- 床荷重ってなに?
- 種類はどんなものがある?
- 固定荷重と積載荷重の違いは?
- 用途別の値はどれくらい?
- 計算はどうやる?
- 現場で気をつけることは?
上記の様な悩みを解決します。
床荷重とは、結論「建物の床に作用する鉛直方向の荷重の総称」のことです。一見シンプルですが、構造設計では 「固定荷重・積載荷重・積雪荷重」の3つに分けて積み上げるのがお作法。建築基準法の 施行令85条では、住宅・事務所・店舗・倉庫など用途ごとに 積載荷重の値が細かく規定されていて、これを知らないと 過小設計や過剰設計につながります。本記事では、床荷重の定義・種類・用途別の目安・計算方法・施工管理で見るべきポイントまで、構造設計の入門レベルから整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
床荷重とは?
床荷重とは、結論「建物の床面に作用する鉛直下向きの荷重の総称」のことです。
英語では floor load または floor live load(積載成分のみ)。建物の床スラブ・小梁・大梁・柱・基礎へと、上から下へ順番に伝わっていく 荷重の最初の入口にあたります。
床荷重に含まれるもの
床荷重に含まれる代表は、
- 床自身の重さ(コンクリートスラブ、仕上げ材、天井下地)
- 床の上に常時載っている物の重さ(什器、機械、配管)
- 人や家具などの可変の重さ(積載荷重)
- 積雪時の雪の重さ(屋根床に限る)
→ つまり「床に乗っかっているもの全部」が床荷重。これを kN/m²(キロニュートン毎平方メートル)という 単位面積あたりの圧力で表すのが構造設計の基本です。
床荷重の単位
床荷重 [kN/m²] = 床面1m²あたりに作用する力
- 1 kN/m² ≒ 102 kgf/m² ≒ 「お米1俵(60kg)が2袋弱、1m²に乗っている」イメージ
- 住宅の居室で 1.8 kN/m²、事務所で 2.9 kN/m²、倉庫で 3.9 kN/m²
→ 数字だけ見るとピンと来ませんが、「ざっくり大人が4〜10人乗っても床が抜けない設計」になっていると思えばイメージしやすいです。
荷重そのものの基本はこちらに整理しています。
床荷重の種類
床荷重は 3つの種類に分けて整理するのが構造設計のお作法。
①固定荷重(Dead Load、DL)
建物に 常に作用している荷重。
- 床スラブの自重(コンクリートの厚み × 単位体積重量)
- 仕上げ材(フローリング、タイル、長尺シート)
- 天井下地・天井材
- 間仕切り壁の換算荷重(建築基準法では1.0kN/m²で計上することが多い)
- 設備・配管の固定荷重
→ 「変動しない、いつでもそこにある重さ」。設計図書通りに材料が並べば、その重さは変わらない前提で扱います。
②積載荷重(Live Load、LL)
建物の 使用状況によって変動する荷重。
- 人、家具、机、什器
- 可動の機械、AV機器、本
- 動かす可能性のある重量物
→ 「動かす前提のものの重さ」。建築基準法の 施行令85条で用途別に細かく規定。居室>事務所>店舗>倉庫の順に重く設定されます。
③積雪荷重(Snow Load、SL)
屋根や外部床に 雪が積もったときの重さ。
- 多雪区域:地域別の垂直積雪量で計算(cm単位)
- 一般地域:屋根面1m²あたり20N/cm × 積雪量で簡易計算
- 雪の単位荷重:0.020 kN/m² × 積雪深(cm)
→ 東北・北海道・北陸では支配的に大きい。東京の3倍以上の積雪荷重になる地域があります。
床荷重の合計
床荷重合計 = 固定荷重DL + 積載荷重LL(+積雪荷重SL)
→ 設計時はこの合計を 長期荷重・短期荷重として、断面算定に使います。
積雪荷重・地震荷重の具体的な計算はこちらに整理しています。


