- MIG溶接ってそもそもなに?
- TIGやMAGと何が違うの?
- どんな材質・用途で使われるの?
- メリット・デメリットは?
- 必要な機材・資格は?
- 施工管理として気を付けるポイントは?
上記の様な悩みを解決します。
MIG溶接(ミグようせつ)は、金属加工の世界で広く使われている 半自動アーク溶接 のひとつ。アルミ・ステンレスの溶接と相性が良く、鉄骨造の付随部品やステンレス機器架台、アルミ建具のフレームなど、建築現場でも見かける機会が増えています。TIGと比べてスピードが圧倒的に速く、MAGと違って酸化に弱い金属を溶かせるのが特徴。鉄骨溶接の主役(アーク溶接・MAG溶接)と並べて、選定の判断軸を押さえておくと、現場で「これMIGじゃないと無理だね」というセリフが自然に出るようになるんですよね。
なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。
それではいってみましょう!
MIG溶接とは?
MIG溶接とは、結論「Metal Inert Gas welding の略で、消耗電極(金属ワイヤ)を使って、不活性ガス(アルゴン・ヘリウム)でシールドしながら行う半自動アーク溶接」のことです。
ここで重要なキーワードが3つ。
- 消耗電極:電極自体が溶けて溶融金属になるタイプ(電極が溶けないTIGと真逆)
- 半自動:ワイヤが自動送給される。アーク・トーチの動きは人が操作
- 不活性ガス:アルゴン100%、ヘリウム100%、またはアルゴン+ヘリウムの混合
要するに「ワイヤを連続的に送り込みながら、不活性ガスで酸化を防ぎつつアークで溶かす溶接」。半自動なのでスピードが出やすく、不活性ガスを使うので アルミ・ステンレス・銅 といった酸化しやすい金属でも綺麗に溶接できる、というのが武器です。
溶接全般の話は別記事に詳しいので、まず全体像を押さえたい方はそちらから。

MIG溶接の仕組み
実際の溶接現場でMIGトーチを動かしているとき、何が起きているかを整理します。
動作プロセス
- ワイヤ送給:トーチ先端のチップから金属ワイヤが連続的に送り出される
- アーク発生:ワイヤと母材の間にアーク(電弧)が発生し、ワイヤと母材を同時に溶かす
- シールドガス放出:トーチから不活性ガス(アルゴン・ヘリウム)が放出され、溶融金属を大気から守る
- 溶融金属の固化:トーチが進むにつれて溶融金属が冷えて固まり、ビードが形成される
電源は 直流逆極性(電極+/母材−) が標準。逆極性にすることで、母材側のクリーニング作用(酸化皮膜を電気的に除去する効果)が働き、特にアルミ溶接で重要になります。
必要な機材
| 機材 | 役割 |
|---|---|
| MIG溶接機(電源) | 直流電源・電流/電圧調整 |
| ワイヤ送給装置 | 一定速度でワイヤを送給 |
| 溶接ワイヤ(金属ワイヤ) | 母材と同じか相性の良い材質 |
| シールドガスボンベ | アルゴン・ヘリウム |
| トーチ | ワイヤ・ガス・電流を一体で供給 |
| 電源ケーブル・アースクランプ | 電気回路の構成 |
ワイヤ径は 0.8〜1.6mm が一般的。母材の厚みと電流値で選定します。
MIG溶接の特徴(メリット・デメリット)
メリット
1. 溶接速度が速い
ワイヤが自動送給されるため、TIGの手作業送給と比べて2〜5倍のスピードで溶接できます。長距離ビードを引きたい現場では、MIGが圧倒的に有利。
2. アルミ・ステンレスの溶接に強い
不活性ガス(アルゴン)でシールドするため、酸化しやすいアルミ・ステンレス・銅・チタンも綺麗に溶接できます。MAG溶接(炭酸ガス・酸素混合)では酸化反応で失敗する材質ですね。
3. スパッタが少ない
混合ガス(アルゴン+少量CO2)を使えば、MAG溶接よりスパッタ(溶融金属の飛散)が大幅に少ない仕上がりになります。仕上げ研磨の手間が減るので、見える部位の溶接で重宝します。スパッタ対策の話は別記事に詳しいです。

