- 生コンの強度ってなに?
- 「呼び強度」と「設計基準強度」は違うの?
- 調合強度ってなに?
- 補正値mSnって何?
- どの強度を発注すればいい?
- 受入検査の合否はどう決まる?
上記の様な悩みを解決します。
生コンの強度とは、結論「レディーミクストコンクリート(生コン)の発注時に保証される圧縮強度」のことです。実は 「呼び強度」「設計基準強度Fc」「品質基準強度Fq」「調合強度」「配合強度」と、コンクリートには 似た名前の強度が5種類以上存在し、現場で混乱の元になります。本記事では、それぞれの意味と関係、発注で使う「呼び強度」の決め方、温度補正 mSn の意味、受入検査の合否判定、施工管理での確認ポイントまで、コンクリート工事の入門レベルから整理します。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
生コンの強度とは?
生コンの強度とは、結論「レディーミクストコンクリート(生コン)の発注時に保証される圧縮強度」のことです。
英語では specified strength または nominal strength。日本工業規格 JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)で、「呼び強度」として定義されており、生コン工場と発注者の 品質保証契約の基本値となります。
コンクリートの強度の3つの軸
コンクリートの強度の話は、
- どの値で発注するか(呼び強度)
- どの値を構造設計に使うか(設計基準強度Fc)
- どの値で受入検査に合否判定するか(呼び強度+判定基準)
→ 同じ「強度」と呼ばれる中身が 「発注用」「設計用」「検査用」の3つに分かれているのが混乱の元。
強度の単位
生コンの強度の単位:N/mm²(ニュートン毎平方ミリメートル)
旧単位:kgf/cm²(キログラム重毎平方センチメートル)
換算:1 N/mm² ≒ 10.2 kgf/cm²
→ 現代の設計図書はすべて N/mm²。古い図書には kgf/cm² 表記もあるので換算が必要。
コンクリート全般の話はこちらに整理しています。

コンクリートの5つの強度の整理
混同しやすい 「コンクリートの強度」を5種類に整理します。
①設計基準強度 Fc
Fc = 構造計算で用いる圧縮強度
- 構造設計者が決める数値(構造計算書に明記)
- 設計図書に 「Fc = 24 N/mm²」などと表記
- 建物の 構造性能を保証する強度
- 一般建築は Fc = 18〜36、超高層は Fc = 36〜90
→ すべての出発点になる、設計の 根拠となる数値。
②耐久設計基準強度 Fd
Fd = コンクリート構造物の耐久性を確保するための強度
- 計画供用期間に応じて決定(短期・標準・長期・超長期)
- 標準的な建物で Fd = 24 N/mm²
- 長期供用 Fd = 30、超長期 Fd = 36
→ 構造的に必要な Fc よりも 耐久性で必要な Fd の方が大きいこともある。
耐久設計基準強度の細かい話はこちらに整理しています。

③品質基準強度 Fq
Fq = max(Fc, Fd)
- 設計基準強度Fc と耐久設計基準強度Fd の大きい方
- 品質管理の対象となる強度
- 「両方を同時に満たす」必要があるため、大きい方を採用
④呼び強度(生コン発注時の強度)
呼び強度 = Fq + 構造体強度補正値 mSn
- 生コン工場に発注する強度
- JIS A 5308 で 18, 21, 24, 27, 30, 33, 36, 40, 45, 50, 55, 60 の刻みで設定
- 「呼び強度24」と書けば 24 N/mm² 以上を保証する契約
→ 「Fq = 24なら呼び強度 = 27」となるケースが多い(補正値3程度を加算)。
⑤配合強度
配合強度 = 呼び強度 + 工場の品質変動余裕
- 生コン工場が試験練りで目標とする強度
- 工場ごとに統計データを持っており、ばらつきを考慮して上乗せ
- 発注者は 直接見ない(工場内部の管理値)
→ 「配合強度 ≥ 呼び強度 ≥ Fq ≥ max(Fc, Fd)」という階層構造。
設計基準強度の細かい話はこちらに整理しています。

