- 矩計図って何て読むの?「くけいず」?「かなばかりず」?
- 断面図と矩計図、何が違うの?縮尺が違うだけ?
- GL・FL・CH・FH・軒高…記号の意味を一覧で押さえたい
- 矩計図を書け、と先輩に言われた。何から手をつけて良いか分からない
- 木造とRC造で矩計図の描き方は変わる?
- 縮尺1/50と1/30、どっちで描けば良い?
- 矩計図のチェックポイントが分からない、抜け漏れが怖い
- 1級建築士試験で矩計図が出るって聞いた、対策は?
- 確認申請に矩計図は必要?提出義務がある図面なのか?
- 屋根・庇・基礎・断熱…全部1枚に入れるって無理ゲーじゃない?
- 階段の踏面・蹴上を矩計に描き込むコツがあるなら知りたい
- 設計者から渡された矩計図で、現場として何を確認すべき?
上記の様な悩みを解決します。
矩計図は、建物の屋根から基礎までを垂直に切断した「縦方向の詳細図」で、住宅設計や中規模建築の確認申請・施工で欠かせない図面の一つ。建築施工管理として「設計者からもらった矩計図のチェック」「現場で実寸との照合」「監理上の指摘」を求められる場面が多く、断面図との違いや記号の意味を即答できるかで現場代理人としての地力が露呈します。今回は読み方・断面図との違い・縮尺・GL/FL/CH/FH等の高さ記号・木造とRC造での描き分け・描き方の8ステップ・現場での使い方・1級建築士試験での出題まで、現役の建築施工管理目線で実務に落とし込みました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
矩計図とは?
矩計図とは、結論「建物の屋根から基礎までを垂直に切断して、内部の寸法・仕様・下地まで詳細に描いた断面詳細図」のことです。読みは「かなばかりず」。
「矩(かね)」は大工用語で「直角・垂直・水平を測る基準」を意味し、もともと矩計(かなばかり)は屋根や軒の寸法を測る作業を指す言葉でした。それを図面化したものが矩計図で、英語ではSectional Detail(断面詳細図)と訳されます。
主な用途は住宅・中規模建築の設計・確認申請・施工。住宅設計では確認申請時に提出する設計図書の主要図面の一つで、JIS A 0150(建築製図通則)・建築基準法施行規則別表(確認申請書類)で位置づけられています。一般的な縮尺は1/20〜1/50で、住宅なら1/30〜1/50、店舗・中規模建築なら1/20〜1/30が標準。
断面図との関係でよく聞かれるのは「結局何が違うの?」ですが、最大の差は情報量。僕としては、断面図は「建物の見た目の縦切り」、矩計図は「建物の見た目+下地+仕様+寸法をすべて記載した縦切り」と捉えると一気に理解が早くなる。断面図1/100で読めない床下・天井裏・壁内・基礎の細部まで、すべて矩計図で表現します。
建築図面全体の中での位置づけはこちらが詳しいです。



僕の感覚だと、矩計図は「設計者が頭の中で考えた建物の縦方向の整合性を、現場に渡せる形で表現する図面」。書き手の力量がもろに出る図面で、設計事務所の新人は最初の半年〜1年で「矩計が描けるか」が一段成長の指標になります。施工管理側としても、矩計図が読めると現場での寸法判定・納まり確認が一段上のレベルになる。
矩計図と断面図の違い
矩計図と断面図はどちらも「建物を垂直に切った様子を描く図面」ですが、情報量・縮尺・目的が違います。確認申請でも両方提出が必要なので、用途の違いを押さえてください。
矩計図と断面図の比較
| 項目 | 矩計図 | 断面図 |
|---|---|---|
| 縮尺 | 1/20〜1/50 | 1/100〜1/200 |
| 切る位置 | 部分(軒・庇・階段など要部) | 建物全体(東西または南北) |
| 描く範囲 | 屋根〜基礎までの全断面 | 建物の輪郭中心 |
