- 地盤の許容応力度ってなに?
- 数値の基準ってどれくらい?
- N値からどうやって出すの?
- 地耐力との違いって?
- 改良が必要になる目安は?
- どうやって測定するの?
上記の様な悩みを解決します。
地盤の許容応力度とは、結論「地盤が長期的に安全に支えられる単位面積あたりの荷重」のことです。単位は kN/m²。建築基準法施行令第93条と平成13年国交省告示第1113号で 計算式が3パターン(粘性土・砂質土・礫質土)規定されていて、N値や粘着力からこの値を出し、基礎を載せる地盤として OKかNG かを判定します。長期20kN/m²未満なら地盤改良が必要、100kN/m²あれば標準的な戸建てが直接基礎で建つ…という現場感覚の目安もあります。本記事では、地盤の許容応力度の意味・計算式・N値からの推定・地耐力との違い・測定方法まで、施工管理の視点で初心者向けに整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
地盤の許容応力度とは?
地盤の許容応力度とは、結論「地盤が長期的に支えられる単位面積あたりの荷重の上限」のことです。
英語では allowable bearing capacity of soil。記号は qa または fe がよく使われます。単位は kN/m²(古い書類だと t/m²、kgf/cm² も残っています)。
「許容」の意味は2段階の安全率
地盤が破壊する直前の荷重を 極限支持力(qu)と言いますが、設計ではこれをそのまま使わず、安全率(通常3.0)で割って使います。
許容支持力 qa = 極限支持力 qu ÷ 安全率(3.0)
→ 「地盤がギリギリ持つ値」ではなく、「3倍の余裕を持って絶対安全な値」が許容応力度。だから安心して建物を載せられる、という設計思想です。
長期と短期の区別
地盤の応力度にも、構造材と同じく 長期と短期があります。
| 区分 | 想定する荷重 | 値の関係 |
|---|---|---|
| 長期 | 建物自重+積載荷重 | qa |
| 短期 | 地震・暴風時の追加荷重 | qa × 2 |
→ 短期は長期の 2倍まで許容。これは地盤の塑性変形が短時間なら回復するという考え方に基づいています。
何のために必要な数値か
- 基礎の設計(直接基礎か杭基礎かの判断)
- 基礎フーチングの大きさ・配筋を決める
- 地盤改良の要否を判定
- 不同沈下・即時沈下の評価
→ 一言でいえば、「建物を載せる地盤の品質保証書」みたいなもの。施工管理側でも、地盤調査報告書を見るときの最重要数値の一つです。
地盤関連の全体像はこちらに整理しています。


地盤の許容応力度の計算式
建築基準法施行令第93条と告示1113号で 3パターンの計算式が決まっています。土質ごとに使う式が違うので、地盤調査報告書を読むときの基礎知識です。
①粘性土の場合
長期 qa = (1/3) × (icαcNc + iqβqDfNq + (1/2)iγγ1B1Nγ)
…と書くと複雑ですが、要するに N値・粘着力c・根入れ深さDf・基礎幅Bから計算します。
簡略式(粘性土・小規模建築)
qa = 30 × c + 0.3γ2Df
- c:粘着力(kN/m²)
- γ2:基礎下の単位体積重量(kN/m³)
- Df:根入れ深さ(m)
→ 粘性土は 粘着力が支持力の主役。N値が小さくても粘着力が大きい粘土なら支持力は出ます。
②砂質土の場合
qa = 12N + 0.3γ1B + 0.3γ2Df
- N:基礎幅B以内のN値の平均(最大50)
- B:基礎幅(m)
- γ1:基礎下の単位体積重量
- γ2:基礎上の単位体積重量
→ 砂質土は N値が支持力を支配。「N値×12」がざっくり粘性土でない地盤の許容応力度の目安です。
③礫質土の場合
qa = 30N + 0.6γ1B + 0.3γ2Df
→ 礫質土は 「N値×30」で評価。砂質土より係数が大きく、礫質土の優秀さが分かります。
①〜③をざっくり覚えるなら
| 土質 | 簡略の係数 |
|---|---|
| 粘性土 | 粘着力 c × 30 |
| 砂質土 | N値 × 12 |
| 礫質土 | N値 × 30 |
→ 厳密には基礎幅・根入れ補正がありますが、施工管理として 「砂質土ならN値の12倍くらいか」と頭の中で見積もれると、地盤調査結果を見たときの判断が早くなります。
砂質土・礫質土・粘性土の違いはこちらを参照。

