- そもそもサスティナブル建築って何?
- SDGsとの関係は?
- どんな指標・認証があるの?
- 現場で具体的に何をやればいいの?
- ZEH・ZEB・HEAT20とどう違うの?
- 日本にはどんな事例がある?
上記の様な悩みを解決します。
「サスティナブル建築」は、SDGsや脱炭素の文脈でよく聞く言葉ですが、現場の若手から見ると「結局なにを設計し、なにを施工すればサスティナブルなんですか?」が分からないままになりがちです。本記事では、環境・社会・経済の3要素から始めて、ZEH/ZEB/HEAT20といった指標、CASBEE/LEED/WELLといった認証、具体的な施工要素までを通しで整理しておきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
サスティナブル建築とは?
サスティナブル建築とは、結論「環境負荷・社会・経済の3軸で長期的に持続可能になるよう設計・施工された建物」のことです。
英語ではSustainable Architecture / Sustainable Building。日本語では「持続可能建築」「環境共生建築」と訳されます。
短く言うと
- 建てる時のCO₂、運用時のエネルギー、解体時の廃棄物まで一連で減らす
- 利用者の健康・安全・快適性を高める
- ライフサイクルコスト(LCC)で経済合理性も成り立つ
「作って終わり、ではなく、作る前から壊した後まで含めて評価する」というのがサスティナブル建築の発想の中心です。
SDGsとの関係
国連の持続可能な開発目標(SDGs、2015年採択)の17ゴールのうち、
- 目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 目標11:住み続けられるまちづくりを
- 目標12:つくる責任、つかう責任
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
がサスティナブル建築に直接関わります。SDGsは抽象的なゴールなので、建築業界ではZEH・ZEB・HEAT20・CASBEEなどの指標に翻訳して扱うのが基本です。
なぜ今これが必要か
国内の総エネルギー消費の約3割は建築物(住宅+業務)で発生しています。建築の省エネを進めないと、国の脱炭素目標(2050年カーボンニュートラル)は達成不可能。「建築物の省エネ規制の本格運用」が2025年4月に始まっており、新築住宅の省エネ基準適合義務化もこのタイミングで動き出しました。
サスティナブル建築は、もはや「意識高い建主の選択肢」ではなく、新築の最低ラインそのものになりつつあります。
サスティナブル建築の3つの要素
設計・施工で押さえる3軸を整理します。
環境(Environment)
- 運用時のエネルギー消費削減(断熱・気密・換気・高効率設備)
- 再生可能エネルギーの導入(太陽光・地中熱・バイオマス)
- 環境負荷の小さい建材(FSC認証木材、再生材)
- 雨水利用、緑化(屋上・壁面)、ヒートアイランド対策
社会(Society)
- 居住者・利用者の健康(室内空気質、シックハウス対策)
- 防災・耐災害性(耐震・浸水・停電時のレジリエンス)
- バリアフリー、ユニバーサルデザイン
- 地域材の活用、地域経済への貢献
経済(Economy)
- ライフサイクルコスト(LCC):初期+運用+解体まで含めた費用
- 維持管理しやすい設計(点検口・メンテナンス通路)
- 長寿命化(耐久性向上、改修可能な設計)
「環境+社会+経済の3つを同時に満たす」のがサスティナブル建築の基本姿勢で、どれか1つだけ突出していても評価されないのがポイントです。
指標と認証制度
抽象論で終わらせないために、業界では具体的な指標と認証が整備されています。
主要指標(数値ベース)
| 指標 | 対象 | 何を見るか |
|---|---|---|
| 省エネ基準(断熱等級4) | 住宅 | 最低限の省エネ性能 |
| 断熱等級5・6・7 | 住宅 | ZEHやHEAT20相当の高性能 |
| ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス) | 戸建住宅 | 一次エネルギー収支ゼロ |
| ZEH-M | 集合住宅 | マンションのZEH版 |
| ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル) | 業務ビル | 業務建築の一次エネルギー収支ゼロ |
| HEAT20 G1〜G3 | 住宅 | 冬の最低室温の維持 |
| LCCO₂ | 全建築 | 建設〜解体までのCO₂排出量 |
ZEHとHEAT20の使い分けはこちらで整理しています。

認証制度(評価ベース)
| 認証 | 主体 | カバー範囲 |
|---|---|---|
| CASBEE | 日本(国交省支援) | 環境性能を5段階(C〜S)で評価。総合評価が中心 |
| BELS | 日本(国交省) | 一次エネルギー消費・断熱性能を5段階★で表示 |
