電気通信主任技術者は、電気通信事業者が事業用電気通信設備の工事、維持及び運用を監督させるために選任する技術者で、資格者証は伝送交換と線路の2種類です。試験に受験資格はなく、直近の令和8年度第1回の合格率は20.8%でした。電気通信主任技術者の資格者証で建設業の電気通信工事の主任技術者の要件を満たすには、資格者証の交付後に電気通信工事に関し5年以上の実務経験が要ります。
- 電気通信主任技術者って、現場で何をする人なの?
- 選任しなきゃいけないのは誰?うちの会社も対象?
- 伝送交換と線路、自分はどっちを受ければいい?
- 試験は何科目で、何点取れば受かるの?
- 合格率ってどのくらい?科目合格は何年もつ?
- 次の試験はいつで、申込はいつまで?
- 合格したら資格者証はどうやってもらうの?更新はある?
- 選任されたら講習を受けないといけないって本当?
- この資格があれば、建設業の主任技術者になれる?
- 電気通信工事施工管理技士とどっちを取るべき?
上記の様な悩みを解決します。
電気通信主任技術者は、通信事業者の設備を守るために法律で置き方まで決められている資格です。そのぶん、誰がどこに置く人なのか、建設業の主任技術者とどうつながるのかが混ざりやすいところです。今回は資格者証の種類、試験の科目と合格点、合格率、日程という基本をそろえたうえで、今回見比べた資格系・転職系の解説記事およそ11本では取り上げていなかった「事業場ごと・常に勤務する者から選ぶという選任の単位」と「選任後に受けさせる講習の期限」、それに「資格者証のルートで建設業の主任技術者の要件を満たすには交付後5年の実務が付く」という条件まで、条文と公表資料に沿って整理しました。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、通信工事の現場で上司に受験を勧められた方にも読み進めやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
電気通信主任技術者とは?電気通信事業者が、設備を管理する事業場ごとに選任する監督者
電気通信主任技術者は、個人が名乗る肩書きではなく、電気通信事業者が法律に基づいて選任する監督者です。選任の義務を負うのは事業者の側で、資格者証を持っている人の中から選ぶ仕組みになっています。
選任を義務づけているのは電気通信事業法第45条
根拠の条文は次のとおりです。「電気通信事業者は、事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関し総務省令で定める事項を監督させるため、総務省令で定めるところにより、電気通信主任技術者資格者証の交付を受けている者のうちから、電気通信主任技術者を選任しなければならない。ただし、その事業用電気通信設備が小規模である場合その他の総務省令で定める場合は、この限りでない。」(電気通信事業法 第45条第1項)
ただし書の「総務省令で定める場合」は、電気通信主任技術者規則の第3条の2(見出しは「電気通信主任技術者の選任を要しない場合」)に定められています。中身はこの記事では扱わないので、自社が当たるかどうかは条文そのもので確かめてください。
選んだ後の手続きも決まっていて、「電気通信事業者は、前項の規定により電気通信主任技術者を選任したときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。」とされています(電気通信事業法 第45条第2項)。
選ぶ単位は原則「事業場ごと」で、その事業場に常に勤務する人から
どこに何人置くかは、電気通信主任技術者規則が決めています。基本の形は「次の表の上欄に掲げる事業用電気通信設備を直接に管理する事業場ごとに、それぞれ当該事業場に常に勤務する者であつて、同表の下欄に掲げるもののうちから行うこと。」です(電気通信主任技術者規則 第3条第1項第1号)。ここでいう表の中身は、次の見出しで資格者証の種類と並べて示します。
