- 地盤種別ってなに?
- 第1種・第2種・第3種の違いは?
- どうやって判別するの?
- 卓越周期って何のこと?
- 設計地震力にはどう効いてくる?
- 軟弱地盤との関係は?
上記の様な悩みを解決します。
地盤種別は、結論「地震時にどれくらい揺れやすいかで地盤を3つに区分したもの」のことです。建築基準法施行令第88条と告示第1457号で定められていて、第1種地盤(硬い)/第2種地盤(中間)/第3種地盤(軟らかい)という呼び方をします。何を見て決めるかというと地盤の卓越周期 Tc で、Tc が短いほど硬い地盤、長いほど軟らかい地盤、というシンプルな関係です。設計地震力を計算するときの振動特性係数 Rt が地盤種別で変わるため、構造設計の出発点になる超重要な分類なんですよね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
地盤種別とは?
地盤種別とは、結論「地震動を受けたときの揺れやすさによって、地盤を3つに分類したもの」のことです。
英語では soil type / site class。日本では建築基準法に基づく分類が一般的で、構造計算上の「振動特性係数 Rt」を決めるために使われます。
法的な根拠
法的根拠は建築基準法施行令第88条と平成12年建設省告示第1457号。これらに「第1種地盤・第2種地盤・第3種地盤」の定義と、それぞれに対応する Rt の算定方法が定められています。
3種類の地盤
| 地盤種別 | イメージ | 卓越周期 Tc |
|---|---|---|
| 第1種地盤 | 硬い・揺れにくい(岩盤、硬質砂礫など) | 0.4秒以下 |
| 第2種地盤 | 中間(普通の住宅地、洪積層など) | 0.4秒超〜0.6秒 |
| 第3種地盤 | 軟らかい・揺れやすい(沖積層、埋立地など) | 0.6秒超 |
「揺れやすさ=周期で決まる」というのが、地盤種別の本質ですね。
用途のイメージ
地盤種別は構造計算で出てくる用語ですが、結果として、設計地震力(建物が地震時に受ける水平力)の大きさ、杭基礎の許容支持力(埋設地盤の評価)、液状化リスクの目安、というあたりに効き、建物の設計全体に影響を与えます。
地盤一般の話はこちらの記事もどうぞ。

第1種・第2種・第3種地盤の違い
3つの区分をもう少し具体的に整理します。
①第1種地盤(硬質地盤)
第1種地盤は、岩盤・硬質砂れき層が地表近くまで分布、沖積層がほぼ無いか非常に薄い、卓越周期Tc≦0.4秒、揺れにくく構造物への地震入力エネルギーが相対的に小さい、該当例は丘陵地・山地の岩盤地・台地の硬質地、というあたり。
②第2種地盤(中間地盤)
第2種地盤は、第1種でも第3種でもない普通の地盤、洪積層が主体で表層に薄い沖積層がある場合も含む、0.4秒<Tc≦0.6秒、多くの郊外住宅地・台地はここに該当、該当例は標準的な住宅地・台地・丘陵地の縁辺部、というあたり。
③第3種地盤(軟弱地盤)
第3種地盤は、沖積層が厚く分布、腐植土・有機質土・泥炭層を含むことも、0.6秒<Tc、揺れの周期が建物の固有周期と近いと共振しやすい、該当例は埋立地・デルタ地帯・河川の氾濫原・軟弱な沖積層が厚い平野部、というあたり。
ざっくりした地域感
ざっくりした地域感としては、山手側の硬い地盤は第1種寄り、一般的な郊外住宅地は第2種が多い、川沿い・海岸近く・埋立地は第3種が多い、という傾向。
設計の現場では「東京湾岸エリアは第3種地盤になりがち」「武蔵野台地は第2種地盤」のように、ざっくりした地域感で当たりを付けてから、地盤調査結果で確定させていく流れになります。
地盤改良工法の話はこちらでもまとめています。

地盤種別の判別方法
実務で地盤種別をどうやって決めるかを整理します。
①卓越周期 Tc を求める
各地盤層の厚さ Hi、せん断波速度 Vsi を使って、
Tc = 4 × Σ( Hi / Vsi )
で計算します。これは「地表から工学的基盤までの伝播時間 × 4」という意味で、地盤が地震動に対して共振しやすい周期そのものを表します。
②せん断波速度 Vs の取得方法
せん断波速度Vsの取得方法は、PS検層(ボーリング孔を使って実測=最も精度が高い)、微動アレイ探査(表面波の特性から推定)、N値からの換算式(簡便法だが精度は限定的)、というあたり。
PS検層は中規模以上の建築物で標準的に行われる調査で、「実測値を使うのが原則」というのが告示の建付けです。
③簡易的な判別方法
ボーリング調査結果から沖積層の厚さで簡易判別する方法もあります。
| 地盤種別 | 沖積層の厚さ目安 |
|---|---|
| 第1種 | 沖積層なし or きわめて薄い |
| 第2種 | 沖積層の厚さが中程度 |
| 第3種 | 沖積層の厚さが大きい(特に有機質土を含む) |
ただし簡易判別は厳密ではないので、最終判断は卓越周期 Tc で行うのが原則です。
④地域防災情報の活用
各自治体が公開している揺れやすさマップや液状化マップで、対象地が「揺れやすい」「液状化危険性あり」とされていたら、第3種地盤になりがち、という当たりが付けられます。地震ハザードマップとあわせて、設計初期の参考情報として活用するのが定番です。
N値の話はこちらの記事もどうぞ。