固定荷重と積載荷重の違い
施工管理者が 一番混乱しやすいのがこの2つ。整理します。
①作用時間の違い
| 項目 | 固定荷重DL | 積載荷重LL |
|---|---|---|
| 作用時間 | 常時 | 使用時のみ |
| 変動 | ほぼゼロ | 大きく変動 |
| 設計上の扱い | 長期+短期 | 用途別に区分 |
| 原因 | 自重・仕上げ | 人・家具・設備 |
→ 固定荷重は 「建てた瞬間から終わりまで」作用、積載荷重は 「使う瞬間にだけ」作用するイメージ。
②具体例で見る違い
事務所ビルの一室(10m × 10m = 100m²)を例にすると、
- 固定荷重:スラブ自重15cm × 24kN/m³ = 3.6kN/m²、仕上げ・天井 = 0.8kN/m²、間仕切り = 1.0kN/m² → 合計5.4kN/m²
- 積載荷重:事務室の床用 = 2.9kN/m²
→ 床1m²あたり 8.3kN(約850kgf)が常時+使用時にかかる計算。100m²の床全体では 830kN(約85トン)が支えられる必要があります。
③計算上の係数の違い
長期荷重 = 固定荷重DL + 積載荷重LL(長期用)
短期荷重 = 固定荷重DL + 積載荷重LL(短期用) + 地震/積雪/風
→ 積載荷重は 「床用・大梁用・地震用」で 値が3段階に下がる特徴があります。床は直接乗るので大きく、地震時は同時に最大値が出る確率が低いので小さく評価されます。
これは構造計算上重要なので、別記事で詳しく解説しています。

用途別の積載荷重の目安
建築基準法 施行令85条で規定された 用途別の積載荷重表を整理します。
①住宅・事務所系の積載荷重
| 用途 | 床用 [N/m²] | 大梁・柱・基礎用 [N/m²] | 地震用 [N/m²] |
|---|---|---|---|
| 住宅の居室 | 1,800 | 1,300 | 600 |
| 事務室 | 2,900 | 1,800 | 800 |
| 学校・教室 | 2,300 | 2,100 | 1,100 |
| 店舗の売場 | 2,900 | 2,400 | 1,300 |
| 集会場・劇場(固定席) | 2,900 | 2,600 | 1,600 |
→ 「床用 > 大梁・柱用 > 地震用」の順に下がっていくのが基本パターン。
②倉庫・特殊用途の積載荷重
| 用途 | 床用 [N/m²] |
|---|---|
| 教室の集会場(固定席なし) | 3,500 |
| 百貨店・店舗の売場 | 2,900 |
| 倉庫(一般) | 3,900以上 |
| 自動車車庫(乗用車) | 5,400 |
| 工場(軽機械) | 設計者判断(5,000〜10,000) |
→ 倉庫は 「設計者が現場の実積載状態を確認して上乗せ」するのが一般的。実態が 3,900N/m²を超えることが普通にあるので、用途変更時は要注意。
③床用・大梁用・地震用の使い分け
床スラブの応力計算 → 床用(最大値)
大梁・柱・基礎の計算 → 大梁・柱・基礎用(中間値)
地震力の算定(建物重量) → 地震用(最小値)
→ 「広い範囲で同時に最大荷重が乗る確率は低い」という統計的判断から、面積の広いものほど積載荷重を割り引いて評価する 設計思想です。
④実務での感覚値
| シーン | 床用積載荷重 |
|---|---|
| 普通の住宅マンション | 1.8 kN/m² |
| オフィスビル一般 | 2.9 kN/m² |
| サーバルーム・特殊オフィス | 5.0〜10.0 kN/m²(個別設計) |
| 物流倉庫(一般) | 3.9〜5.0 kN/m² |
| ハイラック倉庫(10mピッキング) | 10.0〜20.0 kN/m²(個別設計) |
→ 用途変更(オフィス→倉庫、住宅→ジム)では 床荷重不足が頻発するので要注意。
積載荷重の細かい話はこちらに整理しています。