事業者の業務区域が広い場合は、さらに都道府県単位の選任が重なります。条文は「業務区域が一の都道府県の区域を超える電気通信事業者にあつては、前号の規定によるほか、事業用電気通信設備を設置する都道府県ごとに、前号の表の上欄に掲げる事業用電気通信設備の種別に応じ、それぞれ当該都道府県に常に勤務する者であつて、同表の下欄に掲げるもののうちから行うこと。」です(電気通信主任技術者規則 第3条第1項第2号)。タイミングについても「電気通信事業者は、事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関する業務を開始する前に、電気通信主任技術者を選任しなければならない。」と、業務の開始前と決められています(電気通信主任技術者規則 第3条第3項)。
ただし、この単位には例外の規定があります。同じ条の第2項は、総務大臣が告示する場合に、事業場を直接統括する事業場ごとに選任したり、他の事業場や都道府県で選任すべき主任技術者を兼ねさせたりできると定めています(電気通信主任技術者規則 第3条第2項)。試験を公示している日本データ通信協会も「電気通信主任技術者の選任は、原則として、事業用電気通信設備を直接に管理する事業場ごととなります。」と書いたうえで、「但し、多数の事業場が地理的にも組織的にも近接している場合は、電気通信主任技術者が一定の範囲内の他の事業場の設備もあわせて監督できることになっております。」と補っています(日本データ通信協会「電気通信主任技術者とは」2026年10月16日確認)。
監督の中身と、周りの人に課される義務
何を監督するのかは、同じ規則の第3条第4項に並んでいます。たとえば「事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関する業務の計画の立案並びにその計画に基づく業務の適切な実施に関する事項」や、「事業用電気通信設備の事故発生時の従事者への指揮及び命令並びに事故の収束後の再発防止に向けた計画の策定に関する事項」です(電気通信主任技術者規則 第3条第4項第1号・第2号)。
職務と権限は事業法の第49条にあります。主任技術者本人には「電気通信主任技術者は、事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関する事項の監督の職務を誠実に行わなければならない。」という義務があり(電気通信事業法 第49条第1項)、事業者には「電気通信事業者は、電気通信主任技術者に対し、その職務の執行に必要な権限を与えなければならない。」という義務があります(同条第2項)。
見落とされやすいのが第3項で、義務が事業者と現場の両方に向いています。「電気通信事業者は、電気通信主任技術者のその職務を行う事業場における事業用電気通信設備の工事、維持又は運用に関する助言を尊重しなければならず、事業用電気通信設備の工事、維持又は運用に従事する者は、電気通信主任技術者がその職務を行うため必要であると認めてする指示に従わなければならない。」(電気通信事業法 第49条第3項)
条文は、通信工事会社の作業員がこの「従事する者」に当たるとまでは名指ししていません。それでも僕は、通信事業者から設備の工事を請ける会社の施工管理にとって、この資格とのいちばん身近な接点は、発注側の事業者に置かれた主任技術者の指示を受けて工事を進める立場だと考えています。自分が選任される側に回るかどうかは、勤め先が電気通信事業者として設備を管理しているかで変わります。
資格者証は伝送交換と線路の2種類で、監督できる設備が分かれる
電気通信主任技術者の資格者証は、伝送交換主任技術者資格者証と線路主任技術者資格者証の2種類で、それぞれ監督できる設備が違います。選任の表で必要な資格者証が分かれているので、担当する設備がどちらの欄に当たるかが、どちらを受けるかの目安になります。
種類を分けているのは法律で、「電気通信主任技術者資格者証の種類は、伝送交換技術及び線路技術について総務省令で定める。」(電気通信事業法 第46条第1項)、「電気通信主任技術者資格者証の交付を受けている者が監督することができる電気通信設備の工事、維持及び運用に関する事項の範囲は、前項の電気通信主任技術者資格者証の種類に応じて総務省令で定める。」(同条第2項)とあります。これを受けて規則が「法第四十六条第一項の電気通信主任技術者資格者証(以下「資格者証」という。)の種類は、伝送交換主任技術者資格者証及び線路主任技術者資格者証とする。」と定めています(電気通信主任技術者規則 第5条)。
