- 質量×重力加速度(W=mg)って物理の式でしょ、建築で使う?
- 質量と重量って何が違うの?どっちもkgじゃないの?
- 重力加速度は9.8?それとも10?どっちを使う?
- kgで出した重さが、なんでN(ニュートン)になるの?
- kgfって何?kgと違うの?
- 古い図面の「tf」「kgf」が読めない
- 地震力の計算で質量が出てくる理由が分からない
- 建物の自重ってどうやって出すの?
- 単位体積重量とW=mgはどうつながる?
- 結局、現場でW=mgを意識する場面ってある?
上記の様な悩みを解決します。
質量×重力加速度、つまり「W=mg」は、高校物理で習う基本公式です。ところが建築・構造の世界では、この式が「建物の自重」「地震力」「基礎反力」など、構造計算のあらゆる前提として顔を出します。そこで「物理の式がなんで建築に?」「kgとNがつながらない」と戸惑う人がとても多いです。
今回はW=mgの意味・公式・単位という基本を押さえた上で、建築の技術知識として「自重の積算での使い方」「地震力との関係」「古い図面のtf・kgf換算」まで、現役の施工管理経験者の視点で整理しました。
物理が苦手な人でも、建築でどう使われるかと結びつけて理解できるようにまとめていきます。
それではいってみましょう!
質量×重力加速度(W=mg)とは?
質量×重力加速度とは、結論「物体の質量に重力加速度をかけて、その物体に働く重力(重量・力)を求める計算」のことです。式で書くと「W=mg」となります。
それぞれの記号の意味は次のとおりです。
| 記号 | 読み方 | 意味 | 代表的な単位 |
|---|---|---|---|
| W | だぶりゅー | 重量(重力=力) | N、kN |
| m | えむ | 質量 | kg、t |
| g | じー | 重力加速度(約9.8m/s²) | m/s² |
ポイントは、左辺のW(重量)が「力」だということです。質量m(kg)はモノそのものの量ですが、それに重力加速度g(地球が引っ張る強さ)をかけると、「地面を押す力」「部材にかかる力」としての重量Wに変わります。式の中の「m」は質量のmであって、メートル(長さ)ではないので、ここを取り違えないようにしたいところです。
僕の感覚だと、W=mgは「kg(モノの量)を、N(力)に翻訳する変換式」と捉えると一気に腑に落ちます。建築の構造計算は最終的に「力」で組み立てるので、kgで出した重さをNに直すこの式が、計算の入り口に必ず立っているわけです。
質量・重量・重力加速度の違い
W=mgを正しく使うには、「質量」「重量」「重力加速度」の3つの違いをきちんと分けて理解しておく必要があります。ここが混ざると単位もぐちゃぐちゃになります。
質量と重量は別物
- 質量(m):モノそのものが持つ量。単位はkg・t。場所が変わっても変化しない
- 重量(W):質量に重力がかかって生じる「力」。単位はN・kN。重力の強さで変わる
- 重力加速度(g):地球が物を引っ張る加速度。約9.8m/s²
よく使われるのが「月」の例えです。質量1tの物体は、地球でも月でも質量は1tのままです。ところが月の重力は地球の約1/6なので、月での重量(押す力)は地球の約1/6になります。「質量は不変、重量は場所で変わる」というのが、質量と重量を分ける一番分かりやすい境目です。
日常では「象の重さは1t」と言いますが、厳密には1tは質量です。kg・tで言うときは質量、N・kNで言うときは重量(力)、と整理すると正確になります。質量と重量の違いそのものは、こちらでさらに詳しく掘り下げています。

重力加速度gの値
重力加速度は厳密には約9.81m/s²ですが、構造計算では扱いやすさから「9.8」または「10」を使うことが多いです。
- 精度を求める計算:g=9.8m/s²
- 概算・暗算・ざっくり把握:g=10m/s²
- どちらを使うかは計算の目的と求められる精度による
個人的には、現場で重さの感覚をつかむ程度ならg=10で十分で、試験や正式な構造計算ではg=9.8を使う、という線引きで考えるのが分かりやすいと思っています。
公式W=mgの計算と単位
W=mgの計算は、質量(kg)に重力加速度(m/s²)をかけるだけです。ただし単位の扱いに少しクセがあるので、ここを押さえると換算で迷いません。
計算例
質量1000kg(=1t)の物体の重量を計算してみます。
| 条件 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| g=9.8で計算 | 1000kg × 9.8m/s² | 9800N=9.8kN |
| g=10で計算 | 1000kg × 10m/s² | 10000N=10kN |
つまり「1tの質量=約10kNの重量(力)」とざっくり覚えておくと、現場で重さの規模感をつかむのに便利です。「鉄骨1本が2tなら約20kN」というように、頭の中で質量から力へ素早く変換できます。
単位のまとめ
- N(ニュートン):力(重量)のSI単位。1N=質量約0.1kgにかかる重力
- kN(キロニュートン):1000N。構造計算で最もよく使う
- kg(キログラム):質量の単位。重量ではない
- kgf(キログラム重):昔使われた力の単位。1kgf=約9.8N
力の単位N・kN・kgfの関係は、こちらで体系的に整理しています。換算で迷ったらここが早いです。

