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塑性ひずみとは?弾性ひずみとの違い、計算、応力ひずみ線図など

  • 塑性ひずみってなに?
  • 弾性ひずみと何が違うの?
  • 応力ひずみ線図のどこに出てくる?
  • 全ひずみとの関係は?
  • 計算ってどうやるの?
  • SS400とかコンクリートだとどれくらいの値?

上記の様な悩みを解決します。

塑性ひずみは、結論「降伏点を超えた材料に残る、もう元に戻らないひずみ」のことです。荷重を抜いてもゼロに戻らないので、別名で残留ひずみとも呼ばれます。応力ひずみ線図でいうと、降伏点を過ぎてから先に現れる水平〜緩やかな上り坂の領域で増えていく成分。「全ひずみ = 弾性ひずみ + 塑性ひずみ」という分解式で読み解くと、構造設計で出てくる「靱性」や「終局強度」の話が腹に落ちてきます。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

塑性ひずみとは?

塑性ひずみとは、結論「材料が降伏点を超えて伸び縮みしたあとに、荷重を取り除いても戻らずに残ってしまうひずみ」のことです。

英語では plastic strain。記号は ε_p(イプシロン・ピー)が一般的です。

塑性ひずみのイメージ

  • 針金をぐにっと曲げると、手を離してもまっすぐに戻らない
  • スプーンを力いっぱい曲げると、形が変わったまま固定される
  • 鋼板に大きな荷重をかけたあと、荷重を抜いても変形が残る

これらの「戻らずに残った変形」が、塑性ひずみの正体ですね。バネのように荷重を抜けばゼロに戻る弾性ひずみとは性質がはっきり分かれます。

塑性ひずみが生まれる仕組み

材料の内部を金属組織レベルで見ると、結晶格子の中で転位(てんい)という線状の欠陥が滑り運動を起こしています。降伏点を超えると、この滑りが本格的に走り出して結晶のずれが定着し、荷重を抜いても元に戻らない変形が残る。これがミクロ視点での塑性ひずみの正体です。マクロな建築構造の話としては「降伏した瞬間から塑性ひずみが蓄積し始める」と覚えておけばOKです。

応力ひずみの基礎をまだ押さえていない方は、こちらの記事をどうぞ。

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塑性ひずみと弾性ひずみの違い

両者の違いを表で整理します。

項目 弾性ひずみ ε_e 塑性ひずみ ε_p
領域 弾性域(降伏点まで) 塑性域(降伏点超え)
荷重を抜いたとき 完全にゼロに戻る 戻らずに残る
物理イメージ バネ 粘土・針金
支配する法則 フックの法則(σ=Eε) 降伏条件・硬化則
設計での扱い 通常使用時の応力 終局時・地震時の余力

ざっくりした言い方

  • 弾性ひずみは「材料の中のバネ
  • 塑性ひずみは「バネの限界を超えた粘土の変形

全ひずみとの関係

降伏点を超えて荷重をかけると、材料には弾性ひずみと塑性ひずみが両方同時に乗っかります。

全ひずみ ε = 弾性ひずみ ε_e + 塑性ひずみ ε_p

このシンプルな分解式が、塑性ひずみの計算で一番大事な式ですね。

弾性域そのものについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

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応力ひずみ線図の中での塑性ひずみ

塑性ひずみは、応力ひずみ線図のどこに現れるのかを整理しておきます。

応力ひずみ線図のざっくり区分(鋼材の場合)

  • ①弾性域:直線部分。傾きはヤング率 E。塑性ひずみはまだゼロ
  • ②降伏点:上降伏点・下降伏点の段差。ここから塑性ひずみが出始める
  • ③降伏棚:応力がほぼ一定で、ひずみだけ増える区間(鋼材特有)
  • ④ひずみ硬化域:ひずみが進むほど応力が再び上がる区間
  • ⑤最大応力点:引張強さσ_u
  • ⑥破断:ひずみ最大、ここで切れる

塑性ひずみは②の降伏点を過ぎた瞬間から増え始めて、③〜⑤の領域で大きく蓄積していきます。

塑性ひずみの読み取り方

応力ひずみ線図の任意の点からヤング率 E と平行な線を下方向に引き、ひずみ軸(横軸)と交わる点を読み取ると、その時点までに材料が経験した塑性ひずみが分かります。逆に、その点から線図上の点までの距離が弾性ひずみです。

ε(横軸の位置)── ε_p(線を下ろした足)── ε_e(線図の点までの距離)

今この点から荷重をゼロまで戻したとき、どれくらいの変形が残るか」を可視化するのが、この読み取り操作です。

降伏比(降伏点/引張強さ)を押さえておくと、塑性ひずみの蓄積イメージが立体的になります。こちらの記事もどうぞ。

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塑性ひずみの計算

実際に塑性ひずみを計算する手順を見ていきます。

ステップ①:全ひずみと応力を実測または読み取り

応力 σ と全ひずみ ε を、実験データや応力ひずみ線図から拾います。

ステップ②:弾性ひずみを算出

ヤング率 E を使って、

ε_e = σ / E

ステップ③:塑性ひずみを引き算で求める

ε_p = ε − ε_e = ε − σ / E

計算例:SS400 の場合

ヤング率 E = 205 GPa、降伏点 σ_y = 245 N/mm²。

降伏点ちょうどの弾性ひずみ:

