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山留め工法とは?親杭横矢板、シートパイル、SMW、選定基準など

  • 山留め工法って結局どれがどう違うの?
  • 親杭横矢板とシートパイルの選び方は?
  • SMW工法ってどんなときに使う?
  • 地下水が多い現場で使えるのはどれ?
  • 切梁・アースアンカーとの関係は?
  • 工法の選定基準を整理したい

上記の様な悩みを解決します。

山留め工法は、建築の地下工事で「掘削する土が崩れないように壁を作る」ための仮設工法の総称。住宅基礎レベルなら不要ですが、地下1階以上を作る建物・大型ビル・地下鉄駅工事などでは必須の工種です。工法の選び間違いは隣地の沈下や地下水の出水事故に直結するので、敷地条件と掘削深さの組み合わせで「どの工法を選ぶべきか」が見えるようになると、施工計画書の精度が一気に上がります。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

山留め工法とは?

山留め工法とは、結論「建物の地下を掘削する際、周辺の土・水・建物を保護するために、掘削の外周に仮設の壁を作る工法」のことです。

地下工事で土を掘ると、無対策では掘削面の土が安息角を超えて自然と崩れてきます。これを防ぐために、掘削の外周に山留め壁(柱状の杭や鋼板の壁)を作って、

  • 周辺地盤の沈下防止
  • 隣接構造物の保護
  • 掘削面の安定維持
  • 地下水の流入抑制

を実現するのが山留め工事の本質。

山留め工事は次の2つの構成要素から成ります。

  • 山留め壁:地中に作る壁本体(親杭横矢板・矢板・SMW・地中連続壁など)
  • 山留め支保工:山留め壁を内側から支える仮設材(切梁・腹起し・アースアンカー)

本記事は前者「山留め壁の工法」を主軸に解説します。

山留めと土留めの違い

「山留め」と「土留め」は字義としては同じ意味ですが、業界の慣用では使い分けがあります。

用語 主な使用場面
山留め 建築工事の地下掘削(深い・大規模)
土留め 土木工事の溝工事・道路掘削(浅い・小規模)

これは絶対的なルールではなく、地域・会社・工法ごとに揺らぎがあります。「土留め」は仮設のニュアンス、「山留め」は本格仮設のニュアンス、と捉えるとほぼ実態に合うかなと。

擁壁との違いはこちらをどうぞ。

主要な山留め工法

代表的な工法を、簡易な順から本格的な順に並べて整理します。

親杭横矢板工法

標準的な小〜中規模の山留め工法。H鋼を1〜2m間隔で打ち込み、その間に木製矢板(横矢板)を上から落とし込んでいく工法です。

  • 適用深さ:5〜8m程度
  • 適用敷地:地下水位が低く、ある程度のスペースがある現場
  • メリット:施工が早い・コスト安・撤去容易
  • デメリット:地下水を止水できない・止水が必要な現場では使えない

地下水を止められないため、湧水のある現場では別工法を選ぶ必要があります。

H鋼の規格・寸法はこちら。

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鋼矢板(シートパイル)工法

地下水のある現場で第一選択。鋼製の波型シートを連続的に打ち込んで、止水性のある壁を作る工法。

  • 適用深さ:5〜15m
  • 適用敷地:地下水位が高い・止水が必要な現場
  • メリット:止水性能が高い・転用可能(リース材)
  • デメリット:振動・騒音が大きい(油圧圧入で軽減可能)

シートパイルにはU型・Z型・H型などの形状違いがあり、現場条件で選定。一般的にはU型のIII型・IV型が多く使われます。

ソイルセメント壁(SMW)工法

振動・騒音を避けたい都市部の現場で多用。地中で原位置の土を撹拌しながらセメントミルクを混合して、ソイルセメントの柱列壁を作り、その中にH鋼を芯材として挿入する工法。

  • 適用深さ:5〜30m
  • 適用敷地:都市部・住宅密集地・高深度
  • メリット:振動騒音が小さい・止水性あり・深度に強い
  • デメリット:機械が大型で設置スペース必要・コスト高

正式名称はSoil Mixing Wall。1990年代以降、都市部の建築で標準工法のひとつとして普及しました。

場所打ち鉄筋コンクリート地中連続壁(地中壁)工法

最も本格的な山留め+本体兼用工法。地中に溝を掘りながら、その溝の中に鉄筋とコンクリートを打って、本格的なRC壁を地中に作る工法。

  • 適用深さ:10m〜(数十m級も可能)
  • 適用敷地:超大規模ビル・地下鉄駅・重要施設
  • メリット:剛性が極めて高い・本体壁としても利用可
  • デメリット:施工期間長い・コスト最高水準

地下鉄駅・大型再開発・タワー基礎など、規模の大きい現場で採用されます。

LW工法(高圧噴射撹拌工法)など補助工法

主壁工法ではなく、止水・地盤改良の補助として使われる工法。山留め壁の根入れ部分を改良したり、湧水箇所をピンポイントで止水するために組み合わせます。地盤改良工事と組み合わせて使うのが一般的です。

