- 溶接ってどんな作業?
- どんな種類があるの?
- 図面の溶接記号が読めない
- どんな資格が必要なの?
- JIS規格とは?
- 現場で気をつけることは?
上記の様な悩みを解決します。
「溶接」は鉄骨造の品質を決定的に左右する超重要な施工技術。記号の読み方・資格制度・代表的なJIS規格を整理しておくと、図面打ち合わせから現場検査まで一気にレベルアップできます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
溶接とは?
溶接とは、結論「金属同士を熱や圧力で溶かして、一体化させる接合技術」のことです。
英語で「Welding(ウェルディング)」。鋼材・アルミ・ステンレス・銅などの金属同士を分子レベルで連続化させる、最も強固な接合方法のひとつ。
溶接が他の接合方法と違うポイント
- ボルト接合のような継ぎ目が見えない(一体物になる)
- 強度的に母材と同等以上になる(適切に施工された場合)
- 取り外しがほぼ不可能(修正は溶接のやり直し)
- 熱影響部(HAZ)で母材の組織が変化する
- 施工の良否で品質が大きく変わる
ボルト接合・リベット接合と並ぶ、鉄骨構造の3大接合技術のひとつですが、現代の建築鉄骨はほぼ溶接+高力ボルト併用が標準です。
鉄骨と鉄筋の違いはこちらでも触れています。

溶接の種類
溶接にはいくつかの方式があり、現場・工場・素材によって使い分けます。
1. アーク溶接(電気溶接)
電極と母材の間にアークを発生させて溶かす方式。建築・土木で最も普及。
主なアーク溶接の種類
- 被覆アーク溶接(手溶接):溶接棒を使う。現場修正に強い
- 半自動溶接(CO2溶接、MAG溶接):ワイヤを連続供給。鉄骨工場で主流
- TIG溶接:タングステン電極+シールドガス。ステンレス・薄板向け
- MIG溶接:消耗ワイヤ+シールドガス。アルミ・ステンレス向け
- サブマージアーク溶接:粉末フラックスで覆う。橋梁・大型構造向け
2. ガス溶接
酸素+アセチレンの炎で母材を溶かす方式。最近は出番が減っていますが、配管・薄板の補修などで残っています。
3. スポット溶接(抵抗溶接)
電極で挟んで電流を流して点で溶接する方式。自動車ボディ・薄板の量産に使用。
4. レーザー溶接・電子ビーム溶接
高エネルギー光線・電子線で精密溶接する方式。精密機器・薄物に。
5. 摩擦攪拌接合(FSW)
摩擦熱で塑性流動させて接合する新方式。アルミ車両・船舶で実用化。
建築鉄骨で圧倒的に使われているのは半自動アーク溶接(CO2/MAG)とサブマージアーク溶接の2つです。
溶接の継手・形状
溶接部の形には主に2系統があります。
1. すみ肉溶接
部材の角(隅っこ)を溶接で埋める形式。ガセットプレートや梁・柱接合で多用。
すみ肉のサイズはS(脚長)で表現され、S6、S9、S12のような呼び方をします。
2. 開先溶接(突合せ溶接)
部材の端を斜めに削って(開先加工)、その間を溶接金属で埋める形式。フル断面を継ぐので最強の継手。
開先形状はV開先・X開先・レ開先・K開先などがあり、板厚と施工性で使い分けます。
ガセットプレートの取付など、すみ肉溶接が多くなる場面はこちら。

3. プラグ溶接・スロット溶接
板の中央に穴を開けて溶接で埋める方式。重ね接合で使用。
溶接記号の読み方
設計図書にはJIS Z 3021で規定された溶接記号が使われています。
溶接記号の基本構成
- 基線(横線):溶接位置を示す
- 矢印:溶接箇所を指す
- 基本記号:継手の種類(▽すみ肉、V開先、Ⅽ レ形開先など)
- 寸法:脚長S、開先角度、ルート間隔
- 特殊記号:全周溶接○、現場溶接▽、仕上げ凹凸記号
代表的な記号:
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| △(小三角) | すみ肉溶接 |
| V | V形開先 |
| ⅼ(縦棒) | レ形開先 |
| ○ | 全周溶接 |
| ▽(旗印) | 現場溶接 |
「矢印の指す側に溶接 = 基線の下側に記号」「矢印の反対側に溶接 = 基線の上側に記号」というのが読みのキモ。
実物の溶接記号は地味に複雑で、若手のうちは「設計図に書いてある記号を1つずつ調べる」だけでも勉強になります。
溶接に必要な資格
溶接は国家資格・公的資格が必要な作業です。資格なしの溶接は、工事品質の証明ができません。
主な溶接関連の資格
- アーク溶接特別教育:労働安全衛生法。社内講習扱い、最も基本
- ガス溶接技能講習:労働安全衛生法。ガス溶接の必須資格
- ボイラー溶接士免許:高圧容器の溶接
- JIS溶接技能者評価試験:JIS Z 3801系。技量レベルを認定
- WES 8103(建築鉄骨溶接技量資格):建築鉄骨で広く要求
- CIW溶接技術検定(旧 JWES):超音波探傷検査関連
特にJIS溶接技能者とWES 8103は、建築鉄骨工事の特記仕様書で「この資格を持つ工が溶接すること」と指定される標準資格です。
S造の話はこちら。

