- 横補剛材ってなに?何のために付けるの?
- 図面に書かれてる「つなぎ梁」って横補剛材?
- 横補剛材の間隔って決まってるの?
- 種類はどれくらいある?
- 鉄骨建方のとき、どのタイミングで取り付ける?
- 「これ後でも入れられるよね?」と聞かれたら何と答える?
上記の様な悩みを解決します。
横補剛材は、鉄骨梁の図面によく出てくる小梁やつなぎ梁の正体。「主役の大梁を支える脇役」みたいな部材ですが、これが効いてないと梁が横座屈(よこざくつ)して建物全体の耐力を出せなくなるので、構造的にはかなり重要。施工管理として鉄骨建方の段取りを組むときに、「この小梁は構造で必要か、それとも仮設代わりに後で良いか」を判断できるようになっておきたいところ。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
横補剛材とは?
横補剛材とは、結論「鉄骨梁の横座屈を防ぐために設置する補助部材」のことです。
→ ざっくり、「H形鋼が横に座屈しないように止める脇役の部材」が横補剛材、というイメージです。
鉄骨のH形鋼などは、上から荷重を受けるとき「縦には強いけど横には弱い」という特性があります。下フランジが圧縮されたときに横方向にぐにゃっと逃げてしまう(=横座屈)、というのが起きやすい。これを防ぐために、梁の横方向の動きを止める部材を入れる。これが横補剛材。
イメージとしては、長い定規を縦にして上から押すとまっすぐ縮まずに横にしなる、あの現象を建築スケールで防いでいる感じ。横座屈は構造設計の世界では「塑性化前に座屈で耐力低下する」という非常に困った現象なので、設計者としては「梁の塑性ヒンジが完成する前に座屈させない」ことを最優先で考えています。座屈の基本概念はこちら。
横座屈と横補剛材の関係
横座屈と横補剛材の関係を、もう少し具体的に見ていきます。
横座屈と横補剛材の効果
横座屈が起きる条件は、梁が長い(横補剛されていない区間が長い)、梁せいに対して幅が狭い(細長比が大きい)、荷重が大きい・偏っている、というあたり。H形鋼は強軸(梁せい方向)には強く、弱軸(フランジ幅方向)には弱い。強軸方向には十分な耐力があっても、弱軸方向に倒れる方向で座屈してしまう、というのが横座屈。
横補剛材を入れる効果は、梁の横方向の動きを止める=弱軸方向の座屈を強制的に防ぐ、横補剛材間の長さを「有効座屈長さ」として再計算できる、結果として梁の許容曲げ応力度が大幅に上がる、というあたり。
ざっくり言えば「梁を細かく区切って、長い1本→短い数本のように扱える」のが横補剛材の効果。長い梁を入れたいけど座屈で耐力が出ない、というときの定番解決策です。座屈長さやオイラー座屈の話が近いトピック。

横補剛材の配置・間隔の基準
横補剛材の配置間隔は、構造設計的に梁長や梁せいで決まるルールがあります。
配置基準と目安
標準的な配置基準(建築学会 鋼構造設計規準など)は、横補剛間隔の目安が梁長の1/8〜1/12(一般的な大梁で)、塑性ヒンジを期待する梁端部付近は特に密に配置、梁の両端付近1/4区間は中間部より配置を密に(端部の応力が大きいため)、というあたり。
目安寸法は次の通り。
| 梁長 | 横補剛間隔の目安 |
|---|---|
| 6m | 700〜1,500mm(4〜8カ所) |
| 8m | 1,000〜2,000mm(5〜10カ所) |
| 10m | 1,000〜2,500mm(6〜12カ所) |
特に重要なのは「均等」な配置。荷重が偏っている部分(柱の近く、開口の隅)は座屈の起点になりやすいので、応力の大きい区間ほど密に入れます。
フランジ補剛とウェブ補剛
フランジ補剛は上下フランジの横方向動きを止める(一般的な小梁・スラブの拘束)、ウェブ補剛はウェブの面外変形を止める(スチフナーなどで対応)、というあたり。横補剛と聞いて多くの人がイメージするのはフランジ補剛のほう。ウェブの局部座屈はスチフナー(補剛板)で対応するので、別物として整理しておくと混乱しません。
横補剛材の種類
横補剛材として実際に使われる部材はいくつかあります。
主要な種類
小梁(つなぎ梁)は、最もメジャーな横補剛材、大梁同士をつなぐ形で配置されたH形鋼や軽量鉄骨、スラブを支える役割と兼ねていることが多い、一般的な事務所ビル・倉庫で多用、というあたり。
水平ブレース(屋根面ブレース)は、屋根や床の水平面に対して斜めに入れる引張部材、平面剛性を高めると同時に梁の横補剛材としても機能、屋根を持つ工場・倉庫で頻出、というところ。
スラブとの一体化は、RC床スラブ・デッキプレート+コンクリートスラブが上フランジと一体化、スラブが連続的な横補剛材として機能、中・大規模建築の上フランジは多くの場合これでカバー、スタッドジベルでスラブと梁を結ぶことで横補剛効果が効く、というあたり。
専用の横補剛材は、部分的にスラブが切れている部分に追加する小型部材、角形鋼管・L型鋼・フラットバーなど、というところ。
屋根折板は、工場・倉庫の屋根折板自体が上フランジの横補剛として機能する場合あり、ただし折板の固定方法・剛性によって扱いが異なる、というあたり。
スラブとの一体化がカギなので、デッキプレート+スタッドジベルの理解は重要。