ε_e = 245 / 205,000 ≒ 0.00120(0.12%)

仮にこの先まで荷重をかけて、全ひずみが ε = 0.020(2.0%)になった時点を取ると、

ε_p = 0.020 − 0.00120 ≒ 0.0188(1.88%)

この点で荷重を抜くと、約1.88%の伸びが永久に残る、という意味になります。

計算例:コンクリートの場合

E = 22,000 N/mm²、σ_y にあたる圧縮強度 σ_c = 24 N/mm²。

ε_e = 24 / 22,000 ≒ 0.00109(0.11%)

コンクリートは塑性域が短く、最大応力点付近でのひずみは ε ≒ 0.0020〜0.0025。塑性ひずみは ε_p ≒ 0.0009〜0.0014(0.09〜0.14%)程度しか取れない、というのが鋼との大きな違いですね。

鋼材とコンクリートの塑性ひずみの目安

材料 降伏ひずみ ε_y 破断時の全ひずみ ε_u 塑性ひずみの取りやすさ
SS400(鋼) 約0.12% 20〜30% 大(粘り強い)
SD345(鉄筋) 約0.17% 18〜25%
普通コンクリート(圧縮) 約0.11% 0.2〜0.3% 小(脆い)
木材(繊維方向圧縮) 約0.4% 1〜2%

鋼は粘って塑性ひずみをたっぷり貯めてから壊れる、コンクリートはあまり貯められずに脆く壊れる」という性格の違いが、この表で見えてきます。

ヤング率の数値感覚があやふやな方はこちらをどうぞ。

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建築構造設計での塑性ひずみの意味

なぜ建築の世界で塑性ひずみが重要なのか、設計現場の視点で整理します。

①靱性(ねばり強さ)の指標になる

建物が大地震で壊れないためには、降伏したあとも倒壊せずに塑性変形でエネルギーを吸収する必要があります。塑性ひずみをたくさん蓄えてから破断する材料ほど、地震時の安全余裕が大きいということ。鉄骨ラーメン構造が地震に強いといわれる理由の一つです。

②終局強度設計の根拠

建築基準法に基づく保有水平耐力計算は、「降伏点を超えて塑性ひずみを許容しながら、最終的に倒壊しない」という考え方で組まれています。塑性ひずみが許される量を塑性率(μ)として整理して設計に反映させる、というイメージです。

③溶接部・接合部の弱点になる

逆に塑性ひずみが集中する部位は危険信号。鉄骨の溶接ビード周り、ボルト接合部の支圧面など、塑性ひずみが偏ると割れにつながります。設計上は「塑性ひずみを部材全体に分散させる」発想が大事です。

④冷間加工・プレス成形の制御パラメータ

工場で鋼板を曲げ加工するときも、塑性ひずみの量で戻り(スプリングバック)割れを予測しています。施工管理の現場とは少し離れますが、鉄骨ファブが日々向き合っている数字でもあります。

塑性域を実務で「ここまで踏み込んでよい」と判断する設計指標は、こちらの記事も参考になります。

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[talk words=’以前ある物流倉庫のS造現場で、震度5強の地震を経験した直後の点検に立ち会ったことがあります。耐震ブレースのガセットプレートが軽くたわんだまま戻らず、構造担当者が「SN490B、降伏比0.78の材料だからこれだけ粘って残った。塑性ひずみが入ったぶん、エネルギーを食ってくれている」と説明してくれました。教科書の式が現場の鉄に刻まれているのを見た瞬間で、塑性ひずみという言葉が一気に立体的になった経験でしたね。’ name=”” avatarimg=”https://seko-kanri.com/wp-content/uploads/2020/02/c-run.png” avatarsize=70 avatarbdcolor=#d0d0d0 avatarbdwidth=1 bdcolor=#d0d0d0]

塑性ひずみに関する情報まとめ

  • 塑性ひずみとは:降伏点を超えて荷重をかけたあとに残る、戻らないひずみ
  • 記号:ε_p
  • 弾性ひずみとの違い:荷重を抜いて戻るかどうか
  • 全ひずみの式:ε = ε_e + ε_p
  • 計算式:ε_p = ε − σ / E
  • SS400の例:ε = 0.020 のとき ε_p ≒ 0.0188(1.88%)
  • 材料による違い:鋼は塑性ひずみを大きく取れる、コンクリートは小さく脆い
  • 建築での意味:靱性の指標、終局強度設計、接合部の弱点把握、加工制御に活用

以上が塑性ひずみに関する情報のまとめです。

一通り塑性ひずみの基礎知識は理解できたかなと思います。応力ひずみ線図に登場する「弾性域」「降伏点」「塑性域」「ひずみ硬化」という言葉が、すべて「塑性ひずみがどれだけ蓄積したか」という同じ物差しの上で語られていることが見えてくると、構造力学の景色が一段階くっきりしてきます。地震時に建物が大きく揺れて少し変形が残るのは、決して構造の失敗ではなく、塑性ひずみで地震エネルギーをきちんと食べてくれた証拠──そう読み取れるようになるとうれしいですね。

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