりの間の素線の10パーセント以上の断線、公称径から7パーセントを超える径の減少、キンク、著しい形くずれや腐食のどれか1つでも当てはまれば使えません(クレーン等安全規則第215条)。キンクは一度でも起きれば対象なので、「伸ばせばまだ使える」は通りません。
つりチェーンは、伸びが製造時の長さの5パーセント超、リンク断面の直径の減少が10パーセント超、き裂のいずれかで使用禁止です(クレーン等安全規則第216条)。フックやシャックル、リングなどの金具は、変形かき裂があれば使えません(クレーン等安全規則第217条)。
ベルトスリングを含む繊維ロープ・繊維ベルトは、ストランドの切断か、著しい損傷又は腐食があれば使用禁止です(クレーン等安全規則第218条)。条文の基準はこの2つなので、メーカーの取扱説明書にある廃棄基準とあわせて確認します。
安全係数(ワイヤロープ6以上・フックとシャックル5以上)
傷みだけでなく、そもそもの強さにも決まりがあります。玉掛用具のワイヤロープは安全係数6以上でなければ使用してはならず、この安全係数は「ワイヤロープの切断荷重の値を、当該ワイヤロープにかかる荷重の最大の値で除した値」とされています(クレーン等安全規則第213条)。フック又はシャックルは安全係数5以上です(クレーン等安全規則第214条)。
「切れる力に対して何倍の余裕があるか」という考え方は、玉掛け以外の仮設でも共通です。考え方の基本は安全率の解説が参考になります。
現場目線で言えば、用具点検で一番起きやすいのは「傷んだスリングが用具置き場に戻って、翌朝また使われる」ことです。点検で外したものは、その場で切断するか識別して別置きにする。ここまで決めておかないと、条文どおりの点検をしても事故は防げません。
玉掛けの合図
玉掛け作業では、玉掛け者とクレーンオペレーターの間で合図をやり取りします。合図が伝わらないと、荷の落下や挟まれといった重大事故につながります。
合図の方法は、現場の状況に応じて次の4種類を使い分けます。
- 手による合図:近距離で見通しが良いときの基本
- 笛による合図:音で注意を引きたいとき
- 旗による合図:距離が離れていて手が見えにくいとき
- 声による合図:無線・トランシーバーを含む
合図で最も大切なルールは「合図者は一人に統一する」ことです。複数人が同時に合図を出すと、オペレーターがどれに従えばいいか分からず混乱し、事故の原因になります。誰が合図者かを作業前に明確に決め、その一人が責任を持って合図を出します。
この「一人に統一」は現場の慣習ではなく、法令に根拠があります。クレーンを用いて作業を行うときは、事業者が運転について一定の合図を定め、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせなければなりません(クレーン等安全規則第25条第1項)。移動式クレーンも同じ内容が定められています(クレーン等安全規則第71条第1項)。運転者が単独で作業するときだけが例外です。
実務だと、合図の混乱は「複数人が良かれと思って声をかける」ことで起きがちです。安全のための声かけが、かえって指示を錯綜させてしまう。合図者を一人に決めて、他の人は合図者を通す、という運用を徹底することが大事です。確認の動作は指差呼称のやり方とあわせるとさらに確実になります。
施工管理者が押さえる玉掛けの安全管理
最後に、施工管理者として玉掛け作業をどう安全管理するか、という視点です。ここが本記事の肝です。
鉄骨建方・揚重での管理ポイント
鉄骨建方では重量物を頻繁に吊るため、玉掛けの安全管理が現場の生命線になります。施工管理が押さえるべき点を整理します。
- 作業者の資格(つり上げ荷重に応じた技能講習・特別教育)を事前に確認する
- 吊り荷の下への立入禁止措置を徹底し、関係者以外を入れない
- 合図者を指名し、玉掛け者・オペレーターとの役割を明確にする
- つり角度を広げすぎない(角度が大きいほどスリングにかかる張力が増す)
- その日に使う玉掛用具が始業前点検を通っているかを見る
つり角度は意外と見落とされがちです。スリングを2本で吊るとき、つり角度(スリング同士の開き角度)が大きくなるほど、1本あたりにかかる張力が増えて切れやすくなります。角度をつけすぎないこと、適切な長さのスリングを選ぶことが安全につながります。
クレーンそのものの構成や注意点はクレーンガーダーの解説も参考になります。
吊り荷の下の立入禁止が義務になる場面
「吊り荷の下に入るな」は現場の常識ですが、法令上、作業従事者の立入りを禁止しなければならない場面がはっきり決められています。クレーン等安全規則第29条は、次のような荷がつり上げられているとき、荷の下に立ち入ることを「禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により」禁止するよう求めています。移動式クレーンも同じ内容です(クレーン等安全規則第74条の2)。
| 号 | 立入禁止が必要な場面 |
|---|---|
| 第1号 | ハッカーを用いて玉掛けをした荷がつり上げられているとき |
| 第2号 | つりクランプ1個を用いて玉掛けをした荷がつり上げられているとき |
| 第3号 | ワイヤロープ・つりチェーン・繊維ロープ・繊維ベルトなどを用いて1箇所に玉掛けをした荷がつり上げられているとき(荷に設けた穴やアイボルトにワイヤロープ等を通して玉掛けしている場合を除く) |