選任のときに使う表(規則第3条)と、監督できる範囲の表(規則第6条)を、資格者証の種類ごとに横に並べると次のようになります。文言は条文のまま、表の上欄と下欄を分けて載せています。
| 資格者証 | 選任される設備(規則第3条第1項第1号の表の上欄) | 監督できる範囲(規則第6条の表) |
|---|---|---|
| 伝送交換主任技術者資格者証 | 「事業用電気通信設備(線路設備及びこれに附属する設備を除く。)」 | 「法第四十一条第一項から第三項まで及び第五項の電気通信事業の用に供する伝送交換設備並びにこれらに附属する設備の工事、維持及び運用」 |
| 線路主任技術者資格者証 | 「線路設備及びこれに附属する設備」 | 「法第四十一条第一項から第三項まで及び第五項の電気通信事業の用に供する線路設備並びにこれらに附属する設備の工事、維持及び運用」 |
出典:電気通信主任技術者規則 第3条第1項第1号・第6条(e-Gov法令検索・2026年10月16日確認)
伝送交換の欄は「線路設備及びこれに附属する設備を除く」とあり、線路の欄と重ならない形で切り分けられています。また監督の範囲は、法第41条第1項から第3項まで及び第5項の電気通信事業の用に供する設備に限られていて、世の中のあらゆる通信設備が対象というわけではありません。
2種類目を受けるときは科目の免除がある
片方を取った後にもう一方を受ける場合は、「一の種類の資格者証の交付を受けている者が、他の種類の資格者証に係る試験を受ける場合は、申請により、別表第三号の区別に従つて、試験科目の試験を免除する。」とされています(電気通信主任技術者規則 第11条第1項)。工事担任者資格者証や無線従事者の免許を持つ人にも、申請による科目免除の規定があります(同条第2項)。どの科目が免除になるかは別表で決まっているので、申請の前に受験の手引きで確かめてください。
試験は受験資格なし。科目は4つ並ぶが受けるのは3科目で、設備管理だけ150点満点
電気通信主任技術者試験には受験資格がなく、科目の免除がない場合、受験者は資格者証の種類ごとに3科目を受けます。合格点は法規と電気通信システムが100点満点の60点以上、設備及び設備管理が150点満点の90点以上です。
受験資格と試験の実施者
受験資格について、試験の運営側は「受験資格は特にありません。」と答え、学歴・年齢・性別・経験年数等に関係なく誰でも受けられると続けています(日本データ通信協会 電気通信主任技術者「よくあるご質問」2026年10月16日確認)。
試験は「電気通信主任技術者試験は、電気通信主任技術者資格者証の種類ごとに、総務大臣が行う。」と法律で定められ(電気通信事業法 第48条第2項)、日程や科目を載せた公示は日本データ通信協会の名前で出ています。
科目と出題方式
令和8年度の公示は、試験科目を「イ 法規 ロ 伝送交換設備及び設備管理(伝送交換主任技術者試験の受験者に限ります。)ハ 線路設備及び設備管理(線路主任技術者試験の受験者に限ります。)二 電気通信システム」と4つ並べ、出題方式を「択一方式(マークシート方式)」としています(日本データ通信協会「令和8年度電気通信主任技術者試験の公示」令和8年2月2日)。4つのうちロとハはどちらか片方しか受けないので、1人が受けるのは法規、電気通信システム、自分の種類の設備及び設備管理の3科目です。
科目ごとに何が問われるかは、規則第9条に書かれています。
- 電気通信システム(伝送交換・線路で共通):「(1)電気通信工学の基礎(2)電気通信システムの大要」
- 伝送交換設備及び設備管理:「伝送交換設備の概要並びに当該設備の設備管理、セキュリティ管理及びソフトウェア管理」
- 線路設備及び設備管理:「線路設備の概要並びに当該設備の設備管理及びセキュリティ管理」
- 法規(伝送交換・線路で共通):電気通信事業法、有線電気通信法、電波法、不正アクセス行為の禁止等に関する法律、電子署名及び認証業務に関する法律(電気通信事業法・有線電気通信法・電波法はそれぞれに基づく命令を含む)、国際電気通信連合憲章及び国際電気通信連合条約の大要
出典:電気通信主任技術者規則 第9条第1項第1号・第2号(e-Gov法令検索・2026年10月16日確認)