N値からの簡易推定
実務で N値から地盤の許容応力度をざっくり把握するときの目安です。
砂質土地盤での目安(N値×12)
| N値 | 長期qa(kN/m²) | 建てられる建物の目安 |
|---|---|---|
| 5 | 60 | 木造2階建てギリギリ |
| 10 | 120 | 木造3階・小規模建築 |
| 15 | 180 | RC3階・中規模建築 |
| 20 | 240 | RC4〜5階 |
| 30 | 360 | 中高層建築可 |
| 50 | 600 | 杭の支持層に十分 |
→ N値が 15〜20以上あれば直接基礎で建てられるレベル、50以上あれば杭の支持層として理想的、と覚えるとシンプル。
「N値5未満」は要警戒
N値が極端に低い地盤は 軟弱地盤で、地盤改良・杭基礎の検討が必須。長期20kN/m²未満なら、戸建てでも何らかの対策が必要、というのが現場感覚です。
粘性土の目安(一軸圧縮強度qu)
| qu(kN/m²) | 長期qa(kN/m²) | 状態 |
|---|---|---|
| 25 | 50 | 軟弱 |
| 50 | 100 | やや軟弱 |
| 100 | 200 | 中硬 |
| 200 | 400 | 硬 |
→ 粘性土は 「qu × 2」がざっくりの許容支持力(厳密にはc=qu/2でNc≒5.7なのでqa≒qu×2)。
N値の出し方・読み方はこちらに整理しています。


地耐力との違い
「地耐力」と「地盤の許容応力度」は、現場で混同されやすい用語。整理しておきましょう。
地耐力 vs 地盤の許容応力度
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 地耐力 | 地盤が 沈下と支持力の両面から、どれだけ建物を支えられるかの能力。広い概念 |
| 地盤の許容応力度 | 地耐力を構成する2要素のうち、 支持力の数値表現。狭い概念 |
→ 地耐力 = 支持力 + 沈下抑制力、地盤の許容応力度 = 支持力だけの数値、と覚えるのが分かりやすい。
地耐力の判定基準
建築基準法施行令第38条・第93条では、地耐力を 次の3つの数値で表現します。
- 長期許容応力度:建物の自重+積載荷重で見る数値
- 短期許容応力度:地震・暴風時の追加荷重で見る数値
- 即時沈下量・圧密沈下量:許容沈下量内に収まるか
→ つまり「地耐力○○kN/m²」というときは、ほぼ 「長期許容応力度」を指しています。実務では同義語のように使われますが、厳密には地耐力の方が広い概念。
実務での使い分け
- 地盤調査報告書 → 「地盤の許容応力度」「許容支持力」と書かれる
- 構造図・確認申請 → 「地耐力 ○○kN/m²」と書かれる
→ 表現が違っても、ほぼ同じ数値を指していると思って大丈夫です。
支持層・N値の関係性はこちら。

地盤改良の目安
地盤の許容応力度が 必要値に満たない場合、地盤改良が必要になります。判定の目安を整理します。
長期許容応力度別の対応
| 長期qa | 一般的な対応 |
|---|---|
| 20kN/m²未満 | 地盤改良 or 杭基礎が 必須(軟弱) |
| 20〜30kN/m² | べた基礎で対応可(建物による) |
| 30〜50kN/m² | べた基礎または改良で対応 |
| 50kN/m²以上 | 直接基礎(布基礎・独立基礎)で対応可 |
| 100kN/m²以上 | 一般的な建物の直接基礎に十分 |
→ 20kN/m²が地盤改良の判断ラインの一つの目安。住宅では 戸建てでもqa=30kN/m²以上を目標にする現場が多いです。
主な地盤改良工法
- 表層改良:浅い軟弱層(深さ2m程度)をセメント系固化材で改良
- 柱状改良:直径60cm程度の柱を連続的に作って支持
- 鋼管杭工法:先端羽根付き鋼管を回転圧入で打設
- 小口径杭:小規模建築向けの簡易な杭
→ どれを選ぶかは 改良深さ・支持層の位置・建物規模で決まります。
「改良するか杭にするか」の判断
- 軟弱層が 〜5m:表層・柱状改良で十分
- 軟弱層が 5〜10m:柱状改良 or 小口径杭
- 軟弱層が 10m以上:場所打ち杭・既製杭
→ 地盤改良はあくまで 「弱い地盤を補強する」手法。深い軟弱層の場合は、最初から 杭基礎で支持層に到達させる方が確実です。
杭基礎・鋼杭の使い分けはこちらに整理しています。