| 情報量 | 寸法・下地・仕上げ・断熱まで詳細 | 高さ・階層・主要部位のみ |
| 主な用途 | 詳細設計、施工指示、確認申請 | 全体プランの把握、確認申請 |
| 必要な記載 | 部材厚・GL/FL等記号・記号凡例 | 高さ寸法、階高、軒高 |
縮尺の使い分け
縮尺は描く対象と用途で決めます。
- 1/50:住宅全体の矩計、納まりを概観する用途
- 1/30:標準的な住宅矩計、確認申請でも主流
- 1/20:商業・店舗・特殊納まり、設計詳細図
- 1/10:部位拡大(軒先・基礎まわり・サッシ廻りなど)
縮尺が小さくなる(数字が大きくなる)ほど描き込める情報量が減り、縮尺が大きくなる(数字が小さくなる)ほど詳細を描けます。1/100以下では床仕上げ・断熱材・配筋までは描けないため、矩計では1/50以下が標準です。
断面詳細図との関係
「矩計図」と「断面詳細図」は実務上ほぼ同義で使われます。設計事務所によっては「矩計図=木造住宅の伝統的な縦詳細図」「断面詳細図=RC造・S造の縦詳細図」と使い分けるところもありますが、確認申請の図面リストでは「断面詳細図」と表記されるケースが多い。
僕としては、図面を読む時に「これは矩計と呼ぶか断面詳細と呼ぶか」を悩むよりも、縮尺1/30〜1/50で部位の納まりまで描いてあれば「矩計と同等の図面」と認識する方が実務的だと感じます。
矩計図に登場する記号と寸法の意味
矩計図で最初につまずくのは、高さの記号と寸法の意味。GL・FL・CH・FHなど英字記号が大量に出てきます。施工管理として読めない記号があると現場で恥をかくので、最低限の一覧を頭に入れます。
高さの記号一覧
| 記号 | 正式名称 | 意味 | 設定場所 |
|---|---|---|---|
| GL | Ground Level | 地盤面の計画高さ | 隣地境界、敷地基準 |
| BM | Bench Mark | 工事基準点(仮設) | 敷地内の動かない構造物 |
| SL | Slab Level | 構造スラブ天端の高さ | RC造の床躯体面 |
| FL | Floor Level | 床仕上げ面の高さ | 各階の床上端 |
| CH | Ceiling Height | 天井高さ(FLから天井下端まで) | 各室の天井 |
| FH | Floor Height(階高) | ある階の床から上階の床までの高さ | フロア間 |
| 軒高 | 軒の高さ | GLから軒桁上端までの高さ | 屋根の出 |
| 棟高 | 棟の高さ | GLから屋根頂部までの高さ | 屋根頂部 |
| 庇高 | 庇の高さ | FLから庇下端までの高さ | 開口部上部 |
GLとSLとFLの整理
最初に混乱しやすいのが GL・SL・FL の関係です。
- GL:地盤、計画地盤面(隣地境界の高さ基準)
- SL:構造体のスラブ上端(RC造)または土台天端(木造)
- FL:仕上げ床面(フローリングやタイル等の表面)
たとえば1階のFLは GL+500mm 程度(基礎立ち上がり+断熱+床仕上げの合計)になることが多い。1階SLはFLの直下、つまり GL+400mm 程度。図面では「1FL=GL+500」「1SL=GL+400」のように記号で結びつきが表示されます。
階高(FH)と軒高・棟高
階高(FH)はある階の床から上階の床までの高さで、住宅で2,800〜3,000mm程度、オフィスで3,600〜4,200mm程度が標準。階高には天井懐(てんじょうふところ:CHと階高の差)が含まれており、ここに梁・配管・空調ダクトが収まります。
軒高は GL から軒桁上端まで、棟高は GL から屋根頂部まで。建築基準法の高さ制限(道路斜線・北側斜線・絶対高さ)はこの2つで判定されるので、矩計図で必ず明示する寸法です。