| 第4号 | 複数の荷が一度につり上げられている場合で、その複数の荷が結束されたり箱に入れられたりして固定されていないとき |
| 第5号 | 磁力または陰圧で吸着させるつり具・玉掛用具を用いて玉掛けをした荷がつり上げられているとき |
| 第6号 | 動力下降以外の方法で荷またはつり具を下降させるとき(この場合は荷だけでなくつり具も含めて下への立入りを禁止する) |
共通しているのは、荷が外れやすい掛け方をしている場面だという点です。ハッカーやつりクランプ1個、1箇所だけの玉掛けは、荷が傾いたり掛かりが浅くなったりしたときに外れて落ちる経路があります。結束していない複数の荷、マグネットや真空吸着のつり具、動力を使わない下降(第4号〜第6号)も同じく、落ちる経路が残る場面です。作業計画を立てる段階で、その日の吊り方がどの号に当たるかを確認しておくと、立入禁止の範囲を前もって決められます。
ここで大事なのは、禁止の方法として「表示」が挙がっていることです。口頭で「下に入らないで」と言うだけでなく、カラーコーンやバリケード、標識で範囲を見える形にしておくのが、施工管理が巡視で確認すべき状態です。
入場時と巡視で見るチェック表
ここまでの条文を、施工管理が入場時と巡視で確認する項目に落とすと次のようになります。根拠の条文を横に置いておくと、職長への指摘も「決まりだから」ではなく根拠つきで伝えられます。
| 確認のタイミング | 見るところ | 根拠 |
|---|---|---|
| 入場時 | 資格の種類(技能講習か特別教育か)と、使うクレーンのつり上げ荷重が合っているか | 安衛法第61条第1項・施行令第20条第16号・クレーン則第221条・第222条 |
| 入場時・作業中 | 1トン以上の玉掛けに就く人が修了証を携帯しているか | 安衛法第61条第3項 |
| 入場時 | 18歳未満の作業員が玉掛けの主役になっていないか(2人以上で行う補助作業は除外) | 年少者労働基準規則第8条第10号 |
| 作業開始前 | その日の玉掛用具が始業前点検を受け、使用禁止の状態のものが混ざっていないか | クレーン則第220条・第215条〜第218条 |
| 作業開始前 | 合図を定め、合図者が指名されているか | クレーン則第25条第1項(移動式は第71条第1項) |
| 作業中 | 立入禁止が必要な吊り方のとき、表示などで荷の下への立入りが禁止されているか | クレーン則第29条(移動式は第74条の2) |
この6行は、新規入場者の受け入れ、朝のKY、昼の巡視のどこで見るかを振り分けておくと抜けません。全部を巡視で見ようとすると、結局どれも薄くなります。
作業計画とKYでリスクを潰す
クレーン作業は、作業前の計画と危険予知でリスクを減らせます。
| 場面 | 施工管理の関わり |
|---|---|
| 作業計画 | クレーンの能力・配置、吊り荷重、作業範囲を計画書に明記 |
| 作業前KY | その日の吊り荷・段取りに応じた危険ポイントを共有 |
| 作業中 | 立入禁止・合図・地切り確認が守られているか巡視 |
作業前のKY・TBMの進め方はTBM・KYの進め方が詳しいです。
玉掛けの事故は「資格・用具・立入禁止・合図・地切り」の基本が崩れたときに起きます。施工管理としては、難しい理屈より、この基本が毎回守られているかを巡視で確認する方がよほど効きます。作業計画書で段取りを固め、作業前KYでその日のリスクを共有し、現場で基本の徹底を見届ける。この積み重ねが、重大災害をゼロに保つ近道だと僕は考えています。
玉掛けに関する情報まとめ
- 定義:クレーンなどで荷を吊るとき、ワイヤーやスリングを荷に掛け外しする作業
- 必要な資格:つり上げ荷重1トン以上は技能講習(クレーン則第221条)、1トン未満は特別教育(同第222条)。1トン以上では無資格者は本人も行ってはならない(安衛法第61条第2項)
- 「1トン」の意味:吊る荷の重さではなく、クレーン側のつり上げ能力で判断する。修了証は携帯が義務、18歳未満は補助作業を除き就けない
- 技能講習と特別教育の違い:技能講習は学科12時間+実技7時間で修了試験あり、特別教育は学科5時間以上+実技4時間以上。経験や免許で短縮・免除あり、迷ったら技能講習
- 作業の流れと用具点検:打合せ→吊り具選定・点検→掛け付け→地切り・移動→荷降ろし・玉外し。用具は毎日の作業開始前に点検し、条文の基準に当たるものは使わない
- 合図と安全管理:合図者の指名は事業者の義務、立入禁止は吊り方によって義務になる。入場時と巡視のチェック表、作業計画とKYで予防する
以上が玉掛けに関する情報のまとめです。
玉掛けは「クレーン作業の安全の要」で、掛け方ひとつで重大災害にも無事故にも転びます。資格はつり上げ荷重で技能講習か特別教育かが決まり、迷ったら技能講習を取るのが実用的です。施工管理の立場では、資格・用具・立入禁止・合図・地切りという基本が毎回守られているかを条文の根拠つきで確認し、作業計画とKYで先回りしてリスクを潰すことが大切です。次の建方の前に、上のチェック表を新規入場者の受け入れと朝のKYに組み込んでみてください。
安全や書類の負担は、会社の体制でかなり変わる部分です。施工管理向けの転職サービスを状況別に整理した記事があります。
玉掛けに関するよくある質問
Q1:玉掛けに資格は必ず必要ですか?