鉄骨建方時の横補剛材の扱い
施工管理として知っておきたい、鉄骨建方時の横補剛材の取り扱いを整理します。
建方順序と後施工判断
建方順序の基本は次の通り。
- 柱の建て方(地組または現地建方)
- 大梁の架設(柱間に大梁を取り付け)
- 小梁・水平ブレースの取り付け(横補剛材としての小梁類)
- 本締め(高力ボルトの締付け順序にも注意)
- デッキプレート敷設・コンクリート打設
「この小梁、後で入れられないか?」という相談は現場でよく出ます。判断ポイントは、建方時の安全性(大梁が横補剛材なしで自立できるか=風荷重・作業荷重に耐えるか)、構造的な完成順序(スラブコンクリート打設までに必要な横補剛材が入っているか)、本締めのタイミング(高力ボルト本締めは横補剛材まで含めて完了させるのが基本)、というあたり。
結論を言うと、「建方が完了する前に、横補剛材を含めて全部組んでおく」のが原則。後施工にすると、コンクリート打設前の風荷重で梁が座屈する事故も実例があります。
仮設倒れ止めとの違い・打設前確認
似た用語に「仮設の倒れ止め」がありますが、これは建方時の安全のために一時的に取り付ける部材で、本設の横補剛材とは別物。仮設の倒れ止めは、本設の小梁を取り付けたら撤去します。
スラブコンクリート打設前に、横補剛材が全て図面通りに取り付き、本締めも完了していることを確認するのが配筋検査と並んで重要。打設後に「横補剛が一部不足」と判明しても、簡単には追加できません。スラブ打設前のチェックはこちら。

横補剛材を扱うときの注意点
施工管理の現場で横補剛材まわりの注意点を整理します。
判断・本締め・設備
「省けるか」の判断は構造設計者へ。「この小梁、構造的にいらないんじゃない?」と職人さんから聞かれることがあります。構造図に明記されている小梁は、ほぼ確実に横補剛材として計算されている。「省けるか」の判断は必ず構造設計者に確認。現場で判断しない、というルール。
接合部の本締めを忘れない。横補剛材の接合は、高力ボルト摩擦接合または溶接接合。本締めを忘れると横補剛効果が効かない。マーキングで本締め完了を可視化(締付けトルクの管理含む)、というあたり。ボルトの基本知識はこちら。

設備配管との取り合いとして、横補剛材として入っている小梁は、勝手に切ったり穴を開けたりしてはいけない。設備配管の取り回しで小梁を貫通したい場合は、事前に構造設計者の承認が必要。スリーブ補強の話と同じく、「梁を勝手に削る」はNG。
改修・見分け方
改修・増築時の注意として、既存建物の改修で「この小梁、邪魔だから撤去したい」という要望があった場合、横補剛材として効いている場合は撤去すると横座屈で大梁の耐力が出なくなるリスク。既存構造の評価が先、撤去判断は後。
「フランジ補剛が必要な梁」の見分け方として、構造図に「横補剛」「LB(Lateral Bracing)」「P.S(パイプサポート的な意味で使う場合あり)」などの記号で明記されることが多い、凡例で必ず横補剛符号を確認、スラブで補剛されている梁は構造図上に明記されないこともあるのでスラブを撤去するときも注意、というあたり。
横補剛材に関する情報まとめ
- 横補剛材とは:鉄骨梁の横座屈を防ぐために設置する補助部材
- 役割:梁の横方向の動きを止め、許容曲げ応力度を上げる
- 配置間隔の目安:梁長の1/8〜1/12、応力大区間ほど密に
- 種類:小梁(つなぎ梁)、水平ブレース、RCスラブ、屋根折板、専用補剛材
- 施工順序:建方完了までに横補剛材を全て取り付け、本締めまで完了させるのが原則
- 仮設倒れ止めとの違い:仮設は建方時の安全用、本設の横補剛材は構造性能用
- 省けるかの判断:必ず構造設計者へ確認、現場判断はNG
- 注意点:接合部の本締め、設備配管との取り合い、改修時の評価
以上が横補剛材に関する情報のまとめです。
横補剛材は、「H形鋼の弱点を補う黒子」みたいな存在。図面上では地味な小梁・つなぎ梁ですが、これがあるから大梁が設計通りの耐力を出せているわけです。鉄骨建方の段取りを組むときに「横補剛材まで組み終わった状態が建方完了」という意識を持っておけば、コンクリート打設前の手戻りを防げます。職人さんから「これ省けない?」と聞かれたら、反射的に「構造設計者に確認します」と返せるのが施工管理の正解ですね。
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