部材厚の記号(t)
矩計図では部材の厚さを「t(thickness)」で表記します。
- t=12 → 厚み12mm
- t=15 → 厚み15mm
- t=100 → 厚み100mm
例:「外壁 サイディング t=15」「断熱材 グラスウール t=100」「フローリング t=12」など。詳しくは厚みtの記事を参照ください。


僕の感覚だと、若手のうちは「FLとSLとGLが混ざる」「FHと軒高の区別がつかない」が頻発します。最初のうちは矩計を読むたびに記号と寸法の対応を声に出して確認すると、3〜6か月で自然に体得できます。
矩計図に描かれる要素(屋根〜基礎まで)
矩計図1枚に描かれる要素は、上から順に屋根、軒、外壁、開口部、内壁、天井、床、基礎、地盤と多岐にわたります。それぞれの部位で見るべき項目を整理します。
各部位の記載項目
| 部位 | 矩計図に描かれる主な項目 |
|---|---|
| 屋根 | 屋根仕上げ材/野地板厚/垂木サイズ/棟高/勾配 |
| 軒・鼻 | 軒の出/軒先金物/鼻隠し板/樋 |
| 外壁 | 外装仕上げ材厚/通気層/構造用面材/断熱材厚 |
| 開口部 | サッシ寸法/取付高さ(FLからの高さ)/庇/水切り |
| 内壁 | 内装仕上げ厚/下地材/断熱材厚 |
| 天井 | 天井仕上げ厚/天井下地/CH/天井懐 |
| 床 | フローリング厚/下地合板/根太/断熱材/FL |
| 基礎 | 基礎立ち上がり/フーチング/スラブ厚/配筋/GL/SL/FL関係 |
| 地盤 | GL/GLからの基礎深さ/地盤改良範囲 |
屋根まわりの記載
屋根は仕上げ材(瓦・ガルバリウム鋼板・スレートなど)の種類と厚み、野地板(合板)の厚み、垂木のサイズ、軒先金物、樋、棟換気の構成を描きます。勾配は「3.5/10」「4/10」のような分数表記で記入。
軒の出(軒桁から軒先までの水平距離)は900〜1,200mmが住宅の標準で、軒高・棟高・庇の関係も矩計で確認します。
開口部まわりの記載
サッシは取付高さ(FLからサッシ下端までの高さ)と寸法(幅×高さ)を矩計に描き込みます。一般的な掃き出し窓はFL+0、腰窓はFL+800〜1,200、ハイサイドはFL+1,800〜2,000程度。
庇は外壁面から100〜600mm程度の出を取り、雨が外壁を直接叩かないように設計します。サッシ廻りには水切り・防水紙・通気層が一体で記入されます。
床・基礎まわりの記載
床は仕上げ(フローリング・タイル・畳)、下地合板、根太、大引き、断熱材、防湿シート、土間コンクリート、防湿フィルムまで描き込みます。基礎は立ち上がりの高さ・フーチング寸法・配筋(D13@200など)まで矩計に記載。
特に住宅では「基礎天端まわり」が水分・シロアリ・断熱性能のクリティカルポイントなので、矩計図で水切り・基礎パッキン・気密シートの納まりを必ず確認します。
階段の記載
階段は踏面・蹴上の寸法、段数、上下階のFLからの高さ関係を矩計に描き込みます。建築基準法の階段寸法(住宅:踏面15cm以上、蹴上23cm以下)を満たしているかは矩計で照合できます。
僕としては、矩計1枚で建物のすべての縦方向の整合性を確認できるのが施工管理の最強ツールだと感じます。新築の現場で「サッシの取付高さが図面と違う」「庇の出が短い」というトラブルは、矩計を施主・職人と一緒に見ながら現場で照合すれば、9割は事前に潰せます。
矩計図の描き方(8ステップ)
矩計図の描き方は、設計事務所の新人向けに体系化されたガイドが公開されています。代表的な8ステップで整理します。
描き方の8ステップ