必要です。つり上げ荷重1トン以上のクレーン等で玉掛けをするには「玉掛け技能講習」の修了など(労働安全衛生法第61条第1項・クレーン等安全規則第221条)、1トン未満なら「玉掛け特別教育」の修了(クレーン等安全規則第222条第1項)が必要です。無資格での玉掛け作業は法令違反で、1トン以上の玉掛けでは資格を持たない本人も行ってはならないとされています(労働安全衛生法第61条第2項)。施工管理として作業者を配置する際は、使用するクレーンのつり上げ荷重に応じた資格を持っているかを必ず確認します。
Q2:技能講習と特別教育はどちらを取ればいいですか?
これから本格的に玉掛けをするなら技能講習がおすすめです。特別教育はつり上げ荷重1トン未満のクレーンに限定され、現場で扱うクレーンの多くは1トン以上だからです。技能講習は学科12時間+実技7時間(玉掛け技能講習規程第2条)で学科試験と実技試験の修了試験があり(同規程第5条)、特別教育は学科5時間以上+実技4時間以上(クレーン取扱い業務等特別教育規程第5条)で、告示に修了試験の定めはありません。費用は技能講習が2万円台・特別教育が1万円台が目安ですが、実施機関で異なるので受講先の案内で確認してください。最初から技能講習を取れば、ほぼすべての玉掛け作業に対応できます。
Q3:「1トン」は吊る荷物の重さのことですか?
いいえ、吊る荷物の重さではなく、使用するクレーンの「つり上げ荷重(吊り上げられる最大能力)」を指します。たとえば500kgの荷を吊る場合でも、使うクレーンのつり上げ荷重が1トン以上なら、玉掛け技能講習の資格が必要です。「荷が軽いから特別教育でいい」という判断は誤りで、必ずクレーンの能力で判断します。
Q4:地切りとは何ですか?
地切りとは、吊り荷を地面からわずかに浮かせる動作のことです。いきなり高く吊り上げず、地切りでいったん止めて、荷の傾き・吊り具のバランス・重心を確認してから本吊りに移ります。玉掛けの事故は地切りを省略して一気に吊ったときに起きやすいので、必ず地切りで安全を確かめる手順が重要です。
Q5:玉掛けの合図はどうやるんですか?
合図には手・笛・旗・声(無線含む)の4種類があり、距離や見通しに応じて使い分けます。最も重要なルールは「合図者を一人に統一する」ことです。複数人が同時に合図を出すと、クレーンオペレーターがどれに従えばいいか分からず混乱し、事故につながります。合図を定めて合図者を指名するのは事業者の義務です(クレーン等安全規則第25条第1項、移動式クレーンは第71条第1項)。作業前に合図者を明確に決め、その一人が責任を持って合図を出すようにします。
Q6:玉掛けの資格があればクレーンも運転できますか?
できません。玉掛けの資格は「荷を掛け外しする作業」の資格で、クレーンの運転は別の資格(クレーン運転士免許やクレーン運転特別教育など)が必要です。実際の現場では、玉掛け者とクレーンオペレーターが役割を分担して作業します。両方を担いたい場合は、玉掛けとクレーン運転の資格をそれぞれ取得する必要があります。区分はクレーン運転に必要な資格で整理しています。
Q7:18歳未満でも玉掛けできますか?
玉掛けの業務そのものには就けません。年少者労働基準規則第8条第10号が、満18歳に満たない者を就かせてはならない業務として、クレーン・デリック・揚貨装置の玉掛けの業務を挙げています。ただし、2人以上で行う玉掛けの業務における補助作業は除かれています。年少者を配置するときは、補助の範囲を作業計画に書き分けておくと現場で迷いません。
Q8:修了証は現場で持っていないといけませんか?
1トン以上の玉掛けに就く人は、作業中に資格を証する書面を携帯していなければなりません(労働安全衛生法第61条第3項)。条文はコピーで足りるかまでは書いていないので、入場時に原本を確認し、作業中も本人に持たせておく運用にしておくと確実です。
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