標準貫入試験の話はこちらでもまとめています。

卓越周期と振動特性係数 Rt
地盤種別が設計計算に効いてくる仕組みを整理します。
①振動特性係数 Rt の定義
建物の固有周期 T と、地盤の卓越周期 Tc の関係から、設計地震力を低減する係数として定義される値です。
T ≦ Tc: Rt = 1.0(低減なし)
Tc < T ≦ 2Tc: Rt = 1 − 0.2 × ( T/Tc − 1 )²
2Tc < T: Rt = 1.6 × Tc / T
②地盤種別ごとの Tc
| 地盤種別 | Tc |
|---|---|
| 第1種 | 0.4秒 |
| 第2種 | 0.6秒 |
| 第3種 | 0.8秒 |
③設計者が見ているもの
設計地震力の式は、
Q = Z × Rt × Ai × Co × W
ここでZが地震地域係数、Rtが振動特性係数、Aiが層せん断力係数の高さ方向分布、Coが標準せん断力係数(保有水平耐力時は0.2、許容応力度時は0.2)、Wがその層より上の重量。
ここに地盤種別がRtを経由して効いてきます。
④第3種地盤が不利になる典型ケース
第3種地盤が不利になる典型ケースとしては、高層建築は固有周期Tが長い、第3種地盤のTcは0.8秒で長い、TとTcが近いと共振の可能性が出てRtが大きくなる方向に振れる、結果として設計地震力が大きくなりがち、という流れ。
「軟らかい地盤に高層建築を建てると、地震力が増えて構造コストも上がる」という、構造設計の現実的なバランスがここで顔を出します。
[talk words=’以前関わった工場新築の現場で、当初は第2種地盤の前提で構造計算が進んでいたものを、PS検層の結果で第3種地盤と判明したことがありました。Rt が変わって設計地震力が約15%増えてしまい、ブレース本数の増加・基礎補強で工事費が大きく動いた──いう経験があります。地盤調査の結果で構造設計が大きく動くというのを、肌で実感した一件でした。’ name=”” avatarimg=”https://seko-kanri.com/wp-content/uploads/2020/02/c-run.png” avatarsize=70 avatarbdcolor=#d0d0d0 avatarbdwidth=1 bdcolor=#d0d0d0]
地盤種別と液状化・軟弱地盤の関係
地盤種別と関連する別の地盤評価軸も整理しておきます。
①液状化との関係
地盤種別は「揺れやすさ」の分類で、液状化危険性とは別軸の話です。ただし、第3種地盤は沖積層が厚い→砂層+地下水位高→液状化リスクの素地はある、埋立地は第3種地盤かつ液状化注意エリアになりがち、という相関は確かにあります。しかし「第3種=必ず液状化する」ではありません。両者は別の指標として扱う必要があります。
②軟弱地盤との関係
「軟弱地盤」は、構造物の沈下や支持力に対する評価で、地盤種別の「揺れやすさ」とはまた別の話。とはいえ、軟弱地盤の多くは沖積層が厚いため、第3種地盤と重なるケースが多いのは事実です。
③地震地域係数 Z との関係
地震地域係数 Z は地域ごとに 0.7〜1.0 で固定された値で、地盤種別とは独立。Z と地盤種別はそれぞれ独立に効いてくるため、構造計算では両方を確認する必要があります。
地震荷重そのものの話はこちらの記事もどうぞ。

軟弱地盤の話はこちらでもまとめています。

地盤種別に関する情報まとめ
- 地盤種別とは:地震時の揺れやすさで地盤を3区分したもの
- 法的根拠:建築基準法施行令第88条、平成12年告示第1457号
- 第1種地盤:Tc ≦ 0.4秒(硬質地盤、岩盤・硬質砂礫)
- 第2種地盤:0.4秒 < Tc ≦ 0.6秒(中間、洪積層主体)
- 第3種地盤:0.6秒 < Tc(軟弱、沖積層厚・腐植土含む)
- 判別の根拠:卓越周期 Tc(PS検層などで実測)
- 設計への影響:振動特性係数 Rt を経由して地震力に反映
- 第3種地盤×高層建築は共振リスクで地震力が大きくなりやすい
- 液状化や軟弱地盤とは別軸の指標(相関はある)
以上が地盤種別に関する情報のまとめです。
一通り地盤種別の基礎知識は理解できたかなと思います。卓越周期 Tc という1つの数字で、その土地の地震時の揺れ方の傾向が決まり、振動特性係数 Rt を経由して設計地震力にまで響いていく──この一本道のつながりが見えると、地盤調査報告書の数字一つひとつが構造計算書のどこで効いてくるか追えるようになります。地盤調査と構造計算の間で大きな前提が動くと、ブレース本数も基礎仕様も連鎖的に変わってしまう、という事実を肌で知っておくと、調査段階の判断がより慎重になりますよ。
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