- 斜張橋ってどんな橋?
- 吊り橋と何が違うの?
- なぜ最近の長大橋は斜張橋が多いの?
- どれくらいの長さに使うの?
- どうやって作るの?
- 風で揺れたりしないの?
上記の様な悩みを解決します。
斜張橋は、主塔から斜めに張ったケーブルで桁を直接支える橋梁形式です。横浜ベイブリッジ・多々羅大橋・東京ゲートブリッジなど、現代の中〜長大橋の代表選手で、近年は中央径間1,000m級も登場しています。「なぜ吊り橋ではなく斜張橋なのか」という選定の理由を理解できると、橋梁の話が一段クリアに見えてきます。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
斜張橋とは?
斜張橋とは、結論「1本または2本の主塔から斜めに張ったケーブルで、橋桁を直接吊り支える橋梁形式」のことです。
英語では「Cable-Stayed Bridge」。
斜張橋を見分ける外見的特徴
- 高い主塔(パイロン)が中央に立っている
- 主塔から斜めに何本ものケーブルが桁に向かって伸びる
- ケーブルがハープ型・ファン型・半放射型の幾何学パターンを描く
- 桁は箱型断面 or 複合桁が主流
「主塔から伸びる斜めのケーブルで桁を直接吊る」という形が、外見上のトレードマークです。
吊り橋・トラス橋との使い分け
施工管理者として最も重要なのは「なぜ斜張橋を選ぶのか」という選定ロジックです。橋梁形式は中央径間(メインスパン)の長さで住み分けが決まっています。
橋梁形式のスパン別住み分け
| 形式 | 中央径間の得意領域 | 力学的な仕組み |
|---|---|---|
| 桁橋(普通橋・PC橋) | 〜100m | 桁の曲げで対抗 |
| トラス橋 | 100〜500m | 三角形組みで力分散 |
| アーチ橋 | 100〜500m | アーチで圧縮力に変換 |
| 斜張橋 | 200〜1,100m | ケーブルで桁を直接吊る |
| 吊り橋 | 800〜2,000m | 主ケーブル+ハンガーで桁を吊る |
「中スパン領域では斜張橋、超長大スパンでは吊り橋」というのが大原則。両者の境目は概ね1,000〜1,200mにあります。
なぜそうなるかというと:
斜張橋が中スパンに有利な理由
- アンカレッジ(陸側の巨大基礎)が不要:吊り橋は主ケーブルを陸側で固定する巨大なアンカレッジが必要だが、斜張橋は主塔の中で力が完結
- 桁の剛性が高い:ケーブルが桁を直接吊るので、桁が水平方向にもしっかりしている
- 施工性が良い:張出工法で両側から張り出せる
- コスト的に中スパンで最安:1,200m以下なら吊り橋より安い
逆に1,200mを超えると、ケーブル自重と桁剛性のバランスが崩れるため、吊り橋にバトンタッチします。
トラス橋・アーチ橋の話はこちら。

斜張橋の構造
斜張橋を構成する主要部材を整理します。
斜張橋の主要部材
- 主塔(パイロン):H型・A型・逆Y型・1本柱型など多様。RC造 or 鉄骨造
- ケーブル:高強度鋼線を束ねたもの、被覆して防錆
- 主桁:鋼箱桁・PC桁・複合桁が主流
- ケーブル定着部:主塔側と桁側の両端、応力集中点
- 基礎:超大型のフーチング or 場所打ち杭
ケーブル配置の3パターン
| 配置 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|
| ハープ型(平行型) | ケーブルが互いに平行、意匠美◎ | 多々羅大橋 |
| ファン型(放射型) | 主塔頂部から放射状、構造効率◎ | 横浜ベイブリッジ |
| 半放射型 | 両者の中間 | 多くの中規模斜張橋 |
ケーブル本数は両側合計で20〜100本以上になります。各ケーブルの張力を均等に管理することが構造の生命線で、施工中も完成後も定期的に張力測定を行います。
代表例で見る規模感
斜張橋の規模感を、代表例から把握しておきます。
国内の代表的な斜張橋
| 橋名 | 場所 | 中央径間 | 完成年 |
|---|---|---|---|
| 多々羅大橋 | 愛媛・広島 | 890m | 1999 |
| 名港中央大橋 | 名古屋港 | 590m | 1998 |
| 鶴見つばさ橋 | 京浜運河 | 510m | 1994 |
| 生口橋 | しまなみ海道 | 490m | 1991 |
| 横浜ベイブリッジ | 横浜港 | 460m | 1989 |
| 東京ゲートブリッジ | 東京湾 | 440m | 2012(一部) |
世界の代表的な斜張橋
- 常泰長江大橋(中国):中央径間1,208m(世界最長級・2025年完成見込)
- ロシア島連絡橋(ロシア):1,104m
- 蘇通長江大橋(中国):1,088m
国内の斜張橋は中央径間500m前後がボリュームゾーンで、海外では1,000m級が主役、という違いがあります。
施工管理の勘所
斜張橋の施工で施工管理者が把握すべきポイントは、通常の橋梁とは違う独自性があります。
1. 主塔基礎の支持力(最重要)
主塔1本に数千〜数万トンの集中荷重がかかるので、基礎は超大型の場所打ち杭 or ニューマチックケーソンが標準。基礎工事の段階で、N値・支持層深度・地下水位の確認を徹底します。
杭基礎の話はこちら。


2. 桁の張出工法(カンチレバー)
主塔から両側に桁を1ブロックずつ張り出して、新しいケーブルを順次張る、という繰り返し作業。1ブロックごとに張力管理+たわみ計測+次のケーブル張力の予測計算が必要です。
3. ケーブル張力の均等管理
設計通りの形状を維持するため、全ケーブルの張力を設計値±5%以内に管理。施工中は1日1回、完成後も定期的に測定します。
4. 耐風安定性
長大橋は風による振動(フラッター・ギャロッピング)のリスクがあります。施工中の桁の風応答は、完成形と異なる風挙動を示すので、風速計監視+作業中止基準を施工計画書に明文化します。
5. ケーブル腐食対策
ケーブルは100年単位の供用を前提に、防錆被覆+点検通路の確保+取替え可能な定着構造、まで含めて設計されています。施工中の被覆損傷を絶対に出さないことが、長期維持管理コストに直結します。
斜張橋に関する情報まとめ
- 斜張橋とは:主塔から斜めに張ったケーブルで桁を直接吊る橋梁形式
- 適用スパン:中央径間200〜1,100m。それ以上は吊り橋にバトンタッチ
- 吊り橋との違い:斜張橋はアンカレッジ不要・桁剛性◎・中スパンで経済的、吊り橋は超長大スパン専用
- 代表例:国内は中央径間500m前後(多々羅・横浜ベイ・鶴見つばさ)、海外は1,000m級
- 構造:主塔+ケーブル(ハープ/ファン/半放射)+主桁+大型基礎
- 施工管理の勘所:主塔基礎の支持力/張出工法での張力・たわみ管理/全ケーブル±5%張力/耐風安定性/ケーブル腐食対策
斜張橋は「橋梁形式選定の理由」を語れるようになると、設計者・コンサルとの会話が一段深くなる領域です。「なぜこの長さで斜張橋を選んだのか」「なぜハープ型でなくファン型か」を読み解けると、橋梁の世界観がガラッと変わります。
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