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開削工法とは?種類、シールド工法との違い、施工手順、注意点など

  • 開削工法ってそもそも何?
  • どういう現場で使うの?
  • シールド工法とどう違う?
  • 山留めはどうやって選ぶ?
  • 施工の流れが知りたい
  • 注意点や失敗例は?

上記の様な悩みを解決します。

地下鉄の駅、地下道、共同溝、地下駐車場——地中に何かを作るときに、いまだに最も使われている工法が「開削工法(オープンカット工法)」です。地表から穴を掘って構造物を作り、また埋め戻す——というシンプルだけど奥が深い工法。

ところが開削工法を選ぶか、シールド工法を選ぶかの判断は、深さ・地盤・周辺ライフライン・工期・コストという複数の軸でトレードオフが決まる、土木の中でもかなり戦略的な選択でもあります。山留めの種類選定ライフラインの仮受け(アンダーピニング)埋戻しと路面復旧——施工管理として押さえるべき論点が多い工法です。

この記事では、開削工法の意味・種類・シールドや推進工法との使い分け・施工手順・施工管理の注意点まで、土木の現場視点で網羅的に整理します。

なるべく分かりやすい表現で記事をまとめていくので、初心者の方にも理解しやすい内容になっているかなと思います。

それではいってみましょう!

目次

開削工法とは?

開削工法とは、結論「地表から地盤を掘り下げて地下構造物を作り、再び埋め戻す工法のこと」です。英語ではOpen Cut Method、土木では「オープンカット」とも呼びます。

開削工法のイメージ
1. 地表から鉛直に山留めを打つ
2. 山留めの内側を掘削
3. 底に構造物(ボックスカルバート等)を構築
4. 構造物の周囲を埋戻し・路面復旧
5. 山留めを撤去(または残置)

地中構造物を作る一番素直な方法」と言ってよく、人類が地下道を作り始めた頃から使われている古典的な工法です。シールド工法やNATM工法のように専用機械を使わないため、設備コストが小さく、構造物の自由度が高いのが最大のメリット。

どんな場面で使われる?

開削工法が選ばれるのは、比較的浅く・周辺の制約が少ない現場が中心です。

開削工法の代表的な用途
- 地下鉄駅(深度10〜30m程度)
- 共同溝・電線共同溝
- 上下水道の管路(推進工法と比較して浅い場合)
- 地下道・地下駐車場
- ボックスカルバート(暗渠・道路下)
- 高層ビルの基礎・地下部

地表からの距離が30m以内で、真上の道路を一定期間止められる現場であれば、開削が経済的に最も有利になりやすい——というのが一般的な目安です。

一番の特徴は「掘って・作って・埋め戻す」のシンプルさ

シールド工法やNATM工法は地表を掘らずに地中を進むのに対し、開削工法は地表からのアプローチでシンプルに作業します。機械の段取り・特殊技術が不要で、構造物の形を自由に決められるのが大きな利点。

開削の自由度の高さ(例)
- ボックス断面(角形):自由
- 多層構造(地下2階・3階):可能
- 駅のホームのような長い構造:可能
- 階段室・換気塔の取り合い:自由

シールド工法は円形断面しか作れないのが原則なので、駅などの大空間構造開削で作るのがほぼ必須。東京メトロ・都営地下鉄の駅も大半が開削で建設されています。

暗渠やボックスカルバートの話はこちらが詳しいです。

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開削工法の種類

開削工法は山留めの形式で分類されることが多いです。山留めをどう作るかで工法名が変わると思っていただいてOK。

1. 法面(のりめん)開削

山留めを使わず、地盤を斜めに掘り下げる方式。勾配を取って自立させるので、広い用地と浅い深度が前提。

法面開削の前提条件
- 浅い掘削(5m以下が目安)
- 周囲に余裕地が広く取れる
- 地盤が良好(崩壊しない)
- 地下水位が低い

郊外の管路工事広い更地での基礎工事で使われることが多い。山留めコストがゼロなので、条件が合えば最も安価。

2. 親杭横矢板工法

H鋼(親杭)を地中に打ち、間に横矢板を差し込んでいく山留め。最も伝統的な開削工法で、コストが安く、撤去も容易

親杭横矢板の特徴
- 親杭:H-300〜H-400など
- 横矢板:木材または鋼板
- 適用深度:10m前後まで
- 地下水:原則として地下水位以上で使用

地下水位が高い現場では横矢板の隙間から水が出るため使えない——という制約があります。東京の都心部のような被圧地下水のある現場では、後述のシートパイルや地中連続壁が選ばれます。