伝送交換は「ソフトウェア管理」まで入り、線路は「設備管理及びセキュリティ管理」で止まる、というのが条文上の違いです。
時間割と合格基準
当日は午前に設備及び設備管理、午後に残りの2科目という並びです。公示の時間割は、「伝送交換設備(又は線路設備)及び設備管理」が集合9時45分・試験10時00分〜12時30分、12時30分〜13時35分が休憩、「法規」と「電気通信システム」が集合13時35分・試験13時50分〜16時30分で、「「法規」及び「電気通信システム」の試験時間は各々80 分です。」とされています(令和8年度電気通信主任技術者試験の公示)。同じ公示には「午後の試験開始時刻は受験科目数・受験科目にかかわらず同じです。」という注もあります。
合格基準は、法規と電気通信システムがそれぞれ「満点)100点、合格点)60点以上」、伝送交換設備及び設備管理と線路設備及び設備管理がそれぞれ「満点)150点、合格点)90点以上」です(日本データ通信協会 受験の手引き「合格基準及び試験問題・正答の公表」2026年10月16日確認)。満点が150点なのは設備及び設備管理だけです。
試験手数料
手数料は「①全科目/2科目/1科目受験の方 29,000円(非課税)/②全科目免除申請の方 14,700円(非課税)」です(日本データ通信協会 受験の手引き「試験申請の手続き」2026年10月16日確認)。1科目だけ受ける場合も3科目受ける場合と同じ29,000円で、14,700円は全科目免除を申請するときの手数料です。払込期限は「試験申請後 3 日以内」と公示に書かれています。
合格率は直近の令和8年度第1回で20.8%。科目合格は3年もつ
令和8年度第1回(令和8年7月12日実施)の合格率は、伝送交換・線路を合わせた計で20.8%でした。合格した科目は、その試験の翌月の初めから3年間、申請すれば免除されます。
直近3回の数字は次のとおりです。合格率は資料に載っている値をそのまま写しています。
| 実施回(実施日) | 種別 | 申請者 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和7年度第1回(令和7年7月13日) | 伝送交換 | 2,010 | 1,637 | 560 | 34.2% |
| 令和7年度第1回(令和7年7月13日) | 線路 | 923 | 791 | 252 | 31.9% |
| 令和7年度第1回(令和7年7月13日) | 計 | 2,933 | 2,428 | 812 | 33.4% |
| 令和7年度第2回(令和8年1月25日) | 伝送交換 | 2,256 | 1,745 | 430 | 24.6% |
| 令和7年度第2回(令和8年1月25日) | 線路 | 1,080 | 902 | 241 | 26.7% |
| 令和7年度第2回(令和8年1月25日) | 計 | 3,336 | 2,647 | 671 | 25.3% |
| 令和8年度第1回(令和8年7月12日) | 伝送交換 | 2,017 | 1,642 | 342 | 20.8% |
| 令和8年度第1回(令和8年7月12日) | 線路 | 881 | 735 | 152 | 20.7% |
| 令和8年度第1回(令和8年7月12日) | 計 | 2,898 | 2,377 | 494 | 20.8% |
出典:日本データ通信協会「電気通信主任技術者試験統計情報(令和8年度第1回結果追加)」試験種別毎推移表(2026年10月16日確認)。資料の注記は「(注)合格者数には全科目免除者を含む。」
表の合格者数には、全科目免除者も入っています。同じ統計の科目数別の表では、令和8年度第1回の計で3科目受験者484人の合格率が11.0%、2科目受験者930人が9.7%、1科目受験者931人が34.3%、全科目免除者が32人でした(日本データ通信協会 統計情報「試験種別/試験科目数毎推移表」2026年10月16日確認)。全体の20.8%は、受ける科目の数が違う人をまとめた数字だということになります。
科目合格の有効期間は「翌月の初めから3年」