呼び強度の決め方
実務で 発注する呼び強度の決め方を整理。
①呼び強度を決める計算式
呼び強度 = max(Fc, Fd) + mSn
= Fq + mSn
- Fq:品質基準強度
- mSn:構造体強度補正値
②構造体強度補正値 mSn の意味
mSn は 「コンクリートの温度と季節の影響」を考慮する補正値。
mSn の正体:
・打設後の養生温度で圧縮強度発現が変わる
・夏 35℃ ≒ 発現が早く、ピーク強度が低下
・冬 5℃ ≒ 発現が遅く、補正なしでは検査不合格
→ 工場出荷時の強度に「気候要因の安全側上乗せ」をする
③mSn の標準値(JASS 5)
| 期間 | mSn 値 |
|---|---|
| 0℃〜8℃(冬期) | +6 N/mm² |
| 8℃〜25℃(標準期) | +3 N/mm² |
| 25℃以上(夏期) | +6 N/mm² |
→ つまり、Fq = 24 を夏冬に出すなら、呼び強度 30 で発注するのが標準。
④呼び強度の決定例
ケース:標準計画建物、Fc = 24、Fd = 24、夏期打設
Fq = max(24, 24) = 24
mSn = +6(夏期)
呼び強度 = 24 + 6 = 30 N/mm² で発注
→ 「設計図書のFc を確認して、季節とセメント種類でmSnを乗せる」のが施工管理の発注業務。
⑤発注時の呼び方の構成
呼び方の例:普通 30 18 20 N
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
① ② ③ ④ ⑤
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ①コンクリートの種類 | 普通 / 軽量 / 高強度 |
| ②呼び強度 | 30 [N/mm²] |
| ③スランプ | 18 [cm] |
| ④粗骨材最大寸法 | 20 [mm] |
| ⑤セメント種類 | N(普通)、H(早強)、BB(高炉B種) |
→ 「普通-30-18-20-N」が一般建築のお馴染みの発注パターン。
スランプ・受入検査の細かい話はこちらに整理しています。

受入検査での強度判定
打設前後の 受入検査で強度はどう判定されるかを整理。
①受入検査の強度試験
試験方法:JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)
試験体:直径φ100mm × 高さ200mm の円柱供試体
試験材齢:標準は28日材齢(強度試験用)
試験回数:100m³ ごと、もしくは打設日ごとに1組3本
→ 「標準養生で28日強度を測る」のが原則。
②判定基準(JIS A 5308)
呼び強度の合否判定は、
判定①:3本の試験体の平均値 ≥ 呼び強度
判定②:3本の最低値 ≥ 呼び強度 × 0.85
(一部の標準では呼び強度の85%以上で許容)
→ 例:呼び強度 24 で発注したコンクリート
- 28日強度の3本平均:24 N/mm² 以上 → 合格
- 最低値:20.4 N/mm² 以上 → 合格
③構造体コンクリート強度の検査
設計基準強度 Fc の合否を見るのは 「構造体強度試験」、
試験方法:標準養生・現場水中養生・現場封かん養生 の3種類
(現場で実際の構造物の温度を反映した養生)
試験材齢:91日もしくは指定材齢
判定基準:3本の平均値 ≥ Fc
→ 「呼び強度で受入合格しても、構造体強度で不合格」が稀に起こる。この場合は コア抜き調査で実構造体強度を再評価。
④強度不足が出た場合の対応
呼び強度・構造体強度のいずれかで不合格になった場合、
対応①:再試験(標準養生体の追加打設)
対応②:コア抜き調査(実構造体の試料採取・圧縮試験)
対応③:構造再検討(実強度ベースで安全性確認)
対応④:補強工事 or 撤去・打ち直し(最悪パターン)
→ コンクリート強度不足は 最も重大な品質問題の1つ。原因究明・対策が長期化することも。
セメント種類による強度発現の違い
呼び強度に 大きく影響するセメント種類の選び方。
①セメント種類別の強度発現特性
| セメント種類 | 記号 | 7日強度比 | 28日強度比 | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| 普通ポルトランド | N | 65% | 100% | 一般建築 |
| 早強ポルトランド | H | 85% | 100% | 工期短縮、寒冷地 |
| 超早強ポルトランド | UH | 95% | 100% | 緊急工事 |
| 中庸熱ポルトランド | M | 50% | 95% | マスコン |
| 低熱ポルトランド | L | 30% | 80% | マスコン・温度ひび割れ抑制 |
| 高炉セメントB種 | BB | 60% | 105% | 一般、海洋構造物 |
| フライアッシュB種 | FB | 60% | 100% | 中庸熱目的、長期強度 |
→ セメント種類で 7日強度が3倍違うこともあるので、工程との兼ね合いで選定。
低熱ポルトランドセメントの細かい話はこちらに整理しています。

