- フェルールってなに?
- スタッド溶接でなんで使うの?
- どんなサイズや規格があるの?
- 施工の流れってどうなってる?
- 現場で気をつけることは?
- どこのメーカーが作ってるの?
上記の様な悩みを解決します。
「フェルール」は鉄骨建方の現場、特にデッキプレート上のスタッドジベル溶接で必ず登場する磁器製の小さなカップのこと。スタッド本体ばかりに目が行きがちですが、フェルールはスタッド溶接の品質を左右する隠れた主役です。
電気施工管理として鉄骨工事の取り合いで現場に入ると、足元にフェルールの破片がジャリジャリ転がっていて「これ何?」となる場面、絶対に出てきます。意味と役割、施工管理上の注意点まで一通り押さえておきましょう。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
フェルールとは?
フェルールとは、結論「スタッド溶接の際にスタッド根元に被せる磁器製のリング(カップ)」のことです。
英語の「ferrule」をそのままカタカナにした用語で、現場では「フェルール」または「磁器ロボディ」「フラックス管」と呼ばれることもあります。スタッドジベル(頭付きスタッド)を母材に溶接するとき、必ず1スタッドにつき1個ずつ消費する消耗部材です。
フェルールの基本情報
- 材質:磁器(セラミックス)
- 形状:内径中央に貫通孔のある円筒〜カップ状
- 使い方:スタッド根元に装着し、母材に押し付けて溶接
- 性質:1回限りの使い捨て(溶接後にハンマーで粉砕除去)
- 別名:磁器ロボディ/磁器カラー/フラックス管
スタッドジベルの溶接は、デッキプレート上から数百〜数千本を一気に打っていく作業。その全てのスタッドにフェルールが必要なので、現場には段ボールに数千個単位で搬入されます。
スタッドジベル溶接の全体像はこちらの記事もどうぞ。

フェルールの役割
「磁器のリング1個に何の役目があるんだ?」と思うかもしれませんが、フェルールは溶接品質を担う4つの役割を同時にこなしています。
フェルールの4つの役割
- 溶融金属の保持:アーク放電で溶けた母材とスタッドの溶湯を、フェルールの内側で「湯だまり」として保持する
- アーク光・スパッタの遮蔽:強烈なアーク光と飛散金属(スパッタ)を外側から遮断する
- 溶融金属の整形:溶接完了後の余盛り(カラー)の形状をフェルール内壁の形で整える
- 大気の遮断:溶接部に外気が入り込んで酸化・ブローホールが発生するのを防ぐ
特に重要なのは「カラーの整形」。スタッド溶接後の余盛りはお椀をひっくり返したような形になりますが、これはフェルール内壁の形がそのまま転写されたもの。カラーの形が均一に出ていない=溶接不良のサインなので、フェルールが正しく装着されていなかった可能性が高いと判断できます。
フェルールがないとどうなる?
仮にフェルールなしでスタッド溶接を打つと、溶融金属が飛び散る、アーク光が抑えられない、湯が保持できず接合面積が確保できない、と一気に施工不能になります。フェルールは見た目地味ですが、溶接そのものを成立させる構造部材といって差し支えありません。
スタッド溶接後のカラーは、30°曲げ試験で割れないかをチェックします。曲げ試験の品質基準についてはこちらでまとめています。

フェルールの規格・サイズ
フェルールはスタッドの軸径(φ)に対応してサイズが決まります。スタッドのφ13〜φ22あたりが最もよく使われ、それぞれ専用のフェルールがセットで使われる構成。
スタッド径とフェルールの対応表
| スタッド径 | フェルール内径目安 | フェルール外径目安 | フェルール高さ目安 |
|---|---|---|---|
| φ13 | 約14mm | 約24mm | 約14mm |
| φ16 | 約17mm | 約27mm | 約16mm |
| φ19 | 約20mm | 約32mm | 約18mm |
| φ22 | 約23mm | 約36mm | 約20mm |
※ 各メーカーのスタッド規格とセットで設計されているため、上記は代表的な目安。実発注時は使用するスタッドメーカーのカタログ寸法を確認してください。
スタッド本体の規格は JIS B 1198「頭付きスタッド」で規定されています。この規格に対応するフェルールは、スタッドメーカーが純正品として供給するのが基本。
フェルールはスタッドと一括して同じメーカーから調達するのが鉄則。混在運用は溶接電流の設定や溶接条件と合わずに不良の原因になります。
用途による形状違い
フェルールは打設箇所によって形状を使い分けます。
フェルール形状の分類
- 平打ち用フェルール:水平面(梁上面・床版)にスタッドを打つ標準タイプ
- 立て打ち用フェルール:柱面など垂直面にスタッドを打つ場合の専用タイプ。湯がこぼれないよう側面が深い
- デッキ貫通用フェルール:デッキプレート(凹凸ある合成スラブ用鋼板)の上から打つ場合、デッキの厚みを考慮した形状
特に注意なのが デッキ貫通スタッド溶接。デッキプレートの溝部か山部かで打設位置が変わり、それに合わせてフェルール形状も変わります。
デッキプレート関連の知識はこちらが参考になります。