一部の科目だけ合格点に届いた場合は、その科目を次回以降に持ち越せます。規則は「試験において合格点を得た試験科目のある者が当該試験の行われた月の翌月の初めから起算して三年以内(…中略…)に試験を受ける場合は、申請により、別表第二号の区別に従つて、試験科目の試験を免除する。」と定めています(電気通信主任技術者規則 第10条)。
いつまでに申し込めばよいかについては、運営側が「科目合格した試験の行われた月の翌月の初めから起算して3年間です。具体的には、有効期間内における最終試験の申請受付期間の最終日までが実質的な期限となります。」と説明しています(日本データ通信協会 電気通信主任技術者「よくあるご質問」2026年10月16日確認)。期限の判定は試験日ではなく申請受付の最終日で見る、と覚えておくと取りこぼしません。
次の試験は令和9年1月31日。合格後の資格者証の申請と、選任後の講習の期限
令和8年度第2回の試験は令和9年1月31日(日)で、申請受付は令和8年10月1日(木)から10月21日(水)までです。確認日の2026年10月16日時点では受付期間中です。
令和8年度第2回の日程
公示が示している第2回の申請受付は「令和 8 年 10 月 1 日(木)から 10 月 21 日(水)」、試験日は「令和9年 1 月31日(日曜日)」です(令和8年度電気通信主任技術者試験の公示)。申請は公示で「原則として、インターネットによる申請のみ」とされています。
その後の流れは、電気通信主任技術者のトップページに、受験票発行が2027年1月15日(金)、試験問題・正答の公表が2027年2月3日(水)、合否発表が2027年2月22日(月)と表示されています(日本データ通信協会 電気通信主任技術者トップ・2026年10月16日確認)。公示では、試験結果は試験日から3週間後の月曜日にホームページで発表するとされています。
資格者証は自分で申請する。期限は合格した日から3か月以内
合格しただけでは資格者証は届きません。資格者証が交付されるのは、法律上「電気通信主任技術者試験に合格した者」のほか、総務大臣の認定を受けた養成課程の修了者と、それらと同等以上の専門的知識及び能力を有すると総務大臣が認定した者です(電気通信事業法 第46条第3項)。
申請の期限は「前項の資格者証の交付の申請は、試験に合格した日、第三章に規定する養成課程を修了した日又は第四章に規定する認定を受けた日から三月以内に行わなければならない。」と決まっています(電気通信主任技術者規則 第39条第2項)。申請先は「試験に合格された方は、「試験結果通知」又は「試験免除通知」の「資格者証交付申請のご案内」に記載されている総務省の地方総合通信局又は沖縄総合通信事務所へ資格者証の交付申請をしてください。」とされています(日本データ通信協会 受験の手引き・2026年10月16日確認)。起算日の「試験に合格した日」が具体的にいつになるかは、届いた通知の記載で確かめるのが確実です。
資格者証の有効期間・更新・交付に必要な実務経験については、電気通信事業法の本則と電気通信主任技術者規則の全条(本則と附則)を確認した範囲では、定めは見当たりませんでした(2026年10月16日確認)。交付を受けた人には「事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関する専門的な知識及び能力の向上を図るように努めなければならない。」という努力の規定があります(電気通信主任技術者規則 第40条第2項)。
選任されたら、事業者が講習を受けさせる
資格者証に更新の定めは見当たらない一方で、選任された後には講習があります。講習を受けさせる義務を負うのは電気通信事業者で、法律は「電気通信事業者は、総務省令で定める期間ごとに、電気通信主任技術者に、第八十五条の二第一項の規定により登録を受けた者(以下「登録講習機関」という。)が行う事業用電気通信設備の工事、維持及び運用に関する事項の監督に関する講習(…中略…)を受けさせなければならない。」としています(電気通信事業法 第49条第4項)。
期限は規則第43条の3で決まっていて、整理すると次の3つです。
1つ目は原則で、選任した日から1年以内です(電気通信主任技術者規則 第43条の3第1項)。ただし、資格者証の交付を受けた日から2年を経過しない人と、講習の修了証の交付を受けた日から2年を経過しない人は、この1年以内の対象から外れます(同項ただし書)。