| Step | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| Step 1 | 通り芯と寸法線の設定 | 縦横の基準線 |
| Step 2 | GL・FL・SL・階高を記入 | 建物の縦基準を確定 |
| Step 3 | 躯体(柱・梁・基礎)を描画 | 構造を先に固める |
| Step 4 | 屋根の勾配と棟高・軒高を描画 | 屋根形状を確定 |
| Step 5 | 外壁・内壁の仕上げと下地 | 仕様材料を記入 |
| Step 6 | 開口部・庇・水切りを描画 | 防水・気密の重要箇所 |
| Step 7 | 床・天井の下地・仕上げ | 断熱材・防湿層も含む |
| Step 8 | 寸法・記号・凡例の記入 | 最後のチェック・仕上げ |
Step 1〜2:基準線と高さ記号
通り芯(X1, X2, Y1, Y2…)と階高(FL, FH)を最初に記入します。GL・FL・SLの3つを揃えると、建物全体の縦寸法が確定。1FLを基準(±0)とし、それより上下に各階のFL・天井・基礎・GLを配置します。
Step 3:躯体の描画
構造躯体(柱・梁・基礎・スラブ)を細い実線で描画。木造なら土台・柱・桁・梁・束・棟木、RC造なら基礎・スラブ・柱・梁・スラブを順に描きます。
Step 4:屋根の形状
屋根は勾配(3.5/10、4/10、5/10など)と棟高・軒高を確定。切妻・寄棟・片流れなど屋根形状で軒の出と庇の位置が変わります。
Step 5:外壁と内壁
外壁・内壁の仕上げ材と下地を二重線で描画。外壁では「外装仕上げ→通気層→構造用面材→断熱材→内装下地→内装仕上げ」の順で材料記号と厚みを記入します。
Step 6:開口部・庇・水切り
サッシは矩計のスケール(1/50)で正確に描画。サッシ枠・ガラス・水切り・庇・防水テープの位置関係を細部まで描き込みます。
Step 7:床・天井
床は「フローリング→下地合板→根太→大引き→断熱材→防湿シート」、天井は「天井ボード→吊木→天井懐→断熱材→屋根下地」の順で記入。
Step 8:寸法・記号・凡例
最後に高さ寸法(GLからの累計)、部材厚(t=◯)、記号凡例、図面番号を整理。図面の右下に枠線と図面情報(縮尺・図面名称・図面番号)を入れて完成。
僕の感覚だと、新人時代に矩計を描く時は「Step 1〜4の躯体を完成させてから、Step 5〜7の仕様を入れる」の順序を守ると失敗が少ない。いきなり仕上げから描くと、躯体寸法と整合が取れずに何度も書き直すハメになります。
木造とRC造での矩計図の違い
矩計図は構造種別で描く内容が大きく変わります。木造とRC造でどう違うかを整理します。
木造矩計図の特徴
木造矩計図では、土台→柱→桁→梁→垂木→母屋→棟木、と縦方向の木材構成を細かく描きます。
| 木造特有の要素 | 内容 |
|---|---|
| 土台・大引・根太 | 床下構造を描く |
| 柱(管柱・通し柱) | 1〜2階の縦材 |
| 桁・梁・母屋 | 横材の高さ関係 |
| 垂木・野地板 | 屋根下地 |
| 基礎パッキン・通気 | 床下の換気構造 |
木造では基礎パッキンによる床下換気、柱の通し柱と管柱の区別、軒桁と妻梁の納まりが矩計図のチェックポイントです。
RC造矩計図の特徴
RC造矩計図では、スラブ→柱→梁→スラブ、と階層ごとのRC躯体構成を中心に描きます。
| RC造特有の要素 | 内容 |
|---|---|
| スラブ厚・配筋 | t=150〜200/D13@200等 |
| 梁せい・梁幅 | 600×500等 |
| 柱寸法・配筋 | 500×500/12-D22等 |
| 二重床・OAフロア | 床仕上げと躯体の間 |
| パラペット | 屋上の立ち上がり |