フェルールの施工の流れ
スタッドジベル溶接の現場での流れに沿って、フェルールがどう使われるかを整理します。
1. 母材表面の清掃
母材(梁上フランジまたはデッキプレート上面)の汚れ・水分・塗装・防錆処理を完全に除去。残っていると溶接不良(ブローホール、融合不良)の原因。雨上がりの建方では特に念入りな清掃が必要。
2. スタッドとフェルールのセット
スタッドガン(スタッド溶接機)の先端チャックにスタッドを差し込み、その根元にフェルールを被せる。フェルールが母材と密着するまで押し当てるのがポイント。隙間があると湯漏れする。
3. 押し当て&トリガー
スタッドを母材に押し当て、トリガーを引く。すると以下のシーケンスが自動で進む。
スタッド溶接の自動シーケンス
- スタッドが少し持ち上がる(リフト動作)
- アーク放電が発生(アークタイム0.5〜1秒程度)
- 母材とスタッド先端が溶融
- スタッドが下降して溶融金属に圧入
- 凝固(数秒)
この間、フェルールは溶湯を抱え込みつつアーク光を遮蔽し続けます。
4. 冷却&フェルール破壊
溶接完了後、数秒で凝固。冷却を待ってからハンマー(フェルールハンマー)でフェルールを叩いて粉砕します。フェルールは陶器製なのでパキッと割れる。破片はスタッド根元と床面に残るので、後の清掃が必要。
5. 品質確認(カラーの目視と曲げ試験)
フェルール破壊後、スタッド根元にできたカラー(余盛り)が均一に1周回っているかを目視確認。形状不良があれば打ち直し。抜き取り検査として30°曲げ試験を行い、カラー部から割れないことを確認します。
施工要領書での品質基準はこちら関連記事も参考になります。

フェルールに関する施工管理の注意点
ここからが現場感のある話。フェルール周りで施工管理として押さえておくべき実務的なポイントです。
フェルール破片の飛散と落下リスク
最大の落とし穴がフェルール破片の飛散。鉄骨梁の上でスタッドを数百本打つと、破片が梁上面・足場板・養生シートに散乱します。これが足場板の隙間から下階に落下するのが本当に怖い。
下階で他職(電気・設備など)が作業中の場合、頭上から磁器の破片が降ってくる事態に。安衛則の「第三者への落下物災害」につながるので、以下の対策が標準です。
フェルール破片対策
- スタッド溶接エリアの真下を立入禁止にする(区画明示)
- 鉄骨梁上にブルーシート・養生シートを敷いて破片をキャッチする
- 作業終了ごとに箒・掃除機で破片を完全回収
- 足場板の隙間にネット張り(落下物防止)
電気施工管理として、デッキ上の電気配管・ケーブルラック工事を計画している場合は、スタッド溶接の工程後に入るよう工程調整するのが鉄則。先に入っていた配管材の上にフェルール破片が積もると清掃が大変です。
雨天時・湿気の影響
フェルールは磁器なので吸湿性があります。雨水を吸ったフェルールはブローホールの直接原因。
施工現場では以下の運用が基本です。
フェルール保管・運用ルール
- 屋根下の乾燥した倉庫で保管(雨ざらし禁止)
- 開封後は当日中に使い切る
- デッキ上で雨に降られたフェルールは廃棄(再使用禁止)
- 冬季は乾燥庫で保管/貼り出し前に乾燥
「もったいないから使い回そう」となりやすい部材ですが、ブローホール起因の溶接不良で打ち直しになれば手間もコストも倍。1個10〜30円のフェルールをケチって不良品を作るのは典型的な悪手です。
構造体接地兼用スタッドでの残渣管理
ここが電気施工管理の腕の見せ所。鉄骨造の構造体接地工事では、鉄骨梁・柱に溶接した既存スタッドを接地端子として流用するケースがあります。
このとき、スタッド根元のカラー部にフェルール残渣(粉末・破片)が残っていると、接地端子台と鉄骨の電気的接続面に絶縁物が挟まる構図に。接地抵抗測定でばらつきが出る直接原因です。
電気施工管理が立ち会うときは、
接地兼用スタッド使用時のチェック
- 端子接続前にフェルール残渣をワイヤブラシで完全除去
- カラー部の塗装・防錆処理も剥がす
- 接地抵抗計で測定し、規定値(A種10Ω以下、D種100Ω以下等)を確認
- 端子締付トルク管理
を徹底すること。鉄骨工事の溶接記録だけ追って「打設済みOK」と判断すると、後の絶縁抵抗測定で泥沼にはまります。
構造体接地の詳細はこちらでまとめています。

使用本数の見積もりと発注タイミング
フェルールはスタッド本数+予備5〜10%で発注するのが標準。打ち損じや破損での予備分を見越しておきます。
発注のコツ
- 構造図のスタッドリストから本数を拾い出し
- 床版面積から自動拾い計算(デッキプレート1枚あたりのスタッド本数×枚数)
- スタッドメーカーに必ず純正フェルールを併発注
- 工程の山場(建方ピーク日)の3〜5日前に納品手配
発注ミスで「現場でスタッドだけ余ってフェルール切れ」だと、その瞬間からスタッド溶接が止まり工程に直撃。鉄骨ファブとの段取り確認をおろそかにできません。
フェルールに関する情報まとめ
- フェルールとは:スタッド溶接でスタッド根元に被せる磁器製の使い捨てリング
- 役割:溶融金属の保持/アーク光遮蔽/カラー整形/大気遮断
- 規格:JIS B 1198準拠のスタッドに対応した純正品。φ13〜φ22が標準
- 形状種類:平打ち用/立て打ち用/デッキ貫通用
- 施工の流れ:清掃→セット→押し当て→アーク→圧着→粉砕→品質確認
- 注意点:破片飛散対策/雨天保管禁止/接地兼用時の残渣除去/純正品の使用
- 発注:スタッド本数+予備5〜10%、純正品併発注、工程逆算で納期確保
以上がフェルールに関する情報のまとめです。
スタッドジベル溶接の品質は「スタッドの本体スペック」だけでなく「フェルールの管理」で決まる、と言えるくらい大事な部材。1個10円台の磁器カップを軽く見ず、現場の段取りに組み込むのが施工管理の腕の見せどころですね。
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