平板載荷試験と評価方法
地盤の許容応力度を 実測する代表的な試験を紹介します。
①平板載荷試験
直径30cmの円形載荷板を地表面に置き、段階的に荷重をかけて沈下量を測定する試験。
- 規格:JIS A 1215 / JGS 1521
- 試験の流れ:載荷板を設置 → 油圧ジャッキで荷重 → ダイヤルゲージで沈下量測定 → 荷重と沈下量の関係をグラフ化
- 結果から 極限支持力qu を読み取り、安全率3で割って許容支持力qaを算定
→ 実地盤での 直接データが取れるのが最大の強み。住宅でも採用されることがあります。
②標準貫入試験(N値)
ボーリング孔の中で 63.5kgのハンマーを76cm自由落下させ、サンプラーが30cm貫入するのに必要な打撃回数(N値)を測定。
- 規格:JIS A 1219
- N値から 計算式(前述)で許容応力度を推定
- 同時に 土質サンプルも採取できる
→ 建築・土木の地盤調査の 標準手法。スウェーデン式に比べて深部まで調査可能。
③スウェーデン式サウンディング(SWS)
オモリと回転で ロッドを地盤にねじ込み、貫入抵抗から土の硬さを推定。
- 規格:JIS A 1221
- 住宅地盤調査の 主流
- 換算N値や許容応力度を 経験式で算出
→ 試験コストが安く、住宅では 5測点程度を取るのが標準。
測定方法の使い分け
| 試験 | 適用建物 | コスト | 精度 |
|---|---|---|---|
| 平板載荷試験 | 全般 | 高 | 高 |
| 標準貫入試験 | 中〜大規模 | 中 | 中〜高 |
| SWS | 住宅 | 低 | 中 |
→ どれを採用するかは、建物規模・予算・必要精度で決まります。
標準貫入試験の詳細はこちらに整理しています。

地盤の許容応力度に関する施工管理の注意点
施工管理として、地盤調査結果をどう活用するかが大事になります。
①地盤調査結果の確認
- 調査位置の 配置図:建物敷地内のどこで何点測ったか
- 各測点での 柱状図:深さ方向のN値・土質変化
- N値・許容応力度・支持層深さの数値
- 地下水位の位置
- 設計図書の指定地耐力との整合
→ 「設計時の想定」と「実際の地盤」が一致しているかが最重要。ズレていたら設計変更が必要。
②根入れ深さの確保
地盤の許容応力度は 根入れ深さDfで底上げできます。
許容応力度の根入れ補正 = 0.3γ2Df
→ 根入れを 1m深くするだけで、許容応力度が 10〜20kN/m²上がることもあります。
根入れの詳細はこちら。

③不同沈下のリスク管理
許容応力度を満たしていても、地盤の不均一性で不同沈下が起きることがあります。
- 軟弱層の厚みが場所で違う
- 旧河川・盛土の境界
- 地下水位の変動
→ 測定点が 平面的に均一でない場合は、追加調査を依頼するのが施工管理の役目。
④施工中の地盤変化
掘削後に地盤の許容応力度が 低下することがあります。
- 雨水で地盤が緩む
- 振動・荷重で含水比が変化
- 地下水低下で過剰圧密
→ 掘削した基礎底盤は、速やかに捨てコンを打設して保護するのが施工管理の鉄則。
捨てコンの役割はこちらに整理しています。

地盤の許容応力度に関する情報まとめ
- 地盤の許容応力度とは:地盤が長期的に支えられる単位面積あたりの荷重(kN/m²)
- 計算式:粘性土・砂質土・礫質土で式が違う(告示1113号)
- N値からの目安:砂質土は N×12、礫質土は N×30 がざっくりの長期qa
- 地耐力との違い:地耐力=支持力+沈下抑制、許容応力度=支持力だけ
- 改良の目安:長期20kN/m²未満なら改良 or 杭基礎が必要
- 測定方法:平板載荷試験・標準貫入試験・スウェーデン式
- 施工管理の要点:調査結果の確認、根入れ補正、不同沈下リスク、掘削後の保護
以上が地盤の許容応力度に関する情報のまとめです。
地盤の許容応力度は 「建物を支える地盤の通信簿」みたいな数値で、これが設計と現場で食い違うと、後工程すべてに影響します。施工管理者は 報告書を鵜呑みにせず、現場の状況(雨・湧水・土質変化)と合わせて読むのが大事。N値とこの数値の関係性を頭に入れておくだけで、地盤調査結果を読むスピードが格段に上がりますね。
合わせて、N値・標準貫入試験・杭基礎の基礎知識をまとめてあるので、地盤系の理解を深める参考にしてください。