2つ目は、選任した時点で資格者証の交付から2年を経過していない人の場合です。このときは「当該電気通信主任技術者に電気通信主任技術者資格者証の交付を受けた日から三年以内に講習を受けさせなければならない。」とされています(同条第2項)。
3つ目は2回目以降で、講習を受けた人には「その講習の行われた日の属する月の翌月の一日から起算して三年以内に講習を受けさせなければならない。」とされています(同条第3項)。同じ条にはこれらの期限によらない扱いを定めた項もあるので、自分の期限は勤め先の事業者に確かめておくのが確実です。
資格者証で建設業の主任技術者になるルートは、交付後5年の実務が条件
電気通信主任技術者の資格者証を根拠に建設業の電気通信工事の主任技術者の要件を満たすには、資格者証の交付後に電気通信工事に関し5年以上の実務経験が要ります。建設業法施行規則第7条の3第2号の表の電気通信工事業の欄で5年の条件が付くのは電気通信主任技術者の資格者証のルートで(工事担任者の一部の資格者証のルートは3年)、電気通信工事施工管理の第二次検定に合格するルートには、この表の上では年数の条件が付いていません。
建設業法施行規則第7条の3第2号の表に並ぶ3つのルート
建設業の主任技術者は「建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。」と定められています(建設業法 第26条第1項)。このうちハにあたる人を業種ごとに並べているのが建設業法施行規則第7条の3第2号の表で、電気通信工事業の欄は次の3つです。
- 一:電気通信工事施工管理に係る1級又は2級の第二次検定に合格した者(この表に実務年数の記載なし)
- 二:技術士の第二次試験のうち、技術部門を電気電子部門又は総合技術監理部門(選択科目を電気電子部門に係るものとするものに限る)とするものに合格した者
- 三:電気通信主任技術者資格者証の交付を受けて5年以上の実務経験がある者、又は一部の工事担任者資格者証の交付を受けて3年以上の実務経験がある者
出典:建設業法施行規則 第7条の3第2号の表(e-Gov法令検索・2026年10月16日確認)
三のうち電気通信主任技術者の部分は、原文では「電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第四十六条第三項の規定による電気通信主任技術者資格者証の交付を受けた者であつてその資格者証の交付を受けた後電気通信工事に関し五年以上実務の経験を有する者」です。数え始めは資格者証の交付を受けた後で、交付より前の実務は条文の書き方ではこの5年に入りません。
国土交通省の「建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧」(2025年12月18日施行)でも、電気通信工事業の列の電気通信主任技術者は黄色のセルで、枠内に「5」とあります。凡例は黄色が「一般建設業の営業所専任技術者(又は主任技術者)となり得る国家資格」、赤が「特定建設業の営業所専任技術者(又は監理技術者)となり得る国家資格」、数字が「資格取得後、必要な当該業種の実務経験年数」です。同じ列で1級電気通信工事施工管理技士は赤(数字なし)、2級電気通信工事施工管理技士は黄(数字なし)でした(国土交通省 配置技術者となり得る国家資格等一覧・2026年10月16日確認)。
監理技術者になれるかは、一覧の(補)と指定建設業の範囲で見る
電気通信主任技術者は一覧で赤のセルではありませんが、だから監理技術者にはなれない、とまでは言い切れません。一覧の(補)には「表中の主任技術者になれるものに関し、建設業法第十五条第二号ロの規定を満たす場合には、特定建設業の営業所専任技術者(又は監理技術者)となり得ます。(ただし、指定建設業は除かれています)」とあります。そして指定建設業を列挙した建設業法施行令第5条の2の7業種(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業)に、電気通信工事業は入っていません。法第15条第2号ロの指導監督的な実務経験の中身や、監理技術者の要件の全体は、監理技術者になるための要件と主任技術者との違いで順を追って確かめられます。