4. 比較的厚物にも対応
電流を上げれば板厚20mm程度の厚物にも対応可能。鉄骨の溶接では、これより太いものは多層盛りで対応します。
デメリット
1. ガスコストが高い
アルゴン100%や混合ガスは、CO2と比べると 2〜5倍のガス単価。長時間使用するとランニングコストがかさみます。
2. 屋外作業に弱い
シールドガスが風で吹き飛ばされると、酸化欠陥が一気に増えます。風速 2m/s以上 ではシールドが乱れ、防風対策(ついたて・テント)が必須。屋外の鉄骨現場で被覆アーク溶接(手棒)が今も主流なのは、風の影響を受けにくいから。
3. 機材が大きく取り回しが悪い
電源・ワイヤ送給装置・ガスボンベを引き連れて移動するため、狭い場所・高所・配管内部での溶接は不向き。
4. アーク特性の調整が難しい
電流・電圧・ワイヤ送給速度・ガス流量の組合せで仕上がりが大きく変わります。慣れた職人と未熟な職人で品質差が出やすい工法。
MIG溶接とMAG溶接の違い
「MIG」と「MAG」は名前も操作も似ていて、現場では混同されがち。違いはたった1点、シールドガスの種類 です。
| 項目 | MIG溶接 | MAG溶接 |
|---|---|---|
| 名称 | Metal Inert Gas | Metal Active Gas |
| ガス | アルゴン・ヘリウム(不活性) | CO2、アルゴン+CO2、アルゴン+酸素 |
| 主な対象材 | アルミ・ステンレス・銅・チタン | 軟鋼・鉄系(炭素鋼・低合金鋼) |
| ガスコスト | 高い | 安い |
| 酸化反応 | なし | 反応する(軟鋼向け) |
| スパッタ | 少ない | 多め |
ややこしい点として、「MIG」と「MAG」を厳密に区別せず、両方ひっくるめて『半自動溶接』『ガスシールドアーク溶接』と呼ぶ 文化が現場には根強くあります。混乱したら、
- 鉄骨・軟鋼の半自動 → MAG(CO2/混合ガス)
- アルミ・ステンレスの半自動 → MIG(アルゴン100%)
と覚えておくと現場で困りません。なお、CO2溶接・MAG溶接は鉄骨工事の主力で、ガセットプレート・ダイヤフラム・スプライスプレートの取付け溶接などはほぼこの方式です。



MIG溶接とTIG溶接の違い
MIGとTIGは、見た目もガスも似ていて、こちらも混同されがち。決定的な違いは 電極が消耗するか です。
| 項目 | MIG溶接 | TIG溶接 |
|---|---|---|
| 電極 | 消耗電極(ワイヤが溶ける) | 非消耗電極(タングステン) |
| 溶加材 | ワイヤを兼用 | 別途、棒で手送り |
| 自動/手動 | 半自動(ワイヤ自動) | 手動(送給は人) |
| 速度 | 速い | 遅い |
| 仕上がり | きれい | 非常にきれい(最高級) |
| 制御 | 電流・送給速度の調整 | 電流のみ |
| 対象板厚 | 中〜厚物 | 薄物〜中厚物 |
| コスト | 中 | 高(時間あたり) |
| 主な用途 | 量産・長距離ビード | 高品質・薄物・配管 |
TIGは「とにかく綺麗に仕上げたい」「薄物で歪ませたくない」「配管の根入れを綺麗に出したい」という場面の決定打。MIGは「速度を出したい」「中厚物を量産したい」場面の決定打。両方使い分けられる職人さんは現場で重宝されます。TIGの中身は別記事に詳しいです。

MIG溶接の用途
MIG溶接が得意とする現場・製品を整理します。
アルミ建材・建具
アルミサッシ・アルミルーバー・アルミ手すり・アルミ門扉などの溶接組立。サッシ業者さんの工場ではMIGの溶接機が並んでいます。
ステンレス機器・架台
医療機器・厨房機器・制御盤架台・タンクなどのステンレス溶接。耐食性が要求される機械設備の組立で活躍します。
自動車・産業機械
軽量化のためのアルミ車体溶接、ステンレス排気系の溶接。半自動化と量産化の両立で採用されます。
配管溶接(一部)
ステンレス配管・アルミ配管のフランジ取付けや継手溶接。ただし、配管の根入れ品質が要求される箇所はTIGに譲るのが一般的。
鉄骨の薄物・小物
鉄骨工事のメインはMAGですが、SUS材を使う特殊な小物(手摺・点検歩廊など)はMIGで処理することも。鉄骨の代表的な部材については別記事を合わせてどうぞ。