溶接のJIS規格
溶接関連の主なJIS規格を整理しておきます。
主な溶接関連JIS規格
- JIS Z 3021:溶接記号の標準
- JIS Z 3801:手溶接技術検定における試験方法及び判定基準
- JIS Z 3232:溶接部の非破壊試験方法(超音波探傷)
- JIS Z 3104:放射線透過試験方法
- JIS Z 3060:溶接部の超音波探傷試験方法
- JIS B 8265:圧力容器の構造(溶接構造)
- JASS 6:日本建築学会の建築工事標準仕様書(鉄骨工事)
実務ではJASS 6が建築鉄骨の溶接施工標準として最も参照されます。仕様書を読むときは、JASS 6に書かれている指定がベースだと思っておけば大丈夫。
溶接部の品質検査
溶接の品質は、外観検査+内部欠陥検査でチェックします。
主な溶接検査の種類
- 目視検査(VT: Visual Test):割れ、ピット、アンダーカット、サイズ
- 磁粉探傷試験(MT: Magnetic particle Test):表面の微細な割れ
- 浸透探傷試験(PT: Penetrant Test):表面の開口欠陥
- 超音波探傷試験(UT: Ultrasonic Test):内部欠陥
- 放射線透過試験(RT: Radiographic Test):内部欠陥(X線)
建築鉄骨ではUT(超音波探傷)が主流で、重要溶接部は全数検査。橋梁・圧力容器ではRT(X線)が多用されます。
検査の合否判定はJASS 6やJIS Z 3060などで規定されています。
ダイヤフラム回りは溶接が集中するので、検査の対象になりやすいエリア。

施工管理として押さえる溶接の注意点
現場で溶接を扱う際の実務的なチェックリスト。
溶接施工管理のチェック項目
- 溶接工の資格:必要資格を持つ工が施工しているか確認
- 溶接記号の理解:図面通りのサイズ・形状で施工されているか
- 予熱の管理:低温時・厚板は予熱必須(5℃以下は原則禁止)
- 風除け:屋外溶接は風速2m/s超で原則中止
- 湿気対策:溶接棒・ワイヤの吸湿防止(保温庫管理)
- 電流値・電圧の管理:溶接条件票通りの設定
- 層間温度:多層盛りでは層間温度を測定
- 検査タイミング:UT検査は溶接完了後24時間以上経ってから
- 記録:溶接記録、検査記録、ミルシートの保管
「溶接の品質はその場で見ても分からない」という性質があるので、段階管理+第三者検査で品質を担保するしかありません。
「過剰溶接」は強度過剰ではなく二次被害を呼ぶ
現場溶接で「指示の脚長より太く盛っておけば強度的には安心」と勘違いしている職人さんは少なくありません。例えばS6指示にS9で盛ると、入熱量が増えて周辺の電線管・配管・塗装にアーク熱で被覆ボロボロという二次被害が発生します。母材も熱影響部(HAZ)が拡大して靱性低下——強度的にも逆効果。「指示の脚長は最大値ではなく目標値、過剰は欠陥」と発注時・入場時に明確化し、検査では脚長ゲージで実測するのが鉄則です。
H形鋼の話はこちら。

溶接に関する情報まとめ
- 溶接とは:金属同士を熱や圧力で溶かして一体化させる接合技術
- 種類:アーク溶接(CO2/MAG/TIG/MIG)/ガス溶接/スポット溶接/レーザー溶接/FSW
- 継手の種類:すみ肉溶接/開先溶接(V/X/レ/K)/プラグ溶接
- 溶接記号:JIS Z 3021。基線・矢印・記号・寸法で構成
- 資格:アーク溶接特別教育/ガス溶接技能講習/JIS溶接技能者/WES 8103
- JIS規格:Z 3021/Z 3801/Z 3060/JASS 6(建築標準仕様)
- 検査:VT・MT・PT・UT・RTの組合わせ。建築はUT主流
- 施工管理の勘所:資格/記号/予熱/風/湿気/電流/層間温度/検査/記録
以上が溶接に関する情報のまとめです。
一通り溶接の基礎知識は理解できたと思います。「鉄骨造の品質は溶接で決まる」と言っても過言ではないので、施工管理として記号と検査の基本は押さえておきたいですね。
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