- 吊り橋ってなに?
- どういう構造で成り立ってるの?
- 普通の橋との違いってなに?
- 日本や世界で有名な吊り橋が知りたい
- 種類ってあるの?
- どうやって建設してるの?
- 吊り橋のメリット・デメリットは?
上記の様な悩みを解決します。
吊り橋は、橋梁の中でも特に「長い距離を一気にまたぐ」ことが得意な形式の橋です。建物の施工管理からはちょっと外れた土木側のジャンルですが、仕組みを知っておくと構造や力の流れを考える視点が広がります。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
吊り橋とは?
吊り橋とは、結論「主ケーブルから垂らしたハンガーロープで橋桁(補剛桁)を吊り上げる形式の橋」のことです。
英語では Suspension Bridge(サスペンション・ブリッジ) と呼ばれます。両端に立つ主塔の上を太い主ケーブルが通り、そこから下に伸びる吊索で橋桁をぶら下げる構造ですね。
「橋桁を下から柱で支える」のが普通の桁橋だとしたら、吊り橋は「上からケーブルで釣り上げる」形。支点間にまたがる距離(これを支間長や径間と言います)を非常に長く取れるのが最大の特徴です。
吊り橋が得意な場面
- 海峡や深い谷のように、中間に橋脚を建てられない場所
- 1,000mクラスの長大なスパンが必要な場所
- 橋脚設置で船舶航行や環境への影響を避けたい場所
明石海峡大橋や本州四国連絡橋のような海を渡る長大橋で吊り橋が選ばれてきたのは、まさにこの特性ゆえ。中間に脚を立てずに、ドーンと1本で跨いでしまえるのが強みなんです。
吊り橋の構造
吊り橋は、主に以下のパーツで構成されます。それぞれが役割を分担して成り立っている構造なんですよね。
吊り橋の主要な構造部材
- 主塔(パイロン)
- 主ケーブル
- ハンガーロープ(吊索)
- 補剛桁(ほごうけた)
- アンカレイジ
- サドル
主塔(パイロン)
橋の両端に立つ、もっとも高く見える柱部分が 主塔です。パイロンとも呼ばれます。主ケーブルを空中で受け止め、その荷重を鉛直方向に地盤へ伝える役割を持っています。
主塔の高さは橋の規模によって様々で、明石海峡大橋の主塔は海面から約298mもあります。東京タワー(333m)とほぼ同じ高さですから、あれだけの塔が海の真ん中にドンッと立ってると考えると、なかなか狂気じみたスケールですね。高所恐怖症の僕には絶対に務まらない仕事です。。。
当然、主塔の建設は超級の高所作業になります。高所作業の基本については別記事にまとめているのでよろしければ。

主ケーブル
主塔の頂部を通り、橋の両端まで弧を描いて張られる太いケーブルが 主ケーブルです。吊り橋の代名詞ともいえる部位ですね。
主ケーブルは、無数の細い鋼線を束ねて作られます。明石海峡大橋の場合は、直径5.23mmの高強度鋼線を約36,830本束ねて1本のケーブルにしていて、仕上がりの直径は1mを超えます。細い線の集合体なので、見た目以上に柔軟で、大きな引張力に耐える構造になっているのが面白いところです。
使われているのは当然ながら高強度の鋼材。鋼そのものの性質については以下の記事も参考になります。

ハンガーロープ(吊索)
主ケーブルから下に垂らして、補剛桁を吊り下げるのが ハンガーロープ(吊索、サスペンダー)です。
主ケーブルが受けた重さを直接橋桁から受け取るパーツですね。主ケーブルより細く、橋の全長に沿って等間隔に垂直に垂らされていきます。定期的な点検と交換が前提の消耗部材で、何十年スパンで付け替え工事が行われたりします。
補剛桁
実際に人や車が通る「床」になる部分を 補剛桁(ほごうけた)と言います。英語だとデッキ。
単に床の役割だけでなく、風で揺れない剛性を確保するという重要な役目も担っています。1940年にアメリカで起きたタコマナローズ橋の崩落事故は、補剛桁の剛性不足による風の自励振動(フラッター)が原因でした。この事故をきっかけに、吊り橋設計で風洞実験が必須になった歴史があります。
アンカレイジ
主ケーブルの両端を地盤にガッチリ固定する巨大なコンクリートの塊が アンカレイジです。
主ケーブルは両端で強烈な引張力を受け続けるので、その力を地盤に伝える「錨(いかり)」役ですね。巨大なコンクリート躯体なので、実質的に土木版の大規模躯体工事の親玉みたいな存在です。
躯体工事の基礎はこちら。