②mSn の補正値もセメント種類で変わる
JASS 5 では、セメント種類別に mSn の値が異なる、
普通ポルトランド N:標準期 mSn = +3
高炉セメントB種 BB:標準期 mSn = +6(強度発現が遅め)
低熱ポルトランド L:標準期 mSn = +9(さらに遅い)
→ BB セメントを使うと呼び強度が3 N/mm²高くなるのが一般的。
③強度発現と養生期間の関係
コンクリート強度 σ(t) = σ28 × t / (a + b×t)
t:材齢、a, b:実験定数
→ 強度発現曲線は 対数的に近づいていくので、7日で60%、28日で100%、91日で110% といった経過をたどります。
セメントの細かい話はこちらに整理しています。

生コン強度の施工管理での注意点
施工管理者として、生コン強度で 気をつけたいポイント。
①発注時の確認チェックリスト
- [ ] 設計図書の Fc・Fd の確認
- [ ] 季節とmSnの補正値の確認
- [ ] セメント種類の選定(工期・気温・断面厚さ)
- [ ] 生コン工場の認定証の確認(JIS マーク付き)
- [ ] 配合計画書の提出依頼
→ 発注書類は 設計者・工事監理者の承認を取って初めて正式注文。
②受入検査の正しい運用
受入検査での測定項目:
・スランプ、空気量、塩化物量、温度
・強度試験用の供試体採取(3本/組)
・伝票確認(呼び方・出荷時刻・運搬時間)
・写真記録(受入位置、生コン状態、試験状況)
→ 受入検査の記録は 最終竣工書類の重要構成要素。1日でも欠落があると 書類差し戻しになる。
スランプ試験の細かい話はこちらに整理しています。

③強度不足が起きやすい条件
要注意条件①:気温5℃以下での打設(冬期凍害リスク)
要注意条件②:35℃超の高温時打設
要注意条件③:運搬時間90分超
要注意条件④:水セメント比60%超の配合
要注意条件⑤:単位水量185 kg/m³ 超
→ これらの条件が 重なると、強度不足発生確率が大きく上がります。
④外気温と打設時間の管理
気温5℃未満: 加熱練混ぜ、保温養生、5℃以上維持
気温5〜25℃: 標準条件、特別対策不要
気温25〜35℃: 散水養生、コンクリート温度の管理
気温35℃以上: 打設中止 or 夜間打設に切り替え
→ 「気温30℃を超えたら午前中の打設に切り替え」は施工計画の基本。
⑤試験体の保管・管理
標準養生:20℃の水中養生
現場水中養生:構造体に近い場所で水中養生
現場封かん養生:実構造体の温度履歴に近い条件で養生
→ 構造体の強度を予測するには 現場養生試験体が最も実態に近い。建築学会基準では 3種類すべての試験体を採取することを推奨。
生コンの強度に関する情報まとめ
- 生コン強度とは:レディーミクストコンクリート発注時の保証圧縮強度
- 5つの強度区分:Fc(設計基準)→ Fd(耐久設計基準)→ Fq(品質基準)→ 呼び強度 → 配合強度
- 呼び強度 = Fq + mSn:構造体強度補正値で温度と季節を補正
- mSn の標準値:標準期 +3、夏冬 +6(普通ポルトランドの場合)
- JIS A 5308 の呼び強度刻み:18, 21, 24, 27, 30, 33, 36, 40, 45, 50, 55, 60
- 受入検査:3本平均 ≥ 呼び強度、最低値 ≥ 呼び強度 × 0.85
- セメント種類:普通N、早強H、低熱L など。強度発現特性で選定
以上が生コンの強度に関する情報のまとめです。生コンの強度は 「呼び強度」「設計基準強度」「品質基準強度」と似た用語が並ぶため最初は戸惑いますが、「設計基準強度→品質基準強度→呼び強度」の流れと 「補正値 mSn」の仕組みを理解すれば、発注書類が問題なく書けるようになります。一通り生コンの強度の基礎知識は理解できたと思います。
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