床荷重の計算
床荷重の 計算手順を例題で整理します。
例題:マンション3LDKの居室(6畳、3.6m × 2.7m = 9.72m²)
① 固定荷重の積み上げ
スラブ自重:0.18m × 24kN/m³ = 4.32 kN/m²
仕上げ材:フローリング・遮音マット = 0.50 kN/m²
天井下地・ボード:0.20 kN/m²
間仕切り壁換算:0.80 kN/m²
→ 固定荷重DL = 5.82 kN/m²
② 積載荷重の代入
住居の居室床用:1.80 kN/m²
→ 積載荷重LL = 1.80 kN/m²
③ 床荷重合計(長期)
DL + LL = 5.82 + 1.80 = 7.62 kN/m²
④ 1部屋全体の鉛直荷重
9.72m² × 7.62 kN/m² = 74.1 kN ≒ 7.55 tonf
→ 6畳の部屋に約7.5トンの鉛直荷重が常時作用している計算。意外と大きい数字です。
等分布荷重 vs 集中荷重
床荷重は基本的に 等分布荷重として扱いますが、
- ピアノ:300〜500kg(一点に集中)
- 冷蔵庫(大型):100〜150kg
- 大型書棚:床面積1m²で500〜1,000kg
→ こうした 重量物の集中荷重は、床用2.9kN/m²の積載荷重だけでは持たないケースが出てきます。設計時に 「床の補強」を検討するか、設置位置を制限する運用が必要。
等分布荷重・集中荷重の細かい話はこちらに整理しています。


床荷重の現場での注意点
施工管理者として、床荷重で トラブルが起きやすいポイント。
①用途変更時の床荷重不足
住宅 → ジム(ダンベル・マシン)
住宅床用 1.8kN/m² → ジム必要荷重 5.0〜8.0kN/m²
→ 床補強しないと積載荷重オーバー
僕も電気設備の改修で、事務所→データセンター用途変更の現場に立ち会ったことがありますが、
- 既存スラブ厚 18cm → サーバラック荷重に 足りず、二重床下のスラブ補強で工期が2ヶ月延びた
- 床用積載荷重の確認を設計の初期段階でやっていれば防げた事例
→ 改修工事では 設計図書の積載荷重表を必ず確認します。
②仮置きの集中荷重
工事中の 資材仮置きで意外と荷重が出る場面が多い。
- コンクリートブロック1パレット:1.5〜2.0トン
- 石膏ボード1パレット:1.0〜1.5トン
- 鉄筋束(10m×D13):1パレット約2〜3トン
→ 「点で乗せると床のたわみが先に来る」ので、工事中の床仮置きは 必ず複数点に分散します。
③水を貯める設備の床荷重
水槽・プール・受水槽は 水1m³ = 約1トンで、
- 2m × 3m × 1m(6トン)の受水槽 → 6m²の床に6トン = 1.0kN/m²の追加荷重
- 架台で集中させると床用積載荷重を超える可能性
→ 設備計画と構造計画の 取り合いチェックは施工管理の必須業務です。
④施工中・解体中の不均等荷重
スラブ打設直後の 積み込み荷重、解体時の がれき集積などは、設計の積載荷重を 平気で超えることがあります。
- 鉄筋荷重(残置)が1m²あたり10トンを超えたことがある現場では、スラブにひび割れが出た事例
- 解体物の集積は、計画的に分散搬出
→ 施工計画段階で 「現場の荷重チェック」を入れるのが、安全管理の基本です。
積載荷重の運用に関わる話はこちらに整理しています。

床荷重に関する情報まとめ
- 床荷重とは:建物の床に作用する鉛直下向きの荷重の総称
- 種類:固定荷重DL、積載荷重LL、積雪荷重SL の3つ
- 固定荷重 vs 積載荷重:DLは常時、LLは使用時のみで用途別に変動
- 用途別の目安:住宅1.8kN/m²、事務所2.9kN/m²、倉庫3.9kN/m²以上
- 床用 > 大梁・柱用 > 地震用:面積が広いほど積載荷重を割り引く
- 計算:DL + LL + 必要に応じてSL を等分布荷重で合計
- 現場での注意点:用途変更、仮置き、水槽、解体時の過積載
以上が床荷重に関する情報のまとめです。床荷重は 建物設計の最も基本的な入力値であると同時に、施工管理上は 「過積載のリスクをどう抑えるか」という視点が欠かせません。設計図書の積載荷重表を一度通読すると、用途変更や改修時の判断が格段にしやすくなるはず。一通り床荷重の基礎知識は理解できたと思います。
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