僕の整理では、W=mgの計算自体は単純な掛け算で、つまずくのはいつも単位の方です。「左辺は力(N)、右辺の入口は質量(kg)」とだけ意識しておけば、計算結果がkgになることはありえない、とすぐ気づけます。
建築・構造計算でのW=mgの使い方
ここからが、ほかの解説記事ではほとんど触れられていない部分です。W=mgは、建築の構造計算で「自重の積算」と「地震力の計算」という二大場面で本質的に効いてきます。
自重(固定荷重)の積算フロー
建物の重さ(固定荷重)は、いきなり出てくるわけではなく、材料の単位体積重量から積み上げて計算します。
- 材料ごとの単位体積重量(kN/m³)を調べる
- 部材の体積(m³)をかけて、その部材の重量(kN)を出す
- 全部材を足し合わせて建物全体の重量(自重)を求める
この「単位体積重量×体積」が、まさにW=mgの考え方を含んでいます。単位体積重量はあらかじめ「重力をかけた後の力(kN/m³)」で与えられていることが多く、ここに密度(kg/m³)が出てくる場合は、最終的にW=mgで力に直します。単位体積重量の使い方はこちらが詳しいです。

材料の密度・比重から重量を出す考え方は、こちらも合わせて読むと流れがつながります。

地震力との関係(質量が主役になる場面)
地震力の計算では、W=mgとは逆に「質量m」が前面に出てきます。地震は、建物の質量に水平方向の加速度がかかって生じる慣性力だからです。
- 地震力は「質量×加速度」で生じる慣性力(F=ma の考え方)
- このときの「質量」は、自重などから逆算した建物の重さがベース
- 重い建物ほど地震力が大きくなるのは、質量が大きいから
つまり、鉛直方向では「質量×重力加速度=建物を下に引く自重」、水平方向では「質量×地震の加速度=横に揺らす地震力」というように、同じ質量が向きを変えて2つの力を生みます。地震荷重の具体的な計算はこちらが参考になります。

荷重全体の種類と組み合わせは、こちらで整理しています。

実務だと、W=mgは「自重を力に直す式」であると同時に、「質量が分かれば地震力も計算できる」という意味で、構造計算の出発点になっています。質量という1つの量から、自重も地震力も派生していく、という関係を押さえておくと、計算書の流れが読みやすくなります。
kgf・tf(重力単位)とNの読み替え
古い図面や年配の技術者との会話では、いまだに「kgf」「tf(トンエフ)」という単位が出てきます。現在の構造計算はSI単位(N・kN)が基本なので、この読み替えができないと現場で混乱します。
単位系の対応表
| 旧(重力単位系) | 新(SI単位系) | 換算 |
|---|---|---|
| 1kgf | 約9.8N | 1kgf=9.80665N |
| 1tf(トンエフ) | 約9.8kN | 1tf=約9.8kN |
| 10tf | 約98kN(≒100kN) | ざっくり1tf≒10kN |
実務での近似として「1tf≒10kN」と覚えておくと、古い図面の荷重を今の単位に素早く読み替えられます。たとえば「設計荷重5tf」とあれば「約50kN」とすぐ変換できます。
なぜ単位が切り替わったのか
- かつては「重さ=kgf・tf」で力を表していた(重力単位系)
- 国際的なSI単位への統一で「力=N・kN」が標準になった
- 過渡期の図面・資料では新旧が混在しているので読み替えが必須
ニュートンとkgfの関係や使い分けは、こちらで詳しく整理しています。

現場目線で言えば、tf・kgf表記は「古い力の単位」と割り切って、頭の中で「×10でkN」に変換してしまうのが一番ラクです。新旧の単位が混在する図面でも、変換の軸を1本持っておけば落ち着いて読めます。
W=mgでつまずかない注意点
最後に、W=mgまわりでミスしないための実務的な注意点をまとめておきます。
よくあるミスと対策
- 質量と重量の混同:kg・tは質量、N・kNは重量(力)。単位を見れば今どちらの話かが分かる
- gの値の不統一:一つの計算の中でg=9.8と10を混ぜない。最初にどちらを使うか決める
- mを長さと取り違える:式の「m」は質量。メートル(長さ)ではない
- kgf・tfの放置:古い単位が出たら必ずN・kNに換算してから計算に使う
- 重量を質量のつもりで足す:自重を積算するときは「力(kN)」で揃えてから合算する
単位で迷ったときの考え方
| 知りたいこと | 使う量・単位 |
|---|---|
| モノの量そのもの | 質量(kg・t) |
| 部材にかかる力・自重 | 重量(N・kN)=W=mgで変換 |
| 地震で建物を揺らす力 | 質量×地震の加速度(慣性力) |
| 古い図面の荷重 | tf・kgfをN・kNに換算 |
こうして並べると、W=mgは「質量という1つの量を、目的に応じて力(重量・地震力)に翻訳する装置」だと分かります。
構造計算の前提となる力のつり合いや荷重の基礎を固めたい人は、構造力学の基礎からたどり直すのもおすすめです。