3. 鋼矢板(シートパイル)工法

U字型・Z字型の鋼板(シートパイル)を地中に打ち込んで連続壁にする山留め。継手部で止水性が確保できるので、地下水のある現場で活躍します。

シートパイル工法の特徴
- 部材:U型・Z型・直線型
- 打設:バイブロハンマー/圧入工法
- 止水性:継手部の噛み合わせで確保
- 適用深度:15〜20m程度

港湾の岸壁・河川の仮締切り・上下水道の埋設管周りで多用。バイブロ打設の振動が周辺民家に響くのがネックで、都市部では油圧式の圧入工法(無振動・無騒音)が選ばれます。

4. SMW工法(ソイルセメント壁)

地中で原位置土とセメントミルクを攪拌してソイルセメント壁を作り、そこにH鋼を芯材として挿入する山留め。遮水性が高く、深い掘削にも対応できる。

SMW工法の特徴
- 部材:芯材H鋼+ソイルセメント
- 適用深度:30m前後まで
- 止水性:高い(連続したソイル壁)
- コスト:シートパイルより高い

地下水のある深い掘削シートパイルでは強度不足な場合に選ばれる。地下鉄駅の山留めで標準的に使われる工法のひとつ。

5. 地中連続壁工法

安定液(ベントナイト泥水)を循環させながら掘削し、鉄筋コンクリートで連続壁を作る最強クラスの山留め。深度50m級まで対応可能。

地中連続壁工法の特徴
- 部材:鉄筋コンクリート(場所打ち)
- 適用深度:50m以上も可能
- 止水性・剛性:最も高い
- コスト:最も高い
- 工期:時間がかかる

超高層ビルの地下基礎大深度地下構造物で使われる。地下構造物の本体壁にそのまま転用(兼用化)するケースもあり、RC躯体と一体化させる設計が組み合わさることも。

山留め工法 適用深度 止水性 コスト 主な用途
法面開削 〜5m × 郊外、浅い管路
親杭横矢板 〜10m 地下水位以上の現場
シートパイル 〜20m 河川・港湾・都市部
SMW 〜30m やや高 地下鉄駅・大深度
地中連続壁 50m〜 最高 超高層基礎・大深度

杭基礎・基礎工事の話はこちらが詳しいです。

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開削工法とシールド工法・推進工法の違い

地中構造物を作るなら、開削とシールドのどっち?」というのが土木の永遠のテーマ。深さ・地表条件・断面形状で使い分けます。

項目 開削工法 シールド工法 推進工法
掘削方向 上から下に掘る 横方向に進む 横方向に進む
適用深度 30m以内 任意(深いほど有利) 30m前後まで
断面形状 自由(角形含む) 原則円形 原則円形
地表への影響 大きい(道路を止める) 小さい 小さい
コスト 浅い場合は安い 深いほど有利 中規模
工期 一気に進む 機械整備に時間 中程度
代表用途 地下鉄駅、共同溝 地下鉄路線、シールドトンネル 上下水道管
判断の目安
- 深度30m以内・地表を止めてOK・自由形状 → 開削
- 深度30m超・地表をいじれない・円形でOK → シールド
- 既設構造物(道路・河川)の下を横断 → 推進工法