サドル
主塔の頂部で主ケーブルが滑らかに曲がれるよう、受け皿になっているパーツを サドルと言います。
ケーブルを単純に塔に縛りつけてしまうと応力が集中して切れてしまうので、滑らかに曲率を取りつつ摩擦で力を受けるよう設計されているわけです。地味ですが、応力集中回避という意味で超重要なパーツですね。
吊り橋の種類
吊り橋は、主ケーブルの定着方法や規模によっていくつかに分類されます。
吊り橋の主な分類
- 地盤定着式(外ケーブル式)
- 自碇式(セルフアンカード式)
- 単径間・3径間(2主塔)・多径間
- 歩道吊り橋
地盤定着式と自碇式の違い
地盤定着式は、主ケーブルの両端をアンカレイジで地盤に定着するタイプ。最も一般的で、長大橋はほぼこの方式です。明石海峡大橋、ゴールデンゲートブリッジなどが該当します。
自碇式(セルフアンカード)は、主ケーブルを地盤ではなく 補剛桁そのものに定着 する方式。アンカレイジを省略できる反面、補剛桁に巨大な圧縮力がかかるので長大橋には不向きです。都市部でアンカレイジ用地が取れない場合に採用されることがあります。
径間構成による違い
| 形式 | 径間構成 | 用途・特徴 |
|---|---|---|
| 単径間 | 主塔1本+アンカレイジ2か所 | 比較的小規模、歩道橋など |
| 3径間 | 主塔2本+アンカレイジ2か所 | 最も一般的。明石海峡大橋、ゴールデンゲート等 |
| 多径間 | 主塔3本以上 | 珍しい。中国の泰州長江大橋など |
歩道吊り橋
観光地でよく見る、人だけが渡る小規模な吊り橋も原理は同じです。補剛桁を軽量にできる分、主ケーブルも細く、全体が華奢な構造になります。渡ると足元がぐにゃんぐにゃんするタイプは大体コレですね。軽量ゆえに慣性が小さく、風でもよく揺れます。
世界と日本の有名な吊り橋
有名な吊り橋をいくつか紹介します。
| 橋名 | 中央径間 | 開通年 | 所在地 |
|---|---|---|---|
| チャナッカレ1915橋 | 2,023m | 2022年 | トルコ |
| 明石海峡大橋 | 1,991m | 1998年 | 日本(兵庫) |
| ゴールデンゲートブリッジ | 1,280m | 1937年 | アメリカ(サンフランシスコ) |
| 瀬戸大橋(南・北備讃瀬戸大橋) | 1,100m/990m | 1988年 | 日本(岡山〜香川) |
| レインボーブリッジ | 570m | 1993年 | 日本(東京) |
明石海峡大橋は1998年の開通時に世界最長だった吊り橋で、2022年にトルコのチャナッカレ1915橋(2,023m)に記録を抜かれるまで、約四半世紀にわたって世界1位を保持していました。橋名の「1915」は、第一次世界大戦中のガリポリの戦いでトルコが勝利を収めた年(1915年)に由来し、中央径間2,023mという数字は、トルコ共和国建国100周年(2023年)にちなんで意図的に選ばれた象徴的な値です。
レインボーブリッジは吊り橋に分類されますが、実は上層が首都高、下層が一般道+ゆりかもめというダブルデッキ構造。都市部ゆえに補剛桁の剛性が高く設計されていて、吊り橋にしては珍しく「がっしり感」のある見た目になっています。
吊り橋のメリット・デメリット
吊り橋のメリット
- 非常に長い径間を実現できる(中間に脚を建てなくていい)
- 海峡や深い谷など、橋脚設置が困難な場所で威力を発揮
- 見た目が美しく、ランドマーク性がある
- 橋脚が少ないので船舶航行や生態系への影響を抑えやすい
吊り橋のデメリット
- 建設コストが非常に高い(アンカレイジ、主塔、ケーブルなどすべて大規模)
- 風による振動対策が必須で、設計難度が高い
- 主ケーブル・ハンガーロープの長期的な維持管理が必要
- 重量物(鉄道の貨物列車など)の通行には不向きなことが多い
「長大スパンを軽やかに渡せるけど、初期投資と維持管理は重い」というのが、吊り橋の宿命的な性格ですね。
吊り橋の建設方法
長大な吊り橋の建設はざっくり以下の流れで進みます。大型プロジェクトそのもので、着工から開通まで10年以上かかるのが普通です。
吊り橋建設の大まかな流れ
- 海底・地盤の調査
- アンカレイジ(基礎)の構築
- 主塔の建設
- パイロットロープを空中に渡す
- エアスピニング工法などで主ケーブルを架設
- ハンガーロープの取り付け
- 補剛桁の架設(ブロック工法等)
- 舗装・付帯設備施工・検査
- 開通
エアスピニング工法は、細い鋼線を両岸に何千回も往復させて、空中で主ケーブルを織り上げていく伝統的な工法です。明石海峡大橋でも採用されました。近年は、工場で予め束ねた鋼線束を運搬して架設する プレファブ工法(PWS工法) も主流になっています。
建築施工管理の目線で見ると、アンカレイジは要するに 超巨大なコンクリート躯体 + アンカー定着。建築でお馴染みのアンカーやアンカーボルトの発想を、ケタ違いのスケールで実装したものだと思うと、ちょっと親しみが湧きます。
建築のアンカー・アンカーボルト周りの基本は以下にまとめています。
https://seko-kanri.com/src-zo/
https://seko-kanri.com/haidenban/
吊り橋に関する情報まとめ
- 吊り橋とは:主ケーブルから垂らしたハンガーロープで橋桁(補剛桁)を吊る形式の橋
- 主要な構造部材:主塔、主ケーブル、ハンガーロープ、補剛桁、アンカレイジ、サドル
- 種類:地盤定着式(最も一般的)/自碇式/径間構成(単径間・3径間・多径間)/歩道吊り橋
- 代表例:チャナッカレ1915橋(2,023m・世界最長)、明石海峡大橋(1,991m)、ゴールデンゲート、レインボーブリッジ
- メリット:中間橋脚なしで長大径間を実現、景観性が高い、橋脚設置困難地でも架橋可能
- デメリット:コスト大、風対策と維持管理が必須、重量物通行には不向きなことが多い
- 建設の特徴:アンカレイジ・主塔構築 → ケーブル架設(エアスピニング等) → 補剛桁架設 → 開通
以上が吊り橋に関する情報のまとめです。
一通り吊り橋の基礎知識は理解できたと思います。吊り橋は土木構造物の花形のひとつで、普段は建築ばかり見ている施工管理者でも、仕組みを知っておくと構造に対する引き出しが増えるはずです。
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