RC造では躯体の配筋表記が矩計に入る場合があり、構造図との整合性チェックが重要。マンション・オフィスビルでは天井懐に配管・空調ダクト・電気配線が走るため、天井高(CH)と階高(FH)の差を矩計で読み解きます。
S造矩計図
S造(鉄骨造)は木造とRC造の中間的な性格で、鉄骨梁・柱の上に床デッキ・コンクリートを打って、外壁はALCやサイディング、というパターンが多い。矩計では鉄骨梁のサイズ(H-400×200×8×13など)と接合部・床デッキの厚みを描きます。
僕としては、設計事務所では矩計を「構造ごとに型を持っている」のが普通で、木造の若手+RC造の若手+S造の若手で、それぞれの型を覚えていきます。施工管理側としても、自分の担当現場の構造種別の矩計は20〜30件読み込むと、何が標準で何が特殊かの感覚が体得できます。
矩計図の確認申請・施工での使い方
矩計図は単に「描いて終わり」の図面ではなく、確認申請・施工・監理の各フェーズで具体的な役割があります。
確認申請での役割
建築基準法施行規則別表で確認申請書類として「断面詳細図(≒矩計図)」の提出が求められます。確認申請では以下をチェックされます。
- 軒高・棟高(高さ制限・斜線制限の根拠)
- 階高・天井高(建築基準法の最低天井高2,100mm)
- 階段寸法(住宅の踏面15cm以上、蹴上23cm以下)
- 屋根勾配・庇の出(隣地・道路斜線への影響)
- 開口部寸法(採光・換気の有効面積)
- 構造躯体の概略寸法
特に住宅では「天井高さ2,100mm以上」が法定で、矩計図でCHを確認することで一発判定できます。
施工での役割
施工フェーズでは、矩計図は以下の場面で使われます。
- 着工前の図面検討(協力会社と一緒に納まりを確認)
- 木造の墨出し(土台据付・通り芯・基準墨)
- 開口部の取付高さ確認(サッシ位置・庇高さ)
- 断熱材・防水・気密の納まり確認
- 検査機関の中間検査・完了検査時の図面照合
特に「サッシの取付高さ」「庇の出」「水切り・防水テープの納まり」は職人と矩計を一緒に見ながら確認する場面が多く、矩計が読めない施工管理は職人から信頼を失います。
監理での役割
工事監理では、設計者が「設計図書通り施工されているか」を矩計を使って確認します。
- 階高・天井高の実測(FL~天井下端)
- 軒高・棟高の実測(GLから屋根頂部)
- 開口部寸法・位置の現場照合
- 部材厚・仕様材料の納品材検査
監理者と施工者が矩計をベースに対話するので、矩計が読めない施工管理は監理者との打ち合わせで主導権を取れません。
僕の感覚だと、施工管理が矩計を「読める」ようになるだけで、現場の意思決定スピードが2〜3倍上がります。特に住宅・小規模建築では監理者と施工管理が直接対話する場面が多く、矩計を読みながらの議論ができないと、毎回設計事務所に持ち帰って確認、というロスが発生します。
建築図面の書き方全体はこちらが詳しいです。


矩計図のチェックポイント(施工管理目線)
設計者から矩計図を受け取った時、施工管理として最初にチェックすべきポイントを整理します。
矩計図チェックリスト(10項目)
- GL・FL・SLの3つが整合している
- 階高・天井高・天井懐の数字が合計と合う
- 軒高・棟高が建築基準法の高さ制限内
- 屋根勾配と軒の出の関係が雨仕舞いとして妥当
- 庇の出と窓位置の関係(夏の日射遮蔽)
- 外壁の通気層・断熱材の厚みが仕様書と一致
- サッシ取付高さがFLからの寸法で明示されている
- 階段の踏面・蹴上が建築基準法内
- 基礎の立ち上がりと水切り・基礎パッキンの納まり
- 各部材厚(t=◯)がすべて記入されている
設計者への確認事項(5項目)
矩計図を受け取った時に設計者に確認すべき項目です。
- 部材厚の記載漏れがないか(断熱材・防水紙・通気層など)
- サッシ寸法・取付高さの具体的な数字