「地下鉄の路線(線路区間)はシールド、駅は開削」というのは、駅の大空間が円形では作れないからという構造的な理由です。

シールドが有利になる典型ケース

シールドが選ばれる条件
- 既存の道路・河川・鉄道を止められない
- 地表に密集した建物がある
- 深度が深い(30m超)
- 円形断面で問題ない(路線区間など)

開削が有利になる典型ケース

開削が選ばれる条件
- 地表を一定期間封鎖できる(仮設道路で迂回可能)
- 深度が浅い(30m以内)
- 断面が複雑(駅・地下街・大型ボックス)
- 構造物の形状自由度が必要
- 工期短縮したい(シールド機の発進立坑等が不要)

地下鉄の延伸工事で言うと、駅周辺は開削、駅と駅の間はシールドというハイブリッド設計が標準パターン。

開削工法の施工手順

具体的な施工フローを見ていきます。

ステップ1:事前調査

開削に入る前に必須の調査
- ボーリング調査(地盤・地下水位)
- 周辺ライフラインの埋設深度(電気・ガス・水道・通信)
- 近隣家屋の構造調査(変位計測の基準点設置)
- 交通量調査(仮設道路計画)

特にライフラインの埋設深度は、役所の埋設物図面現場の試掘必ず実物確認します。図面上では深度2mと書いてあるガス管が、実は1mの位置にある——という現場あるあるは、開削の最大の事故リスクになります。

N値・標準貫入試験の話はこちらが詳しいです。

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ステップ2:仮設工事(山留め・路面覆工)

仮設工事の主要項目
1. 山留め工(親杭・シートパイル・SMW・地中連続壁)
2. 切梁・腹起し(山留めを内側から支える鋼材)
3. 路面覆工板(道路の上をフタする鉄板)
4. 仮設道路・迂回路の整備
5. ライフラインの仮受け(アンダーピニング)

路面覆工板は、掘削中の現場の上を交通開放するための鉄板。地下鉄工事で夜だけ作業して昼は車を通すというのは、この覆工板があるおかげ。

ステップ3:掘削・支保工

掘削の段階管理
- 1次掘削:GL-2m → 1段目切梁設置
- 2次掘削:GL-5m → 2段目切梁設置
- 3次掘削:GL-8m → 3段目切梁設置
- ...と段階的に深く掘る

山留めの変位を計測しながら掘るのが鉄則。「切梁を入れる前に深く掘らない」という基本ルールを守らないと、山留めが孕んで(はらんで)家屋傾斜事故が起きます。

ステップ4:構造物構築

掘削が完了したら底盤コンクリート→側壁→頂版の順で構造物を作っていきます。

構造物の打設順序
1. 砕石敷込み・捨てコン
2. 底盤の鉄筋・型枠・コンクリート打設
3. 防水工事(底盤・側壁)
4. 側壁の鉄筋・型枠・コンクリート打設
5. 頂版の鉄筋・型枠・コンクリート打設
6. 防水工事(頂版)

捨てコン・コンクリート打設の話はこちらが詳しいです。

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ステップ5:埋戻し・撤去・路面復旧

埋戻しの手順
1. 構造物の周囲に砂利・砕石で埋戻し
2. 切梁を上から順に撤去
3. 山留めを撤去(または残置)
4. 路面復旧(アスファルト舗装)
5. 路面覆工板撤去
6. 仮設撤去・原状復旧

山留めの撤去順序を間違えると埋戻しが崩れるので、「埋戻し→切梁撤去→山留め撤去」の順序を厳守が原則。

開削工法の注意点

施工管理として現場で押さえるべきポイントを整理します。

1. ライフラインの仮受け(アンダーピニング)

ガス・水道・通信ケーブル開削の障害物として最大級。簡単に動かせないので仮受け(アンダーピニング)ぶら下げながら掘り進めます。

ライフライン仮受けの基本
- 鋼製の架台(受け台)を山留めに固定
- ライフラインを架台に「吊り下げ」する形で支える
- 横移動の場合:仮受け→横引き→新しい位置で固定
- 撤去時:構造物上に「鞘管」を経由して再敷設