MIG溶接に必要な資格
MIG溶接を業務で行うには、技能を裏付ける資格がいくつか整備されています。
JIS資格(一般社団法人日本溶接協会)
- 半自動溶接技能者(SA-2F、SA-2V等):軟鋼の半自動溶接(MAGに準ずるが、MIGも含む)
- アルミニウム溶接技能者(A-2F、A-2V等):アルミ材のMIG溶接
- ステンレス鋼溶接技能者(TN-F、TN-V等):ステンレスのMIG・TIG溶接
これらは2年または3年ごとに更新が必要な「技能資格」で、客観的な腕前を証明する書類になります。
関連法令の資格
- アーク溶接特別教育:労働安全衛生法に基づく特別教育(実務の前提となる教育)
- ガス溶接技能講習・特別教育:ガス溶接(酸素アセチレン)の場合に必要
特別教育は1日(学科+実技)で受けられるので、新人作業員でも比較的すぐ取得できます。
MIG溶接の注意点
施工管理として現場をマネジメントする上で、押さえておきたい注意点を整理します。
注意点1: シールドガスの風対策
最重要ポイント。風速2m/s以上では作業中止 がJIS Z 3604の指針。屋外現場では防風シート・パーティション・テント養生を準備し、シールドが効いている状態を維持します。
注意点2: 母材の清掃
母材表面に油・水・錆・塗装が残っていると、ブローホール(気泡欠陥)の原因になります。MIG溶接前は ワイヤブラシ・グラインダ・脱脂剤 で清掃が必須。アルミ材は表面の酸化皮膜(融点2,000℃以上)を除去するために、化学処理または機械的清掃を実施。
注意点3: ワイヤと母材の相性
ワイヤは母材と同じか、相性の良い材質を選びます。
| 母材 | 推奨ワイヤ |
|---|---|
| アルミ純AL(A1100系) | A1070 |
| アルミ合金A5083 | A5183、A5356 |
| ステンレスSUS304 | YS308 |
| ステンレスSUS316 | YS316L |
| 軟鋼SS400 | YGW11、YGW12(MAG用) |
これを間違えると、溶接金属の機械的性質や耐食性が母材と一致せず、現場検査で不合格になります。
注意点4: 電流・電圧・ワイヤ送給速度のバランス
MIGは「電流(=ワイヤ送給速度)」「電圧」「ガス流量」の3軸を職人が手動で調整します。
- 電流が低すぎ → アーク不安定、未溶融
- 電圧が高すぎ → ビードが幅広く扁平、スパッタ増加
- ガス流量が少なすぎ → 酸化欠陥
- ガス流量が多すぎ → 乱流でかえってシールド不良
慣れた職人さんは、アーク音と火花の飛び具合で「あ、ガスちょっと絞ろう」みたいに微調整しています。
注意点5: ヒューム(溶接煙)対策
MIG溶接ではアルミ・ステンレスを溶かすため、酸化亜鉛・ニッケル・クロム を含むヒューム(金属蒸気)が発生します。換気・吸引装置・防じんマスクの装着が労働安全衛生法上の義務。長期的にじん肺リスクがある作業として位置づけられています。
注意点6: 高所・狭所での作業性
機材一式が大きく取り回しが悪いため、高所・狭所では準備時間がかさみます。届かない場所はTIGや手棒(被覆アーク)に切り替える判断が必要です。高所作業の安全管理は別記事を合わせてどうぞ。

注意点7: 残留応力・歪み
アルミ・ステンレスは熱膨張率が高く、溶接後に歪みが出やすい材質です。仮付け・拘束・段取り溶接 で歪みを最小化する工夫が要ります。薄物では特にシビア。
注意点8: 検査と記録
MIG溶接部の品質検査は、目視検査・浸透探傷試験(PT)・放射線透過試験(RT) が一般的。重要部材では、各継手の検査記録(合格証)を発注者に提出します。
MIG溶接に関する情報まとめ
- MIG溶接とは:消耗電極(金属ワイヤ)と不活性ガス(アルゴン)でシールドする半自動アーク溶接
- 特徴:速度が速い/アルミ・ステンレスに強い/スパッタが少ない/屋外に弱い
- MAG溶接との違い:シールドガスの種類のみ(不活性 vs 活性)。対象材も異なる
- TIG溶接との違い:電極が消耗するか/自動か手動か/速度と仕上がり
- 主な用途:アルミ建具、ステンレス機器、自動車、産業機械
- 必要資格:JIS半自動/アルミ/ステンレス溶接技能者、アーク溶接特別教育
- 押さえどころ:風対策、母材清掃、ワイヤ選定、電流・電圧バランス、ヒューム対策
以上がMIG溶接に関する情報のまとめです。
MIG溶接は、鉄骨工事の主役(MAG溶接)と高品質代表(TIG溶接)の中間に位置する溶接で、アルミ・ステンレスを綺麗に・速く・量産する場面で輝く工法です。施工管理として鉄骨や金物工事に絡むと、「これはMIGじゃないと無理」「これはTIGの方が安心」「ここは手棒で行こう」という判断が日常的に必要になります。「不活性ガスでシールドする=酸化に弱い金属を溶かせる」「消耗電極=半自動でスピードが出る」、この2つを押さえておけば、現場で迷うことが減りますね。
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