- 庇・水切りの納まり詳細(拡大図の有無)
- 階段の蹴込み・側板の納まり
- 軒先金物・破風・鼻隠しの仕様
現場での見るべき注意点
矩計が現場の実寸と合わない時の対応として、以下を押さえます。
- 寸法の出典確認(矩計の数字が他図面と矛盾していないか)
- 設計者への即時確認(独断で施工進めない)
- 変更内容の図面記録(矩計修正と理由の記載)
僕としては、矩計のチェックは「現場代理人としての腕の見せ所」だと考えていて、設計者の意図を読み取りつつ、施工側の合理性を組み込んで提案できると、設計事務所と施工管理者の関係がガラッと変わります。新人時代は「言われた通り作る」で良いですが、3〜5年でこのレベルに行けると、現場での意思決定権が一段上がります。
矩計図の試験出題と勉強法
矩計図は1級・2級建築士試験、CAD利用技術者試験(建築)でも頻出。受験する若手のために試験対策のポイントを整理します。
1級建築士試験での出題
1級建築士の設計製図試験では、矩計図またはそれに準ずる断面詳細図の作成が求められる年があります。
- 軒高・棟高・階高・天井高の整合
- 階段の踏面・蹴上が建築基準法内
- 断熱材・防水の納まり
- 屋根勾配と軒の出
製図試験では「矩計+部分詳細」の組合せで出題されることが多く、矩計1/50+拡大図1/20の連動が描けるかが合否を分けます。
2級建築士試験での出題
2級建築士でも矩計図・断面詳細図の作成が出題されます。1級ほど詳細でなくても、基本的な納まりと寸法整合が描けることが求められます。
CAD利用技術者試験(建築)2級・1級
CAD利用技術者試験では、矩計図の作成が公式ガイドブックで取り上げられています。CAD操作と建築知識の両方が問われるので、CAD実技と建築基準の両軸で勉強します。
効率的な勉強法
矩計を独学で習得する効率的な勉強法は以下。
- 良い矩計図を写経(過去問・模範解答の写し描き)
- 自宅の図面を矩計化(実物の寸法測定と図面化)
- 設計事務所OBの矩計をもらって構成を分析
- CADソフト(JW-CAD、Vectorworks)で実描画練習
僕の感覚だと、矩計は「数をこなす」ことでしか上達しない図面で、20〜30枚を描き切ると、自分なりの描き方の型ができ上がります。試験対策としても、模範解答を5〜10枚写経すると、合格レベルの矩計が自然に書けるようになります。
矩計図に関するよくある質問
Q1:矩計図の読み方は「くけいず」ですか?「かなばかりず」ですか?
正しい読み方は「かなばかりず」です。「矩(かね)」は大工用語で直角・垂直・水平を測る基準を意味し、矩計(かなばかり)はもともと屋根や軒の寸法を測る作業を指していました。「くけいず」と読むと建築関係者にすぐ素人とバレるので注意してください。
Q2:矩計図と断面図、何が違うんですか?
最大の違いは情報量と縮尺。断面図は1/100〜1/200で建物全体の縦切りを概観、矩計図は1/20〜1/50で屋根から基礎まで部材厚・下地・仕様を詳細に描きます。確認申請ではどちらも提出が必要で、用途が分かれています。
Q3:GL・FL・SL・CHの違いは何ですか?
GLは地盤面の計画高さ、FLは床仕上げ面、SLは構造スラブ天端、CHは天井高さ(FLから天井下端まで)。1FLはGLから400〜500mm程度上にあり、SLはFL直下に位置するのが標準的な関係です。
Q4:階高(FH)と軒高、何が違うんですか?
階高(FH)はある階の床から上階の床までの高さで、住宅で2,800〜3,000mm程度。軒高はGLから軒桁上端までの高さで、建築基準法の道路斜線・北側斜線判定に使われます。階高は階の内側の高さ、軒高は建物の外側からの高さです。
Q5:木造とRC造で矩計図の描き方は変わりますか?