事故が起きやすいのはガス管仮受け中に折損するとガス漏れ→爆発リスクガス会社立会いのもとでの仮受け作業が必須です。

2. 山留めの変位計測

変位計測の標準項目
- 山留め頭の水平変位(0.5mm精度)
- 切梁軸力
- 周辺地盤の沈下
- 近隣家屋の傾斜・ひび割れ

1日1回以上の計測を継続。計測値が管理基準を超えたら掘削を止めて補強——という運用が基本。

3. 地下水処理(釜場排水・ディープウェル)

地下水処理の方法
- 釜場排水:掘削底で集水ピット→ポンプ排水
- ウェルポイント:浅い水位低下(10m程度)
- ディープウェル:深い水位低下(30m以上)
- リチャージ:揚水と同時に隣接地に水を戻す(地盤沈下対策)

揚水量が多すぎると周辺地盤が沈下して家屋に影響が出る。揚水量の上限役所協議で取り決めることも多いです。

4. 騒音・振動・粉塵対策(環境対策)

都市部の開削騒音・振動苦情が最大のリスク。

環境対策の代表例
- バイブロハンマー → 油圧圧入機(無振動)
- ブレーカー → 静音型ブレーカー
- 散水・防塵シート(粉塵対策)
- 夜間作業の時間帯規制(22時〜6時禁止など)

自治体の騒音規制指定地域内で85dB以下という基準があり、超過すると作業停止指導が来ます。

5. 交通対策

交通対策の主要項目
- 仮設道路・迂回路の設計
- 交通誘導員の配置(朝夕ラッシュ時は増員)
- 歩道のバリケード・仮設歩道
- 警察協議(道路使用許可・占用許可)

警察への道路使用許可申請着工2週間前には提出。朝礼時の交通誘導員の現場配置確認が安全管理の要。

6. 近隣家屋の事前調査

事前調査の流れ
1. 隣接家屋(半径20〜50m)の事前調査
2. ひび割れ・傾斜・床の歪み等を写真記録
3. 工事中の継続観測
4. 工事完了後の事後調査
5. 因果関係が明確な場合は補償交渉

「工事のせいでひび割れた」というクレームの大半は事前のひび割れ着工前に隣家のひび割れを写真撮影しておくことが最大のリスクヘッジになります。

7. 埋戻し材の選定

埋戻し材の代表
- 山砂・川砂:締固めが容易
- 流動化処理土(軽量・締固め不要):狭隘部
- 改良土:再利用残土を石灰固化
- 砕石:管路周りなど

流動化処理土ポンプで流し込めるので狭い隙間も埋まる——という利便性で、地下鉄工事の埋戻しの定番になっています。

開削工法に関する情報まとめ

  • 開削工法とは:地表から掘削して地下構造物を作り、埋戻す工法(オープンカット)
  • 山留めの種類:法面/親杭横矢板/シートパイル/SMW/地中連続壁の5種
  • シールドとの違い:開削は浅く・自由形状、シールドは深く・円形断面
  • 施工手順:事前調査→仮設→掘削→構造物→埋戻し→路面復旧
  • 注意点:ライフライン仮受け/山留め変位計測/地下水処理/騒音振動/交通対策/近隣調査/埋戻し材選定
  • 適用深度の目安:30m以内が経済的に有利。それ以上はシールド検討
  • 代表用途:地下鉄駅/共同溝/地下道/ボックスカルバート

以上が開削工法に関する情報のまとめです。

開削工法は「新しい工法ではないけれど、いまだに地下構造物建設の主役」という、土木の中でも息の長い基本工法です。シールドのほうが先進的に見えるかもしれませんが、駅・分岐部・大空間といった自由形状の地下構造開削でしか作れない——という設計上の必然性があるんです。ライフライン仮受け・山留め選定・近隣家屋対応という工事の地味な部分こそが開削で品質と安全を分ける論点です。施工管理として「山留めをどう選ぶか・ライフラインをどう仮受けるか」を語れると、土木現場での発言力が一段階上がる工法ですね。

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