アール・デコとは?意味、特徴、代表建築、ヌーヴォーとの違いなど

  • アール・デコって何?
  • どんな特徴の様式?
  • いつの時代の話?
  • 代表建築は?
  • アール・ヌーヴォーと何が違うの?
  • 日本のアール・デコは?
  • 現代建築への影響は?

上記の様な悩みを解決します。

アール・デコは1920〜30年代に世界を席巻したデザイン様式です。エンパイア・ステート・ビルやクライスラー・ビルディングなど、現代でも「ニューヨークの代名詞」とされる建物の多くがこの様式で建てられました。装飾的なアール・ヌーヴォーとは対極的な、幾何学・機械美の様式を整理しておきましょう。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

アール・デコとは?

アール・デコとは、結論「1920〜1930年代に世界的に流行した、幾何学的で機械的なデザインを特徴とする建築・装飾様式」のことです。フランス語で Art Déco、もとは「装飾芸術」の略称ですね。

1925年にパリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称:アール・デコ博)」が名前の由来で、このため「1925年様式」とも呼ばれます。第一次世界大戦後の機械化・工業化を肯定的に取り入れた様式で、アール・ヌーヴォーの曲線・植物モチーフから一気に転換した点が際立っています。建築だけでなく家具・宝飾・グラフィック・ポスター・自動車デザインまで影響範囲が広いのが特徴で、僕としても「20世紀の都市文化のビジュアル基盤を作った様式」だと捉えていて、現代まで脈々と続くニューヨークの摩天楼イメージの源流という意味でもとても重要な様式だなと感じます。

アール・ヌーヴォーとの対比はこちらでも触れています。

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アール・デコが生まれた歴史背景

なぜこの時期にアール・デコが流行したか、社会的な背景を押さえておくと、意匠の意味が立体的に見えてきます。

第一次世界大戦の終結(1918年)で大量生産・大量消費の時代が到来し、手工芸ではなく工業製品が価値を持つ時代に変わったことが最大の前提。蒸気船・飛行機・自動車・摩天楼など、機械の力に対する楽観的な憧れが社会に広がっていた時代で、これがデザインに直結します。

そして1925年のパリ万博(現代装飾美術・産業美術国際博覧会)でアール・デコ様式が世界の舞台に正式デビュー。この博覧会を境に流行が世界各国へ伝播していきました。同時期にジャズ時代(Jazz Age)、フラッパー、サイレント映画の隆盛があって、都市の消費文化として一気に広がった、というのが時代背景。ツタンカーメンの墓発見(1922年)やアステカ・マヤ古代文明への関心など、異国趣味(オリエンタリズム)が意匠に取り込まれていったのもこの時期の特徴です。

アール・デコの特徴

アール・デコの建築・意匠の特徴は、ひと言で言えば「直線・幾何学・機械美」。

  • 直線・三角形・円・ジグザグで構成(曲線を避ける)
  • 左右対称、垂直方向の強調、リズミカルな反復
  • クロームメッキ、ステンレス、ガラス、合成樹脂、大理石の活用
  • 太陽光(サンレイ)、稲妻、噴水、扇形のモチーフ
  • エジプト・アステカ・マヤ・アジアなど異国趣味の取り込み
  • 機械生産との親和性が高い量産可能なデザイン

アール・ヌーヴォーの「植物的曲線・手工芸」と正反対の「幾何的直線・工業生産」が、並べてみると分かりやすい対比になります。

アール・デコの代表建築と日本の事例

世界の代表作はやはりニューヨークの摩天楼群。クライスラー・ビルディング(1930年、77階、319m)、エンパイア・ステート・ビルディング(1931年、102階、381m)、ロックフェラー・センター、ラジオ・シティ・ミュージック・ホールあたりが代表選手です。クライスラー・ビルの放射状の頂部装飾は、自動車のホイールキャップをモチーフにしたものとして有名ですね。

ヨーロッパでは1925年装飾美術博覧会のパビリオン群、ウィーンのストックレー邸(ヨゼフ・ホフマン)、ロンドンのBBC放送センターなど。南米・アジアではリオデジャネイロのキリスト像の台座、上海・バンドの建物群が代表例です。

日本にもこの時代の流行を反映した名作がいくつかあります。一番有名なのが東京都庭園美術館(旧朝香宮邸、1933年)で、フランス人デザイナーのアンリ・ラパン、ルネ・ラリックが内装を手がけた日本のアール・デコの最高傑作。現在は美術館として公開されています。鳩山会館(1924年、東京・音羽)や、再生工事で当時の意匠を残しつつ建て替えられた大丸心斎橋店本館(旧本館1933年、設計:ヴォーリズ)も代表例ですね。

アール・ヌーヴォーとの違い

両様式の比較をまとめて整理します。

観点 アール・ヌーヴォー アール・デコ
時代 1890年代〜1910年頃 1920〜1930年代
曲線・蔓・流れ 直線・幾何学・ジグザグ
モチーフ 植物・花・女性の髪 太陽光・噴水・幾何形
印象 有機的・装飾過多 機械的・モダン
素材 鉄・ガラス・タイル クローム・ステンレス・大理石
背景 産業革命への反動 戦後の機械文明肯定
きっかけ 1900年パリ万博 1925年パリ装飾美術博
量産性 低い(手仕事) 高い(機械生産)

「機械化への反動」のヌーヴォーから、「機械化を肯定」するデコへ。たった20年で社会の空気が180度変わったことを反映した対照的な様式、というのが両者の関係です。

アール・デコに関する注意点

建築史・実務両面で押さえたい3点を挙げておきます。

注意点①:試験対策では「1925年」「装飾美術博」を覚える

一級建築士の学科試験ではアール・デコの発祥年と展覧会名が問われるパターンが多いです。「1925年・パリ・装飾美術博」のセットを丸ごと押さえておくのが一番効率的。

注意点②:現代建築の幾何学意匠の源流

ニューヨーク摩天楼の頂部装飾、エレベーターホールの幾何模様、ファサードの段状構成など、現代建築のアイコン的な意匠はアール・デコをルーツとするものが多いです。新築工事で歴史的意匠を再現する場合はこちらも参考に。

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注意点③:歴史的建造物の改修工事

アール・デコ建築は1920〜30年代築なので、現在は築90年超。耐震補強・設備更新の改修案件として出てくることがあって、装飾を残しつつ機能を更新する難しい工事になります。僕としても、この時期の歴史的建造物のリノベは「設計・施工・行政の三者協議が長期化する案件」として、初期から余裕を持ったスケジュールで動くべきだと思っています。

アール・デコに関する情報まとめ

  • アール・デコとは:1920〜30年代の幾何学・機械美を特徴とする建築・装飾様式
  • 歴史背景:第一次大戦後の機械文明肯定、1925年パリ装飾美術博がきっかけ
  • 特徴:直線・幾何学・対称性/新素材/垂直強調/異国趣味
  • 代表建築:クライスラー・ビル/エンパイア・ステート/東京都庭園美術館
  • ヌーヴォーとの違い:曲線vs直線、植物vs幾何、手工芸vs機械生産
  • 注意点:1925年が試験頻出/現代意匠の源流/歴史的建造物の改修

以上がアール・デコに関する情報のまとめです。

アール・デコは「機械文明を肯定的に表現した最初の様式」として、現代建築のあらゆる幾何学意匠のルーツになっています。試験対策だけでなく、東京都庭園美術館や日本橋・横浜・神戸の歴史建築を実物で見ると、写真より遥かに迫力があるのでおすすめ。一通り基礎知識は網羅できたかなと思います。

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