大きく変わります。木造は土台・柱・桁・梁・垂木・棟木と縦方向の木材構成を詳細に描き、RC造はスラブ・柱・梁の躯体構成と配筋を中心に描きます。S造は中間的で、鉄骨梁・柱と床デッキの構成。設計事務所では構造別に矩計の「型」が確立されているのが普通です。
Q6:縮尺は1/30と1/50、どっちで描けばいいですか?
住宅の確認申請なら1/50が主流、設計検討や納まり詳細を描きたいなら1/30または1/20。1/20以下では描き込み量が膨大になるので、部分拡大図と組み合わせて使います。
Q7:確認申請で矩計図は必須ですか?
「断面詳細図」として確認申請書類のリストに含まれます。実務上は「断面詳細図≒矩計図」として扱われることが多く、住宅・中規模建築の確認申請では矩計または断面詳細図の提出が必要です。
Q8:施工管理として矩計図のチェックポイントを教えてください
10項目の最重要チェックは、GL/FL/SL整合、階高/天井高、軒高/棟高、屋根勾配/軒の出、庇/水切り、外壁通気層/断熱材、サッシ取付高さ、階段寸法、基礎立ち上がり/水切り、各部材厚(t=◯)の記入確認。これを自分のチェックリスト化して、矩計を受け取るたびに確認するクセを付けると、現場トラブルが激減します。
Q9:1級建築士の試験で矩計図ってどう出題されますか?
設計製図試験で矩計図または断面詳細図の作成が要求される年があります。配点は20〜30点規模で、軒高/棟高/階高/天井高の整合、階段の建築基準法判定、断熱・防水の納まりが採点ポイント。模範解答の写経5〜10枚で合格レベルに到達可能です。
Q10:矩計を初めて描く新人ですが、何から始めたら良いですか?
順番としては、①既存の矩計図を3〜5枚読み込み(用語と構成を体得)、②写経で描く(同じ図面を見ながらCADで描き起こす)、③簡単な住宅プランから自分で1枚描く、④先輩・設計者にレビューしてもらう、の4ステップ。最初の半年〜1年で20〜30枚描くと、独力で矩計が描けるようになります。
矩計図に関する情報のまとめ
- 矩計図とは:建物の屋根から基礎までを垂直に切断した断面詳細図(読み:かなばかりず)
- 断面図との違い:縮尺(1/20〜1/50 vs 1/100〜1/200)と情報量
- 高さ記号:GL(地盤)/FL(床仕上げ)/SL(スラブ天端)/CH(天井高さ)/FH(階高)/軒高/棟高
- 部材厚記号:t=◯(外壁サイディング t=15、断熱材 t=100など)
- 描かれる要素:屋根・軒・外壁・開口部・内壁・天井・床・基礎・地盤の縦方向の全構成
- 描き方8ステップ:基準線→高さ記号→躯体→屋根→外壁・内壁→開口部→床・天井→寸法・凡例
- 構造別の違い:木造(土台〜棟木の縦構成)/RC造(スラブ〜パラペットの躯体)/S造(鉄骨+デッキ)
- 確認申請での使い方:軒高/棟高で斜線制限判定、天井高で建築基準法判定、階段寸法で法適合判定
- 施工での使い方:着工前検討/墨出し/サッシ取付/断熱・防水納まり/検査照合
- チェックリスト10項目:GL/FL/SL整合、階高/天井高、軒高/棟高、屋根勾配、庇/水切り、通気層/断熱材、サッシ高さ、階段寸法、基礎、部材厚
以上が矩計図に関する情報のまとめです。
矩計図は「建物の縦方向の整合性を1枚に集約した、設計と施工をつなぐ要の図面」で、施工管理として読めるかどうかで現場での意思決定スピードが大きく変わります。記号と寸法の意味を覚えて、構造別の標準型を体得し、自分のチェックリストで運用できるレベルに到達すると、設計事務所・職人・施主の全方位で信頼を得られます。建築図面全般や断面図・平面図・立面図と合わせて、図面読解の地力を一段上げると、施工管理としての成長スピードが一段加速しますので、関連記事もあわせてどうぞ。