| LEED | 米国(USGBC) | 国際展開している環境認証。Certified〜Platinumの4段階 |
| WELL | 米国(IWBI) | 利用者の健康にフォーカスした認証 |
| BREEAM | 英国 | 世界最古の環境認証(1990年〜) |
国内の業務ビルはCASBEE、海外資本のビルはLEEDで評価されることが多いです。両方取得する物件も増えています。
CASBEEとLEEDのランクの違い
CASBEEは「環境効率(BEE値)」をベースにC〜Sの5段階。LEEDは「取得ポイント数」をベースにCertified(40〜49pt)/Silver(50〜59pt)/Gold(60〜79pt)/Platinum(80pt以上)の4段階。CASBEE Sランク ≒ LEED Platinum くらいの感覚で理解されることが多いです。
具体的な施工要素
「では現場で何をやればサスティナブル建築になるのか」を、要素ごとに分解します。
外皮性能の強化
熱の出入りを建物の皮で抑える。これが最も投資対効果が高い施策です。
- 断熱:高性能グラスウール16K厚さ105mm以上、付加断熱で計150mm前後
- 気密:C値1.0以下(HEAT20 G2狙い)、0.5以下(G3狙い)
- 窓:樹脂サッシ+Low-E複層ガラス、トリプル化でG3水準
気密性能(C値)の話はこちら。
高効率設備
- 第一種熱交換型換気(熱交換効率70〜90%)
- 高効率エアコン(APF6.0以上)
- エコキュートまたはヒートポンプ式給湯
- LED照明+人感センサー
- BEMS / HEMSでエネルギー見える化
再生可能エネルギー
- 太陽光発電(屋根置き、PPAモデルも増加)
- 地中熱ヒートポンプ(一定温度の地中熱で省エネ)
- バイオマスボイラー(地域材活用)
ZEBを目指すと太陽光+蓄電池+高効率設備の組合せが標準になります。
木材・地域材の活用
国産材活用は炭素固定の観点で評価され、CASBEE・LEED両方で加点要素になります。CLT(直交集成板)は中高層木造の本命で、近年急速に採用が広がっています。
水・廃棄物・緑化
- 雨水タンク(散水・トイレ洗浄に再利用)
- 節水器具(節水トイレ、節水水栓)
- 屋上緑化・壁面緑化(ヒートアイランド対策、断熱効果)
- 解体時の分別解体・再資源化
国内のサスティナブル建築事例
実例を知っておくと、設計・現場での提案にも説得力が出ます。
業務ビル
- 大林組 技術研究所 本館テクノステーション(東京都清瀬市):日本初のCASBEE-S認定建築の一つ。地中熱・自然換気・木質仕上げ
- 積水ハウス 総合研究所(京都府木津川市):LEED-NC Platinum取得、太陽光+木質バイオマス
- 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(東京都港区、2023年):CASBEE Sランク、屋上緑化と再エネ電力
- TOC有明(東京流通センター有明物流ビル):物流倉庫としては国内有数のZEB Ready認定
学校・公共建築
- 金沢駅東広場 もてなしドーム(金沢駅前):地域材+環境配慮設計
- 隈研吾「梼原・木橋ミュージアム」(高知県梼原町):地域材活用と伝統構法の現代化
集合住宅・戸建
- 大和ハウス工業 jiriz(戸建ZEH):標準仕様でZEH対応
- 積水ハウス グリーンファースト ゼロ:ZEH普及シリーズ
- 三井不動産レジデンシャル:ZEH-M Oriented認定マンション
国内のZEB登録建築物は2024年時点で約1,500件まで増加しており、業務ビル新築では「特殊解ではなく標準解の一つ」になりつつあります。
サスティナブル建築に関する情報まとめ
- サスティナブル建築とは:環境・社会・経済の3軸で長期的に持続可能になるように設計・施工された建物
- 3要素:環境(省エネ・再エネ・地域材)、社会(健康・防災・地域貢献)、経済(LCC・長寿命化)
- 指標:省エネ基準・断熱等級・ZEH/ZEH-M/ZEB・HEAT20・LCCO₂
- 認証:国内CASBEE/BELS、国際LEED/WELL/BREEAM。CASBEE-S ≒ LEED Platinum
- 施工要素:外皮(断熱・気密・窓)、高効率設備、再エネ、木材・地域材、水・廃棄物・緑化
- 国内事例:虎ノ門ヒルズ、大林組テクノステーション、積水ハウス総合研究所、ZEB登録は約1,500件
- 2025年4月:新築住宅の省エネ基準適合義務化が開始。最低ラインそのものが上がっている
以上がサスティナブル建築に関する情報のまとめです。
サスティナブル建築は「意識の高い特殊解」ではなく、法規・認証・市場の三方から最低ラインが押し上げられる構造にすでに入っています。施工管理として現場に立つときは、指標(ZEH・HEAT20・ZEB)と認証(CASBEE・LEED)の対応関係を頭に入れたうえで、外皮・設備・再エネ・水・廃棄物の5領域を順に確認していくと、施主や設計事務所との打ち合わせがブレずに進むかなと思います。
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