僕の考えでは、W=mgでつまずく原因のほとんどは「式そのもの」ではなく「単位の管理」です。kgなのかNなのか、gは9.8か10か、tfが混じっていないか。この3点さえ最初に整理しておけば、計算自体は単純な掛け算なので迷うことはなくなります。
質量×重力加速度(W=mg)に関する情報まとめ
- 定義:質量に重力加速度をかけて、物体に働く重力(重量・力)を求める計算。式はW=mg
- 記号:W=重量(力、N・kN)、m=質量(kg・t)、g=重力加速度(約9.8m/s²)
- 質量と重量の違い:質量は不変(kg)、重量は重力で変わる力(N)。月では重量が約1/6
- gの値:構造計算では9.8、概算では10を使うことが多い
- 計算の目安:1tの質量=約10kN(g=10のとき)の重量
- 自重の積算:単位体積重量×体積で部材重量を出し、足して建物自重にする
- 地震力との関係:同じ質量に地震の加速度がかかって水平の慣性力が生じる
- 単位の読み替え:1kgf≒9.8N、1tf≒約10kN。古い図面はSI単位に換算する
- つまずきの核:式ではなく単位管理(kgかNか/gは9.8か10か/tf混在)
以上が質量×重力加速度(W=mg)に関する情報のまとめです。
W=mgは、物理では単純な公式ですが、建築では「kg(モノの量)をN(力)に翻訳する変換式」として、自重の積算から地震力の計算まで、構造計算の出発点に立っています。大事なのは、式そのものより「質量と重量を分け、単位を最後まで管理する」ことです。この軸さえあれば、計算書の自重も、地震力も、古い図面のtf表記も、同じ考え方で読み解けるようになるはずです。
質量×重力加速度に関するよくある質問
Q1:W=mgは建築のどこで使うのですか?
主に「自重(固定荷重)の積算」と「地震力の計算」で使います。建物の重さは材料の単位体積重量と体積から積み上げて求めますが、その重さを「力(kN)」として扱うときにW=mgの考え方が入ります。また地震力は、建物の質量に水平方向の加速度がかかって生じる慣性力なので、質量が分かれば地震力も計算できます。質量という1つの量から、自重も地震力も派生していくイメージです。
Q2:重力加速度は9.8と10、どちらを使えばいいですか?
正式な構造計算や試験では9.8m/s²、概算や暗算では10m/s²を使うのが一般的です。重要なのは、一つの計算の中で9.8と10を混ぜないことです。最初に「この計算はg=9.8でいく」と決めて最後まで通します。現場で重さの規模感をつかむだけなら、計算がラクなg=10で「1tは約10kN」と覚えておくと便利です。
Q3:質量と重量はどう違うのですか?
質量はモノそのものが持つ量で、単位はkg・t、場所が変わっても変化しません。重量は質量に重力がかかって生じる「力」で、単位はN・kN、重力の強さで変わります。たとえば質量1tの物体は地球でも月でも質量は1tですが、重量(押す力)は月では地球の約1/6になります。kg・tで言えば質量、N・kNで言えば重量、と単位で見分けるのが確実です。
Q4:kgで出した重さが、なぜN(ニュートン)になるのですか?
kgは質量、Nは力(重量)という別の量だからです。質量(kg)に重力加速度(m/s²)をかけることで、はじめて「地面や部材を押す力」としての重量(N)に変わります。これがW=mgの役割です。構造計算は最終的に力で組み立てるので、kgのままでは計算に使えず、必ずW=mgでNに直してから扱います。
Q5:古い図面の「tf」「kgf」はどう読み替えればいいですか?
tf・kgfは昔使われた力の単位(重力単位系)です。現在のSI単位(N・kN)に換算して使います。換算の目安は「1kgf≒9.8N」「1tf≒約10kN」です。たとえば「設計荷重5tf」とあれば「約50kN」と読み替えます。新旧の単位が混在する図面では、「tfは×10でkNにする」という軸を1本持っておくと素早く処理できます。
Q6:式の「m」は質量ですか、メートルですか?
質量です。W=mgのmは質量(mass)の頭文字で、長さのメートルではありません。構造計算では長さもメートル(m)で出てくるため混同しやすいですが、W=mgの文脈では「m=質量(kg)」と固定して読めば取り違えません。左辺Wが力(N)なので、右辺の入口は質量(kg)でなければ単位が合わない、と確認するのも有効です。
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