工法選定の考え方

実務では「敷地条件×掘削深さ」で工法を選びます。

掘削深さ/条件 地下水なし 地下水あり 都市部・振動制限
〜5m 親杭横矢板 シートパイル SMW(簡易)
5〜10m 親杭横矢板 / シートパイル シートパイル SMW
10〜20m シートパイル / SMW SMW SMW / 地中連続壁
20m以上 SMW / 地中連続壁 SMW / 地中連続壁 地中連続壁

選定の優先順位は次の通り。

山留め工法 選定の判断軸

  1. 地下水位(止水が必要か?)
  2. 掘削深さ
  3. 周辺環境(住宅密集/振動騒音制限)
  4. 隣接構造物との離隔
  5. 工期・コスト
  6. 撤去後の処理(埋め殺しが許されるか)

地下水位の有無で工法群が真っ二つに分かれる、というのが一番大事。地下水が出る現場で親杭横矢板を選ぶと、ボイリング・ヒービング事故に直結します。

ボイリング・ヒービング現象についてはこちら。

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山留め支保工との関係

山留め壁は単独では掘削の土圧に抗しきれないため、内側から支える「山留め支保工」が必要です。

切梁(きりばり)工法

掘削空間の中に水平に鋼材(切梁)を架けて、対向する山留め壁を相互に支える方式。

  • 中規模ビル・地下1〜2階で標準
  • 切梁が地下作業の邪魔になるため、工事用の作業空間と干渉
  • 一段階・二段階・三段階と掘削深さに応じて段数増加

腹起し(はらおこし)と呼ばれる水平材で土圧を集約し、切梁で対向壁に伝達する仕組み。

アースアンカー工法

山留め壁の外側(隣地側)の地中に向かってアンカー材を斜めに打ち込み、引張で山留め壁を支える方式。

  • メリット:掘削空間に切梁が入らないので作業しやすい
  • デメリット:アンカーが隣地を貫通するので隣地承諾が必要、深い

都市部の隣地承諾が取りにくい現場では採用しにくい場合があります。

切梁とアースアンカーの使い分け

条件 切梁 アースアンカー
隣地承諾の容易さ 不要 必要
掘削空間の確保 邪魔になる クリアになる
工事の自由度 段取替え多い 段取替え少ない
コスト やや安い やや高い

実務では「狭くて深い都市現場ほどアースアンカー、広くて浅い郊外ほど切梁」が選ばれる傾向。

山留め工法の施工管理上の注意点

最後に、山留め工事で施工管理として押さえるべきポイント4つ。

山留め工事の注意点

  • 掘削順序と支保工の設置タイミング
  • 計測管理(壁体変位・地中変位・地下水位)
  • 周辺地盤の沈下測定
  • 撤去計画と引き抜き回収

掘削と支保工のタイミング

掘削深さが支保工1段の支持範囲を超えると、土圧で山留め壁がせり出してしまいます。「掘削→支保工→掘削→支保工」のサイクルで、1段あたりの掘削深さを支保工の支持距離以内に抑えるのが鉄則。

計測管理

山留め工事は仮設の中でも事故の影響が大きい工種なので、施工中の計測管理が義務的。

  • 山留め壁の変位(インクリノメータ・トランシット)
  • 周辺地盤の沈下(測量・自動計測)
  • 地下水位(観測井)
  • 切梁の軸力(ロードセル)

計測値が管理基準値を超えたら、即時に作業を止めて補強や設計変更を検討します。

引き抜きの計画

シートパイル・親杭は工事完了後に引き抜いて回収するのが原則。ただし、SMW・地中連続壁は埋め殺しが基本(撤去できない)。引き抜くか埋め殺すかで原状回復のコストと隣地への影響が変わるため、選定時点で計画しておく必要があります。

僕は電気施工管理出身で建築の山留め本体は経験ないんですが、配電工事で建築現場に常駐していたとき、隣地承諾を取る打ち合わせに同席して「アースアンカーの30度傾斜で隣地の地下深部に入る」という話で2か月モメているのを見たことがあります。山留め工事は「現場の中の仕事」だけでなく「隣地交渉」も含めて山留めなんだな、という現場感は今でも残ってますね。

山留め工法に関する情報まとめ

  • 山留め工法とは:建築の地下掘削で外周に仮設壁を作る工法の総称
  • 主な4工法:親杭横矢板/シートパイル/SMW/地中連続壁
  • 選定軸:地下水の有無→掘削深さ→振動騒音制限→工期コスト の順
  • 支保工:切梁/アースアンカー(隣地承諾の有無で使い分け)
  • 計測管理:壁体変位・地下水位・周辺沈下・切梁軸力
  • 撤去計画:親杭・シートパイルは引き抜き、SMW・地中連続壁は埋め殺し
  • 注意点:掘削と支保工のサイクル、計測管理、隣地交渉

以上が山留め工法に関する情報のまとめです。

山留め工法は「地下水+深さ」の2軸で大きく決まるので、現場説明会で発注者から聞くべき最初の質問は「最深掘削深度」「地下水位」「敷地境界の隣地承諾の有無」の3点。これさえ押さえれば、施工計画書の山留め章はかなり書きやすくなりますよ。

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