電気通信工事施工管理技士は、根拠法も実施機関も別の資格
電気通信工事施工管理技士は建設業法の技術検定で、電気通信事業法の電気通信主任技術者とは根拠の法律が違います。令和8年度の電気通信工事施工管理技術検定は、2級第二次検定が令和8年11月15日(日)、1級第二次検定が令和8年12月6日(日)と告示され、試験実施機関は一般財団法人全国建設研修センターです(国土交通省「令和8年度電気通信工事施工管理技術検定の実施について」令和7年12月18日)。令和8年度の申込受付は、2026年10月16日時点ですべて終わっています。
工事担任者を含めた3つの資格が、それぞれどの法律で誰に何を求めているかは、電気通信工事の範囲と関わる資格の整理に表でまとめています。この記事では選任と試験に絞ったので、資格どうしの横並びの比較はそちらで見てください。
僕は、通信事業者の設備を監督する立場を目指すなら電気通信主任技術者、建設業の工事現場で主任技術者として名前を出したいなら電気通信工事施工管理技士、と目的で分けて考えるのが筋だと考えています。前者で建設業の主任技術者の要件を満たすには交付後5年の実務を積む必要があるので、現場の配置技術者を早く目指すなら、施工管理技士の受験資格を先に確かめておく価値はあります。2級は2級電気通信工事施工管理技士の受験資格、1級は1級電気通信工事施工管理技士の受験資格で条件を見られます。出題の傾向をつかむなら、2級の過去問の傾向と1級の過去問の傾向が手がかりになります。
※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
【PR】現場の側で主任技術者を目指すなら、施工管理技士という道もある
建設業の側で主任技術者の要件を満たしたい人は、電気通信工事施工管理技士の受検を軸に考えることがあります。独学だけで進めるか迷う段階なら、施工管理技士向けの講座がどんな形で用意されているのか、先に確かめておく手もあります。
- 電気通信工事の現場で、主任技術者の要件を満たす道を探している
- 資格者証のルートと施工管理技士のルートの、どちらが自分に合うか迷っている
- 試験勉強を一人で進めることに不安がある
電気通信主任技術者に関する情報まとめ
- 選任の仕組み:電気通信事業者が、設備を直接に管理する事業場ごとに、常に勤務する資格者証保有者から業務開始前に選任する(告示による統括・兼任や選任を要しない場合の規定あり)。従事する者には主任技術者の指示に従う義務がある
- 資格者証の種類:伝送交換と線路の2種類。監督できるのは法第41条の対象となる設備の範囲で、種類ごとに分かれる
- 試験:受験資格なし。受けるのは3科目で、法規と電気通信システムは100点満点の60点以上、設備及び設備管理は150点満点の90点以上。受験する場合の手数料は科目数にかかわらず29,000円(全科目免除申請は14,700円)
- 合格率と科目合格:令和8年度第1回は計20.8%(合格者数には全科目免除者を含む)。合格科目は翌月の初めから3年間免除される
- 日程と手続き:令和8年度第2回は令和9年1月31日、申請受付は10月21日まで。資格者証は合格した日から3か月以内に申請し、選任後は事業者が期限内に講習を受けさせる
- 建設業との関係:資格者証のルートで主任技術者の要件を満たすには交付後5年以上の実務が要る。施工管理技士は建設業法の別の資格で、施行規則第7条の3第2号の表では第二次検定合格のルートに実務年数の記載は無い(検定の受検資格は別に確かめる)
以上が電気通信主任技術者に関する情報のまとめです。
電気通信主任技術者は、取った瞬間に何かができる免許というより、事業者が設備を守るために置く監督者の席に座るための資格です。まずは自分が見ている設備が伝送交換と線路のどちらの欄に入るかを決め、令和8年度第2回の申請受付が10月21日までに間に合うかを確かめてください。建設業の主任技術者も視野にあるなら、資格者証の交付後5年という数え方を前提に、2級電気通信工事施工管理技士の受験資格と並べてどちらを先に取るかを決めておくと、遠回りをせずに済むと思います。
